本大爺駕馬飛奔,小心避開《渦》的路徑。
目的地是伊貝羅達王國最偏遠南邊的一所設施。
在那個設施裡駐紮著被稱為『連隊』的軍團,為了成為那個軍團的一員,本大爺離開原本生活的地方。
本大爺從出生以來到現在,一直生活在荒野之中。
像這樣在荒野中生存的傢伙們被稱為暴風駕馭者。是個基本沒有定居地,以馬車或帳篷為家的民族。
我家是老爸、老媽、本大爺、妹妹,這樣四個人在一個馬車和帳篷裡生活。其他的傢伙也是差不多的感覺,基本上生活都是以家庭為單位。
能與從世界各地中產生的《渦》中,出現的魔物或者生物們勉強和平共處,並且在荒野之中生活的本大爺們。
我不知道為什麼暴風駕馭者會用這種生活方式。畢竟對暴風駕馭者來說,那是理所當然的事。
也有成人之後離開家庭一個人踏上旅途的傢伙。聽說大哥也是這樣,在旅行中遇上興趣相投的夥伴們,和他們一起建了個旅團。
也有定居在中意的城鎮或者村子的人,但是那種傢伙很少。利用從《渦》中出現的異形生物生存下來的習慣會成為阻礙吧。
正是因為知道會有這種情況,暴風駕馭者會向孩子們傳授代代流傳下來的教誨。
「在荒野中出生就在荒野中死去。這才是暴風駕馭者。我們荒野之民,萬萬不可忘記這點。」
老爸是從爺爺那裡,爺爺是從爺爺的老爸那裡,就這樣流傳下來的。
身為暴風駕馭者的本大爺,現在正為了成為連隊的一員而前往設施,是有理由的。
狩獵異形生物買賣毛皮或者頭部,有時從米迦利亞之類的國家那邊接受護衛商隊的委託拿點報酬。
在這種生存方式下,暴風駕馭者的孩子很理所當然地從很小的年紀,就開始和大人一起為了生存而工作。
本大爺也是在差不多十歲左右的時候,就和大人們一起狩獵異形生物,承擔起一部分家裡的生計。
「好痛!」
想要獵取像中型鹿般大小的異形生物時,臉上受了很嚴重的傷。
「這傢伙!」
隨著怒火用獵槍亂射,幸運地射穿了異形的心臟部分。異形被這一擊而倒下。
「呼。」
把像鹿的異形扛上搬運機。因為頭部沒有傷到,拜託老媽做成高品質的標本吧。
標本在一群被稱作收藏家,不可思議的傢伙們那裡可以賣出很高的價錢,這樣應該也能給妹妹買身好衣服了。
「又~受傷了啊。」
「還想笑著送布蘭達小妹出嫁的話,就別太勉強了啊。」
一起來打獵的大叔們取笑著說道,這話到底要說幾次啊。
「知道啦。」
到了明年,妹妹布蘭達就要嫁給比我還大十歲的暴風駕馭者了。
本大爺和老爸那樣想,和大姐那時候一樣,嫁出去的時候想要多少給她點嫁妝。所以拼命狩獵跟工作。
或許不該這麼拚。
數個月前,老爸參加了一個叫尼貝爾的小都市國家委託的,討伐大型魔物的討伐隊,但是卻在那裡受了很重的傷。
因為老爸的治療沒人照料不行,我們一家就在老爸住院的,有治療院的某個小鎮暫時定居了下來。
聽說老爸他們好像是跟強到無法對抗的魔物打,所以幾十人組成的討伐隊中活下來的,只有老爸跟身手老練的幾人而已。
老爸好像是存活者裡傷勢最輕的,即使是最輕傷的,也還未完全治癒。這樣看來,其他存活下來的老手一定更嚴重吧。
「……雖然這麼說對尼貝爾討伐隊不太好,但是你能好好回來真是太好了。」
「哈哈,讓你擔心啦。」
「只要一參加大規模的委託就會變成這樣,我的心臟總有一天會受不了的。真是的。」
雖然我知道的不是全部,但是仔細聽才知道,老爸好像從年輕時就一直是這個樣子,總是會被逼到絕境。
因為一家之主無法正常活動,本大爺得更加努力工作才行。
維持平常生活和準備布蘭達的嫁妝外,又加上了老爸的治療費。說實話,是一筆很大的開銷。
只靠平常那樣狩獵中型的異形,完全不夠。
但是,如果本大爺也倒了的話我們家就完蛋了,所以也不能拚過頭。可是,本大爺不多掙些錢是不行的……。
找不到能打破現狀的好方法,本大爺一直很苦惱。
在那時,本大爺代替父親去參加定期舉行的暴風駕馭者集會時,找到了一條出路。
在集會上大家各自拿出情報交談的正如火如荼的時候,一位老爺子拍著手示意讓大家看向他。
「那個,稍微給我點時間吧。布魯貝克那邊聯絡我說,想要這邊送幾個人去連隊。」
名叫布魯貝克的,是一位擅長預測《渦》活動的中年大叔。
在暴風駕馭者之間是位很有名的大叔,現在加入了一個為了討伐《渦》而結成的軍團,名叫連隊。
聽完了老爺子的話,從眾人之中發出了騷動般的聲音。
「說起來,貝爾的兒子也……」
「一開始去的那幫人,聽說除了布魯貝克以外都死了……」
「根本就和去送死沒兩樣嘛。」
從大家的對談中,本大爺得知這個叫連隊的地方,是個相當嚴苛的場所。
「好啦聽我說。當然,報酬會給出和危險相當的數字。如果是有家人的,入隊後可以馬上支付報酬。在那之後也會定期--」
聽到那報酬金額的本大爺,感覺自己好像飛上了雲端。
從老爺子的嘴裡吐出的報酬數目,是可以付出老爸的治療費和布蘭達的嫁妝,再加上全家暫時的生活費,全部加起來都含會有剩的金額。
「本、本大爺要去! 連隊,本大爺去!」
本大爺發出的聲音大到要蓋過老爺子的聲音,周圍的暴風駕馭者一臉驚訝地看向這邊。
「喂喂,小子。像你這樣的小鬼頭根本做不好連隊隊員的。」
「再說你啊,連根不是很大的異形都要拚上全力了不是嗎。」
認識本大爺的大叔們開始潑冷水,但是,這種事根本不值得在意。
「給我安靜。小子,你做好覺悟了吧?」
老爺子斥責了周圍的人後,直直地看向我。
「做好了!」
本大爺立馬給老爺子回答。這樣的話在老爸的傷治好之前,老媽跟布蘭達都不用受苦了。
為了這一點,本大爺感覺什麼都做得到。
集會後,老爺子馬上就告訴我連隊設施的所在地.雖然入隊前好像還需要種種檢查,就算去了設施也無法馬上就入隊的樣子。
本大爺還有家人在的事情,老爺子也和布魯貝克聯絡為我做了證明,只要成功入隊的話馬上就把報酬一的一半以上交給家人的手續也已經辦好了。
「迪諾,在這裡面放著我們家代代相傳的守護石碎片。要好好保管啊。」
準備向連隊出發的前一晚,老爸把掛在脖子上,用繩子綁住的皮袋交給了本大爺。
皮袋裡面是綠色像寶石一樣的結晶,這好像就是被稱作守護石的東西。
「我會為你祈禱的,願你能在連隊平安地幹下去。」
「我會努力的!」
「……迪諾,別死了啊。」
「本大爺可是老爸的兒子耶? 不會那麼簡單就死掉的啦。」
「是嗎。嗯,也是!」
就這樣,第二天早上本大爺就在老媽和布蘭達的送行下出發了。
「哥哥,路上小心。」
「不要給布魯貝克先生添麻煩哦。」
「知道啦。那,我走了!」
就算從遠處也能看到,一個巨大的設施。
從有治療院的小鎮離開後,經過了數日旅行的本大爺,是這個巨大的鐵製建築物,還有個看起來又大又結實的門迎接著本大爺。
「哇~,好大啊~。」
在門前,聚集著幾名和本大爺一樣的入隊志願者。
大家全都是做好了和《渦》戰鬥覺悟的人。
要是快的話在今天之內,本大爺就會在那扇門後作為隊員被錄用,然後就要和《渦》進行戰鬥了吧。
今後會發生甚麼事呢。懷抱著恐懼和期待的心情,本大爺排進了志願者的隊伍中。
「-完-」
3376年 「荒野の民」
《渦》の通り道を避けるように、俺様は馬を走らせていた。
目的地はインペローダ王国の遥か南にある施設だ。
その施設には『連隊』と呼ばれている軍団が入っており、その連隊の一員になるべく、俺様は生活していた場所を離れて向かっている。
俺様は生まれたときから今まで、ずっと荒野の只中で生きてきた。
そんな荒野で生きる連中はストームライダーと呼ばれている。基本的に定住地を持っていなくて、馬車やテントが自分の家って感じの民族なのさ。
ウチは父親、お袋、俺様、妹。そんな四人で一つの馬車とテントで生活してる。他の連中も似たような感じで、生活は基本的に家族単位だ。
世界各地に発生している《渦》から出てくる魔物や生き物と何とか祈り合いを付け、荒野を巡って生活する俺様達。
どうしてストームライダーがそんな生活をするのかは知らない。ストームライダーにとっては、それが当たり前のことだからだ。
大人になると家族から離れて一人で旅をする奴もいた。兄貴なんかもその口で、旅先で出会った気の合う連中と一緒に旅団を作ったって話を耳にしてる。
気に入った街や村に定住する奴もいるんだけど、そういう奴は稀だ。《渦》から出てくる異形の生物を利用して生きてきたってのが足を引っ張るのかね。
そんな状況を理解しているから、ストームライダーは子供達に代々の教えを受け継がせる。
「荒野でいきて荒野で死ぬ。それがストームライダーだ。俺達は荒野の民、それを努々忘れるな」
父親も爺さんから。爺さんも爺さんの親父から。そうやって言い聞かせられてきた。
そんなストームライダーの俺様が連隊の一員となるべく施設に向かっているのには、それなりの理由があった。
異形の生物を狩って毛皮や頭部を売り、時にはミリガディアなんかの国から隊商の護衛依頼を受けて報酬を貰う。
そういう生き方が必然なせいで、ストームライダーの子供は結構早い段階から大人と一緒に生きるための仕事をするようになる。
俺様も十歳になるかならないか位の頃には、大人に混じって異形の生物を狩るようになり、家計の一部を担っていた。
「痛ってえ!」
中型の鹿に似た異形の生物を狩ろうとして、顔に深めの傷を負った。
「んのヤロウ!」
怒りに任せて猟銃を放つと、運よく異形の心臓部分を撃ち抜いた。異形はその一撃で崩れ落ちる。
「ふう」
鹿のような異形を運搬機に乗せる。頭部を傷付けなかったので、お袋に頼んで立派な剥製にしてもらおう。
剥製は好事家っていう不思議な連中に高い値で売れるし、これで妹にいい服を買ってやれる筈だ。
「まーた怪我したのか」
「ブレンダちゃんを笑顔で送り出したいんだったら、あんまり無理すんなよ」
一緒に狩りに来ていたオッサン達が呆れたように言う。この言葉を何度聞いたことやら。
「わかってるよ」
年が明けたら、妹のブレンダは俺様より十歳ほど年上のストームライダーのところへ嫁いでいく。
姉貴のときと同じように、嫁ぐときには少しでもいい嫁入り道具を渡したい。俺様と親父はそう考えて、狩りや仕事に精を出していた。
それがいけなかったのだろうか。
数ヶ月前、父親はニヴェルという小さな都市国家から依頼された大型の魔物の討伐隊に参加したんだけど、その際に大きな怪我を負ってしまった。
父親の治療に付き添わなきゃいけないってんで、ウチの家族は父親が入院している治療院がある町で暫く生活をすることになった。
父親達が相手取ったのはとんでもない強さの魔物だったそうで、数十人で組まれた討伐隊で生き残ったのは、父親と腕っこきの数人だけだったとか。
生き残りの中で一番の軽傷が父親だったらしいが、それでもまだに怪我が治りきっていない。だとすると、他に生き残った腕っこきはもっと酷いことになっているんだろう。
「……ニヴェルの討伐隊には悪いけど、アンタがちゃんと帰ってきてくれてよかったよ」
「ははっ。心配かけたな」
「大掛かりな仕事の度にこれじゃあ、アタシの心臓がもたないよ。まったく」
俺様が知っている限りでもそうだけど、よくよく話を聞くと、父親は若い頃からずっとこんなかんじで、窮地に追い遣られることばかりだったみたいだ。
稼ぎ頭が動けなくなったことで、俺様はより一層働かなければならなかった。
普段の生活維持とブレンダの嫁入り支度に加え、父親の治療費までが加わった。正直、結構金が掛かる。
いつもみたいに中型の異形を狩ってるだけじゃ、到底間に合わない。
かといって俺様が駄目になったらウチの家族はオシマイになってしまうから、あまり無茶もできない。でも、俺様が多く稼がなければ意味がない……。
状況を打破するいい解決方法が見つからず、俺様は悩んでいた。
そんな折、定期的に開かれているストームライダーの集会へ父親の代理で出席したとき、一つの道筋が見えた。
集会で各々が情報を出して会話をしている最中、一人の爺さんが手を叩いてみんなを注目させた。
「あー、少し時間をくれ。ブルベイガーから連絡が来たんだが、何人かを連隊に寄越して欲しいということだ」
ブルベイカーというのは、《渦》の活動を読むことに長けた中年のオッサンだ。
ストームライダーの間では有名なオッサンで、今は連隊という《渦》を討伐するための軍団に入隊して働いている。
爺さんの話を聞き終わったみんなの中から、どよめきのようなものが沸いた。
「そういえば、ベイルのとこの倅が……」
「最初に行った連中は、ブルベイカー以外みんな死んだて……」
「死にに行くようなもんだぜ」
漏れに聞こえれくる言葉から、連隊という場所は相当に苛酷な場所だということがわかった。
「まぁ聞け。もちろん、報酬は危険に見合った額が出るそうだ。家族持ちの奴なら、入隊後すぐに報酬が支払われる。その後も定期的に――」
その報酬金額を聞いた俺様は、飛び上がるような感覚に囚われた。
爺さんが口にした報酬の額は、父親の治療費とブレンダの嫁入り支度、それに家族全員の当面の生活、それら全てを賄ってもお釣りが出るくらいの金額だった。
「お、俺様行きます! 連隊、行きます!!」
爺さんの話を遮るように大声を出す。周囲のストームライダーが驚いたようにこっちを見た。
「おいおい、若造。お前みたいなヒヨッコに連隊の隊員なんて務めるわけないだろ」
「大体お前、そんなに大きくもない異形を相手にするので精一杯じゃねぇか」
俺様を知るオッサン達から野次が飛ぶ。だけど、そんなことは気にしてられない。
「静かに。お前さん、覚悟はあるんだな?」
爺さんが周囲を窘めて俺を真っ直ぐ見つめた。
「ある!」
俺様は爺さんの言葉に即答する。これで父親の怪我が治るまで、お袋やブレンダに苦労させずにすむ。
だったら、俺様は何だってできる。そんな気がした。
集会の後、爺さんはすぐに連隊の施設がある場所を教えてくれた。入隊には諸々の検査があるらしく、施設に行ったとしてもすぐに入隊が決める訳でもないらしいけど。
俺様に家族がいることについても、爺さんからブルベイカーに連絡をつける証明してもらうことになり、入隊が決まれば報酬の半分以上が家族に渡るよう手配してもらえた。
「ディノ、この中には我が家に代々伝わる守護の石の欠片が入っている。大事にするんだぞ」
連隊へ向かう前夜、父親が首下げ紐の付いた皮袋を俺様に寄越した。
皮袋の中には緑色をした宝石のような結晶が入っていて、これが守護の石というものらしい。
「お前が無事に連隊でやっていけるように、祈っている」
「頑張ってくるぜ!」
「……ディノ、死ぬなよ」
「俺様は父親の子だぜ? そう簡単に死んだりしないっての」
「そうか。うん、そうだな!」
そうした翌朝、俺様はお袋とブレンダに見送られて旅立った。
「兄さん、気をつけて」
「ブルベイカーさんに迷惑かけるんじゃないよ」
「わーかってるって。じゃ、行ってくるぜ!」
遠目からでもわかるほど、でっかい施設が見えてきた。
治療院のある町から数日の旅経た俺様を出迎えたのは、巨大な鉄の建造物と、これまたでかい頑丈そうな扉だった。
「はー、でっけえなー」
扉の前には、俺様と同じ入隊志願者が何人か集まっている。
みんな《渦》と戦う覚悟を決めた連中ばっかりだ。
早ければ今日中にでも、俺様はあの扉の向こうで隊員として徴用され、《渦》と戦うことになるんだろう。
これからどんな事が起きるのだろう。恐怖と期待が入り混じったような思いを抱きながら、俺様は志願者の列に並んだ。
「―了―」
《渦》の通り道を避けるように、俺様は馬を走らせていた。
目的地はインペローダ王国の遥か南にある施設だ。
その施設には『連隊』と呼ばれている軍団が入っており、その連隊の一員になるべく、俺様は生活していた場所を離れて向かっている。
俺様は生まれたときから今まで、ずっと荒野の只中で生きてきた。
そんな荒野で生きる連中はストームライダーと呼ばれている。基本的に定住地を持っていなくて、馬車やテントが自分の家って感じの民族なのさ。
ウチは父親、お袋、俺様、妹。そんな四人で一つの馬車とテントで生活してる。他の連中も似たような感じで、生活は基本的に家族単位だ。
世界各地に発生している《渦》から出てくる魔物や生き物と何とか祈り合いを付け、荒野を巡って生活する俺様達。
どうしてストームライダーがそんな生活をするのかは知らない。ストームライダーにとっては、それが当たり前のことだからだ。
大人になると家族から離れて一人で旅をする奴もいた。兄貴なんかもその口で、旅先で出会った気の合う連中と一緒に旅団を作ったって話を耳にしてる。
気に入った街や村に定住する奴もいるんだけど、そういう奴は稀だ。《渦》から出てくる異形の生物を利用して生きてきたってのが足を引っ張るのかね。
そんな状況を理解しているから、ストームライダーは子供達に代々の教えを受け継がせる。
「荒野でいきて荒野で死ぬ。それがストームライダーだ。俺達は荒野の民、それを努々忘れるな」
父親も爺さんから。爺さんも爺さんの親父から。そうやって言い聞かせられてきた。
そんなストームライダーの俺様が連隊の一員となるべく施設に向かっているのには、それなりの理由があった。
異形の生物を狩って毛皮や頭部を売り、時にはミリガディアなんかの国から隊商の護衛依頼を受けて報酬を貰う。
そういう生き方が必然なせいで、ストームライダーの子供は結構早い段階から大人と一緒に生きるための仕事をするようになる。
俺様も十歳になるかならないか位の頃には、大人に混じって異形の生物を狩るようになり、家計の一部を担っていた。
「痛ってえ!」
中型の鹿に似た異形の生物を狩ろうとして、顔に深めの傷を負った。
「んのヤロウ!」
怒りに任せて猟銃を放つと、運よく異形の心臓部分を撃ち抜いた。異形はその一撃で崩れ落ちる。
「ふう」
鹿のような異形を運搬機に乗せる。頭部を傷付けなかったので、お袋に頼んで立派な剥製にしてもらおう。
剥製は好事家っていう不思議な連中に高い値で売れるし、これで妹にいい服を買ってやれる筈だ。
「まーた怪我したのか」
「ブレンダちゃんを笑顔で送り出したいんだったら、あんまり無理すんなよ」
一緒に狩りに来ていたオッサン達が呆れたように言う。この言葉を何度聞いたことやら。
「わかってるよ」
年が明けたら、妹のブレンダは俺様より十歳ほど年上のストームライダーのところへ嫁いでいく。
姉貴のときと同じように、嫁ぐときには少しでもいい嫁入り道具を渡したい。俺様と親父はそう考えて、狩りや仕事に精を出していた。
それがいけなかったのだろうか。
数ヶ月前、父親はニヴェルという小さな都市国家から依頼された大型の魔物の討伐隊に参加したんだけど、その際に大きな怪我を負ってしまった。
父親の治療に付き添わなきゃいけないってんで、ウチの家族は父親が入院している治療院がある町で暫く生活をすることになった。
父親達が相手取ったのはとんでもない強さの魔物だったそうで、数十人で組まれた討伐隊で生き残ったのは、父親と腕っこきの数人だけだったとか。
生き残りの中で一番の軽傷が父親だったらしいが、それでもまだに怪我が治りきっていない。だとすると、他に生き残った腕っこきはもっと酷いことになっているんだろう。
「……ニヴェルの討伐隊には悪いけど、アンタがちゃんと帰ってきてくれてよかったよ」
「ははっ。心配かけたな」
「大掛かりな仕事の度にこれじゃあ、アタシの心臓がもたないよ。まったく」
俺様が知っている限りでもそうだけど、よくよく話を聞くと、父親は若い頃からずっとこんなかんじで、窮地に追い遣られることばかりだったみたいだ。
稼ぎ頭が動けなくなったことで、俺様はより一層働かなければならなかった。
普段の生活維持とブレンダの嫁入り支度に加え、父親の治療費までが加わった。正直、結構金が掛かる。
いつもみたいに中型の異形を狩ってるだけじゃ、到底間に合わない。
かといって俺様が駄目になったらウチの家族はオシマイになってしまうから、あまり無茶もできない。でも、俺様が多く稼がなければ意味がない……。
状況を打破するいい解決方法が見つからず、俺様は悩んでいた。
そんな折、定期的に開かれているストームライダーの集会へ父親の代理で出席したとき、一つの道筋が見えた。
集会で各々が情報を出して会話をしている最中、一人の爺さんが手を叩いてみんなを注目させた。
「あー、少し時間をくれ。ブルベイガーから連絡が来たんだが、何人かを連隊に寄越して欲しいということだ」
ブルベイカーというのは、《渦》の活動を読むことに長けた中年のオッサンだ。
ストームライダーの間では有名なオッサンで、今は連隊という《渦》を討伐するための軍団に入隊して働いている。
爺さんの話を聞き終わったみんなの中から、どよめきのようなものが沸いた。
「そういえば、ベイルのとこの倅が……」
「最初に行った連中は、ブルベイカー以外みんな死んだて……」
「死にに行くようなもんだぜ」
漏れに聞こえれくる言葉から、連隊という場所は相当に苛酷な場所だということがわかった。
「まぁ聞け。もちろん、報酬は危険に見合った額が出るそうだ。家族持ちの奴なら、入隊後すぐに報酬が支払われる。その後も定期的に――」
その報酬金額を聞いた俺様は、飛び上がるような感覚に囚われた。
爺さんが口にした報酬の額は、父親の治療費とブレンダの嫁入り支度、それに家族全員の当面の生活、それら全てを賄ってもお釣りが出るくらいの金額だった。
「お、俺様行きます! 連隊、行きます!!」
爺さんの話を遮るように大声を出す。周囲のストームライダーが驚いたようにこっちを見た。
「おいおい、若造。お前みたいなヒヨッコに連隊の隊員なんて務めるわけないだろ」
「大体お前、そんなに大きくもない異形を相手にするので精一杯じゃねぇか」
俺様を知るオッサン達から野次が飛ぶ。だけど、そんなことは気にしてられない。
「静かに。お前さん、覚悟はあるんだな?」
爺さんが周囲を窘めて俺を真っ直ぐ見つめた。
「ある!」
俺様は爺さんの言葉に即答する。これで父親の怪我が治るまで、お袋やブレンダに苦労させずにすむ。
だったら、俺様は何だってできる。そんな気がした。
集会の後、爺さんはすぐに連隊の施設がある場所を教えてくれた。入隊には諸々の検査があるらしく、施設に行ったとしてもすぐに入隊が決める訳でもないらしいけど。
俺様に家族がいることについても、爺さんからブルベイカーに連絡をつける証明してもらうことになり、入隊が決まれば報酬の半分以上が家族に渡るよう手配してもらえた。
「ディノ、この中には我が家に代々伝わる守護の石の欠片が入っている。大事にするんだぞ」
連隊へ向かう前夜、父親が首下げ紐の付いた皮袋を俺様に寄越した。
皮袋の中には緑色をした宝石のような結晶が入っていて、これが守護の石というものらしい。
「お前が無事に連隊でやっていけるように、祈っている」
「頑張ってくるぜ!」
「……ディノ、死ぬなよ」
「俺様は父親の子だぜ? そう簡単に死んだりしないっての」
「そうか。うん、そうだな!」
そうした翌朝、俺様はお袋とブレンダに見送られて旅立った。
「兄さん、気をつけて」
「ブルベイカーさんに迷惑かけるんじゃないよ」
「わーかってるって。じゃ、行ってくるぜ!」
遠目からでもわかるほど、でっかい施設が見えてきた。
治療院のある町から数日の旅経た俺様を出迎えたのは、巨大な鉄の建造物と、これまたでかい頑丈そうな扉だった。
「はー、でっけえなー」
扉の前には、俺様と同じ入隊志願者が何人か集まっている。
みんな《渦》と戦う覚悟を決めた連中ばっかりだ。
早ければ今日中にでも、俺様はあの扉の向こうで隊員として徴用され、《渦》と戦うことになるんだろう。
これからどんな事が起きるのだろう。恐怖と期待が入り混じったような思いを抱きながら、俺様は志願者の列に並んだ。
「―了―」