「看我的!」
蕾塔邊發出有氣勢的喊聲,邊將巨大的冰塊抬起來。
「好厲害」
奧蘭邊感嘆邊看著蕾塔搬冰塊的樣子。奧蘭的背後,有一台為了載冰塊的拉車。
「如何,這樣夠嗎?還太少嗎?」
「工程師們說要我們多帶一些回去,拿多了的話,還可以用在別的東西上」
奧蘭跟阿貝爾正在算拉車上的冰塊數量。
「蕾塔,再三塊約兩手可以抱起來的量」
「好~那,接下來拿這邊好了!」
聽從阿貝爾的指示,蕾塔將眼前的冰塊拿起來放到拉車上。
要說為什麼要搬冰塊這件事,要從昨日早上開始說起。
|
明明不該會有氣候變化的聖女之館,不知道是這個世界的變化,還是聖女的心血來潮。
館邸的周圍,就像是被煮沸的水一樣熱。
「好~熱~啊~」
蕾塔邊吹著工程師做的簡易冷氣設備,邊抱怨著對炎熱的不滿。
「奧蘭,沒有辦法解決這個熱氣嗎?」
「即使是我這個偉大的大熊貓,對這種事也是沒轍」
沃蘭德向剛好經過的奧蘭問道,但是奧蘭也只能搖頭。
「工程師的機器也有極限,不找出什麼解決辦法的話……」
「這樣下去搞不好還會影響到探索,雖然流汗是好事,但是這有點……」
佛羅倫斯跟諾艾菈點頭同意。雖然諾艾菈看起來一臉事不關己的樣子,但好像也因為熱氣感到不舒服,眉頭都皺起來了。
「基本上我們也只能乖乖等熱天氣結束而已,但是這樣下去所有人都快受不了了」
「要是有什麼對策就好了」
瑪格莉特跟林奈烏斯怕冷氣機壞掉,在旁邊一邊盯著,一邊沉重地嘆了氣。
館邸周圍這幾日一直都這麼熱,所有人都煩惱至極。
|
「多做幾台冷氣機如何?」
「可以當作零件的機械不夠,無法再多做了」
帕茉向沃肯問道,但是沃肯也只能搖頭。
「井水也像煮沸的熱水一樣」
剛剛去井取水的傑多,拿了桶裝著像煮沸水一樣熱水回來。
「要是有冰的話,至少會舒服一點」
艾妲看著桶子中的熱水,也嘆了氣。
大家你一句我一句的提出不成意見的抱怨話之中,出葉小聲地說出冰的事,讓周圍的人眼睛一亮。
「這麼說來,提到冰,在我的國家有把冰塊削成碎冰,淋上甜甜的糖漿來吃的甜點」
「哦哦,那個記得是東方的點心吧,吃那個消暑剛剛好」
魯卡以前可能吃過,同意出葉的點子是好方法。
「但是,那要去找冰回來不是嗎?那是要去哪裡找啊?」
「之前,我們去過一座雪山。在那邊應該有結冰的泉水或是河川,可以從那邊取得冰塊」
艾伯李斯特迅速地回答了格雷高爾的問題。
「我叫引導者過來吧?只要說是探索時順便拿冰塊,她應該也OK吧」
「那就需要一台拉車了,我來準備吧」
利恩上二樓去叫引導者,奧蘭則是迅速去倉庫找拉車。
「那就需要讓冰塊不會融化的容器了,泰瑞爾來幫我一起做吧」
「知道了,但應該無法做出太精美的容器……」
由於溫度更加炎熱了,讓所有人都更加想知道東方甜點是什麼樣的東西,為了吃『用冰做的甜點』,大家都動起來了。
|
聽出葉跟魯卡說要怎麼削冰,然後製作道具的部隊。
同樣聽兩位的話,要做出甜糖漿的料理部隊。
然後由阿貝爾帶頭去收集冰塊的部隊。蕾塔也加入了。
因為蕾塔自己說她操控重力的能力,最適合去把冰塊搬到拉車上。
|
於是他們到達的,就是這座雪山。
整座山到山頂都覆蓋著雪,附近的河川跟泉水也都結凍了。不知道雪是從什麼時候開始下到這裡的,泉水結成的冰相當地厚。
奧蘭用牠的怪力將湖冰打碎,然後蕾塔將那些冰塊放到拉車上。就這樣,收集到足夠所有人吃的量。
「這樣夠了嗎?」
「有這些就夠了吧,再待在這裡太冷了,快點回去吧」
「知道了」
「好~」
跟去程一樣,由奧蘭來拉車,而引導者就坐在拉車的駕駛座上,這個畫面看起來,簡直像是童話故事的場景。
|
「我們回來了~!冰塊帶回來了哦~!」
「辛苦了,我們已經準備好了哦」
帶了好多冰塊回館邸後,穿著圍裙的露緹亞出來迎接他們。
露緹亞與幾位有做菜經驗的戰士們一起,由露緹亞指揮做好了要淋在冰上的糖漿。
工程師也依出葉的形容,做出了削冰的機器。
|
奧蘭將冰塊運到工程師們那邊,為了檢查冰塊裡是否有參雜什麼危險細菌之類的。
「好冰哦」
「動作快一點就好了」
「我應該準備厚一點的手套來的」
「…………」
工程師們檢查完之後,弗雷特里西、尤莉卡、阿奇波爾多、馬庫斯這幾位力氣比較大的人,再將冰塊運到削冰機器所在處。
「其實還蠻好削的耶」
「姊姊大人~這個好好玩哦~」
「吃起來會是什麼口感呢?」
搬來機器這裡的冰塊由娜汀、波蕾特、庫勒尼西來削。把冰削的像是雪一般的細,然後再將準備好的糖漿淋上去。
「不用做的那麼麻煩,只要用刨刀或是鑿子削……不就好了嗎」
「如果用人工削的話,好不容易帶回來的冰就會融化了,而且用機器削比較輕鬆嘛」
「是,沒錯……啦」
出葉沒想到竟然還特地做了削冰的機器,呆站在旁邊看的時候,艾依查庫拍了拍出葉的肩膀回答道。
|
館邸的庭院裡,立了好幾把很大的陽傘,讓庭院變成舒適的陰涼空間。戰士們都集合在陽傘下,似乎都期待著用冰做的甜點。
「這個吃了真的沒問題嗎?」
瑪麗妮菈看著削好的冰,抱有疑問的說出口。
畢竟原本是從魔物們走來走去的雪山搬來的,會擔心也是無可厚非的。
「瑪麗妮菈真是愛操心,沒問題啦,我們有好好地檢查過了,已經確定安全無虞了!」
「……由妳來說的話,我只會更加不安」
「要看成分表嗎?」
「嗯,讓我看看」
C.C.將冰塊的檢查結果顯示在裝置上,給瑪麗妮菈看。
「看來沒問題」
「我還真沒信用。因為是要給大家吃的,我明明有好好調查,看有沒有細菌或奇怪的東西混進去的說」
潔米看到瑪麗妮菈要看完C.C.給的成分表後才接受,不高興地嘟起了嘴。
「瑪麗妮菈,大家都這麼努力做了,不用那麼擔心。妳做事稍微太慎重了一些」
「既然蕾格烈芙大人都這麼說了……」
|
不理會工程師們的對話,蕾塔拿著容器裝了削好的冰,走到放糖漿的地方。
這裡準備了檸檬、蘋果、葡萄等果實做成的果醬排成一排,每個看起來都好好吃。
「要加哪一種好呢~?」
「冰還有很多,妳只要不要吃太多到吃壞肚子,可以多試試幾種啊?」
「再來一碗!多麼動聽的詞啊!那,我先吃這個吧!」
露緹亞給了正在煩惱的蕾塔建議,蕾塔聽到充滿吸引力的再來一碗,決定先吃吃看蘋果口味的。
「我加檸檬的好了,我要跟姐姐交換著吃」
史普拉多拿著淋了檸檬口味的冰,看起來很開心地快步往艾茵的方向走去。
「來,趁冰還沒融化之前趕快吃比較好哦」
「嗯,謝謝!」
蕾塔邊感受著容器越來越冰的觸感,邊離開放糖漿的地方。
而梅莉剛好與她擦身而過。
「露緹亞姊姊也趕快吃吧,我們收拾一下,一起吃吧?」
「我就待在這裡沒關係,梅莉應該想找威廉一起吃吧?」
「不,不要啦,我們三個人一起吃吧?」
「但是就沒有人看著這裡了」
「那,暫時由我們看著吧,對吧?布列依斯」
尤哈尼看到露緹亞好像很困擾,似乎就硬將在旁邊的布列依斯拉過來,所以布列依斯一臉不愉快的樣子。
「不,我……」
「布列依斯也說好呢」
「等等,別擅自──」
|
將四人的對話拋在腦後,蕾塔拿著容器走到可以坐的地方。
「嗯~好吃!」
削薄的冰跟糖漿融合,很像在喝冰涼的果汁一樣。
讓人可以忘記炎熱,等等向提出這個主意的出葉說聲謝謝吧。
就在蕾塔邊這麼想著,邊享受甜點的時候,米利安拿裝著葡萄色冰的容器來蕾塔旁邊坐下。
「蕾塔,我可以坐這裡嗎?」
「爸爸!」
「搬冰辛苦了」
米利安大大的手撫摸著蕾塔的頭,蕾塔感到很害羞、又很開心。
「嘿嘿嘿,我跟你說哦,雪山很厲害耶!」
「哦,怎麼個厲害法?」
米利安平常都跟羅索以及瑪格莉特一起,不知道在做些什麼。所以父女之間沒什麼機會說話,而且以前蕾塔的母親常常告訴她,「不可以妨礙爸爸的工作以及行動」。
蕾塔好久沒有跟爸爸說話了,非常開心。
說完雪山的冒險之後,蕾塔也繼續跟米利安說些閒話家常的事。
|
「─完─」
「納涼大作戦」
「よいしょー!」
レタの威勢のいい掛け声と共に、巨大な氷塊が持ち上がる。
「すごいな」
オウランはレタの様子を感嘆しながら見つめる。オウランの背後には、氷塊を持ち帰るための大きな荷車があった。
「どうだろう。これくらいで足りるか? それともまだ少ないか?」
「エンジニアの連中が言うより多めに持ち帰ろう。余ったら何か別のことに使えばいい」
オウランとアベルが荷車に積まれていく氷塊の量を確認していく。
「レタ、あと三つ、一抱えくらいの氷を確保してくれ」
「はーい。じゃあ、次はここかな!」
アベルの指示に従い、レタは目の前の氷塊を持ち上げて荷車に乗せていく。
何故氷塊を運ぶことになったのかというと、話は前日の昼に遡る。
気候の変化がない筈の聖女の館。だが、世界の気まぐれか、はたまた聖女の気まぐれか。
今の館の周囲は、茹だるような暑さに包まれていた。
「あーつーいー」
館の大広間でエンジニアが作った即席の冷風設備に当たりながら、レタは暑さへの不満を口にする。
「オウラン、この暑さは何とかならないの?」
「偉大な大熊猫のオレでも、これはどうにもならん」
ヴォランドが通り掛かったオウランに尋ねるも、あっさりと首を振られる始末。
「エンジニアの機械にも限界がある、何とかしたいところだな……」
「このままだと探索にも悪影響を及ぼしかねないわね。汗を掻くことはイイことだけど、ちょっとこれはね……」
フロレンスとノエラが頷きあう。ノエラは幾分か涼しそうな顔をしているが、暑さが不快であることには変わりないらしく、眉を顰めていた。
「基本的には暑さが過ぎ去るのを待つしかないけれど、これではその前に全員が参ってしまうわ」
「何かいい対策案があればいいんだけどねぇ」
冷風設備が止まらないように見ていたマルグリッドとリンナエウスも、重い溜息を吐く。
館周辺の暑さはここ数日続いており、全員が困り果てているのだった。
「冷風設備を増やせないんですか?」
「部品になる機械が足らない。これ以上増やすことは無理だろう」
パルモがウォーケンに尋ねるも、首を横に振るだけであった。
「井戸の水もお湯みたいだよ」
水を求めて井戸へ行っていたジェッドが、湯のようになった水を桶に入れて戻ってきた。
「氷でもあれば、まだ少しはましになるんだけど」
桶の中の湯を見て、エイダも溜息を吐く
ああでもないこうでもないと意見のような愚痴のような話が飛び交う最中、イデリハがふと呟いた言葉に、周囲の目が輝いた。
「そうじゃ。氷といえば、オイの国に氷を削って甘い蜜をば掛けて食べる甘味があるがよ」
「おお、確か東方の銘菓だったな。あれは涼を取るに丁度よい」
かつて食べたことがあるのか、リュカも名案だと言わんばかりだ。
「でも、氷を取ってこなければいけないのでは? どこにそんなものがあるんでしょう?」
「以前、雪山に足を踏み入れたことがある。あそこに凍った泉か川があった筈だから、氷ならそこで手に入るだろう」
グレゴールの疑問に、エヴァリストがすかさず返す。
「導き手を呼んで来るか。探索のついでと言えば、彼女もOKするだろう」
「なら、荷車が必要だな。用意しよう」
レオンが導き手を呼びに二階へ行き、オウランがいそいそと倉庫へ荷車を探しに行く。
「氷が溶けないようにする入れ物が必要だねぇ。タイレル、作るのを手伝って」
「わかりました。あまり大掛かりなものは作れないと思いますが……」
暑さを凌ぐため、更に東方の甘味がどんなものなのか興味が湧いた全員が、『氷を使った甘味』とやらを食すべく行動を開始する。
イデリハとリュカの証言からどういう風に氷を削っていたのかを聞き出し、道具を製作する部隊。
同じく二人の証言から、甘い蜜がどういったものかを再現する調理部隊。
そして、アベルの先導で氷を集めてくる部隊。レタはそこに組み込まれた。
重力を操る能力が氷を荷車に乗せるのに適しているのではと、自ら申告したのだ。
そうこうして辿り着いたのが、この雪山であった。
山の頂上までが雪で覆われ、近くの川と泉は凍り付いていた。いつから吹雪に晒されていたのか、泉の氷はかなり分厚く張っているようだった。
オウランの怪力で泉の氷を割り、レタがそれを荷車に積んでいく。そうやって、皆が食すには十分な量の氷が集まった。
「足りそう?」
「これだけあれば大丈夫だろう。これ以上は身体が冷えてしまう。早く戻るぞ」
「わかった」
「はーい」
行きと同じようにオウランが荷車を引く。荷車の御者席には導き手がちょこんと座っており、その絵面はさながら、御伽噺の一場面のように見えた。
「ただいまー! もってきたよー!」
「お疲れ様、準備はできてるぞ」
いくつもの氷塊を館に持ち帰ると、エプロン姿のルディアが出迎えた。
ルディアは調理経験のある戦士達と共に、氷に掛ける蜜作りの陣頭指揮を任されている。
エンジニアの面々はイデリハの証言を元に、氷を削るための機械を完成させていた。
オウランはエンジニア達のところへ荷車を運ぶ。氷塊に危険な細菌などが混入していないかを検査するためだ。
「冷てぇなあ」
「早く運んでしまえば済む話です」
「もう少し厚手の手袋を選ぶべきだったか」
「…………」
エンジニアによる検査が終わったものを、フリードリヒやユーリカ、アーチボルト、マックスといった、腕に覚えのある面々が機械のある場所へ運ぶ。
「結構簡単に削れるものだね」
「ねえさまー、これ面白いよー」
「どんな食感なんだろう?」
運ばれた氷はナディーンやポレット、クレーニヒ達の手によって削られ、ふわふわとした雪のようなものとなる。それに用意された蜜を掛けるのだ。
「そいな面倒なことをせんでも、ノミなりピックなりで削れば済む話……だったんじゃが」
「人の手でやってたら折角の氷が溶けちまうし、こっちの方が楽でいいぜ」
「まあ、そう……だな」
まさか氷塊を削る機械まで作ってしまうとは思っていなかったらしく、呆然と機械を見るイデリハ。その肩をアイザックがぽんと叩いた。
館の庭にはいくつかの大きなパラソルが立て掛けられ、心地良さげな日陰を作っている。パラソルの下にはすでに戦士達が集まっており、氷を使った甘味を待ち望んでいるようだった。
「本当に食べても問題はないのか?」
削り氷を見たマリネラが不審そうな声を漏らす。
元は魔物が闊歩する雪山から運んできたものである。心配するのも尤もであった。
「マリネラは心配性だネェ。大丈夫、私達がちゃーんと検査して、安全だってことは確認済みだヨ!」
「……貴女が発言すると、余計に不安が募るのだが」
「成分表、見ますか?」
「そうだな。見せてくれ」
すかさずC.C.がデバイスに氷塊の検査結果を表示させる。
「問題はなさそうだな」
「信用ないなァ。みんなの口に入るんだから、細菌も含め、変なものが入っていないか、ちゃんと調べたのにぃー」
C.C.の示した成分表をみてようやっと納得したマリネラに、ジェミーは口を尖らせる。
「皆がこうまでしてくれているのだ、心配は無用だろう。マリネラ、お前は少し慎重に行動しすぎる」
「レッドグレイヴ様がそう仰るのならば……」
エンジニア達のやり取りを横目に、レタも器に盛られた削り氷を受け取ると、蜜が並ぶ場所へと移動した。
そこには檸檬や林檎、葡萄などの果実をジャム状にした密が並んでおり、どれもおいしそうだ。
「どれにしよっかなー?」
「まだまだ氷はいっぱいあるから、おなかを壊さない程度におかわりして、色んな蜜で食べてみたらどうだ?」
「おかわり! ステキな言葉! じゃあ、まずはコレにするね!」
悩むレタにルディアが提案する。おかわりという魅力的な響きを聞いて、レタはひとまず林檎の蜜を氷に掛けた。
「ボクは檸檬にしたよ。お姉ちゃんと一口ずつ交換するんだー」
檸檬の蜜が掛かった器を持って、スプラートが嬉しそうにアインのところへ急ぎ足で歩いていく。
「さ、氷が溶けないうちに食べた方がいいぞ」
「うん、ありがと!」
器の温度がどんどん冷えていくのを感じながら、レタはその場を離れる。
ちょうど入れ違いに、メリーがやって来た。
「ルディアお姉さんも、ですわ。少し片付けて一緒に食べましょ?」
「私はここでいいよ。メリーはヴィルヘルムと一緒に食べるんだろう?」
「ううん、ダメです。三人で食べましょ?」
「だけど、ここを見てる人がいなくなるぞ」
「じゃあ、しばらくは俺達がここを見ててあげるよ。なー、ブレイズ」
困ったようなルディアに声を掛けたのはユハニであった。隣には引っ張られてきたらしいブレイズが不満そうに立っている。
「いや、私は……」
「ブレイズもいいってさ」
「待て、勝手に——」
四人の会話を背後に、レタは器を持って座れそうなところに移動した。
「んー、おいしー!」
薄く削られた氷は甘い蜜と合わさり、さながらよく冷えたジュースを飲んでいるかのようだった。
氷の冷たさが暑さを忘れさせてくれる。美味しい提案をしてくれたイデリハにはあとでお礼を言おう。
そんなことを思いながら甘味に舌鼓を打っていると、ミリアンが葡萄色の蜜が掛かった器を持ってレタの隣に座った。
「レタ、隣いいか?」
「パパ!」
「よく頑張ったな」
大きな手で頭を撫でられ、レタは照れくさいような、そして嬉しいような気持ちが沸き上がった。
「えへへ。あのね、雪山すごかったんだよ!」
「ほう、どんな風にすごかったんだ?」
ミリアンはロッソやマルグリッドと何かをしていることが多いため、親子の会話をすることは滅多にない。かつて母親に「父の仕事や行動を邪魔してはいけない」と言い聞かせられていたということもある。
久しぶりの父親との会話はとても楽しい。
雪山での冒険談を語り終えると、レタは他愛のない話を続けるのだった。
「—了—」
「よいしょー!」
レタの威勢のいい掛け声と共に、巨大な氷塊が持ち上がる。
「すごいな」
オウランはレタの様子を感嘆しながら見つめる。オウランの背後には、氷塊を持ち帰るための大きな荷車があった。
「どうだろう。これくらいで足りるか? それともまだ少ないか?」
「エンジニアの連中が言うより多めに持ち帰ろう。余ったら何か別のことに使えばいい」
オウランとアベルが荷車に積まれていく氷塊の量を確認していく。
「レタ、あと三つ、一抱えくらいの氷を確保してくれ」
「はーい。じゃあ、次はここかな!」
アベルの指示に従い、レタは目の前の氷塊を持ち上げて荷車に乗せていく。
何故氷塊を運ぶことになったのかというと、話は前日の昼に遡る。
気候の変化がない筈の聖女の館。だが、世界の気まぐれか、はたまた聖女の気まぐれか。
今の館の周囲は、茹だるような暑さに包まれていた。
「あーつーいー」
館の大広間でエンジニアが作った即席の冷風設備に当たりながら、レタは暑さへの不満を口にする。
「オウラン、この暑さは何とかならないの?」
「偉大な大熊猫のオレでも、これはどうにもならん」
ヴォランドが通り掛かったオウランに尋ねるも、あっさりと首を振られる始末。
「エンジニアの機械にも限界がある、何とかしたいところだな……」
「このままだと探索にも悪影響を及ぼしかねないわね。汗を掻くことはイイことだけど、ちょっとこれはね……」
フロレンスとノエラが頷きあう。ノエラは幾分か涼しそうな顔をしているが、暑さが不快であることには変わりないらしく、眉を顰めていた。
「基本的には暑さが過ぎ去るのを待つしかないけれど、これではその前に全員が参ってしまうわ」
「何かいい対策案があればいいんだけどねぇ」
冷風設備が止まらないように見ていたマルグリッドとリンナエウスも、重い溜息を吐く。
館周辺の暑さはここ数日続いており、全員が困り果てているのだった。
「冷風設備を増やせないんですか?」
「部品になる機械が足らない。これ以上増やすことは無理だろう」
パルモがウォーケンに尋ねるも、首を横に振るだけであった。
「井戸の水もお湯みたいだよ」
水を求めて井戸へ行っていたジェッドが、湯のようになった水を桶に入れて戻ってきた。
「氷でもあれば、まだ少しはましになるんだけど」
桶の中の湯を見て、エイダも溜息を吐く
ああでもないこうでもないと意見のような愚痴のような話が飛び交う最中、イデリハがふと呟いた言葉に、周囲の目が輝いた。
「そうじゃ。氷といえば、オイの国に氷を削って甘い蜜をば掛けて食べる甘味があるがよ」
「おお、確か東方の銘菓だったな。あれは涼を取るに丁度よい」
かつて食べたことがあるのか、リュカも名案だと言わんばかりだ。
「でも、氷を取ってこなければいけないのでは? どこにそんなものがあるんでしょう?」
「以前、雪山に足を踏み入れたことがある。あそこに凍った泉か川があった筈だから、氷ならそこで手に入るだろう」
グレゴールの疑問に、エヴァリストがすかさず返す。
「導き手を呼んで来るか。探索のついでと言えば、彼女もOKするだろう」
「なら、荷車が必要だな。用意しよう」
レオンが導き手を呼びに二階へ行き、オウランがいそいそと倉庫へ荷車を探しに行く。
「氷が溶けないようにする入れ物が必要だねぇ。タイレル、作るのを手伝って」
「わかりました。あまり大掛かりなものは作れないと思いますが……」
暑さを凌ぐため、更に東方の甘味がどんなものなのか興味が湧いた全員が、『氷を使った甘味』とやらを食すべく行動を開始する。
イデリハとリュカの証言からどういう風に氷を削っていたのかを聞き出し、道具を製作する部隊。
同じく二人の証言から、甘い蜜がどういったものかを再現する調理部隊。
そして、アベルの先導で氷を集めてくる部隊。レタはそこに組み込まれた。
重力を操る能力が氷を荷車に乗せるのに適しているのではと、自ら申告したのだ。
そうこうして辿り着いたのが、この雪山であった。
山の頂上までが雪で覆われ、近くの川と泉は凍り付いていた。いつから吹雪に晒されていたのか、泉の氷はかなり分厚く張っているようだった。
オウランの怪力で泉の氷を割り、レタがそれを荷車に積んでいく。そうやって、皆が食すには十分な量の氷が集まった。
「足りそう?」
「これだけあれば大丈夫だろう。これ以上は身体が冷えてしまう。早く戻るぞ」
「わかった」
「はーい」
行きと同じようにオウランが荷車を引く。荷車の御者席には導き手がちょこんと座っており、その絵面はさながら、御伽噺の一場面のように見えた。
「ただいまー! もってきたよー!」
「お疲れ様、準備はできてるぞ」
いくつもの氷塊を館に持ち帰ると、エプロン姿のルディアが出迎えた。
ルディアは調理経験のある戦士達と共に、氷に掛ける蜜作りの陣頭指揮を任されている。
エンジニアの面々はイデリハの証言を元に、氷を削るための機械を完成させていた。
オウランはエンジニア達のところへ荷車を運ぶ。氷塊に危険な細菌などが混入していないかを検査するためだ。
「冷てぇなあ」
「早く運んでしまえば済む話です」
「もう少し厚手の手袋を選ぶべきだったか」
「…………」
エンジニアによる検査が終わったものを、フリードリヒやユーリカ、アーチボルト、マックスといった、腕に覚えのある面々が機械のある場所へ運ぶ。
「結構簡単に削れるものだね」
「ねえさまー、これ面白いよー」
「どんな食感なんだろう?」
運ばれた氷はナディーンやポレット、クレーニヒ達の手によって削られ、ふわふわとした雪のようなものとなる。それに用意された蜜を掛けるのだ。
「そいな面倒なことをせんでも、ノミなりピックなりで削れば済む話……だったんじゃが」
「人の手でやってたら折角の氷が溶けちまうし、こっちの方が楽でいいぜ」
「まあ、そう……だな」
まさか氷塊を削る機械まで作ってしまうとは思っていなかったらしく、呆然と機械を見るイデリハ。その肩をアイザックがぽんと叩いた。
館の庭にはいくつかの大きなパラソルが立て掛けられ、心地良さげな日陰を作っている。パラソルの下にはすでに戦士達が集まっており、氷を使った甘味を待ち望んでいるようだった。
「本当に食べても問題はないのか?」
削り氷を見たマリネラが不審そうな声を漏らす。
元は魔物が闊歩する雪山から運んできたものである。心配するのも尤もであった。
「マリネラは心配性だネェ。大丈夫、私達がちゃーんと検査して、安全だってことは確認済みだヨ!」
「……貴女が発言すると、余計に不安が募るのだが」
「成分表、見ますか?」
「そうだな。見せてくれ」
すかさずC.C.がデバイスに氷塊の検査結果を表示させる。
「問題はなさそうだな」
「信用ないなァ。みんなの口に入るんだから、細菌も含め、変なものが入っていないか、ちゃんと調べたのにぃー」
C.C.の示した成分表をみてようやっと納得したマリネラに、ジェミーは口を尖らせる。
「皆がこうまでしてくれているのだ、心配は無用だろう。マリネラ、お前は少し慎重に行動しすぎる」
「レッドグレイヴ様がそう仰るのならば……」
エンジニア達のやり取りを横目に、レタも器に盛られた削り氷を受け取ると、蜜が並ぶ場所へと移動した。
そこには檸檬や林檎、葡萄などの果実をジャム状にした密が並んでおり、どれもおいしそうだ。
「どれにしよっかなー?」
「まだまだ氷はいっぱいあるから、おなかを壊さない程度におかわりして、色んな蜜で食べてみたらどうだ?」
「おかわり! ステキな言葉! じゃあ、まずはコレにするね!」
悩むレタにルディアが提案する。おかわりという魅力的な響きを聞いて、レタはひとまず林檎の蜜を氷に掛けた。
「ボクは檸檬にしたよ。お姉ちゃんと一口ずつ交換するんだー」
檸檬の蜜が掛かった器を持って、スプラートが嬉しそうにアインのところへ急ぎ足で歩いていく。
「さ、氷が溶けないうちに食べた方がいいぞ」
「うん、ありがと!」
器の温度がどんどん冷えていくのを感じながら、レタはその場を離れる。
ちょうど入れ違いに、メリーがやって来た。
「ルディアお姉さんも、ですわ。少し片付けて一緒に食べましょ?」
「私はここでいいよ。メリーはヴィルヘルムと一緒に食べるんだろう?」
「ううん、ダメです。三人で食べましょ?」
「だけど、ここを見てる人がいなくなるぞ」
「じゃあ、しばらくは俺達がここを見ててあげるよ。なー、ブレイズ」
困ったようなルディアに声を掛けたのはユハニであった。隣には引っ張られてきたらしいブレイズが不満そうに立っている。
「いや、私は……」
「ブレイズもいいってさ」
「待て、勝手に——」
四人の会話を背後に、レタは器を持って座れそうなところに移動した。
「んー、おいしー!」
薄く削られた氷は甘い蜜と合わさり、さながらよく冷えたジュースを飲んでいるかのようだった。
氷の冷たさが暑さを忘れさせてくれる。美味しい提案をしてくれたイデリハにはあとでお礼を言おう。
そんなことを思いながら甘味に舌鼓を打っていると、ミリアンが葡萄色の蜜が掛かった器を持ってレタの隣に座った。
「レタ、隣いいか?」
「パパ!」
「よく頑張ったな」
大きな手で頭を撫でられ、レタは照れくさいような、そして嬉しいような気持ちが沸き上がった。
「えへへ。あのね、雪山すごかったんだよ!」
「ほう、どんな風にすごかったんだ?」
ミリアンはロッソやマルグリッドと何かをしていることが多いため、親子の会話をすることは滅多にない。かつて母親に「父の仕事や行動を邪魔してはいけない」と言い聞かせられていたということもある。
久しぶりの父親との会話はとても楽しい。
雪山での冒険談を語り終えると、レタは他愛のない話を続けるのだった。
「—了—」