連隊的訓練設施裡傳出男子們朝氣蓬勃的聲音。
雨果混在從世界各地召集來的強者們裡,勉強地跟上訓練。
「休、休息一下……」
「講什麼夢話。繼續!」
「欸欸欸欸!饒了我吧~」
「不要給我說這種喪氣話!」
軍人資歷很長的豪斯哈特對著累癱的雨果怒斥。
對於至今過著享樂主義生活的雨果來說,體力方面相當地弱,於是才會給他這個特別的強化訓練。
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地獄般的特別訓練結束後,雨果筋疲力盡搖搖晃晃地走向食堂。今天除了這個特別訓練以外,晚上開始還要進行全體的演習。雨果的心情十分地沈重。
「唉~,真是的。不該被高額報酬給騙了……」
雨果看著食堂所提供的食物,深深地嘆了一口氣。
雨果一邊撕開麵包,一邊想起來到這裡的二個月前,與索克的對話。
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在審判結束後,等待移送監獄服刑前。索克出現在雨果面前,像是要評價雨果般上下打量,點了個頭。
「嗯,還這麼年輕,真可惜啊」
「嗯,就我們的立場來說,也希望能讓這傢伙改邪歸正」
索克與華茲,在雨果的面前毫不掩飾地說著。
「那麼,你是叫雨果對吧。我帶來了個好消息給你」
「啊,啥……?」
雨果還以為,他們會狠狠地逼問被塔斯卡騙的事。
本來已經做好心理準備的雨果,一臉跟不上狀況的看向索克。
「我們正在尋找從《渦》手中拯救世界的人材」
「蛤?渦是那個渦嗎!?好痛!」
雨果突然的大聲說道,華茲用力地拍打了他的背。
「仔細聽索克說」
「哈哈哈。會驚訝也是正常的。但是,雨果,我再問你一次,你願不願意跟我們一起去拯救世界?」
雨果用著不可置信的眼神看著索克,覺得這傢伙對著自己這個不起眼的犯罪者在說什麼呀。
「我,接下來要被送往監獄了……」
「如果你加入我們的話,你的刑罰將會被免除。雖然會讓你做些有點辛苦的肉體勞動,但是食衣住將會受到保障,還可定期領到報酬」
索克拿出來的一張紙上,記載了生活在貧民區裡的雨果從沒看過的高額金錢。
「喂,喂!這是真的嗎?」
對接下來等著的只有無聊監獄生活的雨果來說,可以免除刑罰還可以獲得這樣的報酬,顯得格外誘人。
「不過,我們也不會勉強你,你覺得如何?」
「去!我去,我去我去!!」
雨果聽了索克說的話後,用力地點頭表示。
就這樣,雨果便加入了名為連隊的組織。
|
在連隊裡等待著雨果的是,紀律的生活加上嚴格的訓練,以及雨果不擅長的念書。
而且,像豪斯哈特那種前古朗德利尼亞的軍人非常嚴格,只要有那麼一丁點會擾亂紀律的事,就會絕不客氣地給予鐵拳制裁。因為不想受到這樣的制裁,雨果不得不改掉至今為了享樂而目無法紀的生活習慣。
雨果不止一、二次產生想逃跑的念頭。但是,雨果最後還是沒有逃跑,因為在貧民窟的生活遠遠比不上在連隊生活來得的富足。
明明以為自己早已習慣貧民窟的生活,結果還是想起了曾經正經生活過的孩童時期。
食衣住行都富足,而且能定期拿到報酬的生活。雨果最後還是無法放棄這樣的生活。
|
「又被豪斯哈特訓了嗎?辛苦啦」
雨果邊嘆息邊吞下食物之後,丹尼爾過來拍了下肩。轉頭一看,是丹尼爾與克勞斯。
看到他們托盤上的碗是空的,大概是吃完飯正要將托盤拿去回收處吧。
「這傢伙在早上的課堂上打瞌睡了。訓練大概連同處罰的份也一起了吧」
「喂,你看到我睡著的話就把我叫醒呀。克勞斯的位子不是在我的正後方嗎」
「哈哈。如果你要認真上課的話,我可以考慮看看哦?」
「真過份」
這兩位和雨果是差不多同時期入隊的,一起接受入隊的說明會。加上訓練跟課堂也常常都是一起的,雨果便不知不覺間與這兩人共同行動了。
「喂,不快點吃的話,會趕不上夜間訓練」
「啊,糟!」
「那,我們就先走啦」
「嗯嗯,等會兒見」
雨果看都沒看離去的兩人,趕緊把剩下的東西吃完。
丹尼爾與克勞斯,與以前那些總是趁其不備搶功的貧民窟伙伴不同,表裡如一地對待雨果。
由於成長環境的不同讓雨果與他們的行為舉止有差異,但是雨果很感謝那兩人還是願意與自己往來。
|
某日,在工程師的指導下,進行剛完成的新型突擊步槍使用訓練。
放在各隊員眼前的,是已分解好的突擊步槍。
「接下來,開始說明新型突擊步槍的相關構成」
因為使用了新的開發技術,因此與目前使用的突擊步槍操作方法完全不同,變得較為複雜。而且,工程師絕不會示範給人看。
以往總是在一旁嘮嘮叨叨的前輩隊員們,這次也都和新進隊員相同立場。
大型螢幕上顯示著說明圖。上面概要說明了新的突擊步槍與目前為止使用的突擊步槍有什麼不同。
解說了一遍之後,接下來就是組裝與實射訓練。
工程師並沒有說明如何組裝,只說了「試試看吧」而已。
「從組裝好的人開始依序進行試射」
工程師的一聲令下,全體開始了組裝訓練。
|
「好了,這樣應該可以了」
雨果超越米利安、海姆霍茲這些創設初期的隊員,比任何人都還快地把突擊步槍組裝好,將槍口朝著標靶射擊。
新型的突擊步槍衝擊力變小,即使是身型較小的雨果也沒有受到反作用力的衝擊而向後仰。
「太厲害了……。和之前的破爛完全不同」
雨果一個人開心地反覆試射中,周圍的隊員們喧鬧了起來。
「哦,真意外呀」
「這就是所謂的,人各有所長吧」
在前輩隊員們的瞠目結舌下,雨果得意洋洋地反覆試射。
「喂,別輸給瘦排骨啊」
「那傢伙做得到,我們不可能做不到!」
「看來,不快點的話,我們也會輸給新人們了」
「就這點事被看不起的話可不行啊」
大家為了不想輸給雨果,重新開始組裝突擊步槍。隊員全員互相競爭,接連組裝好開始試射。
|
「你竟然能夠聽得懂那種說明啊」
訓練結束後,丹尼爾佩服地向雨果問道。
「嗯~雖然工程師沒有詳細說明,但是槍本身就跟普通的突擊步槍很像啊?」
「真厲害,我完全搞不懂」
雨果在貧民窟犯罪的時候,常常使用聽說是非常久以前,薄暮時代遺產的槍枝。那些東西當然沒有附上什麼說明書,要怎麼修理、要怎麼組裝、總算是沒發生膛炸的使用著。
沒想到犯罪時練出來的技術,會以這種形式發揮功效。
但是雨果對丹尼爾跟克勞斯說出自己以前的事有所抵抗。
畢竟一開始相遇的時候,又不是以「我以前是貧民窟的罪犯」來介紹自己的。在連隊中知道自己過去的,大概也只有索克了。
「我以前也常遇過一樣的狀況,所以是習慣了啦,習慣」
「是做機器技師類的工作嗎?」
「原來如此,所以很習慣看說明圖跟很擅長使用機器」
聽到克勞斯說的話,丹尼爾點頭表示同意。
「嗯……差不多吧」
雨果稍微煩惱了一下,含糊的答覆著。
心理就是覺得,不想讓這兩人知道自己過去曾經是罪犯。
雖然將來可能會在哪裡曝露,但是到時再說吧。
雨果內心想著,至少現在,還不想讓他們對自己失望。
|
「─完─」
3374年 「仲間」
連隊の訓練施設に、威勢のいい男達の声が響く。
ヒューゴは世界各地から集められた強者達に混じって、どうにかこうにか訓練をこなしていた。
「ちょ、ちょっと休憩……」
「寝惚けたことを言うんじゃない。続けるぞ!」
「ひえええ! 勘弁してくれー」
「弱音を吐くな!」
軍歴の長いハウスホッターが、へたり込むヒューゴに怒声を飛ばす。
今まで享楽的に生きてきたヒューゴは、体力面にかなりの不安を抱えていた。それ故の、特別な強化訓練であった。
地獄のような特別訓練が終了し、疲労でふらふらしながら食堂へと向かう。今日はこの特別訓練に加えて、夜からは全体で行う演習がスケジュールされている。ヒューゴの気は、それはそれは重かった。
「はー、ったく。高い報酬に釣られるんじゃなかったぜ……」
食堂で提供された食事を前に、ヒューゴは大きく溜息を吐いた。
ひとまずパンを千切りながら、ここに来る二月ほど前の、ソングとのやり取りを思い出していた。
裁判が結審し、あとは刑務所への移送を待つだけだった。そんなヒューゴの前に現れたソングは、ヒューゴを値踏みするように見つめ、一つ頷いた。
「ふむ。まだ若いのに、勿体ない話だね」
「ええ。我々としても、こいつには何とか更正してもらいたいと思っとりまして」
ソングとワッツは、ヒューゴを目の前に言いたい放題だ。
「さて、ヒューゴ君といったね。君に良い話を持ってきた」
「は、はあ……?」
てっきり、タスカーに騙された事件について容赦ない尋問か何かが待ち構えていると思っていた。
身構えていたヒューゴは、拍子抜けしたようにソングに顔を向けた。
「我々は世界を《渦》から救うための人材を探していてね」
「は? 渦ってあの渦かよ!? 痛ってえ!」
思わず声を上げる。ワッツが思いっきり背中を叩いてきたのだ。
「ソングさんの話をちゃんと聞くんだ」
「ははは。まあ、驚くのも無理はない。でだ、ヒューゴ君、改めて聞くが、我々と一緒に世界を救う気はないかね?」
ヒューゴは信じられないものを見る目つきでソングを見た。こいつはちっぽけな犯罪者の自分に何を言ってるんだと思った。
「オレ、これから刑務所に行くんだけど……」
「我々と共に来るのなら、君の刑事罰は免除される。少々きつい肉体労働をやってもらわねばならんが、衣食住は保障するし、報酬も定期的に出す」
見せられた一枚の紙には、スラム暮らしではお目にかかれないような金額が記載されていた。
「お、おい! これ本当か?」
つまらない刑務所暮らしが待ち受けていたヒューゴにとって、刑罰の免除とこの報酬金額は桁外れに魅力的であった。
「まぁ、無理にとは言わんが、どうする?」
「行く! 行きます。行きます行きます!!」
ソングの言葉に、ヒューゴは勢いよく首を縦に振った。
こうして、ヒューゴは連隊と呼ばれる組織に入隊したのだった。
連隊でヒューゴを待ち受けていたのは、規則正しい生活に厳しい訓練、そして苦手な勉学であった。
しかもハウスホッターのような元グランデレニア軍人は非常に厳しく、少しでも規律を乱そうものなら容赦のない鉄拳制裁が降ってくる。その制裁を受けたくないがために、ヒューゴは今までの享楽的でアウトローな生活を改めざるをえなかった。
脱走を思い立ったことも一度や二度ではなかった。が、それでもヒューゴは逃げ出さなかった。それは、連隊での生活がスラムでの暮らしとは比べ物にならないほどに豊かだったからだ。
薄汚いスラムでの貧乏暮らしがすっかり染み付いていた筈だが、どうやらまともだった子供の頃が思い出されてしまったらしい。
衣食住が満たされ、定期的に報酬まで貰える生活。そんな生活を手放す気には到底なれなかった。
「またハウスホッターにしごかれてたのか? お疲れさん」
溜息と一緒に食事を胃袋に流し込んでいると、ダニエルに肩を叩かれた。振り向くと、ダニエルとクラウスの二人がいた。
トレーに乗っている食器が空なところを見ると、食事が終わって食器の返却に向かっているのだろう。
「こいつは午前の座学で寝てたからな。その分の罰も含まれたんだろうさ」
「げっ。見てたんなら起こせよ。クラウスはオレの真後ろにいたじゃねえか」
「ははっ。真面目に講習を受けることをお前が覚えたら、考えてもいいかな?」
「ひっでえ」
この二人はヒューゴとほぼ同時期に入隊しており、入隊時の説明を一緒に受けた仲でもあった。それもあって、訓練や座学では何かと一緒になることが多く、いつの間にかヒューゴはこの二人と行動を共にするようになっていた。
「おい、早く食っちまわないと、夜間訓練に間に合わなくなるぞ」
「うわ、いっけね!」
「じゃあ、俺達は先に行ってるからな」
「ああ、また後でな」
立ち去る二人を見送るでもなく、ヒューゴは急いで食事を再開する。
ダニエルとクラウスは、出し抜きや抜け駆けが当然だったスラムの連中とは違い、裏表なくヒューゴに接してくれる。
育った環境の違いに少しだけ卑屈になりながらも、二人が自分とつるんでくれることに感謝するヒューゴであった。
ある日、エンジニアの指導の下、完成したばかりの新型アサルトライフルの取り扱い訓練が実施された。
各隊員の目の前には、分解された状態のアサルトライフルが置かれている。
「では、新型アサルトライフルの機構に関する説明を始める」
新しく開発された技術を使用しているために、今までのアサルトライフルとは扱い方が全く異なり、複雑になっている。その上、エンジニアは決して手本を見せようとしない。
いつもはガミガミと小言ばかりの先輩隊員達も、今回ばかりは新米隊員と同じ立場だ。
大型モニターに説明図が映し出された。今までのアサルトライフルと何が変わったかの概要が説明される。
そして一通りの説明が終了すると、今度は組み立てと実射訓練となる。
エンジニアは組み立てに関する説明を行わない。ただ「やってみろ」と言うだけであった。
「組み立てが終わった者から順に試射を開始せよ」
エンジニアの言葉と共に、一斉に組み立て訓練が開始された。
「よっし、これでいけるだろ」
ミリアンやヘルムホルツら創設初期の隊員が手間取っているのを尻目に、ヒューゴは誰よりも早くアサルトライフルを組み立てると、標的に向かってその銃口を向けた。
新型のアサルトライフルは衝撃も少なく、小柄なヒューゴでも反動で仰け反るようなことはない。
「すっげえ……。前のボロとは全然違う」
ヒューゴが一人嬉々として試射を繰り返す中、周囲の隊員達は俄にざわついていた。
「おい、意外だな」
「どんな奴でも得意な分野がある、ということか」
先輩格の隊員達が目を見張る中、ヒューゴは意気揚々と試射を繰り返す。
「おい、ヒョロガリに負けてらんねーぞ」
「あいつにできて俺らにできねえなんぞ、有り得ねえ!」
「こりゃ、急がないと俺達も新人共に負けるぞ」
「おっと、こんなことでナメられちゃ敵わん」
皆、ヒューゴに負けていられないとばかりにアサルトライフルの組み立てを再開する。隊員全員が競い合い、続々と組み立てを終わらせて試射が始まった。
「あの説明でよくわかったな」
訓練が終わった後、ダニエルが感心したように尋ねてきた。
「んー、エンジニアは詳しく説明しなかったけど、モノ自体はごく普通のアサルトライフルと似たような感じだったぞ?」
「凄いな。俺はさっぱりわかんなかったぜ」
スラムにいた頃は犯罪絡みでメチャクチャ古い、薄暮の時代の遺産ともいえる銃を扱うことも珍しくなかった。当然、そんなブツに丁寧な説明図が付いている訳もない。どこを修理すればいいのか、どう組み立てていいのかすらわからないものを、何とか暴発しないように扱っていたのだ。
犯罪で鍛え上げて身に付けた技術だった。それがどういう訳か、こんな形で身を助けるとは。
だが、そういう過去のことをダニエルとクラウスに話すのには抵抗があった。
出会って最初に「オレはスラム出身の犯罪者です」と自己紹介するわけもなし。連隊の中で自分の過去を知っているのは、おそらくソングだけだろう。
「前に似たようなケースによく遭遇してたからなー。慣れだ、慣れ」
「機械技師みたいな仕事をやってたのか?」
「なるほど、なら図面を見るのも機械の扱うのも慣れてるよな」
クラウスの言葉にダニエルが頷く。
「んー……まあ、そんなとこかな」
ヒューゴは少し悩んで、ぼかすような言葉を返した。
何となく、この二人には自分が犯罪者だった過去を知られたくないと思ったのだ。
いずれどこかでバレてしまうかもしれないが、そうなったらそれはその時だ。
少なくとも、今はまだ彼らを失望させたくない。そんな思いがヒューゴの胸の内にあった。
「—了—」
連隊の訓練施設に、威勢のいい男達の声が響く。
ヒューゴは世界各地から集められた強者達に混じって、どうにかこうにか訓練をこなしていた。
「ちょ、ちょっと休憩……」
「寝惚けたことを言うんじゃない。続けるぞ!」
「ひえええ! 勘弁してくれー」
「弱音を吐くな!」
軍歴の長いハウスホッターが、へたり込むヒューゴに怒声を飛ばす。
今まで享楽的に生きてきたヒューゴは、体力面にかなりの不安を抱えていた。それ故の、特別な強化訓練であった。
地獄のような特別訓練が終了し、疲労でふらふらしながら食堂へと向かう。今日はこの特別訓練に加えて、夜からは全体で行う演習がスケジュールされている。ヒューゴの気は、それはそれは重かった。
「はー、ったく。高い報酬に釣られるんじゃなかったぜ……」
食堂で提供された食事を前に、ヒューゴは大きく溜息を吐いた。
ひとまずパンを千切りながら、ここに来る二月ほど前の、ソングとのやり取りを思い出していた。
裁判が結審し、あとは刑務所への移送を待つだけだった。そんなヒューゴの前に現れたソングは、ヒューゴを値踏みするように見つめ、一つ頷いた。
「ふむ。まだ若いのに、勿体ない話だね」
「ええ。我々としても、こいつには何とか更正してもらいたいと思っとりまして」
ソングとワッツは、ヒューゴを目の前に言いたい放題だ。
「さて、ヒューゴ君といったね。君に良い話を持ってきた」
「は、はあ……?」
てっきり、タスカーに騙された事件について容赦ない尋問か何かが待ち構えていると思っていた。
身構えていたヒューゴは、拍子抜けしたようにソングに顔を向けた。
「我々は世界を《渦》から救うための人材を探していてね」
「は? 渦ってあの渦かよ!? 痛ってえ!」
思わず声を上げる。ワッツが思いっきり背中を叩いてきたのだ。
「ソングさんの話をちゃんと聞くんだ」
「ははは。まあ、驚くのも無理はない。でだ、ヒューゴ君、改めて聞くが、我々と一緒に世界を救う気はないかね?」
ヒューゴは信じられないものを見る目つきでソングを見た。こいつはちっぽけな犯罪者の自分に何を言ってるんだと思った。
「オレ、これから刑務所に行くんだけど……」
「我々と共に来るのなら、君の刑事罰は免除される。少々きつい肉体労働をやってもらわねばならんが、衣食住は保障するし、報酬も定期的に出す」
見せられた一枚の紙には、スラム暮らしではお目にかかれないような金額が記載されていた。
「お、おい! これ本当か?」
つまらない刑務所暮らしが待ち受けていたヒューゴにとって、刑罰の免除とこの報酬金額は桁外れに魅力的であった。
「まぁ、無理にとは言わんが、どうする?」
「行く! 行きます。行きます行きます!!」
ソングの言葉に、ヒューゴは勢いよく首を縦に振った。
こうして、ヒューゴは連隊と呼ばれる組織に入隊したのだった。
連隊でヒューゴを待ち受けていたのは、規則正しい生活に厳しい訓練、そして苦手な勉学であった。
しかもハウスホッターのような元グランデレニア軍人は非常に厳しく、少しでも規律を乱そうものなら容赦のない鉄拳制裁が降ってくる。その制裁を受けたくないがために、ヒューゴは今までの享楽的でアウトローな生活を改めざるをえなかった。
脱走を思い立ったことも一度や二度ではなかった。が、それでもヒューゴは逃げ出さなかった。それは、連隊での生活がスラムでの暮らしとは比べ物にならないほどに豊かだったからだ。
薄汚いスラムでの貧乏暮らしがすっかり染み付いていた筈だが、どうやらまともだった子供の頃が思い出されてしまったらしい。
衣食住が満たされ、定期的に報酬まで貰える生活。そんな生活を手放す気には到底なれなかった。
「またハウスホッターにしごかれてたのか? お疲れさん」
溜息と一緒に食事を胃袋に流し込んでいると、ダニエルに肩を叩かれた。振り向くと、ダニエルとクラウスの二人がいた。
トレーに乗っている食器が空なところを見ると、食事が終わって食器の返却に向かっているのだろう。
「こいつは午前の座学で寝てたからな。その分の罰も含まれたんだろうさ」
「げっ。見てたんなら起こせよ。クラウスはオレの真後ろにいたじゃねえか」
「ははっ。真面目に講習を受けることをお前が覚えたら、考えてもいいかな?」
「ひっでえ」
この二人はヒューゴとほぼ同時期に入隊しており、入隊時の説明を一緒に受けた仲でもあった。それもあって、訓練や座学では何かと一緒になることが多く、いつの間にかヒューゴはこの二人と行動を共にするようになっていた。
「おい、早く食っちまわないと、夜間訓練に間に合わなくなるぞ」
「うわ、いっけね!」
「じゃあ、俺達は先に行ってるからな」
「ああ、また後でな」
立ち去る二人を見送るでもなく、ヒューゴは急いで食事を再開する。
ダニエルとクラウスは、出し抜きや抜け駆けが当然だったスラムの連中とは違い、裏表なくヒューゴに接してくれる。
育った環境の違いに少しだけ卑屈になりながらも、二人が自分とつるんでくれることに感謝するヒューゴであった。
ある日、エンジニアの指導の下、完成したばかりの新型アサルトライフルの取り扱い訓練が実施された。
各隊員の目の前には、分解された状態のアサルトライフルが置かれている。
「では、新型アサルトライフルの機構に関する説明を始める」
新しく開発された技術を使用しているために、今までのアサルトライフルとは扱い方が全く異なり、複雑になっている。その上、エンジニアは決して手本を見せようとしない。
いつもはガミガミと小言ばかりの先輩隊員達も、今回ばかりは新米隊員と同じ立場だ。
大型モニターに説明図が映し出された。今までのアサルトライフルと何が変わったかの概要が説明される。
そして一通りの説明が終了すると、今度は組み立てと実射訓練となる。
エンジニアは組み立てに関する説明を行わない。ただ「やってみろ」と言うだけであった。
「組み立てが終わった者から順に試射を開始せよ」
エンジニアの言葉と共に、一斉に組み立て訓練が開始された。
「よっし、これでいけるだろ」
ミリアンやヘルムホルツら創設初期の隊員が手間取っているのを尻目に、ヒューゴは誰よりも早くアサルトライフルを組み立てると、標的に向かってその銃口を向けた。
新型のアサルトライフルは衝撃も少なく、小柄なヒューゴでも反動で仰け反るようなことはない。
「すっげえ……。前のボロとは全然違う」
ヒューゴが一人嬉々として試射を繰り返す中、周囲の隊員達は俄にざわついていた。
「おい、意外だな」
「どんな奴でも得意な分野がある、ということか」
先輩格の隊員達が目を見張る中、ヒューゴは意気揚々と試射を繰り返す。
「おい、ヒョロガリに負けてらんねーぞ」
「あいつにできて俺らにできねえなんぞ、有り得ねえ!」
「こりゃ、急がないと俺達も新人共に負けるぞ」
「おっと、こんなことでナメられちゃ敵わん」
皆、ヒューゴに負けていられないとばかりにアサルトライフルの組み立てを再開する。隊員全員が競い合い、続々と組み立てを終わらせて試射が始まった。
「あの説明でよくわかったな」
訓練が終わった後、ダニエルが感心したように尋ねてきた。
「んー、エンジニアは詳しく説明しなかったけど、モノ自体はごく普通のアサルトライフルと似たような感じだったぞ?」
「凄いな。俺はさっぱりわかんなかったぜ」
スラムにいた頃は犯罪絡みでメチャクチャ古い、薄暮の時代の遺産ともいえる銃を扱うことも珍しくなかった。当然、そんなブツに丁寧な説明図が付いている訳もない。どこを修理すればいいのか、どう組み立てていいのかすらわからないものを、何とか暴発しないように扱っていたのだ。
犯罪で鍛え上げて身に付けた技術だった。それがどういう訳か、こんな形で身を助けるとは。
だが、そういう過去のことをダニエルとクラウスに話すのには抵抗があった。
出会って最初に「オレはスラム出身の犯罪者です」と自己紹介するわけもなし。連隊の中で自分の過去を知っているのは、おそらくソングだけだろう。
「前に似たようなケースによく遭遇してたからなー。慣れだ、慣れ」
「機械技師みたいな仕事をやってたのか?」
「なるほど、なら図面を見るのも機械の扱うのも慣れてるよな」
クラウスの言葉にダニエルが頷く。
「んー……まあ、そんなとこかな」
ヒューゴは少し悩んで、ぼかすような言葉を返した。
何となく、この二人には自分が犯罪者だった過去を知られたくないと思ったのだ。
いずれどこかでバレてしまうかもしれないが、そうなったらそれはその時だ。
少なくとも、今はまだ彼らを失望させたくない。そんな思いがヒューゴの胸の内にあった。
「—了—」