持續不斷的槍聲。通信機的喇叭傳出相當大的聲音。陸續報來的死傷者情報。
將這些一切都屏除在外,C.C.把艾茵放在核心回收裝置中特意設置的空間。
這樣的話,艾茵就能將核心帶回她自己的世界了吧。
「掰掰,艾茵。希望你在那邊能過得幸福」
沒等到艾茵的回應,C.C.就將核心回收裝置的蓋子蓋上。
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「好了,我也得把該做的事做完」
雖然很擔心艾茵能不能平安完成使命,但C.C.還是將這件事先放到一旁,開始將另一個裝置連接到了核心回收裝置。
這個裝置包含了史塔夏的機能,是為了『防止世界的破滅』而來的。
但是,這個裝置完全是遵從史塔夏送來的設計書製成,並不清楚史塔夏打算藉由這個裝置做些什麼。此外,零件雖然都是這個世界可以找到的東西,但是裡面所運作的程式都是直接使用史塔夏送來的代碼。
也還有艾茵的事情,核心要是發生什麼事的話就頭痛了。C.C.在事前就已經先跟史塔夏確認過是否會讓核心消失。
「確實會變成是利用核心的方式。但是,我的目標是在核心那邊的世界喔」
「在核心那邊的世界?」
「對啊。那個世界遍布一切事象。簡單的說就是『什麼願望都能實現的世界』吧」
「……那種世界真的存在嗎?」
「是真的存在的喔。然後,核心只是為了要前往那邊的路標,並不會使用到核心本體。因為核心會原封不動地留下來,應該可以讓你任意使用吧」
「如果是這樣就好了……」
C.C.認為『什麼願望都能實現的世界』只是一種比喻而已吧。要是真的有那種世界存在的話,不管多麼難以說明的事情都會輕易發生吧。那樣實在太不科學了。
雖然並不是想否定史塔夏的話,但是真的不認為那種世界會真的存在。
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C.C.一邊回想起與史塔夏的對話,一邊在螢幕上確認裝置的連接有沒有問題。
「……我只能硬著頭皮這麼做了吧」
C.C.雖然是連隊技官,但所屬的是不會投入現場的開發室。因此,本來是不可能跟著一起作戰的。但是,這次的作戰使用的核心回收裝置是經過自己改良過的。以此為由C.C.志願同行,並且以負責裝置調整的人員入隊。
為了完成該做的事,為了拯救世界。
通過各種難關,終於到達這裡了。不論如何都要完成。
|
沒多久羅索就傳來訊號,同步開始了。
在這個階段,只還留有一個不安的因素。
羅索在同步裝置的內部,裝設了其他某種裝置。
有一次想趁羅索不注意偷偷調查,但是被發現而吃了不少苦。之後就被命令以後禁止靠近同步裝置,所以內部的構造依然成謎。
「可不要跟這邊的裝置互相干涉到啊……」
C.C.一邊盯著螢幕一邊自言自語。必須持續觀測內含著史塔夏的裝置有沒有干涉到羅索那邊的裝置。
要是,這邊的裝置稍微干涉到同步裝置的話,羅索就會發現,會變成怎樣就很難說了。最糟糕的情況是回收作業整個被中斷吧。
變成那樣的話就不只是自己的生命有危險,連全部在The Eye所消逝的生命都會失去意義了。
可不能失敗。
|
同步進入最終階段。Red Sloan那邊的核心跟Blue Peak那邊的核心,分毫不差的同時開始回收。
再沒多久核心的回收就要結束了。就在那個時候。
應該被操作員們打倒的龍站了起來,張開了大嘴。
「不行!!」
C.C.瞬間挺身保護核心跟回收裝置。然後突然,核心發出了光芒。世界因為這道光而扭曲,急遽的暈染開來。
C.C.一邊感受到背後逼近的熱能,同時視線被白光奪走。
|
C.C.自己一個人被甩到一個各種顏色混雜的不可思議空間。
沒有背後逼近的火炎,也沒有巨大的龍。
不只如此連核心回收裝置跟同步裝置,甚至是武裝艇的機影都沒有看到。
「啊哈哈哈哈哈哈,成功了。這樣一來終於能消滅那傢伙了」
不可思議的世界裡回響著,打從心底開心的少女聲音。朝聲音傳來的地方追去,發現那邊有個纖瘦的少女。
「謝謝你了C.C.。因為妳我才能來到這裡啊」
「你是誰……?」
「討厭,妳忘記了嗎?雖然是透過主機,但我可是一直都在跟妳說話的呢」
「……史塔夏!?」
從少女的話中來推測,將一直到作戰前都在對話的人工智能的名字說出了口。
「呵呵呵,正確答案!」
少女對C.C.笑著。但是那雙眼卻一直像是在鄙視C.C.般的凝視著,感覺完全不像是在笑。
「這裡到底是哪裡?快把我送回原本的地方!」
「啊?妳想回去喔?」
「那不是當然的嗎!不快點回去的話,就沒辦法回到設施了!」
C.C.十分拼命。身體沒事的話,就完全不需要留在這裡。必須盡快回到武裝船。
不然的話,自己就要被留在The Eye的世界裡了。
「什麼啊?好不容易帶妳來到這裡的耶」
史塔夏突然轉變態度,感到無趣般不滿地說道。
她的一舉一動都跟少女的外型吻合。但是,那聲音裡卻無情到令人害怕。
「我可沒有要妳這樣做啊!」
「哼。真的是想要回到那種地方啊。明明完全沒有意義,真是奇怪」
史塔夏冷冷地俯視著C.C.。
「妳……說什麼?」
「算了,隨妳吧。在妳覺得夠了之前,妳要回去幾次我都送妳回去」
史塔夏沒有回應C.C.的問題。
「那就再見啦。下次再一起玩吧」
隨著史塔夏無情的聲音,C.C.的視線轉暗。
|
光的奔流收束。同時,C.C.的視線裡暈開的世界衝了進來。
C.C.抱著裝艾茵的箱子,呆站在Blue Peak的核心前。
「C.C.還要多久!」
聽到了弗雷特里西的聲音。
「就快好了。再七分鐘!」
驚覺過來的C.C.,慌忙地看了錶跟螢幕後回答著。
龍為了要奪取核心殺了過來,連隊的操作員們在弗雷特里西的指揮下為了守護C.C.而戰。
那個景象C.C.就好像是在看電影般的眺望著。
太不像現實了。感覺就只像是銀幕中發生的劇情。
|
前方爆炸聲作響,巨大的龍發出咆哮。
弗雷特里西在戰鬥。他所率領的部隊將巨大的龍操弄於股掌之間。
不知道已經看過幾次眼前的景象了。不知道已經重覆幾次這個操作。
|
結束核心的回收,並將它跟艾茵一起送回她的故鄉。將史塔夏送往將《渦》完全消滅了的世界。
應該是要這樣子的。
但是,回過神來時核心的回收根本沒開始,艾茵也不在箱子裡。
她到底跑到哪裡去了呢。但是,也已經沒動力去找她了。
不管怎麼做都沒有用。就如同史塔夏所說的,回到這裡是沒有意義的吧。
|
核心回收裝置開始啟動。同步也開始了。
突然C.C.想到。沒有去到艾茵故鄉的核心,到底是去了哪裡呢。
C.C.將手伸向不斷被收進回收裝置裡的核心。
核心的裡面,黑影跟白光撞在一起搖晃著。
自己該做的已經全部結束了。之後就回到設施,返回潘德莫尼,然後繼續自己的研究跟從父親那邊繼承的研究就好。
「想回去……。只要到史塔夏那邊就能回去了嗎?」
將該做的事完成了的C.C.剩下的就只是疲累而已。想回到潘德莫尼。就只是這樣。
史塔夏所說的『什麼願望都能實現的世界』,只要到那邊的話就能回到自己的世界潘德莫尼。這句話突然間,就像是信念般的出現在腦海裡。
|
就在龍咆哮逼近的時候,C.C.的手終於碰到了核心。
下個瞬間,C.C.的身體就被強烈的熱能包覆。
眼前一片紅,然後就轉黑了。
發生了什麼C.C.完全無法辨識。事象眼花撩亂般的逐漸轉變。
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C.C.的視覺,辨識出了各種交雜漩渦狀的顏色。
「唔呵呵呵呵呵呵,歡迎回來,C.C.。來,跟我1一起玩吧!」
聽到了發出開心笑聲的少女聲音。
|
「─完─」
3389年 「監獄」
止むことのない銃声。通信機のスピーカーががなり立てる叫び声。次々と報告される死傷者の情報。
それら全てを振り払い、C.C.はコア回収装置に誂えた隙間にアインを収めた。
これで、アインは自身の世界にコアを持ち帰ることができるだろう。
「バイバイ、アイン。向こうで幸せになってね」
アインの返事も待たず、C.C.はコア回収装置の蓋を閉めた。
「さて、私もやるべきことをやらないとね」
アインが無事に為し遂げられるか不安だったが、C.C.はそのことを頭の隅に追い遣り、もう一つ別の装置をコア回収装置に接続した。
この装置にはステイシアの機能が内包されており、『世界の破滅を防ぐ』ためのものだ。
しかし、この装置はステイシアが送ってきた設計書に従って組み上げただけであり、ステイシアがこの装置を通じて何をしようとしているのかはわからなかった。それに、部材こそこの世界で調達可能なものになっているが、組み込まれているプログラムはステイシアが送ってきたコードをそのまま使っている。
アインのこともあるため、コアそのものに何かあっては困る。C.C.は前もってステイシアに、コアを消失させるのかどうかを確認していた。
「確かにコアを利用する形にはなるわ。でも、アタシが目指しているのは、コアのその先にある世界よ」
「コアのその先の世界?」
「そう。その世界ではあらゆる事象が遍在するの。簡単に言えば『何でも願いが叶う世界』といったところかしら」
「……そんな世界、本当に存在するの?」
「ええ、存在するわ。それで、コアはそこに行くための道標として使うだけで、コア自体を使う訳じゃない。コアはそのまま残るから、あなたの好きに使える筈よ」
「ならいいけど……」
『何でも願いが叶う世界』というのは何かの比喩なのだろうとC.C.は思うことにした。もし本当にそんな世界が存在するのなら、どんなに説明のつかないことでも簡単に起きてしまう。それはあまりにも非科学的だ。
ステイシアの言葉を否定したくはないが、そんな世界が本当に存在するとは到底思えなかった。
ステイシアとの会話を思い出しながら、C.C.は装置の接続に問題がないかをモニターで確認する。
「……やるしかないのよ、私」
C.C.の所属は、連隊付き技官の中でも現場投入されることが無い開発室である。そのため、本来であれば作戦への同行は有り得ない。しかし、今回の作戦に使われているコア回収装置には自らの手によって改良が施されている。それを理由にC.C.は同行を志願し、装置の調整担当としてそれが受け入れられたのだ。
やるべきことをやるために、世界を救うために。
様々な難関を掻い潜り、やっとここに辿り着いたのだ。何としてもやり遂げねばならない。
程なくしてロッソから合図が発せられ、同期が開始された。
この段階において、不安要素が一つだけ残っていた。
ロッソが同期装置の内部に、何か別の装置を組み込んでいることだ。
一度ロッソの目を盗んで調べようとしたが、気付かれてしまい痛い目を見た。それ以降は同期装置に近付くことも禁止されたため、内部の仕組みが不明なままだ。
「こっちの装置と干渉し合わないでちょうだいよ……」
C.C.はモニターを睨みながら呟く。ステイシアを内包している装置がロッソ側の装置に干渉しないかどうかを観測し続けなければならない。
もし、こちらの装置が少しでも同期装置に干渉してしまえば、ロッソに気付かれてしまい、どうなるかわからない。最悪の場合は回収作業自体が中断されるだろう。
そうなれば自身の命に関わるだけでなく、ジ・アイで散った全ての命を無駄なものにさせてしまう。
失敗する訳にはいかない。
同期が最終段階に入る。レッドスローン側のコアとブルーピーク側のコアが、寸分の狂いも無く同時に回収される。
あと少しでコアの回収が完了する。その時だった。
オペレーター達が倒した筈の竜が立ち上がり、その大きな口を開けた。
「駄目!!」
C.C.は咄嗟にコアとコア回収装置を庇うように覆い被さる。すると突然、コアが光を発した。その光によって世界が歪み、急激に滲んでいく。
C.C.は背中に迫る熱を感じながら、白い光に視界を奪われた。
C.C.は一人、様々な色が交じり合う不思議な空間に放り出されていた。
背後に迫っていた炎も、巨大な竜もいない。
それどころかコア回収装置や同期装置、アーセナルキャリアの機影すらも見当たらなかった。
「あははははははは、やったわ。これでやっと、あいつを消せる」
不思議な世界に響いたのは、心底楽しげな少女の声だった。その声を追い掛けると、そこには痩躯な少女の姿があった。
「ありがとう、C.C.。アナタのおかげでアタシはここに来ることができたわ」
「だれ……?」
「やだ、忘れちゃったの? メインフレーム越しだったけど、アタシはずっとあなたとお喋りしてたのに」
「……ステイシア!?」
少女の言葉に思い当たる所があり、作戦前夜まで会話をしていた人工知能の名前を口に出す。
「うふふふ、正解!」
少女はC.C.に笑いかけた。だがその目はじっとC.C.を値踏みするように凝視しており、とても笑っているようには思えない。
「ここは一体どこなの? 私を元の場所に戻して!」
「え? 戻りたいの?」
「決まってるじゃない! 早くしないと、施設に帰れなくなる!」
C.C.は必死だった。身体が無事であるならば、こんな場所にいる必要はこれっぽっちも無い。一刻も早くコルベットに戻らなければ。
でないと、自分はジ・アイの世界に取り残されることになってしまう。
「何それ? せっかくここに連れてきてあげたのに」
ステイシアは一変し、つまらなそうに口を尖らせた。
彼女の一挙一動は少女の外見に相応したそれである。しかし、その声には恐ろしい程に感情が存在していなかった。
「そんなこと頼んでないでしょ!」
「ふぅん。ホントにあんな場所に戻りたいと思ってるんだ。意味なんか無いのに、おかしなひと」
ステイシアの目がC.C.を冷たく見下ろした。
「どう……いうこと?」
「ま、いいわ。あなたの気が済むまで、何度だって送り返してあげる」
ステイシアはC.C.の問い掛けには答えなかった。
「じゃあ、またね。今度は一緒に遊びましょ」
ステイシアの無感情な声と共に、C.C.の視界は暗転した。
光の奔流が収まる。同時に、C.C.の視界に滲む世界が飛び込んでくる。
C.C.はアインの入った箱を抱え、ブルーピークのコアの前に立ちつくしていた。
「C.C.、あとどれくらいだ!」
フリードリヒの声が聞こえた。
「もうすぐです。あと七分!」
はっとなったC.C.は、慌てて時計とモニターを見返して返答する。
竜がコアを奪取せんと迫り来る中、連隊のオペレーター達はフリードリヒの指揮下でコアとC.C.を守るように戦っていた。
その様子をC.C.は、まるで映画でも見ているかのように眺めていた。
現実とは思えなかった。スクリーンの中の出来事のように感じられてならなかった。
前方で爆音が轟き、巨大な竜が咆哮を上げる。
フリードリヒが戦っている。彼の率いる部隊が巨大な竜に翻弄されている。
何度この光景を見ただろう。何度この作業を繰り返しただろう。
コアの回収を終え、アインと共に彼女の故郷へ送った。ステイシアを《渦》を完全に消滅させる世界へと送り出した。
その筈だ。
なのに、気が付けばコアの回収は始まってもおらず、アインは箱の中にいない。
彼女は何処へ行ったのだろう。でも、もう探す気はなかった。
何をしても無駄なのだ。ステイシアが言ったように、この場所に戻ることに意味など無かったのだろう。
コア回収装置が動き始める。同期が始まったのだ。
ふとC.C.は考えた。アインの故郷へ向かわないコアは、一体何処へ行くのだろう。
C.C.はコア回収装置に収められつつあるコアに手を伸ばした。
コアの中では、黒い影と白い光がぶつかり合って揺らめいていた。
自分がやるべきことは全てやり終えたのだ。あとは施設に帰って、パンデモニウムに戻って、自分の研究と父親から引き継いだ研究を続けるだけ。
「帰りたい……。ステイシアの所に行けば帰れるのかしら?」
すべきことを終わらせたC.C.に残ったもの、それは疲弊だった。パンデモニウムに帰りたい。ただそれだけだった。
ステイシアが言っていた『何でも願いが叶う世界』、そこに行けば自分の世界に、パンデモニウムに帰れる。ふと、そんな確信にも似た思いが頭をよぎった。
竜の咆哮が迫る中、ついにC.C.の手がコアに触れた。
次の瞬間、C.C.の身体は凄まじい熱に包まれた。
目の前が真っ赤に染まり、そのまま黒く暗転する。
何が起きているのかC.C.には認識できない。目まぐるしく事象が変転していく。
C.C.の視覚が、様々に交じり合って渦巻く色を認識した。
「うふふふふふふふふ、お帰りなさい、C.C.。さあ、アタシ達と一緒に遊びましょう!」
楽しそうに笑い声を上げる少女の声が聞こえた。
「—了—」
止むことのない銃声。通信機のスピーカーががなり立てる叫び声。次々と報告される死傷者の情報。
それら全てを振り払い、C.C.はコア回収装置に誂えた隙間にアインを収めた。
これで、アインは自身の世界にコアを持ち帰ることができるだろう。
「バイバイ、アイン。向こうで幸せになってね」
アインの返事も待たず、C.C.はコア回収装置の蓋を閉めた。
「さて、私もやるべきことをやらないとね」
アインが無事に為し遂げられるか不安だったが、C.C.はそのことを頭の隅に追い遣り、もう一つ別の装置をコア回収装置に接続した。
この装置にはステイシアの機能が内包されており、『世界の破滅を防ぐ』ためのものだ。
しかし、この装置はステイシアが送ってきた設計書に従って組み上げただけであり、ステイシアがこの装置を通じて何をしようとしているのかはわからなかった。それに、部材こそこの世界で調達可能なものになっているが、組み込まれているプログラムはステイシアが送ってきたコードをそのまま使っている。
アインのこともあるため、コアそのものに何かあっては困る。C.C.は前もってステイシアに、コアを消失させるのかどうかを確認していた。
「確かにコアを利用する形にはなるわ。でも、アタシが目指しているのは、コアのその先にある世界よ」
「コアのその先の世界?」
「そう。その世界ではあらゆる事象が遍在するの。簡単に言えば『何でも願いが叶う世界』といったところかしら」
「……そんな世界、本当に存在するの?」
「ええ、存在するわ。それで、コアはそこに行くための道標として使うだけで、コア自体を使う訳じゃない。コアはそのまま残るから、あなたの好きに使える筈よ」
「ならいいけど……」
『何でも願いが叶う世界』というのは何かの比喩なのだろうとC.C.は思うことにした。もし本当にそんな世界が存在するのなら、どんなに説明のつかないことでも簡単に起きてしまう。それはあまりにも非科学的だ。
ステイシアの言葉を否定したくはないが、そんな世界が本当に存在するとは到底思えなかった。
ステイシアとの会話を思い出しながら、C.C.は装置の接続に問題がないかをモニターで確認する。
「……やるしかないのよ、私」
C.C.の所属は、連隊付き技官の中でも現場投入されることが無い開発室である。そのため、本来であれば作戦への同行は有り得ない。しかし、今回の作戦に使われているコア回収装置には自らの手によって改良が施されている。それを理由にC.C.は同行を志願し、装置の調整担当としてそれが受け入れられたのだ。
やるべきことをやるために、世界を救うために。
様々な難関を掻い潜り、やっとここに辿り着いたのだ。何としてもやり遂げねばならない。
程なくしてロッソから合図が発せられ、同期が開始された。
この段階において、不安要素が一つだけ残っていた。
ロッソが同期装置の内部に、何か別の装置を組み込んでいることだ。
一度ロッソの目を盗んで調べようとしたが、気付かれてしまい痛い目を見た。それ以降は同期装置に近付くことも禁止されたため、内部の仕組みが不明なままだ。
「こっちの装置と干渉し合わないでちょうだいよ……」
C.C.はモニターを睨みながら呟く。ステイシアを内包している装置がロッソ側の装置に干渉しないかどうかを観測し続けなければならない。
もし、こちらの装置が少しでも同期装置に干渉してしまえば、ロッソに気付かれてしまい、どうなるかわからない。最悪の場合は回収作業自体が中断されるだろう。
そうなれば自身の命に関わるだけでなく、ジ・アイで散った全ての命を無駄なものにさせてしまう。
失敗する訳にはいかない。
同期が最終段階に入る。レッドスローン側のコアとブルーピーク側のコアが、寸分の狂いも無く同時に回収される。
あと少しでコアの回収が完了する。その時だった。
オペレーター達が倒した筈の竜が立ち上がり、その大きな口を開けた。
「駄目!!」
C.C.は咄嗟にコアとコア回収装置を庇うように覆い被さる。すると突然、コアが光を発した。その光によって世界が歪み、急激に滲んでいく。
C.C.は背中に迫る熱を感じながら、白い光に視界を奪われた。
C.C.は一人、様々な色が交じり合う不思議な空間に放り出されていた。
背後に迫っていた炎も、巨大な竜もいない。
それどころかコア回収装置や同期装置、アーセナルキャリアの機影すらも見当たらなかった。
「あははははははは、やったわ。これでやっと、あいつを消せる」
不思議な世界に響いたのは、心底楽しげな少女の声だった。その声を追い掛けると、そこには痩躯な少女の姿があった。
「ありがとう、C.C.。アナタのおかげでアタシはここに来ることができたわ」
「だれ……?」
「やだ、忘れちゃったの? メインフレーム越しだったけど、アタシはずっとあなたとお喋りしてたのに」
「……ステイシア!?」
少女の言葉に思い当たる所があり、作戦前夜まで会話をしていた人工知能の名前を口に出す。
「うふふふ、正解!」
少女はC.C.に笑いかけた。だがその目はじっとC.C.を値踏みするように凝視しており、とても笑っているようには思えない。
「ここは一体どこなの? 私を元の場所に戻して!」
「え? 戻りたいの?」
「決まってるじゃない! 早くしないと、施設に帰れなくなる!」
C.C.は必死だった。身体が無事であるならば、こんな場所にいる必要はこれっぽっちも無い。一刻も早くコルベットに戻らなければ。
でないと、自分はジ・アイの世界に取り残されることになってしまう。
「何それ? せっかくここに連れてきてあげたのに」
ステイシアは一変し、つまらなそうに口を尖らせた。
彼女の一挙一動は少女の外見に相応したそれである。しかし、その声には恐ろしい程に感情が存在していなかった。
「そんなこと頼んでないでしょ!」
「ふぅん。ホントにあんな場所に戻りたいと思ってるんだ。意味なんか無いのに、おかしなひと」
ステイシアの目がC.C.を冷たく見下ろした。
「どう……いうこと?」
「ま、いいわ。あなたの気が済むまで、何度だって送り返してあげる」
ステイシアはC.C.の問い掛けには答えなかった。
「じゃあ、またね。今度は一緒に遊びましょ」
ステイシアの無感情な声と共に、C.C.の視界は暗転した。
光の奔流が収まる。同時に、C.C.の視界に滲む世界が飛び込んでくる。
C.C.はアインの入った箱を抱え、ブルーピークのコアの前に立ちつくしていた。
「C.C.、あとどれくらいだ!」
フリードリヒの声が聞こえた。
「もうすぐです。あと七分!」
はっとなったC.C.は、慌てて時計とモニターを見返して返答する。
竜がコアを奪取せんと迫り来る中、連隊のオペレーター達はフリードリヒの指揮下でコアとC.C.を守るように戦っていた。
その様子をC.C.は、まるで映画でも見ているかのように眺めていた。
現実とは思えなかった。スクリーンの中の出来事のように感じられてならなかった。
前方で爆音が轟き、巨大な竜が咆哮を上げる。
フリードリヒが戦っている。彼の率いる部隊が巨大な竜に翻弄されている。
何度この光景を見ただろう。何度この作業を繰り返しただろう。
コアの回収を終え、アインと共に彼女の故郷へ送った。ステイシアを《渦》を完全に消滅させる世界へと送り出した。
その筈だ。
なのに、気が付けばコアの回収は始まってもおらず、アインは箱の中にいない。
彼女は何処へ行ったのだろう。でも、もう探す気はなかった。
何をしても無駄なのだ。ステイシアが言ったように、この場所に戻ることに意味など無かったのだろう。
コア回収装置が動き始める。同期が始まったのだ。
ふとC.C.は考えた。アインの故郷へ向かわないコアは、一体何処へ行くのだろう。
C.C.はコア回収装置に収められつつあるコアに手を伸ばした。
コアの中では、黒い影と白い光がぶつかり合って揺らめいていた。
自分がやるべきことは全てやり終えたのだ。あとは施設に帰って、パンデモニウムに戻って、自分の研究と父親から引き継いだ研究を続けるだけ。
「帰りたい……。ステイシアの所に行けば帰れるのかしら?」
すべきことを終わらせたC.C.に残ったもの、それは疲弊だった。パンデモニウムに帰りたい。ただそれだけだった。
ステイシアが言っていた『何でも願いが叶う世界』、そこに行けば自分の世界に、パンデモニウムに帰れる。ふと、そんな確信にも似た思いが頭をよぎった。
竜の咆哮が迫る中、ついにC.C.の手がコアに触れた。
次の瞬間、C.C.の身体は凄まじい熱に包まれた。
目の前が真っ赤に染まり、そのまま黒く暗転する。
何が起きているのかC.C.には認識できない。目まぐるしく事象が変転していく。
C.C.の視覚が、様々に交じり合って渦巻く色を認識した。
「うふふふふふふふふ、お帰りなさい、C.C.。さあ、アタシ達と一緒に遊びましょう!」
楽しそうに笑い声を上げる少女の声が聞こえた。
「—了—」
- 翻譯錯誤。原文為「來,跟我們一起玩吧!」。 ↩