是件簡單的工作的。隨著馬車的搖晃雪莉回想起這次的工作。
在委託人的指引下扮作傭人潛入,在適當的時候對目標的食物下毒。就只是這樣。
他現在會在想些什麼呢?是家族嗎?或是曾經很信賴的委託人?還是單純的為毒所苦呢?
但這些事對雪莉來說都無所謂。
像這次事前準備這麼完善的工作並不常有。
哭著求饒的人、拔劍作最後掙扎的人、甚至連想用巨款勸誘自己的人都有,但對只是遵從主人命令的暗殺者雪莉來說,全都是沒有意義的。
古朗德利尼亞帝國、魯比歐那聯合王國、麥歐卡共和國、米利加迪亞王國、尹貝羅達。在人類間的紛爭不斷的曙光時代,暗殺的需求不曾間斷,只要有報酬不管到哪兒都會派遣暗殺者,不論是誰都殺。雪莉的主人也是其中之一人。
有著高齡紳士般風貌的主人以泰然自若的聲音說。
「這是這次的暗殺對象。拜託妳了」
主人將對象的照片跟資料交給雪莉。照片中是個年幼的小孩。不自覺的回看著主人的臉。
「不願意嗎?」
主人用還是溫和的語調,向雪莉問道。
「不是的。我會做的」
「這樣啊。那麼就拜託妳了」
夜晚,簡單到不可置信的成功侵入了。
在大屋子的一間房間中,發現抱著黑狗表情害怕的目標。
「大姊姊就是殺手?」
「請不要殺這孩子」
似乎已經查覺到自己的立場,沒有絲毫的抵抗。只是,不希望小狗也死掉的樣子。
黑色的狗開始吠叫。
雪莉什麼也沒回答,只是盯著目標拿出了短刀,擺出了架勢。
雖然擺出了架勢,但卻沒能揮出。就在呆站著猶豫時房間的門打開了。
「別動!」
雖然很遲,但還是發覺有異常的警衛們,舉槍警告著雪莉。
「大小姐,請到這邊」
目標往警衛們那邊跑去。躲在警衛的後面,露出小臉偷看著這邊。
雪莉為失敗感到後悔,但心中的某個地方卻也感到安心。
正在計算逃亡路線的時候,房間內響起了槍聲。
倒下的不是本來應該被殺的雪莉,竟是本來應該受警衛們所保護著的孩子。
「哎呀,可憐的大小姐被流彈殺死了」
其中一個警衛故意大聲說著。
「聽說是雇了個高手,沒想到卻是個連小鬼都殺不了的三流啊」
雪莉大致了解了現況。輕鬆侵入也是早就安排好的。是不論如何都要完事的委託人,額外安排的保險吧。
或許,根本只是想要一個有賊闖入的事實就好了吧。
「當然,三流殺手也請死在這吧」
雪莉衝向窗口。不是呆站著等警衛們射出的槍彈貫穿手腕的時候了。
從好不容易到達的窗口跳出,逃入了黑夜之中。警衛們沒有追過來的樣子。
大房子中不斷傳出黑狗的叫聲。
|
隔天,雪莉將事情的經過告訴主人。
「這樣啊。發生了這種事啊……」
「但你沒事就好」
主人溫柔的笑著回答。
「誰都會有失敗的時候」
「總之現在只要先考慮養傷的事情就好」
雪莉家前倒臥著一隻有點髒髒的黑狗。
雖然看起來好像死掉了的樣子,卻在發現雪莉之後馬上爬起來,邊低吼著邊搖搖晃晃的靠了過來。感覺就要咬上來的黑狗,在雪莉眼前再次倒下。
覺得很惱人的雪莉,拿出短刀想往狗丟過去,卻突然想起那孩子抱著的狗,停下了手。
難以想像是那時的狗追來了。但心裡卻仍舊沒有想做些什麼的心情。
隔天髒髒的黑狗還是在同樣的地方。已經不會一看到雪莉就發出低吼了的樣子。用腳去碰也不會突然動起來。心血來潮試著給了牠剩飯,絲毫不剩的吃光了。
政治家、軍人、貴族、王族、富豪···。都遵從著命令完成委託。過著與之前毫無差別的每一日,唯一不同的是家門前有隻髒髒的黑狗在。
某一天,雪莉回來的時候狗已經死了。
並沒有打算養牠,應該也沒有感情的才對。
不過就只是隻狗,消失了應該也不會怎麼樣的才對。
但淚珠卻從雪莉的眼中滾出。
主人從站在狗身旁不動的雪莉身邊出現。
「是妳的狗嗎?」
「不是」
沒錯,是沒打算過要養。只是待在一起而已。
「悲傷嗎?」
對於主人的問題雪莉什麼也沒說。
「那隻狗,能交給我嗎?」
既是主人的命令,也只是隻死掉的野狗,所以沒有拒絕的理由。
「被誰所需要,是一件無可取代的事」
留下這句話,主人就抱著狗的屍體離開了。
只是隻狗,消失不見也應該沒差的才對。
「這下困擾了」
「雖然我們的工作不一定每次都會成功」
「但本來的妳不是這樣的」
「我相信下次妳不會再失敗了」
主人的話在雪莉的腦中回響著。從那隻狗不在了開始,工作失敗的次數就變多了。
毫不猶豫揮舞的短刀變得遲鈍。是因為注意到了,有因消滅目標而樂的委託人的同時,也有著因此悲傷的人,這種理所當然的事。
早就明白自己是為了暗殺而被培育出來的,過去也一直深信且從未懷疑過自己的存在意義,但現在卻已經沒辦法再繼續保持下去了。事到如今也不覺得能有別種生活方式了。
拿出單純為了殺害他人所一直使用的短刀,割向了自己的手腕。
鮮血大量的流出,意識也漸漸的模糊。
|
「─完─」
3390年 「少女」
簡単な仕事だった。馬車に揺られながら、シェリは今回の仕事を思い返す。
依頼人の手引きで使用人として潜り込み、頃合いを見計らって対象の食事に毒を盛る。それだけだった。
彼は今際の際に何を思ったのだろう。家族のことか、信頼していたであろう依頼人のことか、ただ毒に苦しんでいただけか。
しかし、どれもシェリにとってはどうでもいいことだった。
今回のように下準備が整っているケースは多くない。
泣いて無様な命乞いをする者、剣を手に取り最後の足掻きをする者、大金を積んで寝返りを提案する者もいたが、暗殺者たるシェリは主の命に従うのみであり、いずれも無駄なことだった。
グランデレニア帝國、ルビオナ連合王国、マイオッカ共和国、ミリガディア王国、インペローダ。人間同士の争いが絶えない曙光の時代(ドーンライト・エイジ)において暗殺需要が絶えることはなく、報酬さえあれば何処へでも暗殺者を派遣し、誰でも始末する。シェリの主もその一人だ。
老齢の紳士然とした風貌の主は、落ち着き払った声で言う。
「こちらが今回の暗殺対象となります。よろしくお願いします」
主が対象の写真と資料をシェリに渡す。そこに写っていたのは年端もいかない子供だ。思わず主の顔を見返す。
「気乗りしませんか?」
あくまで柔らかい口調で、主はシェリへ語り掛けた。
「いいえ。やります」
「そうですか。では、改めてよろしくお願いします」
夜、拍子抜けするほど簡単に侵入できた。
広い屋敷の一室で黒い犬を抱え、怯えた表情の対象を確認する。
「おねえちゃんが、ころしやさん?」
「このこはころさないで」
既に自らがどういう立場なのか察していたようで、抵抗する様子はない。ただ、犬の命は惜しいらしい。
黒い犬が吠え出す。
シェリは何も答えぬまま対象を見据えてナイフを取り出し、構える。
構えるが、振り下ろすことができずにいた。そう逡巡して立ち尽くしているうちに、部屋の扉が開いた。
「動くな!」
遅まきながら異常に感づいた警備達が、銃を構えてシェリに警告を出す。
「お嬢様、こちらへ」
対象が警備達の元へ走る。警備の後ろに隠れ、こちらを窺うように顔を出す。
シェリは失敗してしまったことを悔やみつつも、心の何処かで安堵していた。
逃亡ルートの算段をしている時、室内に発砲音が響いた。
シェリが殺す筈だった、警備達が守る筈だった子供が倒れている。
「嗚呼、憐れお嬢様は流れ弾に当たって死んでしまわれた」
警備の一人がわざとらしく声を上げる。
「腕の良い奴を雇ったと聞いていたが、ガキも殺せないような三流とはな」
シェリはおおよその現状を理解した。容易く侵入できたのもお膳立てされたが故。なんとしてでも事を成し遂げたかった依頼人は、更に保険を掛けていたのだろう。
おそらくは、最低でも賊が侵入したという事実さえあればよかったのだ。
「もちろん、そんな三流にも死んでもらおうか」
シェリは窓へ向かって駆け出す。警備達が放つ銃弾が体を貫くまで立ち止まっている場合ではない。
どうにか辿り着いた窓から飛び出し、闇夜へ逃げる。警備達が追ってくる様子はないようだ。
屋敷から黒い犬の鳴き声が響き続けていた。
翌日、シェリは事の顛末を主へ話した。
「そうですか。そんなことが……」
「しかし、あなたが無事でよかった」
主は優しく笑いながら答えた。
「失敗は誰にでもあります」
「とにかく今は、傷を治すことだけを考えてください」
シェリの自宅前に、薄汚れた黒い犬が倒れていた。
死んでいるようにも見えたが、シェリの姿を認めると立ち上がり、唸り声と共によろよろと近づいてくる。噛み付いてくるようにも見えた黒い犬は、シェリの手前で再び倒れ込んだ。
鬱陶しく思ったシェリは、ナイフを取り出して犬へ投げつけようとするが、ふと、子供に抱えられていた犬を思い出し、手を止める。
あの時の犬がやってきた、とは思い難い。それでも何かしようとする気にはなれなかった。
翌日になっても薄汚れた黒い犬は同じ場所にいた。もうシェリを見ても唸り声を上げることはないようだ。足で払うが動いてくれそうにない。気まぐれで残飯を与えてみると、貪るように食べだした。
政治家、軍人、貴族、王族、富豪……。命じられるままに依頼をこなしていく。それまでと何も変わらない日々だったが、自宅前には薄汚れた黒い犬がいた。
ある日、シェリが戻ると犬は死んでいた。
飼っているつもりはなく、愛着もなかった筈だった。
たかが犬一匹、消えていなくなろうとも、どうでもいい筈だった。
ただ、シェリの目からは涙がこぼれ落ちていた。
犬の傍に立ち竦むシェリの元に主が現れた。
「あなたの犬ですか?」
「いいえ」
そう、飼っているつもりなど別に無かった。ただ一緒にいただけだった。
「悲しいのですか?」
主の問い掛けにシェリは無言だった。
「その犬、いただけますか?」
主の命である上に、死んでしまった野良犬なのだから断る理由は無い。
「誰かに必要とされることは、何物にも代え難い」
そう言葉を残して、犬の死骸を抱いた主は去っていった。
たかが犬一匹、消えていなくなろうとも、どうでもいい筈だった。
「困りましたね」
「我々の仕事とて必ず成功するものではありませんが」
「本来のあなたはそんなものではない筈です」
「次こそは失敗しないと信じています」
主の言葉がシェリの頭の中を反芻する。あの犬がいなくなって以来、仕事を失敗することが多くなってしまった。
何の躊躇いもなく振るえていたナイフの切っ先が鈍ってしまう。対象を始末することで喜ぶ依頼人がいると同時に、悲しむ誰かがいるという、当たり前のことを知ってしまった為だ。
暗殺を行う為に教育されてきたことは知っていたし、かつては自らの存在意義だと信じて疑わなかったが、最早それが行えなくなっていることに気が付いた。今さら別の生き方ができるとも思えない。
他者を殺める為だけに使用してきたナイフを取り出し、自らの手首を斬りつけた。
血が大量に流れ続け、徐々に意識が遠のいた。
「—了—」
簡単な仕事だった。馬車に揺られながら、シェリは今回の仕事を思い返す。
依頼人の手引きで使用人として潜り込み、頃合いを見計らって対象の食事に毒を盛る。それだけだった。
彼は今際の際に何を思ったのだろう。家族のことか、信頼していたであろう依頼人のことか、ただ毒に苦しんでいただけか。
しかし、どれもシェリにとってはどうでもいいことだった。
今回のように下準備が整っているケースは多くない。
泣いて無様な命乞いをする者、剣を手に取り最後の足掻きをする者、大金を積んで寝返りを提案する者もいたが、暗殺者たるシェリは主の命に従うのみであり、いずれも無駄なことだった。
グランデレニア帝國、ルビオナ連合王国、マイオッカ共和国、ミリガディア王国、インペローダ。人間同士の争いが絶えない曙光の時代(ドーンライト・エイジ)において暗殺需要が絶えることはなく、報酬さえあれば何処へでも暗殺者を派遣し、誰でも始末する。シェリの主もその一人だ。
老齢の紳士然とした風貌の主は、落ち着き払った声で言う。
「こちらが今回の暗殺対象となります。よろしくお願いします」
主が対象の写真と資料をシェリに渡す。そこに写っていたのは年端もいかない子供だ。思わず主の顔を見返す。
「気乗りしませんか?」
あくまで柔らかい口調で、主はシェリへ語り掛けた。
「いいえ。やります」
「そうですか。では、改めてよろしくお願いします」
夜、拍子抜けするほど簡単に侵入できた。
広い屋敷の一室で黒い犬を抱え、怯えた表情の対象を確認する。
「おねえちゃんが、ころしやさん?」
「このこはころさないで」
既に自らがどういう立場なのか察していたようで、抵抗する様子はない。ただ、犬の命は惜しいらしい。
黒い犬が吠え出す。
シェリは何も答えぬまま対象を見据えてナイフを取り出し、構える。
構えるが、振り下ろすことができずにいた。そう逡巡して立ち尽くしているうちに、部屋の扉が開いた。
「動くな!」
遅まきながら異常に感づいた警備達が、銃を構えてシェリに警告を出す。
「お嬢様、こちらへ」
対象が警備達の元へ走る。警備の後ろに隠れ、こちらを窺うように顔を出す。
シェリは失敗してしまったことを悔やみつつも、心の何処かで安堵していた。
逃亡ルートの算段をしている時、室内に発砲音が響いた。
シェリが殺す筈だった、警備達が守る筈だった子供が倒れている。
「嗚呼、憐れお嬢様は流れ弾に当たって死んでしまわれた」
警備の一人がわざとらしく声を上げる。
「腕の良い奴を雇ったと聞いていたが、ガキも殺せないような三流とはな」
シェリはおおよその現状を理解した。容易く侵入できたのもお膳立てされたが故。なんとしてでも事を成し遂げたかった依頼人は、更に保険を掛けていたのだろう。
おそらくは、最低でも賊が侵入したという事実さえあればよかったのだ。
「もちろん、そんな三流にも死んでもらおうか」
シェリは窓へ向かって駆け出す。警備達が放つ銃弾が体を貫くまで立ち止まっている場合ではない。
どうにか辿り着いた窓から飛び出し、闇夜へ逃げる。警備達が追ってくる様子はないようだ。
屋敷から黒い犬の鳴き声が響き続けていた。
翌日、シェリは事の顛末を主へ話した。
「そうですか。そんなことが……」
「しかし、あなたが無事でよかった」
主は優しく笑いながら答えた。
「失敗は誰にでもあります」
「とにかく今は、傷を治すことだけを考えてください」
シェリの自宅前に、薄汚れた黒い犬が倒れていた。
死んでいるようにも見えたが、シェリの姿を認めると立ち上がり、唸り声と共によろよろと近づいてくる。噛み付いてくるようにも見えた黒い犬は、シェリの手前で再び倒れ込んだ。
鬱陶しく思ったシェリは、ナイフを取り出して犬へ投げつけようとするが、ふと、子供に抱えられていた犬を思い出し、手を止める。
あの時の犬がやってきた、とは思い難い。それでも何かしようとする気にはなれなかった。
翌日になっても薄汚れた黒い犬は同じ場所にいた。もうシェリを見ても唸り声を上げることはないようだ。足で払うが動いてくれそうにない。気まぐれで残飯を与えてみると、貪るように食べだした。
政治家、軍人、貴族、王族、富豪……。命じられるままに依頼をこなしていく。それまでと何も変わらない日々だったが、自宅前には薄汚れた黒い犬がいた。
ある日、シェリが戻ると犬は死んでいた。
飼っているつもりはなく、愛着もなかった筈だった。
たかが犬一匹、消えていなくなろうとも、どうでもいい筈だった。
ただ、シェリの目からは涙がこぼれ落ちていた。
犬の傍に立ち竦むシェリの元に主が現れた。
「あなたの犬ですか?」
「いいえ」
そう、飼っているつもりなど別に無かった。ただ一緒にいただけだった。
「悲しいのですか?」
主の問い掛けにシェリは無言だった。
「その犬、いただけますか?」
主の命である上に、死んでしまった野良犬なのだから断る理由は無い。
「誰かに必要とされることは、何物にも代え難い」
そう言葉を残して、犬の死骸を抱いた主は去っていった。
たかが犬一匹、消えていなくなろうとも、どうでもいい筈だった。
「困りましたね」
「我々の仕事とて必ず成功するものではありませんが」
「本来のあなたはそんなものではない筈です」
「次こそは失敗しないと信じています」
主の言葉がシェリの頭の中を反芻する。あの犬がいなくなって以来、仕事を失敗することが多くなってしまった。
何の躊躇いもなく振るえていたナイフの切っ先が鈍ってしまう。対象を始末することで喜ぶ依頼人がいると同時に、悲しむ誰かがいるという、当たり前のことを知ってしまった為だ。
暗殺を行う為に教育されてきたことは知っていたし、かつては自らの存在意義だと信じて疑わなかったが、最早それが行えなくなっていることに気が付いた。今さら別の生き方ができるとも思えない。
他者を殺める為だけに使用してきたナイフを取り出し、自らの手首を斬りつけた。
血が大量に流れ続け、徐々に意識が遠のいた。
「—了—」