「佐爾格的已處分完畢」
「是嗎……」
聽到尤莉卡的報告後,古斯塔夫小小地嘆了個氣。
今年這已經是第五位被處分的人了。
包含這次的佐爾格,被處分的人全部,都是曾經對古斯塔夫的理念有共感者。並且,還是賜予了超能之力的人們。
但是,那力量對他們來說,可能是太過龐大了。一開始對組織的理念抱有同感並受感動之者,卻因為某些契機造成使用力量上的傲慢、失控、毀滅。
目前還沒有出現打算破壞組織的人,但只要繼續擴張組織的規模,這個問題還是必須要顧慮的。
雖然實驗過對腦部下手,但是成功率一直都很低。只要精神異於常人,這壓倒性的力量,是否對腦部來說也是難以控制的毒呢。
要像尤莉卡及康拉德這樣,擁有強大的意志,能夠適當使用力量的人太少了。
到底要怎麼確保像尤莉卡他們這樣,不會沉淪於力量,正常活動的人材呢。
作為組織的首領,眼下古斯塔夫最煩惱的問題就是這一點。
「……好久沒去視察了,尤莉卡跟我來。」
「遵命」
嘆了幾次息之後,古斯塔夫決定藉視察出去轉換心情。
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在障壁的保護下,魯貝斯這個地方不受《渦》的威脅,充滿著活力。
市場擺滿食物跟商品,來往的人們自由地購買所需之物。
支援生活在變成荒野大地的流浪民,確保與米利加迪亞之間的流通路線。
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為了休息而去了一間小聖堂。尤莉卡說要去觀察僧侶的狀況,就先分開了。
古斯塔夫則是拿著供品跟祭司一起享用,邊閒聊著最近的狀況。
這個聖堂的祭司是才剛當上祭司不久的年輕人,不是組織的一員。雖然將來也打算讓他成為組織的一員,不過那是之後的事了。
古斯塔夫作為大君的親信,向祭司問出周圍的事。就算只是出來轉換心情,表面上的行動還是視察。要是他負責的區域治安很差的話,就必須跟大君諫言增加警備隊人員才行。
「我管理的區域中,犯罪的數量跟前一次比,並沒有增加」
「真的嗎,那我就安心了。這一定是您有真誠聽取居民需求的證明」
祭司聽到古斯塔夫的話,露出害羞的笑容。
「沒這回事,我還有很多不足的地方。只是……」
「只是?」
「啊,沒什麼。我不知道這該不該和威爾瑟大人您說……」
祭司的笑容瞬間變成困擾的表情。他本人應該是發現自己說了不該說的話,從表情可以看得出來。
「只要是能將這個國家變得更好的事,無論什麼樣的事都請告訴我。我就是為此存在的」
古斯塔夫催促祭司繼續說下去。
「我知道了。其實,是有帶孩子的人跟我說,希望能讓孩子更常去學習」
「您是說光靠聖堂主辦的讀書會不夠的意思嗎?」
現在的米利加迪亞確實沒有學習高階學問的地方。聖堂自主舉辦基礎教養的讀書會已經極限了。
「是的,我是從流浪民那邊聽來的,聽說古朗德利尼亞帝國似乎有學習高階學問的地方」
祭司繼續說著。
「在那裡似乎可以接受專業教育,而接受專業教育的人們,似乎是負責在掌管設施及商店的經營指揮」
「原來如此。實施高等的專業教育,從民間來讓國家變得更好對吧」
「因為我也只是聽說的,可能多少有些出入……」
「只要知道這些就夠了。這件事,我一定會向大君諫言的」
「謝,謝謝您!」
「不會的,是您讓我聽到重要的事,是我該向您道謝才是」
面對祭司一副惶恐的樣子,古斯塔夫微笑的回答他。
之後又閒聊一下,似乎沒有什麼會引發問題的事件與跡象。
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祭司離開後,尤莉卡回來,古斯塔夫默默地盯著杯子。
「學校……。對啊,還有這一手」
那是從古斯塔夫出生以前就再平常不過的東西。為什麼至今都沒有想到呢,真的是盲點啊。
擔心孩子將來的雙親,給了古斯塔夫一線光明。
「怎麼了嗎?」
古斯塔夫自己一個人想通並點點頭的樣子,尤莉卡一臉奇妙地看著。
「尤莉卡,回去了」
「遵命」
古斯塔夫沒有回答尤莉卡,直接站起身來。
回到聖達瑞斯大聖堂的古斯塔夫,連續兩日窩在自己的房間寫計畫書。
雖然必須在米利加迪亞國內創辦專業教育的學校,但這一點就交給當代的大君去做。國家的事,只要提議給大君就夠了。
但是,在組織之下的學校,必須要為超人育成機關來利用才行。
從此學塾培養出的超人集團,必須是『特別』的。就是需要特別,所以必須給他們更高質的教育。
什麼是需要的,什麼又是不需要的。思考這些,並且啟動計畫就是古斯塔夫的任務。
|
「學校,嗎?」
聽到計畫的康拉德歪頭問道。
他是貧民區出身,跟學問與讀書無緣之人,所以特別會對計畫感到有疑問吧。
「這個計畫是為了,盡可能的防止,得到力量而失控的人」
「不是所有人,都可以像我們這樣控制力量。不過學校啊……。之前怎麼會沒想到呢」
克洛維斯因自己沒有想到這一點,一臉對自己感到驚訝的樣子。他自己本身也是在薄暮時代接受過基礎以上教育的人。
「已經成熟的人得到壓倒性力量的話,沒有強力的意志就無法控制住。這是至今為止的教訓告訴我們的」
「所以,要在還什麼都不知道的孩童時期就告訴他們,『擁有力量是理所當然的』」
尤莉卡邊看著計劃書,邊露出難得的微笑。光是能減少那煩人的發狂超人處分工作的話,就值得了。
「沒錯。從一開始就教育他們是被選上的超人者的話,應該就可以減少失控的風險」
「原來如此。雖然因人而異,但是只要沒有外來情報的話,孩子們就會率直地接受所學」
「雖然很花時間,但是沒有辦法。再怎樣都比什麼都不做來得好」
計劃書上寫的時間都是以年為單位的,是目前為止是最長期的計劃。
古斯塔夫認為,要養成孩子就是要花這麼久的時間。
雖然是很長遠的計畫,但是為了實現自己的理想,不管花多少時間都必須完成。
「嗯,只要有改善現況的可能性就試試看吧。需要的人材由我跟尤莉卡來挑可以嗎」
「那麼,場所呢?」
「場所已經決定好了。在羅占布爾克的山林地區,有一處吾的土地。我打算使用那一塊地」
「可以嗎?」
「當然。康拉德,土地的分佈圖給你準備好了。建築物的風格與建造工程就交給你去打點了」
「遵命。我會遵從您的意志,完成最好的東西」
康拉德深深地敬了一個禮。
「將最好的結果呈現給吾吧,吾很期待各位的力量」
「這一切都是為了大善世界」
在場全員異口同聲。
古斯塔夫大大地點了頭,下定決心要讓計畫成功。
|
「─完─」
3248年 「学び舎」
「ゾルゲの処分が完了しました」
「そうか……」
ユーリカの報告に、ギュスターヴは小さな溜息を吐いた。
今年に入ってから五人目の処分者だ。
今回のゾルゲを含め、処分された者達は皆、ギュスターヴの掲げる理念に共感していた。その上で、超越した力を与えた者達だ。
だが、彼らには過ぎた力だったのだろう。初めは組織の理念に感銘を受けた者であったのに、何かのきっかけで力に驕り、暴走し、破滅していった。
まだ組織の転覆を図った者こそ出ていないが、引き続き組織規模を拡充していく以上、この問題は憂慮すべきことだ。
脳そのものに手を加える実験も行っているが、成功率は低いまま上がらない。精神が常人である以上、他者を圧倒できる力は脳でも御し難い毒なのだろう。
ユーリカやコンラッドのように意志を強く持ち、適切に力を振ることのできる者は少なかった。
どうすればユーリカ達のように力に溺れることなく活動できる人材を確保できるのか。
組織のトップとして、目下ギュスターヴを一番悩ませている問題であった。
「……久々に視察へ行くか。ユーリカ、供をせよ」
「承知しました」
幾度目かの溜息を吐いた後、ギュスターヴは視察と称した気分転換に出掛けることにした。
障壁によって《渦》から脅かされることのないルーベスは、活気に溢れていた。
市場には食物や商品が所狭しと並べられ、行き交う人々は思い思いに買い物をしている。
荒れ野と化した大地に生活する流浪の民を支援し、ミリガディアの流通ルートを確保したのが奏功している。
休憩にと立ち寄った小さな聖堂。ユーリカは僧侶達の様子を観察してくると言って、その場を離れていった。
ギュスターヴは供物を祭司と共に嗜むこととし、軽い雑談から近辺の状況を聞き出していた。
この聖堂を預かる祭司は祭司になって間もない若者で、組織の一員ではない。いずれそうなることが決定付けられてはいるが、それは未来の話だ。
大君の側近という顔を作った上で、祭司に周辺のことを尋ねた。気分転換とはいえ、表向きの行動は視察である。彼の担当する区画の治安が悪くなっているようであれば、警備隊の増員なりを大君に進言せねばならない。
「私の管理する区画での犯罪件数は、前回報告した時から増えていません」
「そうですか、それは安心しました。貴方が住民の皆様のご相談を真摯に受け止めていることの証拠ですね」
祭司はギュスターヴの言葉にはにかみを見せる。
「いえ、私などまだまだです。ただ……」
「ただ?」
「あ、いえ。ウェルザー様にこのようなことをお話しすべきかどうか……」
笑みが一瞬にして困惑に変わる。当人にとっては失言だったのだろう。それが表情から読み取れた。
「この国をより良くしていくことに繋がるのであれば、何でも話してみなさい。そのために私はいるのですから」
ギュスターヴは話を続けるよう促した。
「わかりました。実は、子を持つ者から、もっと子供に勉学をさせたいという相談を受けておりまして」
「聖堂が主催する勉強会では不十分だと?」
高度な学問を学べる場所は、確かに今のミリガディアには無い。聖堂が自主的に主催する、基礎教養の勉強会がせいぜいだった。
「はい。流浪の民から聞いたようなのですが、グランデレニア帝國には高度な学問を学べる場所があるらしいとのことです」
祭司は言葉を続ける。
「そこでは専門教育が受けられるようで、そういった高等教育を受けた者達が、施設や商店の運営指揮を執っているとのことなのです」
「なるほど。高等な専門教育を施すことで、民間からも国を良くしていくことができるということですね」
「又聞きですので、多少の間違いはあると思いますが……」
「これだけわかれば十分です。この件について、是非とも大君に提言を行いましょう」
「あ、ありがとうございます!」
「いえいえ、貴重なお話を聞かせていただきました。礼を言うべきはこちらです」
恐縮しきりな祭司に、ギュスターヴはにこやかに笑って返した。
その後も少し雑談をしたが、これといって問題となるような事件や事象は無さそうだった。
祭司が去り、ユーリカが入れ違いに戻ってきても、ギュスターヴは飲み物のカップをじっと見つめていた。
「学び舎……。そうか、その手があったな」
それはギュスターヴが生まれる前から当たり前にあったものだが、何故今まで思い付かなかったのか。まさに盲点とはこのことだった。
子の将来を憂いた親の相談が、一筋の光明をギュスターヴにもたらした。
「どうかなさいましたか?」
一人納得して頷くギュスターヴを、ユーリカが不思議そうに眺める。
「ユーリカ、帰るぞ」
「承知しました」
ユーリカを気に留めることもなく、ギュスターヴは立ち上がった。
聖ダリウス大聖堂に帰還したギュスターヴは、二日ほど自室に籠もって計画を練った。
ミリガディア国内に専用教育の学び舎を作り上げることも必要だが、それは当代の大君に任せてある。国のことは大君に提案するだけで済むことだ。
だが、組織直下の学び舎は超人の育成機関として利用しなければならない。
これより作り上げようとしている超人の集団は、『特別』であらねばならない。特別であることを求めるのなら、より一層上質で高等な教育を施す必要がある。
何が必要で何が不要か。それを考え、計画を始動させるのはギュスターヴの役目であった。
「学び舎、ですか?」
計画を提示されたコンラッドは首を傾げた。
彼はスラムの出身であり、学問や勉学とは無縁の人物であったため、余計に疑問に感じたのだろう。
「この計画はな、力を得た者が暴走することを、少なからず防ぐための計画なのだ」
「皆が皆、僕達のように力をコントロールできる訳ではないからね。しかし学び舎か……。どうして見落としていたんだろう」
クロヴィスは自身の迂闊さに呆れ返った。自身も薄暮の時代に基礎教養以上の勉学を行った身なのだ。
「成熟した者が他者を圧倒する力を得れば、強い意志なしには制御できない。それは今までのことから明らかだ」
「だから、何も知らない子供のうちから『力を持つことが当然である』と教育するのですね」
計画書を読みながら、ユーリカが珍しく笑みを浮かべたように見えた。無駄に暴走する超人もどきの処分が減るのなら、それだけで歓迎に値するのだろう。
「そういうことだ。選ばれし超越した人間であると初めから教え込めば、暴走するリスクは減るであろう」
「なるほど。程度の差はあれ、子供は外部からの情報がなければ、学んだことを素直に受け入れるからね」
「時間は掛かるであろうが、そこは致し方がない。ただ傍観していても詮無きことよ」
計画書に記載した期間は年単位で、今までの中で最も長期にわたる計画だ。
子供の育成とはそういうものであると、ギュスターヴは理解している。
気の長い話ではあるが、自身の理想を体現するためには、どれ程の長い時間が掛かろうとも完遂せねばならない。
「うん。状況を改善できる可能性があるのならやってみよう。必要な人材は僕とユーリカで選定すればいいかな」
「では、場所は?」
「場所はもう決まっている。ローゼンブルグの山岳地帯に、吾が所有する土地があるでな。そこを利用しようと思う」
「いいのかい?」
「無論だ。コンラッド、土地の図面を用意した。建物の様式と土木作業の手配を任せる」
「承知いたしました。御意志に沿う最高のものに仕上げます」
コンラッドが深く礼をする。
「最良の結果を吾に提示せよ。皆の力に期待している」
「全ては大善なる世界のために」
その場にいた全員の声が重なる。
ギュスターヴは大きく頷き、計画成功への決意を固めるのであった。
「—了—」
「ゾルゲの処分が完了しました」
「そうか……」
ユーリカの報告に、ギュスターヴは小さな溜息を吐いた。
今年に入ってから五人目の処分者だ。
今回のゾルゲを含め、処分された者達は皆、ギュスターヴの掲げる理念に共感していた。その上で、超越した力を与えた者達だ。
だが、彼らには過ぎた力だったのだろう。初めは組織の理念に感銘を受けた者であったのに、何かのきっかけで力に驕り、暴走し、破滅していった。
まだ組織の転覆を図った者こそ出ていないが、引き続き組織規模を拡充していく以上、この問題は憂慮すべきことだ。
脳そのものに手を加える実験も行っているが、成功率は低いまま上がらない。精神が常人である以上、他者を圧倒できる力は脳でも御し難い毒なのだろう。
ユーリカやコンラッドのように意志を強く持ち、適切に力を振ることのできる者は少なかった。
どうすればユーリカ達のように力に溺れることなく活動できる人材を確保できるのか。
組織のトップとして、目下ギュスターヴを一番悩ませている問題であった。
「……久々に視察へ行くか。ユーリカ、供をせよ」
「承知しました」
幾度目かの溜息を吐いた後、ギュスターヴは視察と称した気分転換に出掛けることにした。
障壁によって《渦》から脅かされることのないルーベスは、活気に溢れていた。
市場には食物や商品が所狭しと並べられ、行き交う人々は思い思いに買い物をしている。
荒れ野と化した大地に生活する流浪の民を支援し、ミリガディアの流通ルートを確保したのが奏功している。
休憩にと立ち寄った小さな聖堂。ユーリカは僧侶達の様子を観察してくると言って、その場を離れていった。
ギュスターヴは供物を祭司と共に嗜むこととし、軽い雑談から近辺の状況を聞き出していた。
この聖堂を預かる祭司は祭司になって間もない若者で、組織の一員ではない。いずれそうなることが決定付けられてはいるが、それは未来の話だ。
大君の側近という顔を作った上で、祭司に周辺のことを尋ねた。気分転換とはいえ、表向きの行動は視察である。彼の担当する区画の治安が悪くなっているようであれば、警備隊の増員なりを大君に進言せねばならない。
「私の管理する区画での犯罪件数は、前回報告した時から増えていません」
「そうですか、それは安心しました。貴方が住民の皆様のご相談を真摯に受け止めていることの証拠ですね」
祭司はギュスターヴの言葉にはにかみを見せる。
「いえ、私などまだまだです。ただ……」
「ただ?」
「あ、いえ。ウェルザー様にこのようなことをお話しすべきかどうか……」
笑みが一瞬にして困惑に変わる。当人にとっては失言だったのだろう。それが表情から読み取れた。
「この国をより良くしていくことに繋がるのであれば、何でも話してみなさい。そのために私はいるのですから」
ギュスターヴは話を続けるよう促した。
「わかりました。実は、子を持つ者から、もっと子供に勉学をさせたいという相談を受けておりまして」
「聖堂が主催する勉強会では不十分だと?」
高度な学問を学べる場所は、確かに今のミリガディアには無い。聖堂が自主的に主催する、基礎教養の勉強会がせいぜいだった。
「はい。流浪の民から聞いたようなのですが、グランデレニア帝國には高度な学問を学べる場所があるらしいとのことです」
祭司は言葉を続ける。
「そこでは専門教育が受けられるようで、そういった高等教育を受けた者達が、施設や商店の運営指揮を執っているとのことなのです」
「なるほど。高等な専門教育を施すことで、民間からも国を良くしていくことができるということですね」
「又聞きですので、多少の間違いはあると思いますが……」
「これだけわかれば十分です。この件について、是非とも大君に提言を行いましょう」
「あ、ありがとうございます!」
「いえいえ、貴重なお話を聞かせていただきました。礼を言うべきはこちらです」
恐縮しきりな祭司に、ギュスターヴはにこやかに笑って返した。
その後も少し雑談をしたが、これといって問題となるような事件や事象は無さそうだった。
祭司が去り、ユーリカが入れ違いに戻ってきても、ギュスターヴは飲み物のカップをじっと見つめていた。
「学び舎……。そうか、その手があったな」
それはギュスターヴが生まれる前から当たり前にあったものだが、何故今まで思い付かなかったのか。まさに盲点とはこのことだった。
子の将来を憂いた親の相談が、一筋の光明をギュスターヴにもたらした。
「どうかなさいましたか?」
一人納得して頷くギュスターヴを、ユーリカが不思議そうに眺める。
「ユーリカ、帰るぞ」
「承知しました」
ユーリカを気に留めることもなく、ギュスターヴは立ち上がった。
聖ダリウス大聖堂に帰還したギュスターヴは、二日ほど自室に籠もって計画を練った。
ミリガディア国内に専用教育の学び舎を作り上げることも必要だが、それは当代の大君に任せてある。国のことは大君に提案するだけで済むことだ。
だが、組織直下の学び舎は超人の育成機関として利用しなければならない。
これより作り上げようとしている超人の集団は、『特別』であらねばならない。特別であることを求めるのなら、より一層上質で高等な教育を施す必要がある。
何が必要で何が不要か。それを考え、計画を始動させるのはギュスターヴの役目であった。
「学び舎、ですか?」
計画を提示されたコンラッドは首を傾げた。
彼はスラムの出身であり、学問や勉学とは無縁の人物であったため、余計に疑問に感じたのだろう。
「この計画はな、力を得た者が暴走することを、少なからず防ぐための計画なのだ」
「皆が皆、僕達のように力をコントロールできる訳ではないからね。しかし学び舎か……。どうして見落としていたんだろう」
クロヴィスは自身の迂闊さに呆れ返った。自身も薄暮の時代に基礎教養以上の勉学を行った身なのだ。
「成熟した者が他者を圧倒する力を得れば、強い意志なしには制御できない。それは今までのことから明らかだ」
「だから、何も知らない子供のうちから『力を持つことが当然である』と教育するのですね」
計画書を読みながら、ユーリカが珍しく笑みを浮かべたように見えた。無駄に暴走する超人もどきの処分が減るのなら、それだけで歓迎に値するのだろう。
「そういうことだ。選ばれし超越した人間であると初めから教え込めば、暴走するリスクは減るであろう」
「なるほど。程度の差はあれ、子供は外部からの情報がなければ、学んだことを素直に受け入れるからね」
「時間は掛かるであろうが、そこは致し方がない。ただ傍観していても詮無きことよ」
計画書に記載した期間は年単位で、今までの中で最も長期にわたる計画だ。
子供の育成とはそういうものであると、ギュスターヴは理解している。
気の長い話ではあるが、自身の理想を体現するためには、どれ程の長い時間が掛かろうとも完遂せねばならない。
「うん。状況を改善できる可能性があるのならやってみよう。必要な人材は僕とユーリカで選定すればいいかな」
「では、場所は?」
「場所はもう決まっている。ローゼンブルグの山岳地帯に、吾が所有する土地があるでな。そこを利用しようと思う」
「いいのかい?」
「無論だ。コンラッド、土地の図面を用意した。建物の様式と土木作業の手配を任せる」
「承知いたしました。御意志に沿う最高のものに仕上げます」
コンラッドが深く礼をする。
「最良の結果を吾に提示せよ。皆の力に期待している」
「全ては大善なる世界のために」
その場にいた全員の声が重なる。
ギュスターヴは大きく頷き、計画成功への決意を固めるのであった。
「—了—」