在小型裝置發出輕快鈴聲的同時,裝置顯示接收到了電子郵件。
男子打開了收到的電子郵件。
寄件者的欄位上,顯示的是已知來源。
男子對這個部分並不特別在意,開始閱讀起郵件上的內容。
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■■日期:三三八五年 雨月十日 03:01
在混沌元素影響次元的實驗中,從被影響的次元裡成功捕獲了超小型生命體。
由於這個超小型生命體無法在空氣中進行生命活動,因此在假死狀態下採取了樣本。
從日後的觀察中得知,這個超小型生命體只可以在其他的生命體的血液,又或者是相當於血液的液體中進行生命活動。
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為了更詳細地觀察超小型生命體,開始進行動物實驗。
在初期階段裡得知這個超小型生命體是寄生生命體。並且得知,被寄生的生物會爆發性的增強免疫力。
推測是為了避免由於宿主的衰弱而導致無法寄生的情況發生。
為了調查對人體的影響,把寄生生命體移植至自己身上。
現在已經過了12小時,尚未確認有身體不適之類的症狀。
將繼續觀察實驗過程。
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本郵件附加了動物實驗的測量數據檔案。
使用的動物,請參照No.884中記載的類似於鳥類的地下生息生命體數據檔案。
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這樣的文章與動物實驗的測量數據檔案一同寄了過來。
男子將檔案從裝置中抽出後,發送至設有安全加密的主要大型電腦。
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■■日期:三三八五年 雨月十六日 17:22
將寄生生物移植至體內已經過48小時。身心皆沒有出現不適,非常健康。
從測量數據檔案中確認到,寄生生命體為了不被人體排出,寄生後24小時內會偽裝成中性白細胞之類的免疫細胞。
作為追加實驗,將297日前發現會引發肝功能障礙的細菌,植入了自身體內。
有關細菌的詳細資料,請參照No.762的資料。
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本郵件附加了寄生生命體在人體內的活動紀錄。
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不曉得是什麼時候在什麼樣的情況下寄來的電子郵件。也不曉得寄件者持續寄送著電子郵件的理由是什麼?
男子並沒有受到任何人的委託要求保管郵件。
就連這個裝置,也是發送郵件的人說著「就隨你喜歡的自由使用吧」交給自己的。
因此,男子任意使用著這個電子郵件,電子郵件的內容剛好是男子朝理想前進所需要的東西。
所以男子保管著電子郵件。為了自己,也為了未來。
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■■日期:三三八五年 雨月二十一日 09:36
植入會引發肝功能障礙的細菌已經過24小時。肝功能並沒有發現異常。
試著檢驗細菌,但並未驗出。
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測量數據檔案中得知,細菌植入12小時後,寄生生命體似乎會出現類似免疫功能的作用,將那些細菌全部驅除掉。
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本郵件附加了細菌與寄生生命體的動向觀測紀錄檔案。
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像這樣的電子郵件開始送過來是從差不多一年前開始的。
一開始覺得是大概是誰寄錯的,或者可能是裝置故障了吧。
但是,寄來的電子郵件內容的講話方式與其附加資料裡的生體情報,都與目前已經不在的裝置主人酷似。
男子確信,是這個裝置的主人用著不知道什麼樣的方法,將研究筆記或手記之類的東西寄了出來。
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■■日期:三三八五年 風月九日 22:47
隨著動物實驗的追加檢證,關於寄生生命體的危險性。
進行人體實驗的同時也進行著動物實驗,但在實驗中被使用的動物都死亡了。
原因,被研判是寄生生命體的過度繁殖。
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寄生生命體的過度繁殖原因是,隨著投入細菌與病原體而導致免疫機能的活性化造成的。
更進一步的動物實驗結果,宿主的免疫機能一旦陷入在短時間內被活化,就能確認到寄生生命體的防衛本能有過度運作的情況。
這個防衛本能造成的行動是,會對寄生生命體的宿主進行生命活動所需的細胞發動攻擊。而且攻擊就算在宿主的生命維持無法正常運作時也毫不減弱,結果就造成宿主的衰弱死。
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由測量結果來看,寄生生命體的防衛本能會爆走,是要在一個月內罹患10到15個左右的疾病時才會發生。
而從暴走至宿主死亡為止的時間,雖然會因個體的大小而有所不一,但大約都是72小時。
宿主死亡後,寄生生命體則會停止暴走,會轉為休眠狀態。
刻意以細菌或是病原體誘發疾病發生這件事,是相當危險的。
在本信件裡,附上過度繁殖在超過一定數值後所發生之現象的觀察檔案。
■■
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男人看了電子郵件時,想起最後一次看到寄信者的樣子。
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「對你們雖然不好意思,但還是決定由我去」
大型的機械,靜靜地發出驅動聲。
被稱為『搖籃』的裝置,是集結了同志們對於混沌元素研究的大成。
在那個裝置中的是,揹著背包臉色不太好的女工程師。
「使用搖籃能夠平安回來的,除了她以外別無他人了。確定不再重新考慮嗎?」
將混沌元素移轉為『能夠控制的暴走狀態』的這個裝置,還未完全完成。
特別是活體實驗還在研究當中,將生命體放置於當中啟動『搖籃』,其中的七成都成為了超過物理法則的屍體。
剩下的三成活體,則是消失不見了。雖然推測是去了異世界,但能夠證明的人只有一個人,那就是高階工程師瑪格莉特。
她以外的人來使用裝置的話,又會是如何。真的是去了異世界了,又或者是被捲進次元的夾層呢。
可以證明的人,除了瑪格莉特沒有其他人了。
「反正什麼都不做的話,不到幾年也會喪命。既然如此就算現在就死了,也無所謂不是嗎?」
「……這樣、嗎」
女人知道自己所剩的時間已經不多了。
而男人也沒詳細加以詢問。因為明白那是無法踏進的私人領域。
「不要誤會啊,拉姆。我只是──」
女人揚起嘴角,刻意的擠出像是發自內心的笑臉。
「我對於欺騙了監視者展開旅行這件事,可是開心的不得了啊」
『搖籃』的門關上了。過了一下將門打開時,女人就這麼消失不見了。
這是,男人聽到她的最後的聲音。
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男人……拉姆邊想著已出發到異世界同志的事,一邊將送來的郵件轉移至主機上。
寄信者的名字是『潔米·多莉』
那是拉姆他們的同志,為了滿足自己的求知慾望,至今不知道在何處的工程師名字。
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「─完─」
3385年 「記録」
小型デバイスが軽快な音と共にメールの受信を知らせた。
男は受信したメールを開く。
送信者の欄には、既知のアドレスが表示されている。
そのことには特段気に掛けず、男はメールの内容を閲覧する。
■■受信:三三八五年 雨月十日 03:01
ケイオシウム次元干渉実験中に、干渉した次元から超小型生命体の捕獲に成功。
この超小型生命体は空気中で生命活動を行うことができないため、仮死状態での採取が適切であった。
後日の観測により、この超小型生命体は他の生命体の血液、またはそれに準ずる液体の中でのみ生命活動が可能である。
超小型生命体の詳細な観測を行うために、動物実験を開始。
初期段階で、この超小型生命体が寄生生命体であることが判明。併せて、寄生した生物の免疫力を爆発的に高めることも明らかになった。
宿主の衰弱による寄生不可能状態を回避するためであろうと推察される。
人体への影響を調査するために、寄生生命体を自身に投与。
12時間が経過した現在、体調不良等の兆候を確認することはできず。
引き続き経過を観察する。
本メールには動物実験の計測データを添付する。
使用した動物に関しては、No.884に記載した鳥類に類似した地下生息型生命体のデータを参照されたし。
■■
このような文章と共に、動物実験の計測データなどが送られてきた。
男はそのデータをデバイスから抽出すると、強固なセキュリティが施されたメインフレームへと送信した。
■■受信:三三八五年 雨月十六日 17:22
寄生生物を体内に投与してから48時間が経過。心身共に不調も無く、いたって健康である。
計測器から得られたデータによると、寄生生命体は人体から排出されないよう、寄生後24時間以内に好中球などの免疫担当細胞へ擬態したことを確認。
追加実験として、297日前に発見した肝機能障害を引き起こす細菌を自らに投与。
細菌の詳細については、No.762の資料を参照のこと。
本メールには、寄生生命体の人体内における活動記録を添付する。
■■
いつ、どのようなタイミングで送られてくるかわからないメール。送り主が何故メールを送り続けているのか。その理由もわからない。
そのメールを保管することを、男は誰かに依頼されたわけではない。
そもそもこのデバイスは「好きに使ってもらって構わない」という言葉と共に、メールの送り主から渡されたものだ。
だから、男はこのメールを好きに使うことにした。メールの内容は男が目指す理想に必要なものであった。
だから男はメールを保管する。自身のために。未来のために。
■■受信:三三八五年 雨月二十一日 09:36
肝機能障害を引き起こす細菌を投与してから24時間が経過。肝機能に異常は見られず。
細菌の検出を試みたが、検出されず。
計測器のデータによると、細菌投与から12時間後、寄生生命体が免疫機能に類似した働きを示し、当該細菌を全て駆逐した模様。
本メールには、細菌と寄生生命体の動向を観測したデータを添付する。
■■
このようなメールが届き始めたのは、今から一年ほど前だ。
最初は何者かが誤送信したものか、もしくはデバイスの故障だろうと思った。
だが、送られてくるメールの論調、そして添付される資料に時折映る人体データや生体情報は、今はもういないデバイスの所有者のものに酷似していた。
男は、このデバイスの所有者が何らかの方法で、研究メモや手記のようなものを送信しているのだと確信した。
■■受信:三三八五年 風月九日 22:47
動物実験の追加検証による、寄生生命体の危険性について。
人体実験と平行して動物実験も行っていたが、実験に使用していた動物が死亡。
原因は、寄生生命体の過剰な増殖によるものであると判明。
寄生生命体の過剰増殖は、細菌や病原体などの投与による免疫機能の活性化が誘因を成していた。
さらなる動物実験の結果、宿主の免疫機能が短期間で活発化される事態に陥ると、寄生生命体の防衛本能が過剰に働くことが確認された。
この防衛本能による行動では、寄生生命体は宿主が生命活動を行うのに必要な細胞に対しても攻撃を行う。しかもその攻撃は宿主の生命維持が不可能なレベルになっても収まることはなく、結果、宿主は衰弱して死亡する。
計測結果によると、寄生生命体の防衛本能が暴走するのは、一ヶ月間に十から十五程度の疾病に罹患した場合である。
そして暴走により宿主が死亡するまでの時間は、個体の大きさで増減するが、およそ72時間。
宿主の死亡後、寄生生命体は暴走を停止。休眠状態へ移行することを確認。
故意に細菌もしくは病原体による疾病を誘発させることは、非常に危険である。
本メールには、過剰増殖が一定値を越えた後に起きた現象の観測データを添付する。
■■
男はメールを見る度に、送り主の最後の姿を思い出す。
「君達には悪いが、私は行くことにした」
大掛かりな機械が、静かに駆動音を立てていた。
『ゆりかご』と呼ばれるそれは、同志達のケイオシウム研究の全てが詰め込まれた装置だ。
その装置の中に、顔色の優れない女エンジニアが大きなバックパックを背負って入っていた。
「ゆりかごを使用して帰ってきた者は、彼女以外に存在しない。考え直せないのか?」
ケイオシウムを『制御できる暴走状態』へ移行させるこの装置は、未だ完成には至っていない。
特に生体実験は研究途上であり、生命体が中に入った状態で『ゆりかご』を動作させると、七割が物理法則を超越した死体となった。
残り三割の生命体は、いずこかへと消え去った。推論では異世界へ行くと言われているが、それを証明できるのはたった一人、マルグリッドというテクノクラートの存在だけだった。
彼女以外が装置を使えばどうなるのか。本当に異世界に行くのか、それとも次元の狭間に飲み込まれてしまうのか。
それを証明できる者は、マルグリッド以外には存在しないのだ。
「どうせこのままでは、数年のうちに消え去る命だ。今ここで死んだところで何の問題もあるまい?」
「……そう、か」
女は自身に残された時間が少ないことを知っていた。
そのことについて男は深く聞かなかった。踏み込んではならない領域であると理解していた。
「勘違いはするなよ、ラーム。私はな——」
女はニィと唇をつり上げ、心底楽しそうな顔を作った。
「私はカウンシルを欺いて旅立てることが嬉しくて、そして楽しくて仕方がないんだよネ」
『ゆりかご』の扉が閉じた。暫くして扉を開けると、女は消え去っていた。
これが、男が聞いたその者の最後の肉声であった。
男……ラームは一人で異世界へ旅立った同志のことを思い出しながら、送られ続けてくるメールをメインフレームへ送り続ける。
送信者の名前は『ジェミー・ドーリー』。
ラーム達の同志であり、今もどこかで己の知的欲求を満たしているエンジニアの名前であった。
「—了—」
小型デバイスが軽快な音と共にメールの受信を知らせた。
男は受信したメールを開く。
送信者の欄には、既知のアドレスが表示されている。
そのことには特段気に掛けず、男はメールの内容を閲覧する。
■■受信:三三八五年 雨月十日 03:01
ケイオシウム次元干渉実験中に、干渉した次元から超小型生命体の捕獲に成功。
この超小型生命体は空気中で生命活動を行うことができないため、仮死状態での採取が適切であった。
後日の観測により、この超小型生命体は他の生命体の血液、またはそれに準ずる液体の中でのみ生命活動が可能である。
超小型生命体の詳細な観測を行うために、動物実験を開始。
初期段階で、この超小型生命体が寄生生命体であることが判明。併せて、寄生した生物の免疫力を爆発的に高めることも明らかになった。
宿主の衰弱による寄生不可能状態を回避するためであろうと推察される。
人体への影響を調査するために、寄生生命体を自身に投与。
12時間が経過した現在、体調不良等の兆候を確認することはできず。
引き続き経過を観察する。
本メールには動物実験の計測データを添付する。
使用した動物に関しては、No.884に記載した鳥類に類似した地下生息型生命体のデータを参照されたし。
■■
このような文章と共に、動物実験の計測データなどが送られてきた。
男はそのデータをデバイスから抽出すると、強固なセキュリティが施されたメインフレームへと送信した。
■■受信:三三八五年 雨月十六日 17:22
寄生生物を体内に投与してから48時間が経過。心身共に不調も無く、いたって健康である。
計測器から得られたデータによると、寄生生命体は人体から排出されないよう、寄生後24時間以内に好中球などの免疫担当細胞へ擬態したことを確認。
追加実験として、297日前に発見した肝機能障害を引き起こす細菌を自らに投与。
細菌の詳細については、No.762の資料を参照のこと。
本メールには、寄生生命体の人体内における活動記録を添付する。
■■
いつ、どのようなタイミングで送られてくるかわからないメール。送り主が何故メールを送り続けているのか。その理由もわからない。
そのメールを保管することを、男は誰かに依頼されたわけではない。
そもそもこのデバイスは「好きに使ってもらって構わない」という言葉と共に、メールの送り主から渡されたものだ。
だから、男はこのメールを好きに使うことにした。メールの内容は男が目指す理想に必要なものであった。
だから男はメールを保管する。自身のために。未来のために。
■■受信:三三八五年 雨月二十一日 09:36
肝機能障害を引き起こす細菌を投与してから24時間が経過。肝機能に異常は見られず。
細菌の検出を試みたが、検出されず。
計測器のデータによると、細菌投与から12時間後、寄生生命体が免疫機能に類似した働きを示し、当該細菌を全て駆逐した模様。
本メールには、細菌と寄生生命体の動向を観測したデータを添付する。
■■
このようなメールが届き始めたのは、今から一年ほど前だ。
最初は何者かが誤送信したものか、もしくはデバイスの故障だろうと思った。
だが、送られてくるメールの論調、そして添付される資料に時折映る人体データや生体情報は、今はもういないデバイスの所有者のものに酷似していた。
男は、このデバイスの所有者が何らかの方法で、研究メモや手記のようなものを送信しているのだと確信した。
■■受信:三三八五年 風月九日 22:47
動物実験の追加検証による、寄生生命体の危険性について。
人体実験と平行して動物実験も行っていたが、実験に使用していた動物が死亡。
原因は、寄生生命体の過剰な増殖によるものであると判明。
寄生生命体の過剰増殖は、細菌や病原体などの投与による免疫機能の活性化が誘因を成していた。
さらなる動物実験の結果、宿主の免疫機能が短期間で活発化される事態に陥ると、寄生生命体の防衛本能が過剰に働くことが確認された。
この防衛本能による行動では、寄生生命体は宿主が生命活動を行うのに必要な細胞に対しても攻撃を行う。しかもその攻撃は宿主の生命維持が不可能なレベルになっても収まることはなく、結果、宿主は衰弱して死亡する。
計測結果によると、寄生生命体の防衛本能が暴走するのは、一ヶ月間に十から十五程度の疾病に罹患した場合である。
そして暴走により宿主が死亡するまでの時間は、個体の大きさで増減するが、およそ72時間。
宿主の死亡後、寄生生命体は暴走を停止。休眠状態へ移行することを確認。
故意に細菌もしくは病原体による疾病を誘発させることは、非常に危険である。
本メールには、過剰増殖が一定値を越えた後に起きた現象の観測データを添付する。
■■
男はメールを見る度に、送り主の最後の姿を思い出す。
「君達には悪いが、私は行くことにした」
大掛かりな機械が、静かに駆動音を立てていた。
『ゆりかご』と呼ばれるそれは、同志達のケイオシウム研究の全てが詰め込まれた装置だ。
その装置の中に、顔色の優れない女エンジニアが大きなバックパックを背負って入っていた。
「ゆりかごを使用して帰ってきた者は、彼女以外に存在しない。考え直せないのか?」
ケイオシウムを『制御できる暴走状態』へ移行させるこの装置は、未だ完成には至っていない。
特に生体実験は研究途上であり、生命体が中に入った状態で『ゆりかご』を動作させると、七割が物理法則を超越した死体となった。
残り三割の生命体は、いずこかへと消え去った。推論では異世界へ行くと言われているが、それを証明できるのはたった一人、マルグリッドというテクノクラートの存在だけだった。
彼女以外が装置を使えばどうなるのか。本当に異世界に行くのか、それとも次元の狭間に飲み込まれてしまうのか。
それを証明できる者は、マルグリッド以外には存在しないのだ。
「どうせこのままでは、数年のうちに消え去る命だ。今ここで死んだところで何の問題もあるまい?」
「……そう、か」
女は自身に残された時間が少ないことを知っていた。
そのことについて男は深く聞かなかった。踏み込んではならない領域であると理解していた。
「勘違いはするなよ、ラーム。私はな——」
女はニィと唇をつり上げ、心底楽しそうな顔を作った。
「私はカウンシルを欺いて旅立てることが嬉しくて、そして楽しくて仕方がないんだよネ」
『ゆりかご』の扉が閉じた。暫くして扉を開けると、女は消え去っていた。
これが、男が聞いたその者の最後の肉声であった。
男……ラームは一人で異世界へ旅立った同志のことを思い出しながら、送られ続けてくるメールをメインフレームへ送り続ける。
送信者の名前は『ジェミー・ドーリー』。
ラーム達の同志であり、今もどこかで己の知的欲求を満たしているエンジニアの名前であった。
「—了—」