「這位是從今天開始要跟大家一起學習的C.C.。大家,要跟她好好相處哦」
「……請多指教」
在洛斐恩催促之下,C.C.低著頭,像是在喃喃自語般小聲地說道。
老師的講台前,排列著椅子跟桌子,坐著的都是跟C.C.年齡相仿的男女學生。這是現代只有在古老歷史的讀物中,才會出現的光景。
看到這個光景,然後想到今後的事,讓C.C.更加喪氣。
(又要辛苦的學習了……。好討厭……)
|
事情的開端,是因為C.C.漸漸跟不上特別教育課程的進度。
一開始C.C.以為只是不習慣,在還沒有完全理解當前課題的狀態下,又一直接連增加必學的項目,理解力的需求也越來越高。
焦慮漸漸變成壓力,漸漸將C.C.的精神逼到了極限。
就連本來覺得有趣,有成就感的兵裝研究課程,也變得只會令人感到痛苦。之後出現飲食障礙跟睡眠障礙等等的症狀,讓C.C.日漸失去安定感。
看到這個狀況的雙親,最後讓C.C.去接受了心理輔導。
心理輔導的結果,發現原因意外地簡單。
單純只是教官的教育方針跟C.C.不合而已。
但是,C.C.既然已經對既有的教育課程有拒絕反應了,在這個狀況下,就算換了教官也不會改善。這樣下去,繼續進行教育課程也沒有意義。
為了保護繼承了優秀基因的孩子,決定先讓C.C.的特別教育課程暫停。
作為復健治療的第一步,必須讓C.C.先學到,學習除了痛苦與恐怖以外的還會有別的情感。於是賽因茲就去拜託洛斐恩,讓C.C.去參加他主辦的集團教育課程。
「洛斐恩老師,就拜託您了」
「哈哈哈,畢竟是你拜託我的,沒問題」
在家裡聽到的那段對話,C.C.記得非常清楚。
|
洛斐恩主辦的這個集團教育課程,在以個別教育為主的潘德莫尼中,是個特別的異類。
工程師的主要工作是研究,教育課程結束後出了社會,就無法避免要與他人議論及交流。那麼,就必須要在幼時多與他人交流,練習交換意見與議論。
洛斐恩以這一點為主,開辦的這個教育課程,有跨足多種領域的工程師候補生參加。
「妳暫時先聽聽其他人議論的內容就好」
「啊……,好的……」
C.C.走到最後面的空位坐下。
「那麼就開始吧。今天的主題是關於改善無人機的生活補助機能」
洛斐恩的教育課程概要,非常地簡潔。
課程一結束,就會決定議論的主題,然後由學生各自去調查這個主題。在下一次上課時,與別的學生議論。然後從議論中找到答案,在整理成簡單的報告交出來。
課程內容就這樣而已。
洛斐恩一說完,學生們就開始與附近的學生議論起來。
除了有兩人間白熱化的議論,也有四個人互相交換意見,然後將意見整理出來的學生。可以說是各式各樣。
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C.C.決定聽她座位前方的兩位工程師候補的議論。
一位叫泰瑞爾,另一位名叫哈卡拉。
C.C.心不在焉地看著議論中的兩人,然後看了看周圍,也都同樣熱衷地在議論著。
他們那熱衷的樣子,看起來似乎很開心。
C.C.接受教育課程期間,都主要以待在家裡自學為主,幾乎沒有機會跟他人交流。平常講話的對象,也只有雙親與教育課程的教官而已。但雙親都因為太忙,沒有什麼機會講到話。
像這樣跟年齡相仿的人們交換意見什麼的,根本不可能。
|
「你沒搞錯吧?」
泰瑞爾強硬的口氣,讓C.C.回神聽他們兩人的議論內容。
泰瑞爾跟哈卡拉的議論進入白熱化。
「我覺得機能太多的話,每一個機能的精密度就會下降」
「要解決這一點,只要將AI的性能調高就好了啊」
這個主題明明應該不是他們的專業領域,卻還可以議論地這麼熱衷。
泰瑞爾說了這個,哈卡拉就馬上反論這一點,然後再提出別的意見。
哈卡拉說了這個,泰瑞爾也一樣反論,看起來是個沒有終點的議論。
看著跟自己年齡相仿兩人的熱衷模樣,對C.C.來說,印象非常強烈。
C.C.盯著那樣的兩人,傾耳聽著他們的意見。
聽著聽著,從議論內容聽得出他們各自的立場與個性。
泰瑞爾會很熱心地說明自已意見的正確性。而哈卡拉則是會提出各種反例,再一一解釋那些例子為什麼不行。
看起來相反的兩人,就這樣透過議論來認同對方,然後會進而衍生出友情吧。
友情,對不怎麼交友的工程師來說,是無法替代的,特別的感情。
就算接下來前進的道路不同,只要見了面,應該就會像以前一樣議論起來吧。
然後將得到的答案進而研究,接受讚賞──。
|
「如何?」
「啊,洛斐恩老師……」
洛斐恩向C.C.問道,C.C.突然回神。
看來泰瑞爾跟哈卡拉的議論已經得出雙方認同的結論了,正在為了整理結論而正在交換意見。
「哈哈哈,我看妳聽得很專心」
「啊,這……那個……」
C.C.不敢說出,在旁邊聽著兩人的議論,邊衍生幻想之事。
但是,總覺得很神奇的是,憂鬱一掃而空。C.C.也理解泰瑞爾跟哈卡拉議論的內容。
「哈哈哈,這裡很不錯對吧?」
「嗯,對」
「妳暫時,就像這樣觀察他人就可以了」
「觀察,嗎?」
「沒錯。就近聽泰瑞爾跟哈卡拉的議論,妳覺得怎麼樣?」
「嗯……,他們兩人都邊想像著無人機的各方面機能,邊逐一理論,我覺得很有意思」
「覺得很有意思,覺得快樂,像這樣持續下去是很重要的」
「是這樣嗎?」
「沒錯,無論是什麼事,只要覺得痛苦就無法做下去了不是嗎?」
C.C.點點頭同意。
「C.C.,妳說想像是很有意思的事,那麼,接下來只要試著實踐就可以了」
「可以嗎?」
「當然,想做出越好的研究,就需要想像,然後舉證。想像絕對是在研究時必須的過程」
這句話,C.C.心裡有底。
C.C.想起來,在覺得教育課程很痛苦之前,曾經看著父親的兵裝研究書籍幻想過。
(那時還蠻開心的……)
C.C.不是因為覺得學習這件事痛苦,而是理解了學到的內容,卻無法想像這件事讓她覺得難受。
C.C.終於懂自己痛苦的原因了。
「謝謝您,洛斐恩老師。下次上課我也想參加議論!可以嗎?」
「當然,歡迎妳」
洛斐恩的回答,讓C.C.將至今一直低著的頭抬起來了。
|
「─完─」
3375年 「想像」
「今日から一緒に学ぶC.C.だ。皆、よろしく頼む」
「……よろしくお願いします」
ローフェンに促されたC.C.は俯きがちに、そして呟くように言った。
教卓の前に机と椅子が並べられており、その一つ一つにC.C.と同じ年頃の男女が席に着いている。古い歴史の読み物でしか見ることのできない、正に前時代的な光景だ。
その光景を目にして、さらにこれからのことを考えたC.C.は、一層気分を落ち込ませていた。
(また辛い勉強が待ってるのかな……。いやだな……。)
ことの始まりは、C.C.が特別教育プログラムの学習に付いていけなくなったことだった。
最初は単なる不慣れが原因であろうと当人も思っていた。しかし、理解が不十分な状態のまま習得すべき項目が次々に増え、求められる理解力も高くなっていく。
焦りはやがてプレッシャーとなり、C.C.の精神を追い詰めていった。
とても面白くてやりがいがあると感じていた兵装研究の勉強でさえ、単に辛いと感じてしまう。次第に摂食障害や睡眠障害などの症状が現れはじめ、日ごと安定を失っていくC.C.。
そんな彼女の様子を見かねた両親は、C.C.にカウンセリングを受診させるに至った。
カウンセリングの結果、原因は思いのほか簡単に見つかった。
単に教官の学習方針とC.C.の相性が合っていなかったのである。
しかし、C.C.は既に教育プログラム自体に拒絶反応を示してしまっている。この状況では担当教官を変更したとしても改善は見込めない。となれば、教育プログラムを続けることそのものが無意味である。
優秀な遺伝子を継ぐ子供を守るため、C.C.は特別教育プログラムを一旦休止することとされた。
復帰治療の第一歩として、学習することに対して苦痛や恐怖の感情以外のものを覚えさせなければならない。そこでセインツは、ローフェンが主催する集団学習プログラムにC.C.を参加させてもらえるように頼み込んだ。
「ローフェン師、くれぐれも宜しくお願いします」
「はっはっは。他ならぬ君の頼みだ」
そんな会話が自宅で交わされていたのを、C.C.はよく覚えていた。
ローフェンが主催するこの集団学習プログラムは、個別教育が主流のパンデモニウムでは特段の変り種であった。
エンジニアの主務は研究なれど、教育プログラムが修了して社会に出れば、他人との議論や交流は避けられない。ならば、幼い内から多数の人間との交流を持ち、意見や議論を交わす訓練をする必要がある。
そういったローフェンの信条の元で主催されるこの学習プログラムには、分野を問わず多彩なエンジニア候補生が参加していた。
「しばらくはみんなの議論を聞いていなさい」
「あ……、はい……」
C.C.は一番後ろの空いている席に座る。
「それでは始めるとしよう。さて、今日のテーマは生活補助ドローンの機能改善についてだったな」
ローフェンの学習プログラムの概要は、至ってシンプルだ。
授業の終わりに次に議論するテーマを決定し、それについて個々が調査を行う。次の受講日に、そのテーマについて誰かと議論をする。そして、その議論によって出た答えを、簡単なレポート形式で提出する。
たったこれだけだった。
ローフェンの合図と共に、受講者達は手近な人物と議論を交わし始めた。
二人で議論を白熱させる受講者もいれば、四人ほどで意見を交換し、総意として纏め上げる受講者。様々だった。
C.C.はすぐ前の席に座っていた二人のエンジニア候補の議論を聞かせてもらうことにした。
一人はタイレル、もう一人はハカラと名乗った。
C.C.は議論を交わす二人をぼんやりと眺めていた。周囲もこのような感じなのかと見回してみると、やはり皆同じように熱心に議論を交わしている。
熱心なその様子は、どこか楽しそうでもあった。
教育プログラムを受けている間は自宅学習が主であり、他人と交流する機会なんて殆どなかった。会話をするといっても、教育プログラムの担当教官か両親がせいぜいだ。その両親でさえ、多忙であれば会話を交わす機会もない。
こうやって似たような年齢の人達と意見を交わすなど、絶対にあり得なかった。
「それは違うのでは?」
タイレルの強い語気に、C.C.は議論を交わす二人に意識を向け直す。
タイレルとハカラの議論が白熱してきていた。
「あまりに多機能では、個々の仕事への精度が落ちると思う」
「それを解決させるために、AIの性能を向上させようという話だよ」
専門外の分野だろうに、二人は白熱して意見を言い合う。
タイレルがああだと言えば、ハカラはすぐさま反論し、更に別の意見を提案する。
逆もまた然りで、議論には終わりが見えそうにない。
同じ年頃の二人が熱心に議論を交わす様は、C.C.の目にはとても鮮烈に映った。
熱心な二人の様子をじっと眺め、その意見に耳を傾けた。
そうする内に、二人の議論に対するスタンスや個性が見えてきた。
タイレルは自分の意見の正しさを熱心に説明する。逆にハカラは意見を通すために様々な反例を出し、それを潰していく方式を取る。
相反するようにも見える二人だが、こうやって白熱した議論を交わしながら互いのことを認め合い、そして友情を築いていくのだろう。
友情とは、交友の少ないエンジニアにとって掛け替えのないもので、特別なものだ。
これから進む道は違えども、会えばかつてのように議論を交わしあう。
そこで得た答えを胸に研究を続け、賞賛を受けるのだ——。
「どうかな?」
「あっ、ローフェン先生……」
ローフェンに声を掛けられ、C.C.ははっとなる。
タイレルとハカラはお互いに納得できる意見が纏まってきたようで、結論を整えるために意見を交換し合っていた。
「ははは、随分と熱心に聞いていたようだな」
「あ、それは……その……」
議論を聞く傍らに二人を見て空想を膨らませていましたとは、言える筈もなかった。
だが、不思議と憂鬱な気分は晴れており、タイレルとハカラが交わしていた議論もC.C.なりに理解ができていた。
「ははは。こういう場も悪くはないだろう?」
「そう、ですね」
「暫くは、こうやって人を観察するといい」
「観察、ですか?」
「そうとも。タイレルとハカラの議論を間近で聞いて、どう思ったかね?」
「えっと……、二人ともドローンの色んなことを想像しながら理論を並べてて、面白そうだなって思いました」
「面白い、楽しいと思ったこと、そういったことを続けるのはとても大事だ」
「そうなんですか?」
「そう。どんなことでも、苦痛と思えばそれ以上はできないだろう?」
それはそうだとC.C.は頷いた。
「C.C.、君は想像することが面白そうだと言った。では、今度はそれを実践してみるといい」
「いいんですか?」
「もちろん。より良い研究のためには、想像し、それを立証することが必要だ。想像することは必ず研究に繋がる」
その言葉に、C.C.は思い当たることがあった。
特別教育プログラムが苦痛になる前は、父親の持つ兵装研究の書籍を見てあれこれ空想していたことを思い出したのだ。
(あれは楽しかったなあ……)
勉強が苦痛なのではない。学んだことを理解し、想像できなくなっていくことが辛かったのだ。
それをC.C.は理解した。
「ありがとうございます、ローフェン先生。次の授業は私も議論に参加してみたいです! いいですか?」
「もちろん、歓迎しよう」
ローフェンの言葉に、C.C.はそれまでずっと俯いていた顔を上げたのだった。
「—了—」
「今日から一緒に学ぶC.C.だ。皆、よろしく頼む」
「……よろしくお願いします」
ローフェンに促されたC.C.は俯きがちに、そして呟くように言った。
教卓の前に机と椅子が並べられており、その一つ一つにC.C.と同じ年頃の男女が席に着いている。古い歴史の読み物でしか見ることのできない、正に前時代的な光景だ。
その光景を目にして、さらにこれからのことを考えたC.C.は、一層気分を落ち込ませていた。
(また辛い勉強が待ってるのかな……。いやだな……。)
ことの始まりは、C.C.が特別教育プログラムの学習に付いていけなくなったことだった。
最初は単なる不慣れが原因であろうと当人も思っていた。しかし、理解が不十分な状態のまま習得すべき項目が次々に増え、求められる理解力も高くなっていく。
焦りはやがてプレッシャーとなり、C.C.の精神を追い詰めていった。
とても面白くてやりがいがあると感じていた兵装研究の勉強でさえ、単に辛いと感じてしまう。次第に摂食障害や睡眠障害などの症状が現れはじめ、日ごと安定を失っていくC.C.。
そんな彼女の様子を見かねた両親は、C.C.にカウンセリングを受診させるに至った。
カウンセリングの結果、原因は思いのほか簡単に見つかった。
単に教官の学習方針とC.C.の相性が合っていなかったのである。
しかし、C.C.は既に教育プログラム自体に拒絶反応を示してしまっている。この状況では担当教官を変更したとしても改善は見込めない。となれば、教育プログラムを続けることそのものが無意味である。
優秀な遺伝子を継ぐ子供を守るため、C.C.は特別教育プログラムを一旦休止することとされた。
復帰治療の第一歩として、学習することに対して苦痛や恐怖の感情以外のものを覚えさせなければならない。そこでセインツは、ローフェンが主催する集団学習プログラムにC.C.を参加させてもらえるように頼み込んだ。
「ローフェン師、くれぐれも宜しくお願いします」
「はっはっは。他ならぬ君の頼みだ」
そんな会話が自宅で交わされていたのを、C.C.はよく覚えていた。
ローフェンが主催するこの集団学習プログラムは、個別教育が主流のパンデモニウムでは特段の変り種であった。
エンジニアの主務は研究なれど、教育プログラムが修了して社会に出れば、他人との議論や交流は避けられない。ならば、幼い内から多数の人間との交流を持ち、意見や議論を交わす訓練をする必要がある。
そういったローフェンの信条の元で主催されるこの学習プログラムには、分野を問わず多彩なエンジニア候補生が参加していた。
「しばらくはみんなの議論を聞いていなさい」
「あ……、はい……」
C.C.は一番後ろの空いている席に座る。
「それでは始めるとしよう。さて、今日のテーマは生活補助ドローンの機能改善についてだったな」
ローフェンの学習プログラムの概要は、至ってシンプルだ。
授業の終わりに次に議論するテーマを決定し、それについて個々が調査を行う。次の受講日に、そのテーマについて誰かと議論をする。そして、その議論によって出た答えを、簡単なレポート形式で提出する。
たったこれだけだった。
ローフェンの合図と共に、受講者達は手近な人物と議論を交わし始めた。
二人で議論を白熱させる受講者もいれば、四人ほどで意見を交換し、総意として纏め上げる受講者。様々だった。
C.C.はすぐ前の席に座っていた二人のエンジニア候補の議論を聞かせてもらうことにした。
一人はタイレル、もう一人はハカラと名乗った。
C.C.は議論を交わす二人をぼんやりと眺めていた。周囲もこのような感じなのかと見回してみると、やはり皆同じように熱心に議論を交わしている。
熱心なその様子は、どこか楽しそうでもあった。
教育プログラムを受けている間は自宅学習が主であり、他人と交流する機会なんて殆どなかった。会話をするといっても、教育プログラムの担当教官か両親がせいぜいだ。その両親でさえ、多忙であれば会話を交わす機会もない。
こうやって似たような年齢の人達と意見を交わすなど、絶対にあり得なかった。
「それは違うのでは?」
タイレルの強い語気に、C.C.は議論を交わす二人に意識を向け直す。
タイレルとハカラの議論が白熱してきていた。
「あまりに多機能では、個々の仕事への精度が落ちると思う」
「それを解決させるために、AIの性能を向上させようという話だよ」
専門外の分野だろうに、二人は白熱して意見を言い合う。
タイレルがああだと言えば、ハカラはすぐさま反論し、更に別の意見を提案する。
逆もまた然りで、議論には終わりが見えそうにない。
同じ年頃の二人が熱心に議論を交わす様は、C.C.の目にはとても鮮烈に映った。
熱心な二人の様子をじっと眺め、その意見に耳を傾けた。
そうする内に、二人の議論に対するスタンスや個性が見えてきた。
タイレルは自分の意見の正しさを熱心に説明する。逆にハカラは意見を通すために様々な反例を出し、それを潰していく方式を取る。
相反するようにも見える二人だが、こうやって白熱した議論を交わしながら互いのことを認め合い、そして友情を築いていくのだろう。
友情とは、交友の少ないエンジニアにとって掛け替えのないもので、特別なものだ。
これから進む道は違えども、会えばかつてのように議論を交わしあう。
そこで得た答えを胸に研究を続け、賞賛を受けるのだ——。
「どうかな?」
「あっ、ローフェン先生……」
ローフェンに声を掛けられ、C.C.ははっとなる。
タイレルとハカラはお互いに納得できる意見が纏まってきたようで、結論を整えるために意見を交換し合っていた。
「ははは、随分と熱心に聞いていたようだな」
「あ、それは……その……」
議論を聞く傍らに二人を見て空想を膨らませていましたとは、言える筈もなかった。
だが、不思議と憂鬱な気分は晴れており、タイレルとハカラが交わしていた議論もC.C.なりに理解ができていた。
「ははは。こういう場も悪くはないだろう?」
「そう、ですね」
「暫くは、こうやって人を観察するといい」
「観察、ですか?」
「そうとも。タイレルとハカラの議論を間近で聞いて、どう思ったかね?」
「えっと……、二人ともドローンの色んなことを想像しながら理論を並べてて、面白そうだなって思いました」
「面白い、楽しいと思ったこと、そういったことを続けるのはとても大事だ」
「そうなんですか?」
「そう。どんなことでも、苦痛と思えばそれ以上はできないだろう?」
それはそうだとC.C.は頷いた。
「C.C.、君は想像することが面白そうだと言った。では、今度はそれを実践してみるといい」
「いいんですか?」
「もちろん。より良い研究のためには、想像し、それを立証することが必要だ。想像することは必ず研究に繋がる」
その言葉に、C.C.は思い当たることがあった。
特別教育プログラムが苦痛になる前は、父親の持つ兵装研究の書籍を見てあれこれ空想していたことを思い出したのだ。
(あれは楽しかったなあ……)
勉強が苦痛なのではない。学んだことを理解し、想像できなくなっていくことが辛かったのだ。
それをC.C.は理解した。
「ありがとうございます、ローフェン先生。次の授業は私も議論に参加してみたいです! いいですか?」
「もちろん、歓迎しよう」
ローフェンの言葉に、C.C.はそれまでずっと俯いていた顔を上げたのだった。
「—了—」