交出研究成果沒過多久,C.C.就被海塞爾所長叫到辦公室。
「我,我嗎?」
「對」
不知道是所長的推薦,還是實力。C.C.被任命調往連隊設施去。
被派去當連隊附屬的技官,對工程師來說是邁向成功之路的捷徑。
在渦的另一邊的世界有很多新的發現,有很多從中受到激發的工程師。
事實上,結束任期回來的工程師,都陸續發表了劃時代的嶄新理論。
「上任日期會再擇日通知。還有什麼問題嗎?」
「那個,能辭退嗎……?」
「妳認為會被允許嗎?」
被所長冷淡回覆後,C.C.畏畏縮縮地離開所長室。
|
「聽說上面已經決定要派妳去連隊了」
在回工作室的路上,被從正面走來的泰瑞爾搭話。
同期的泰瑞爾,曾經一起在洛斐恩門下學習過,是唯一能夠正常交談的人。
「啊,泰瑞爾。大家都已經知道了嗎」
「嗯。因為剛剛都有通知啊」
「這樣啊」
「啊,該跟妳說聲恭喜吧」
「別這樣。他們並不是需要我本身的技術,我只是主任的代理而已」
「但他們還是選中妳了。妳應該更有自信些。還是妳是想讓落選的我感到淒慘嗎?」
「啊……。對,對不起」
泰瑞爾總是熱衷於研究,比其他人加倍有上進心。任職到連隊是成為上級技師的捷徑,不難想像他花費了多少心力。
C.C.從來就不打算傷害泰瑞爾。但是,他的話卻讓C.C.的心蒙上一層揮之不去的陰霾。
從那之後,也沒機會和泰瑞爾講上話,就被交接到連隊去了。
|
「好想回去……」
來到了連隊過了數週。
在設施角落的研究樓房間內,C.C.不禁小聲地抱怨著。
不愧是主任階級工程師的房間,附設的設備都是一等一的。
但是,對於生活大小事都仰賴自動化機械的C.C.來說,第一次來到地上的生活是相當辛苦的。
首先是在沒有補助機械下,任何事都得靠自己的ㄧ雙手,才能維持這上等的環境。
可能是因為幾乎都只有男性的關係吧,除了研究樓以外的設施都沒有清掃整理,到處都是灰塵髒污。
光看吃飯環境,那些一直來來往往忙進忙出的男人們,就讓人懷疑是否有在做衛生管理。
從C.C.的眼裡看來,地上是個沒有秩序又骯髒,就算想拍馬屁也無法昧著良心說是整潔的地方。
再加上,事前受過『地上行為的注意事項』的洗禮,讓C.C.的心情更加地沉重。
注意事項,非職務關係勿離開設施。
注意事項,切勿接觸地上文化。
注意事項,連隊隊員在地上是特別野蠻下賤的人種,除了職務上所需切勿有所接觸。
諸如此類。就算潘德莫尼的住民是最優秀的,但這些規定似乎也太詳細過頭了吧?
|
「我終於懂為什麼那個人會因為過勞而倒下了」
附屬連隊工程師的總負責人,對C.C.要求跟前任的賽因茲完全相同的技量及工作量。
因此,C.C.的工作內容,都是最繁忙及複雜的。
除了專業的以混沌元素為動力的新兵裝開發,還要負責指揮對發生問題的聖劍提出安定化的提案。然後還要改良武裝車及武裝艇上的回歸裝置。
而且電腦中的關係資料都沒有整理過。應該是過忙的職務讓人無暇整理吧。
「唉……」
C.C.從分身乏術的工作中擠出了些時間,來整理這些資料檔案。
因為如果不整理的話,光要從賽因茲留下的資料中找出需要的檔案都要花上很多時間。
|
某天,C.C.正在替訓練樓發生故障的設備進行檢查。
從自己的身後能聽得到那青澀的聲音,是被稱為訓練生的通訊官候補們。
「真年輕……」
應該跟自己差不到10歲,但訓練生們看起來特別稚嫩。
|
──為了要成為能夠向渦的威脅挑戰的戰士,累積著修行的少年們。
由此而生的牽絆、無話不說的朋友。一起渡過那些無可替代的日子,少年們逐漸成長。──
|
一邊恍惚地妄想,一邊檢查著設備,發現了故障的原因。
看來似乎是機器的縫隙中有異物進入的關係。
「巴魯德姆技官。發現原因了」
使用小型的通信機器連絡,想要取得上官的判斷指示。
詳細的說明後,上官命令要將異物取出來。
「對不起。雖然不是做不到,但是我,那個……」
「既然被調派到這裡,就算是專業領域之外的事也得處理。賽因茲主任總是面不改色在做」
「這樣啊。我知道了」
結束通信後,嘆了口氣。
過去被很多人這麼說過。不管在潘德莫尼,還是在連隊,總是會被拿來跟父親作比較。
「沒辦法……」
即使在意也無可奈何,C.C.為了轉換心情開始著手分解作業。
耳旁不斷傳來少年們的聲音彷彿治癒了自己,持續進行著工作。
|
──有時會爭吵,也會有志不同道不合的人。
正因為連隊聚集了各式各樣的人種,才容易發生衝突。
時而嫉妒,時而互相勉勵。
思春期的少年們就那樣成長為偉大的戰士。──
|
異物掉進了機器間的縫隙,為了不刮傷機器非常謹慎小心地進行著分解作業。
「太棒了,終於拿出來了!」
很辛苦才將異物取出,不自覺地發出聲音歡呼。
少年們想說是發生了什麼事,往C.C.的方向看過去。
「啊……」
C.C.引起大家的注目,心想糟了。
「對,對不起。沒什麼事」
為了不讓人發現動搖的內心,努力冷靜地說道。
C.C.告訴自己,不能跟他們扯上關係。
要是打破規定,當然有懲罰等著。
「阿姨妳真遜啊」
「誰,誰是阿姨!?」
C.C.不小心叫了出來。
本來打算冷靜的對應,但是對才二十歲出頭的C.C.來說無法忍受這樣的言語。
對那些竊竊笑出聲的訓練生們。剛剛還覺得溫和的心情被一湧而上的憤怒給取代。
「喂,你們!別偷懶!」
聽到發現訓練生們的教官生氣的聲音。
一聽到這個聲音,訓練生們一臉被抓包的樣子回去訓練。
安心下來的C.C.為了要冷靜下來,專注於工作不妄想,將報告完成了。
「以上。那個設備周圍因訓練的關係沙塵飛舞,我提案裝設濾網等來應對」
「這樣啊,我會考慮。C.C.妳回研究樓之後休息一下吧」
「啊,好。謝謝您」
巴魯德姆像是關心的言語,讓C.C.歪頭不解地回研究樓去了。
|
回到研究樓看到鏡子,被塵土及機油弄得一臉黑漆抹烏。頭髮也很乾燥。
C.C.心想,這個樣子也難怪會被取笑是阿姨了。
「唉……」
工作太過苛苦,又被本來當作心靈糧食的訓練生們那樣對待。
來到連隊設施的C.C.的嘆息持續不斷地增加。
|
「─完─」
3385年 「溜息」
研究成果を提出して間もなく、C.C.は所長のヘイゼルに呼び出されていた。
「私が、ですか?」
「ええ」
所長の推薦か、あるいは実力か。C.C.はレジメント施設への出向を命ぜられた。
レジメント付き技官への任命は、エンジニアにとって出世の近道であった。
渦の向こう側の世界には新たな発見が多く、それに刺激されるエンジニアが多い。
事実、任期を終えて戻ってきたエンジニアは、次々と画期的で新しい理論を発表していた。
「日時は追って通達します。何か質問は?」
「あの、辞退は……?」
「そのようなことが許されるとでも思っているのですか」
冷たい声で返されてしまい、C.C.は縮み上がりながら所長室を出て行った。
「レジメントへの出向が決まったようですね」
作業室に戻る道すがら、正面からやって来たタイレルに声を掛けられた。
同期のタイレルは、短い期間ではあるものの共にローフェンに師事していたこともあり、まともに会話を交わすことができる唯一の人物であった。
「あ、タイレル。もうみんな知ってるんだ」
「ええ。先ほど通知がありましたので」
「そっか」
「おめでとう、と言うべきですね」
「そんなことないわよ。別に私自身の技能が求められてる訳じゃないもの。主任の代替でしかないわ」
「それでも君は選ばれた。堂々と胸を張ってください。それとも、選考に漏れた僕を惨めな気持ちにさせたいのですか?」
「あ……。ごめん、なさい」
タイレルは研究熱心であり、向上心も人一倍持っていた。上級技師になる近道とも言われるレジメント出向に対し、かなりの労力を割いていたであろうことは想像に難くない。
タイレルを傷付けるつもりは微塵もなかった。それだけに、彼のこの言葉はC.C.の心に深い影を落とした。
それから、タイレルと改めて話をするタイミングもないまま引継ぎを済ませ、C.C.はレジメントへと出向した。
「もう帰りたいー……」
レジメント施設にやって来て数週間。
施設の一角にある研究棟の一室で、C.C.は小さく不満を漏らした。
主任クラスのエンジニアが使っていた部屋だけあって、備え付けの設備は上等なものだ。
しかしながら、生活の大部分を機械での自動化に頼り切っていたC.C.にとって、初めての地上での暮らしは中々に大変だった。
まず補助機械なしに全て自らの手で、その上等の環境を保持する必要があった。
ほぼ男性のみの環境がそうさせるのか、研究棟以外の施設では清掃や備品の整頓が行き届いておらず、どれも埃と汚れに塗れていた。
食事ひとつを見ても、外と中を慌ただしく出入りする男達のことを考えると、衛生管理が行われているかすら怪しく思える。
地上は無秩序で汚れていて、お世辞にも整っているとは言い難い。C.C.の目にはそう映っていた。
加えて、事前に受けた『地上での行動における注意事項』が、C.C.の気分を更に重くさせていた。
曰く、職務以外で施設の外へ出てはいけない。
曰く、地上の文化に触れてはいけない。
曰く、レジメントの隊員は地上の者の中でも特に野蛮で下賎なので、職務上絶対という状況以外では接触してはならない。
等々。パンデモニウムの住民として尤もだと思うものもあれば、それはやり過ぎなのでは? と思うようなことまで、実に事細かく規定されていた。
「あの人が過労で倒れたのもわかる気がするわ」
レジメント付きエンジニアの統括責任者は、C.C.に対して前任のセインツと全く同じ技量と仕事量を求めてきた。
そのため、C.C.に与えられる仕事の内容はとにかく激務であり、複雑だった。
専門であるケイオシウムを動力とした新規の兵装開発と平行して、セインツが指揮を執っていたという、動作不良で問題を起こしたセプターの安定化改善案の提出。さらにコルベットやアーセナルキャリアに搭載されている帰還装置の改良まで。
しかも、関係資料はコンソールの中に整理されないまま散在していた。激務のため、整理整頓することすらままならなかったのだろう。
「はぁ……」
C.C.は過酷な職務の合間を縫って、この資料のデータを整理していた。
そうでもしなければ、セインツの残した資料を探すだけでも時間が取られてしまうことが明白であった。
ある日、C.C.は訓練棟で不調を起こした設備の検分を行っていた。
自分の後ろから聞こえる若い声は、訓練生と呼ばれているオペレーター候補達のものである。
「若いなぁ……」
自分と一〇も違わない年齢の筈だが、それでも訓練生達の姿は随分と幼く見えた。
――渦の脅威に立ち向かう戦士となるべく、修行を積む少年達。
そこで生まれる絆、腹を割って話せる友。かけがえのない日々を過ごし、少年達は成長していく。――
ほんわかした妄想をしながら設備の検分をしていると、不調の原因が見つかった。
どうやら機器の隙間に入り込んだ異物が原因のようだった。
「バルデム技官。原因が判明しました」
小型の通信機器を作動させると、上官に判断を仰いだ。
詳細を説明すると、分解して異物を取り出せという指示が下った。
「すみません。できないことはないですが、私、その……」
「ここに出向した以上、専門分野外でもやらねばならん。セインツ主任は顔色一つ変えずにやっていた」
「そうですか。わかりました」
通信を切って溜息をつく。
過去様々な人から何度この言葉を言われたか。パンデモニウムにいても、レジメントにいても、常に父親の影はつきまとっていた。
「仕方ないよね……」
気にしてもどうにもならないと、C.C.は気分を切り替えて分解作業を開始した。
絶えず聞こえてくる少年達の声を癒しのように感じながら、作業を進めていく。
――時にはいがみ合うこともある、気の合わない奴だっている。
様々な人種が集まるレジメントだからこそ、起こる衝突。
時には嫉妬し、時には励ましあい。
思春期の少年達は大きく戦士として成長していくのだ。――
異物は機器同士の隙間に入り込んでおり、機器を傷付けないよう慎重に分解作業を進めていく。
「やった、取れたっ!」
やっとの思いで異物を取り除くと、苦労のあまりか、思わず声を上げてしまった。
少年達が何事かとC.C.の方を見た。
「あ……」
注目を集めてしまい、C.C.は内心しまったと思った。
「ご、ごめんなさい。なんでもないわ」
動揺したことを悟られないよう、勤めて冷静に声を出す。
彼らに関わってはいけないと、C.C.は自分に言い聞かせた。
規則を破れば、当然、罰則が待っている。
「おばさん、だっせぇ」
「だっ、誰がおばさんですって!?」
C.C.は思わず叫んでしまった。
あくまでも冷静に対処して切り抜けるつもりだったが、二十代になりたてのC.C.にこの言葉は堪えた。
ゲラゲラと笑い出す訓練生達。先程までのほんわかした気持ちは消え去り、替わりに怒りが湧いてくる。
「おい、お前ら! サボるんじゃない!」
訓練生の様子に気付いた教官が訓練生を怒鳴る声が聞こえた。
それを合図に、訓練生達はバツが悪そうな顔をして訓練を再開し始めた。
ほっとしたC.C.は、とにかく心を落ち着かせなければと、妄想もせずに作業に没頭し、つつがなく報告を済ませた。
「以上です。あの設備の周辺は訓練によって砂埃が舞うので、フィルター設置等の対策を施すことを提案します」
「そうか、検討しよう。それとC.C.、研究棟に戻ったら一度休憩に入ったほうが良いだろう」
「あ、はい。ありがとうございます」
バルデムの気遣いとも取れるような言動に、C.C.は首を傾げながら研究棟へ戻った。
研究棟に戻って鏡を見ると、土や埃に機械油で顔は真っ黒。髪もばさばさであった。
これではおばさん扱いされて笑われても仕方がない。そうC.C.は思った。
「はぁ……」
職務は苛酷の一途を極め、癒しの糧にしていた訓練生達にも散々な扱いをされる。
レジメントの施設にやって来たC.C.の溜息は増えるばかりだった。
「―了―」
研究成果を提出して間もなく、C.C.は所長のヘイゼルに呼び出されていた。
「私が、ですか?」
「ええ」
所長の推薦か、あるいは実力か。C.C.はレジメント施設への出向を命ぜられた。
レジメント付き技官への任命は、エンジニアにとって出世の近道であった。
渦の向こう側の世界には新たな発見が多く、それに刺激されるエンジニアが多い。
事実、任期を終えて戻ってきたエンジニアは、次々と画期的で新しい理論を発表していた。
「日時は追って通達します。何か質問は?」
「あの、辞退は……?」
「そのようなことが許されるとでも思っているのですか」
冷たい声で返されてしまい、C.C.は縮み上がりながら所長室を出て行った。
「レジメントへの出向が決まったようですね」
作業室に戻る道すがら、正面からやって来たタイレルに声を掛けられた。
同期のタイレルは、短い期間ではあるものの共にローフェンに師事していたこともあり、まともに会話を交わすことができる唯一の人物であった。
「あ、タイレル。もうみんな知ってるんだ」
「ええ。先ほど通知がありましたので」
「そっか」
「おめでとう、と言うべきですね」
「そんなことないわよ。別に私自身の技能が求められてる訳じゃないもの。主任の代替でしかないわ」
「それでも君は選ばれた。堂々と胸を張ってください。それとも、選考に漏れた僕を惨めな気持ちにさせたいのですか?」
「あ……。ごめん、なさい」
タイレルは研究熱心であり、向上心も人一倍持っていた。上級技師になる近道とも言われるレジメント出向に対し、かなりの労力を割いていたであろうことは想像に難くない。
タイレルを傷付けるつもりは微塵もなかった。それだけに、彼のこの言葉はC.C.の心に深い影を落とした。
それから、タイレルと改めて話をするタイミングもないまま引継ぎを済ませ、C.C.はレジメントへと出向した。
「もう帰りたいー……」
レジメント施設にやって来て数週間。
施設の一角にある研究棟の一室で、C.C.は小さく不満を漏らした。
主任クラスのエンジニアが使っていた部屋だけあって、備え付けの設備は上等なものだ。
しかしながら、生活の大部分を機械での自動化に頼り切っていたC.C.にとって、初めての地上での暮らしは中々に大変だった。
まず補助機械なしに全て自らの手で、その上等の環境を保持する必要があった。
ほぼ男性のみの環境がそうさせるのか、研究棟以外の施設では清掃や備品の整頓が行き届いておらず、どれも埃と汚れに塗れていた。
食事ひとつを見ても、外と中を慌ただしく出入りする男達のことを考えると、衛生管理が行われているかすら怪しく思える。
地上は無秩序で汚れていて、お世辞にも整っているとは言い難い。C.C.の目にはそう映っていた。
加えて、事前に受けた『地上での行動における注意事項』が、C.C.の気分を更に重くさせていた。
曰く、職務以外で施設の外へ出てはいけない。
曰く、地上の文化に触れてはいけない。
曰く、レジメントの隊員は地上の者の中でも特に野蛮で下賎なので、職務上絶対という状況以外では接触してはならない。
等々。パンデモニウムの住民として尤もだと思うものもあれば、それはやり過ぎなのでは? と思うようなことまで、実に事細かく規定されていた。
「あの人が過労で倒れたのもわかる気がするわ」
レジメント付きエンジニアの統括責任者は、C.C.に対して前任のセインツと全く同じ技量と仕事量を求めてきた。
そのため、C.C.に与えられる仕事の内容はとにかく激務であり、複雑だった。
専門であるケイオシウムを動力とした新規の兵装開発と平行して、セインツが指揮を執っていたという、動作不良で問題を起こしたセプターの安定化改善案の提出。さらにコルベットやアーセナルキャリアに搭載されている帰還装置の改良まで。
しかも、関係資料はコンソールの中に整理されないまま散在していた。激務のため、整理整頓することすらままならなかったのだろう。
「はぁ……」
C.C.は過酷な職務の合間を縫って、この資料のデータを整理していた。
そうでもしなければ、セインツの残した資料を探すだけでも時間が取られてしまうことが明白であった。
ある日、C.C.は訓練棟で不調を起こした設備の検分を行っていた。
自分の後ろから聞こえる若い声は、訓練生と呼ばれているオペレーター候補達のものである。
「若いなぁ……」
自分と一〇も違わない年齢の筈だが、それでも訓練生達の姿は随分と幼く見えた。
――渦の脅威に立ち向かう戦士となるべく、修行を積む少年達。
そこで生まれる絆、腹を割って話せる友。かけがえのない日々を過ごし、少年達は成長していく。――
ほんわかした妄想をしながら設備の検分をしていると、不調の原因が見つかった。
どうやら機器の隙間に入り込んだ異物が原因のようだった。
「バルデム技官。原因が判明しました」
小型の通信機器を作動させると、上官に判断を仰いだ。
詳細を説明すると、分解して異物を取り出せという指示が下った。
「すみません。できないことはないですが、私、その……」
「ここに出向した以上、専門分野外でもやらねばならん。セインツ主任は顔色一つ変えずにやっていた」
「そうですか。わかりました」
通信を切って溜息をつく。
過去様々な人から何度この言葉を言われたか。パンデモニウムにいても、レジメントにいても、常に父親の影はつきまとっていた。
「仕方ないよね……」
気にしてもどうにもならないと、C.C.は気分を切り替えて分解作業を開始した。
絶えず聞こえてくる少年達の声を癒しのように感じながら、作業を進めていく。
――時にはいがみ合うこともある、気の合わない奴だっている。
様々な人種が集まるレジメントだからこそ、起こる衝突。
時には嫉妬し、時には励ましあい。
思春期の少年達は大きく戦士として成長していくのだ。――
異物は機器同士の隙間に入り込んでおり、機器を傷付けないよう慎重に分解作業を進めていく。
「やった、取れたっ!」
やっとの思いで異物を取り除くと、苦労のあまりか、思わず声を上げてしまった。
少年達が何事かとC.C.の方を見た。
「あ……」
注目を集めてしまい、C.C.は内心しまったと思った。
「ご、ごめんなさい。なんでもないわ」
動揺したことを悟られないよう、勤めて冷静に声を出す。
彼らに関わってはいけないと、C.C.は自分に言い聞かせた。
規則を破れば、当然、罰則が待っている。
「おばさん、だっせぇ」
「だっ、誰がおばさんですって!?」
C.C.は思わず叫んでしまった。
あくまでも冷静に対処して切り抜けるつもりだったが、二十代になりたてのC.C.にこの言葉は堪えた。
ゲラゲラと笑い出す訓練生達。先程までのほんわかした気持ちは消え去り、替わりに怒りが湧いてくる。
「おい、お前ら! サボるんじゃない!」
訓練生の様子に気付いた教官が訓練生を怒鳴る声が聞こえた。
それを合図に、訓練生達はバツが悪そうな顔をして訓練を再開し始めた。
ほっとしたC.C.は、とにかく心を落ち着かせなければと、妄想もせずに作業に没頭し、つつがなく報告を済ませた。
「以上です。あの設備の周辺は訓練によって砂埃が舞うので、フィルター設置等の対策を施すことを提案します」
「そうか、検討しよう。それとC.C.、研究棟に戻ったら一度休憩に入ったほうが良いだろう」
「あ、はい。ありがとうございます」
バルデムの気遣いとも取れるような言動に、C.C.は首を傾げながら研究棟へ戻った。
研究棟に戻って鏡を見ると、土や埃に機械油で顔は真っ黒。髪もばさばさであった。
これではおばさん扱いされて笑われても仕方がない。そうC.C.は思った。
「はぁ……」
職務は苛酷の一途を極め、癒しの糧にしていた訓練生達にも散々な扱いをされる。
レジメントの施設にやって来たC.C.の溜息は増えるばかりだった。
「―了―」