鬱葱茂盛的紅黑色樹海裡,沉重空氣中充滿了如同盛夏般的熱氣與溼氣。
在這個光是走著就好像快冒出汗來的場所,夏洛特他們正與被稱為賽蓮的魔物對峙著。
照著引導者的指示,尤莉卡跳上前線迎戰。
「夏洛特小姐,人偶就拜託你了」
「啊,好的!」
夏洛特看著尤莉卡面不改色地揮舞著鐵鎚,邊朝著賽蓮接近後,就牽著引導者的手往後方退下。
「應該沒問題吧……」
面對夏洛特的詢問人偶沒有回答。只在必要的時刻,說必要的事,引導者緊閉雙唇一語不發。
戰鬥似乎是尤莉卡處於優勢。無表情地使著鐵鎚像是要把賽蓮擊潰般的尤莉卡,雖然可靠但同時也看起來相當可怕。
沒多久戰鬥便分出勝負。尤莉卡邊仔細地擦拭掉魔物濺灑出的血,邊回到夏洛特他們的身邊。
「戰鬥結束了。繼續前進吧」
「嗯,說的也是……」
尤莉卡帶頭走著,而引導者、夏洛特在後頭跟著。
夏洛特思索著剛剛遇到的魔物。在來到這個世界前,曾經聽過賽蓮這個名字。
回想著那是什麼時候的事。
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小時候,在某個非常晴朗的夏日。
夏洛特和既是養父但又像是老師般敬仰著的凱倫貝克一起來海邊遊玩。
在沙灘上竟是看起來像一家人的人群們,是這個季節裡特有的熱鬧畫面。。
將雙腳浸在海水中忘我地玩耍,夏洛特不知不覺地來到了人群較少佇足的地方。
眼前是一片礁岩,放遠望去可以看到燈塔。大概是海邊的邊緣場所。
明明是沒有人煙的地方,卻聽到風聲像歌聲般地在耳邊響著。是個不可思議的光景。
「夏洛特,妳這孩子。不是跟妳說不准離開老師的身邊嗎」
恍惚地聽著風聲到出神,從後頭突然出現凱倫貝克的聲音。
驚覺地轉身後,與似乎鬆了口氣的凱倫貝克眼神交會。
「啊……。對不起,老師」
「讓你離開我的視線我也有錯。但是,妳怎麼會一個人跑來這樣的地方呢?」
「我不知道。我一回神就在這裡了,而且好像聽到像歌聲的──」面對用著慌亂且笨拙的語調不斷想解釋的夏洛特,凱倫貝克稍微沉思了一下。
「該不會,有賽蓮出現了」
「賽蓮?」
「嗯。據說是坐在岩礁上,會唱出讓船沉沒歌聲的魔物」
「咦,光是唱歌就能讓船沉沒嗎!」
「聽說賽蓮的歌聲有迷惑人的力量。被歌聲魅惑的船員,誤判了航行方向就會觸礁讓船沉了」
「竟然有那樣的魔物……」
「畢竟只是傳說而已。但是,或許夏洛特就是被那歌聲給吸引過來的」
「老師!」
夏洛特忍不住的抓住著凱倫貝克不放。
「抱歉,夏洛特。不要緊的,這附近的障壁器有正常運作,這裡是安全的」
「真得很抱歉,老師……」
撫摸著害怕不已的夏洛特頭髮,凱倫貝克很不好意思地道歉著。
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夏洛特的身子不禁顫抖了一下。因為剛剛尤莉卡打倒的賽蓮和那時被提到的賽蓮重疊在一起的緣故。
如果那種魔物又在襲來的話……
邊想著那種事,手臂好像被什麼拉扯著。
「呀啊啊啊啊!」
因為被拉扯的時機太巧,不自覺地叫喊出聲。
仔細一看,是引導者為了抓住夏洛特的手,伸出她那小小的手。
聽到尖叫聲的尤莉卡連忙跑過來。似乎是在回想事情時不自覺地拉遠了距離。
「怎麼了嗎?」
「沒事……只是想起了跟賽蓮有關的事……」
「這樣啊」
確認平安無事後,尤莉卡又回到前頭開始向前走。
雖然那個故事很恐怖。但對老師來說,也許只是想傳授給我知識也不一定。
老師,您現在在哪裡在做什麼呢。如果您是平安生活在某處就太好了。
夏洛特邊這麼想著,邊仰起頭來看著天空。
天空上,只有片黑暗又沉重的烏雲在空中蔓延著。
|
「─完─」
「真夏の遊戯」
鬱蒼とした赤黒い樹海は、真夏のような熱気と湿気で重たい空気に満たされていた。
歩くだけでも汗が吹き出るようなこの場所で、シャーロット達はセイレーンと称される魔物と対峙していた。
導き手の指示により、ユーリカが前線へ踊り出る。
「シャーロットさん、人形をお願いします」
「あっ、はい!」
ユーリカが露ほども表情を変えずにハンマーを振り翳しながらセイレーンに向かうのを見届けて、シャーロットは導き手の手を取って後方に下がった。
「大丈夫でしょうか……」
シャーロットの問いに導き手は答えない。必要なとき、必要なことしか言葉を発することのない導き手は、堅く口を閉ざしていた。
戦闘はユーリカが優勢のようだ。無表情でセイレーンを叩き潰そうとハンマーを振るうユーリカは、頼もしくもあり、同時に怖くも見えた。
ややあって戦闘が終わった。ユーリカは魔物の返り血を丁寧にふき取りながら、シャーロット達の元へ戻ってきた。
「戦闘は終了しました。先に進みましょう」
「そう、ですね……」
ユーリカを先頭に、導き手、シャーロットと続く。
シャーロットは先程の魔物について考えていた。この世界に来る前に、セイレーンの名前を聞いたことがあった。
それがいつのことだったかと、思い返していた。
幼い頃、よく晴れたある夏の日。
シャーロットは育ての親であり、先生と慕うカレンベルクと共に海へ遊びに来ていた。
浜辺には家族連れと思われる人達が見受けられ、この季節特有の賑わいを見せていた。
足を海水に浸けて夢中で遊んでいるうちに、シャーロットは外れた場所へと来てしまっていた。
目の前には岩礁が広がり、遠くには灯台が見える。浜辺の端のような所だった。
人気のない場所なのに、歌声のような風の音が響いていた。不思議な光景であった。
「こら、シャーロット。先生のそばを離れたらだめだと言っただろう」
ぼんやりと風の音に聞き入っていると、後ろからカレンベルクの声がした。
はっとなって振り向くと、どこかほっとしたようなカレンベルクと目があった。
「あ……。 ごめんなさい、先生」
「目を離した僕も悪かった。でも、どうしてこんな所まで一人で来ちゃったんだい?」
「わからないです、気がついたらここにいて、歌声みたいなのも聞こえてくるし——」
混乱して拙い口調であれこれと説明するシャーロットに、カレンベルクは少し考えを巡らせた。
「もしかしたら、セイレーンがいたのかもね」
「セイレーン?」
「そう。岩礁に座って船を沈める歌を歌う魔物と言われている」
「えっ、歌を歌うだけで船が沈んじゃうんですか!」
「セイレーンの歌声には人を惑わす力があるらしいからね。歌に惑わされた船乗りが、航行を誤って船を沈めてしまうんだ。」
「そんな魔物がいるなんて……」
「あくまでも伝承だよ。でも、もしかしたらシャーロットもその歌声に誘われたのかも」
「先生!」
シャーロットは堪らずにカレンベルクにしがみついた。
「ごめんよ、シャーロット。大丈夫、この辺は障壁器がちゃんと作動していて安全だからね」
「ごめんなさい、先生……」
怯えるシャーロットの頭を撫でながら、カレンベルクは申し訳なさそうに謝るのだった。
シャーロットはふるりと身震いした。今しがたユーリカが倒したセイレーンとお話のセイレーンが重なってしまったからだった。
あんなのがまた襲ってきたら……
そんな事を考えていると、腕のあたりを何かに引っ張られた。
「ひゃああああ!」
あまりといえばあまりのタイミングに、情けない叫び声を上げてしまった。
よく見ると、導き手がシャーロットの腕のあたりを掴もうと、その小さな腕を伸ばしていた。
悲鳴に気付いたユーリカが駆け寄ってきた。考え事をしている間に随分と距離が離れてしまったようだ。
「どうかしましたか?」
「いえ……ちょっとセイレーンについて思い出したことがあって……」
「そうでしたか」
特に何事も無かったことを確認すると、ユーリカは踵を返して再び先頭を歩き始めた。
それにしてもあの話は怖かった。先生にしてみれば、ちょっとした知識を教えようとしただけかもしれないけれど。
先生、今はどこで何をしているんだろう。どこかで元気に過ごしていればいいのだけれど。
そんな事を思いながら、シャーロットは空を見上げた。
そこには、暗く重い雲が立ち込める空だけが広がっていた。
「—了—」
鬱蒼とした赤黒い樹海は、真夏のような熱気と湿気で重たい空気に満たされていた。
歩くだけでも汗が吹き出るようなこの場所で、シャーロット達はセイレーンと称される魔物と対峙していた。
導き手の指示により、ユーリカが前線へ踊り出る。
「シャーロットさん、人形をお願いします」
「あっ、はい!」
ユーリカが露ほども表情を変えずにハンマーを振り翳しながらセイレーンに向かうのを見届けて、シャーロットは導き手の手を取って後方に下がった。
「大丈夫でしょうか……」
シャーロットの問いに導き手は答えない。必要なとき、必要なことしか言葉を発することのない導き手は、堅く口を閉ざしていた。
戦闘はユーリカが優勢のようだ。無表情でセイレーンを叩き潰そうとハンマーを振るうユーリカは、頼もしくもあり、同時に怖くも見えた。
ややあって戦闘が終わった。ユーリカは魔物の返り血を丁寧にふき取りながら、シャーロット達の元へ戻ってきた。
「戦闘は終了しました。先に進みましょう」
「そう、ですね……」
ユーリカを先頭に、導き手、シャーロットと続く。
シャーロットは先程の魔物について考えていた。この世界に来る前に、セイレーンの名前を聞いたことがあった。
それがいつのことだったかと、思い返していた。
幼い頃、よく晴れたある夏の日。
シャーロットは育ての親であり、先生と慕うカレンベルクと共に海へ遊びに来ていた。
浜辺には家族連れと思われる人達が見受けられ、この季節特有の賑わいを見せていた。
足を海水に浸けて夢中で遊んでいるうちに、シャーロットは外れた場所へと来てしまっていた。
目の前には岩礁が広がり、遠くには灯台が見える。浜辺の端のような所だった。
人気のない場所なのに、歌声のような風の音が響いていた。不思議な光景であった。
「こら、シャーロット。先生のそばを離れたらだめだと言っただろう」
ぼんやりと風の音に聞き入っていると、後ろからカレンベルクの声がした。
はっとなって振り向くと、どこかほっとしたようなカレンベルクと目があった。
「あ……。 ごめんなさい、先生」
「目を離した僕も悪かった。でも、どうしてこんな所まで一人で来ちゃったんだい?」
「わからないです、気がついたらここにいて、歌声みたいなのも聞こえてくるし——」
混乱して拙い口調であれこれと説明するシャーロットに、カレンベルクは少し考えを巡らせた。
「もしかしたら、セイレーンがいたのかもね」
「セイレーン?」
「そう。岩礁に座って船を沈める歌を歌う魔物と言われている」
「えっ、歌を歌うだけで船が沈んじゃうんですか!」
「セイレーンの歌声には人を惑わす力があるらしいからね。歌に惑わされた船乗りが、航行を誤って船を沈めてしまうんだ。」
「そんな魔物がいるなんて……」
「あくまでも伝承だよ。でも、もしかしたらシャーロットもその歌声に誘われたのかも」
「先生!」
シャーロットは堪らずにカレンベルクにしがみついた。
「ごめんよ、シャーロット。大丈夫、この辺は障壁器がちゃんと作動していて安全だからね」
「ごめんなさい、先生……」
怯えるシャーロットの頭を撫でながら、カレンベルクは申し訳なさそうに謝るのだった。
シャーロットはふるりと身震いした。今しがたユーリカが倒したセイレーンとお話のセイレーンが重なってしまったからだった。
あんなのがまた襲ってきたら……
そんな事を考えていると、腕のあたりを何かに引っ張られた。
「ひゃああああ!」
あまりといえばあまりのタイミングに、情けない叫び声を上げてしまった。
よく見ると、導き手がシャーロットの腕のあたりを掴もうと、その小さな腕を伸ばしていた。
悲鳴に気付いたユーリカが駆け寄ってきた。考え事をしている間に随分と距離が離れてしまったようだ。
「どうかしましたか?」
「いえ……ちょっとセイレーンについて思い出したことがあって……」
「そうでしたか」
特に何事も無かったことを確認すると、ユーリカは踵を返して再び先頭を歩き始めた。
それにしてもあの話は怖かった。先生にしてみれば、ちょっとした知識を教えようとしただけかもしれないけれど。
先生、今はどこで何をしているんだろう。どこかで元気に過ごしていればいいのだけれど。
そんな事を思いながら、シャーロットは空を見上げた。
そこには、暗く重い雲が立ち込める空だけが広がっていた。
「—了—」