我在梅爾基奧的地下研究室裡,追查著二具自動人偶的行蹤。
「可以追蹤到現在在哪嗎?」
「目前正在搜尋中,如果我們設下的網來得及的話,應該就能知道他們所在位置」
梅爾基奧指出殺害格雷巴赫的真正犯人是逃走的二具自動人偶。如果是利用機械殺人,那麼是受了誰的命令呢,真相目前還不曉得。
即使如此,萬一危險的自動人偶逃到街上的話,就該先捉到再說。
「他們的外表仿真到恐怖的地步,從外表上絕對看不出來是自動人偶」
「不止是外表,動作行為也很特別嗎?」
「沒錯。所以才能利用他們的特別,來設網抓他們」
從資料上早就知道梅爾基奧是擁有特別才能的高階工程師。這個實績與我這個區區尾端的下級官吏是完全不同次元的程度。現在也只能相信他了。
「馬上就能知道所在地了,先給你這個」
梅爾基奧將一個小小的棒狀裝置交給了我。
「是格雷巴赫事先準備好的自動人偶緊急停止按鈕。在距離自動人偶10阿爾雷左右時按下」
可以握在手裡的小按鈕,感覺裡面構造應該沒有多厲害。
「這是使用特殊的通訊方法傳送密碼的裝置,距離太遠就無法使用,現在只有這個能讓那兩傢伙停下來」
「有萬一的時候,可以對他們開槍嗎?」
「不要開,絕對不要存有跟他們交談或攻擊的想法,只要靠近他們按下按鈕。就這樣」
這時,控制器發出了警示音。
「我知道他們的位置了,看來是在連繫階層與階層的輸送坑道裡」
看樣子,自動人偶打算進入下面的階層。如果越過管理區域的話,追查將會變得麻煩。必須要抓緊時間了。
「要不要申請支援?」
費德曼問道。
「聯絡本部的話,說不定能包圍夾攻」
「不要這麼做」
梅爾基奧插話說道。
「為什麼?」
「沒有防備的人類遇到他們是很危險的,只讓持有這個按鈕的人靠近才是正確的做法」
「他們身上持有什麼危險的武器嗎?」
必須先問清楚這個自動人偶的危險性。
「是的,沒錯。如果不能悄悄地靠近然後按下按鈕的話,就會遭遇到跟格雷巴赫同樣下場」
「不能說得詳細一點嗎?」
這種繞圈子的說話方式讓人很火大。
「就算我跟你們說了,你們也不可能懂。就是那類的危險,只要記住你們只要一大意就會被殺就可以了」
雖然認識他還沒多久,但也已經足夠了解,想要這個男的誠實回答問題只是浪費時間而已,但是,很緊急是真的。只能照著他的話做了。
「懂了嗎,照我說的使用那個按鈕的話,就不會有問題」
「你要一起去嗎?」
向梅爾基奧問道。
「不,能複製那個按鈕的人就只有我而已,我死了的話就沒有人做得出來」
「也就是說你信任我們?」
「是機率的問題。選擇有利的一方,可以說是合乎邏輯的選擇」
看來跟他講這些沒用,還是講點實際的。
「他們的知覺能力有多高?」
「應該比人類還高,但是詳細的構造機能不明。不過,有一點對我們有利,就是他們沒想到我們動作會這麼快」
「遇上的時候有一瞬間的機會是嗎?」
「對,他們正往維修中的127C坑道前進。現在沒有運輸車會通過」
梅爾基奧將控制器的面板拿給我看。
「143D跟127C是平行的,先連絡主管單位讓這條坑道暫停行駛吧」
我與費德曼確認一下坑道資料。
「我們可以從撒馬利亞大道東24號的工業孔下去,快點,他們可還在持續移動中」
我們離開了梅爾基奧的地下研究室後,迅速上車。
「要全速衝刺了哦」
布朗寧踩下油門,衝到撒馬利亞大道,用最快速度衝向目的地。
「槍要準備嗎?」
費德曼問道。費德曼在這種狀況都是會優先考量萬一的類型。
「你覺得不安的話就帶去吧,我要集中在按鈕上」
我並不是相信梅爾基奧的話,只是憑直覺判斷的。
車子到達目的地後,我跟費德曼一起打開水溝蓋下去。
「看來趕上了,從D78進去,從127C出來。我現在就傳送那兩傢伙的位置給你們。埋伏的地點也給你們標示好了」
梅爾基奧來電說道。
「繼續通訊的話可能會被那兩傢伙發現,通訊就此中斷。只要那兩傢伙接近就按下按鈕,如此就能結束了」
「知道了」
我跟費德曼一手拿著手電筒,朝黑暗的地下通道前進。將D78的水溝蓋打開,來到目的地的坑道。
127C坑道有為了維護運輸車軌道的機器隨意地擺放著,還有好幾具電源沒開的工業用自動人偶躺在地上。
「我有不好的預感」
費德曼小聲地說道。
「快走吧」
我們盡可能的不發出聲音,朝我們要埋伏的地點前進。埋伏地點有地方可以遮蔽,我們就在此躲起來等待他們。
到了埋伏地點後,費德曼就把槍拿好。
「為了萬一」
我默默地將按鈕握在胸前,將手電筒關掉,等待他們。
沉默與黑暗持續著,。只有遠方那非常小的緊急用燈光芒的世界中,簡直不像是現實。
應該只等了十五分鐘而已,卻因為沉默感覺時間過得非常慢。我不自覺地一再確認蓄光手錶微微顯示的時間。
再過了二十分鐘左右,有腳步聲在坑道中響起。費德曼舉好手槍,而我則是準備好按鈕。
腳步聲確實接近了,但是看不到他們,應該是他們沒有拿手電筒直接前進。
只能靠聲音來判斷他們的距離,必須在他們靠近,但是還沒太近的時候按下按鈕才行。
我拼命地想靠眼睛來分辨跟他們的距離,但實在是太暗了根本看不出來,只能集中聽腳步聲了。
好像還很遠,我因為緊張而重新握了好幾次按鈕,腳步聲越來越近了。
這種緊張狀態會讓人的感官變得曖昧模糊,我決定要讓他們盡可能的接近後再按。
腳步聲停下了。
是被發現了嗎?他們的感官應該比我們敏銳,我應該不顧一切衝出去按鈕嗎?
我只能跟費德曼說一聲就衝出去了,在一瞬間決定。
「我去接近他們,拜託你援護了!」
我在黑暗中衝出去,往應該有自動人偶的方向跑去。
費德曼從我後方用手電筒照射,我從背後的光確認了對方的位置。確實看到了自動人偶兩具,距離似乎還差一點。
再來就只能順其自然了,我按下了按鈕。然後其中一具當場倒下,另一具看起來動搖了。
本來想說成功了的同時,周圍的工業用自動人偶大大地發出啟動的聲音。
「可惡!」
站起來的橘色工業用自動人偶擋住了坑道,然後揮動他們那金屬制的粗手腕往我這邊過來。我為了躲開而將手壓向地面的同時,後方傳來槍聲。
我看到費德曼也被工業用自動人偶攻擊了,攻擊我的工業用自動人偶打算抓住我。
雖然我想再按一次按鈕,但是剛剛要躲開的時候弄丟了。
我非常混亂,腦中浮現了死亡。
我直接轉身跑走了,我才不要在黑暗的坑道中被機器殺掉,我還有家人,比任何任務都來得重要。
「住手!!」
費德曼發出慘叫聲後,就被工業用自動人偶捏爆了頭。贏不了了。只能逃走了。得活著回去才行。
我拼死命的在黑暗中跑,一次也沒有回頭看過,我一直往入口的水溝蓋跑。
我找到水溝蓋那小小的光線後,馬上跳進去。然後將水溝蓋鎖上,往樓梯上跑。然後我終於到達了地上的出口。
我氣喘不過來、眼前是黃昏。我冷靜下來豎起耳朵聽,並看看周圍,看來他們沒有追上來。看來我存活下來了,只好重新來過了。比起費德曼的死跟搜查的失敗來說,現在活下來的安心感大多了。
我調整好呼吸後,打開門出了通道,往車子的方向去。
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車旁是我的妻子海倫站在那邊。
「找到你忘的東西了嗎?」
她向我問道。我正和家人外出中,難得拿到的假日,打算與家人一起去公園。就算不能出遠門也想有個回憶。
我打開包包給她看,我忘記拿的是相機的電池。
「來,走吧」
我兒子大衛已經在車上,從後座向我揮手。
我上了車後,將放有相機的包放在大衛的旁邊。
「不可以動裡面的東西哦」
「嗯,好的爸爸」
大衛很有精神地回答道,看起來是因為與家人一起出遊很開心。
海倫坐在大衛旁邊。
「工作怎麼樣了?」
海倫問道。
「普通,不差」
才不普通,根本才剛經歷過大失敗,但是我現在不想去想這件事。
我從照後鏡看到大衛手上拿著相機。
「喂,不要玩相機」
「這孩子,在模仿你呢」
「海倫,讓他放下,那個容易壞」
這相機雖然不貴,但因為是古董容易壞。所以我拜託海倫幫我保護。
「來,大衛,借媽媽一下」
大衛還在玩弄相機。
「因為那個是爸爸重要的相機哦」
海倫打算從大衛手中拿走相機。
就在那時,前方看到有道路臨檢,那附近也很多像臨檢的東西,以及武裝的搜查局在封鎖道路。
「奇怪了,怎麼會在這種地方……」
我自言自語的說完後,就打算將車速放慢的時候。
「快前進!我們會被殺的!」
海倫突然大聲說道,並握緊相機。
「爸爸,我好怕!我們快走吧」
大衛從後方抓住我的肩膀。
「別擔心,爸爸會保護我們的」
海倫抱住大衛。
沒錯,不逃不行,我有要保護的家人。
「不用擔心」
我踩滿油門往臨檢的方向開,我一定要達成才行。我要保護家人,我往車輛跟車輛中間衝過去。
我從進行封鎖的搜查局車輛的影子,看到了一起開火的火光。
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從翻過來的車中飛出一具女性型的自動人偶,受到射擊。四肢都被打中,自動人偶回轉後掉落在地面。
「不這麼做的話,傷害會擴的更大」
梅爾基奧向蕾格烈芙說道。
「先暫時向他家人隨便講個死因,關於這次的混亂,一概不需要提起」
蕾格烈芙向秘書傳達了處理方針。
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我播放了將車子的再生裝置電子化的膠卷檔案。
看到了雙親跟自己的影像後,持續一片黑。正打算要關掉的時候,覺得那黑暗中瞬間有閃過一道光的樣子。
我用慢動作播放仔細看後,看到黑暗的靜止畫面似乎混進了一些東西。
影像非常地淡,這樣到底拍了什麼根本看不清,需要使用搜查用特別處理。
對偵探來說,處理證據照片是業務的一部分。我已經習慣了調查到底拍到了什麼這種事。
然後抽出了三張奇怪的照片。
──一張是,沒有什麼特別的路面照片。
──另一張是,在水泥牆壁上寫著『127C』的文字,像是標誌。
──最後一張是,壞掉的工業用自動人偶的識別號碼。
看起來像是提示。
解析了照片內容後,發現了照片中的道路在何處。
而自動人偶的照片則是,是使用在地下維護的工業用自動人偶。
而標誌雖然花了些時間,但最後找到是地下運輸車用的坑道號碼。
看來需要去一趟,才能知道這些提示想告訴我什麼。
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要到坑道去的路上意外的簡單,工業用的鑰匙孔很容易就打開了,看來這個區域沒人在使用。
到地下去後,找到跟照片同一個場所。
坑道一部分似乎崩塌了,然後貼在崩塌處了警示線已經很破爛了,看來是崩塌後就被放棄沒人管了。
我一手拿著手電筒往坑道裡前進,發現荒廢的工業機器與工業用自動人偶散亂在地上。
我一個個看過散落在地上的自動人偶編號後,在第五還是第六具自動人偶身上,終於找到了照片上的編碼。
這具自動人偶的四肢已經被切斷,裡面也被打得亂七八糟。但是電子頭腦似乎沒事。
「就是這傢伙嗎……」
我只把電子頭腦的部分取出來,帶回家了。
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「─完─」
2837年 「カメラ」
メルキオールの地下研究室で、俺は姿を消した二体のオートマタの行方を追っていた。
「現在地を追えるのか?」
「いま走査しているところだ。こちらが仕掛けた網が間に合えば位置はわかる」
グライバッハを殺した真犯人は逃げた二体のオートマタであるとメルキオールは語った。機械による殺人、ならば誰かが命令したことになるが、その正体はまだわからない。
それでも、危険なオートマタが市井に逃げ出したのならば、まずは捕らえるのが先だ。
「あれらは恐ろしく精巧に出来ておる。外見では決してオートマタだとはわからないだろう」
「姿だけでなく、行動も特別なのか?」
「そうだ。だが、その特別さを利用して網を仕掛けることができた」
メルキオールが特別な才能を持ったテクノクラートだということは資料でわかっている。その実績は末端の下級官吏に過ぎない自分とは全く次元の異なるレベルだ。今は彼を信用するしかない。
「もうすぐ居場所が判明する。先にこれを渡しておこう」
メルキオールは小さな棒状の装置を俺に渡した。
「グライバッハが用意していたオートマタの緊急停止スイッチだ。10アルレまで近付いて押せ」
手に収まる小さなスイッチには、大層な仕組みがあるように思えない。
「暗号化されたキーを特殊な通信方法で送るものだ。距離があると使えない。今はこれしか奴らを止める方法は無い」
「もしもの時は銃で撃っても構わないのか?」
「やめておけ。絶対に奴等と会話をしたり攻撃したりしようと思うな。ただ近付いてそのスイッチを押せ。それだけだ」
その時、コンソールがアラート音を出した。
「場所がわかったぞ。階層と階層を繋ぐ輸送シャトルの坑道にいるようだ」
どうやら、オートマタは階層を降りようとしているようだった。管理区域を越えられると捜査が面倒になる。急がなければならない。
「応援はどうする?」
フリードマンが聞いてきた
「本部に連絡すれば挟み撃ちにできるかもしれんな」
「やめておけ」
メルキオールが口を挟んだ。
「何故だ?」
「奴らに無防備な人間が遭遇するのは危険だ。そのスイッチを持った者のみが近付くのが正しい」
「何か危険な武器でも持っているのか? 奴らは」
このオートマタの危険性については聞いておかなければならない。
「ああ、そうだ。気付かれぬように近付いてそのスイッチを押さなければ、皆グライバッハのような目に遭う」
「詳細は言えないと?」
持って回った言い方に苛つきを覚えた。
「言ったところで理解は不可能だろう。そういう類の脅威だ。油断すれば殺されると思っていればいい」
この男に誠実な受け答えを期待しても無駄だということは、この短い時間でもわかっていた。だが、急がなければならないのは確かだ。やるしかない。
「いいか、そのスイッチを言われたとおりに使えば何の問題もない」
「一緒に来るか?」
メルキオールに聞いた。
「いや、そのスイッチのコピーを作れるのは私だけだ。私が死ねばもう誰も作れまい」
「俺達を信用するわけか」
「確率の問題だ。有利な方を選ぶ、論理的な選択というべきだな」
こういう会話は建設的じゃない。実質的な話をしておこう。
「彼らの知覚能力は?」
「人間よりは上だろうが、細かなスペックは不明だ。だが、こちらに有利な点が一つだけある。奴らはこちらが先回りしていると思っていないということだ」
「会敵したときに一瞬のチャンスがあると」
「そうだ。奴らが向かっているのは整備中の127C坑道だ。現在シャトルは通っていない」
メルキオールがコンソールの画面を見せた。
「143Dが平行に走ってる。こちらのシャトルを止めて先回りできるように連絡しよう」
フリードマンとデータを確認する。
「サマリタン通り東24番の作業孔から降りられる。急げ、奴らは移動し続けているぞ」
俺達はメルキオールの地下研究室を出ると、急いで車へ乗り込んだ。
「飛ばすぞ」
ブロウニングは車のアクセルをふかした。サマリタン通りに飛び出し、目一杯のスピードで目的地へ向かった。
「銃はどうする?」
フリードマンが聞いてくる。こいつはこういう状況でイニシアチブを取るタイプではなかった。
「不安なら持っていけよ。俺はスイッチに集中する」
メルキオールの言葉を信用したわけじゃない。直感の判断だ。
車が目的地に着く。フリードマンと共にハッチを開けて階段を降りていく。
「間に合いそうだ。D78のハッチを使え、そこで127Cに出る。奴らの現在位置を送る。待ち伏せのポイントも示しておく」
通信連絡がメルキオールから入った。
「通信は奴らに気付かれる可能性があるので、これで終わりにする。奴らが近付いたらスイッチを押せ。それで全てが済む」
「わかった」
俺とフリードマンはフラッシュライトを片手に、暗い地下道を慎重に進んでいった。D78のハッチを開け、目的の坑道へ出た。
127C坑道にはシャトルレール整備のための機械が雑然と並んでいた。電源が入っていない状態の作業用オートマタが何体も転がっている。
「やばい予感がするぜ」
フリードマンが小さな声で不安を口にする。
「急ごう」
なるべく音を出さないようにして、俺達は待ち伏せのポイントへ向かった。ポイントには退避スペースが作られている。そこに身を隠して奴らを待ち伏せすることになる。
待ち伏せのポイントに着くと、フリードマンはホルスターから銃を抜いた。
「念のためさ」
俺は黙ってスイッチを胸の前で握った。フラッシュライトを消して、奴らが来るのを待つ。
沈黙と暗闇の時間が続いた。遠くの小さな非常灯だけが小さく光る世界には、まるで現実感が無かった。
一五分程待てばいい筈だったが、この沈黙の時間はとても長く感じられた。蓄光材でうっすらと示された腕時計の針を何度も確認してしまう。
それから二〇分程待つと、足音が坑道に響き始めた。フリードマンが銃を構え、自分はスイッチを押す準備をする。
足音は確実に近付いてきていた。姿は確認できない。奴らはライトを使わずに進んでいるのだろう。
音で距離を判断しなければならなかった。確実に近付いてから、そして近付き過ぎる前にスイッチを押さなければならない。
俺は必死に目を凝らして二体との距離を測ろうとした。だが、暗闇が濃くてよくわからない。足音に集中するしかない。
まだ距離は離れているようだった。俺は緊張で何度もスイッチを握り直した。足音の距離はかなり近付いてきていた。
こういう緊張状態は知覚をあやふやにする。できるだけ引き付けてから押すべきだと、俺は決心していた。
足音が止まった。
感付かれたか。奴らの知覚能力はこちらより鋭いだろう。一か八か飛び出してスイッチを押すべきだろうか。
フリードマンに声を掛けて飛び出すしかない。決断は一瞬だった。
「奴らに近付く、バックアップ頼むぞ!」
俺は暗闇の中を飛び出し、オートマタがいるであろう場所へ走った。
後方からフリードマンがライトを照らす。背後からの光で相手の姿が確認できた。オートマタが二体、確かに見えた。距離はギリギリに思えた。
成り行きに任せるしかない。俺はスイッチを押した。すると一体のオートマタがその場で倒れ伏し、もう一体がぐらつくのが見えた。
やったと思った瞬間、自分の周りにいた作業用オートマタの起動音が坑道に大きく響き渡った。
「くそっ!」
立ち上がったオレンジ色の作業用オートマタが道を塞ぐ。そしてその金属の太い腕を振り回してきた。俺がそれを避けようと地面に手を突いた瞬間、背後で銃声がした。
フリードマンも作業用オートマタに襲われているのが目の端に映った。俺の相手をする作業用オートマタが掴み掛かってこようとする。
スイッチを再び押そうとするが、さっき手を突いた時に落としていた。
俺は混乱していた。死が脳裏をよぎる。
俺は踵を返す形で走り出した。暗い坑道で機械に殺されるのは御免だ。俺には家族がいる。任務より大切なものがある。
「やめろっ!!」
その叫び声を最後に、フリードマンは作業用オートマタに頭を潰された。もう勝ち目は無い。逃げるしかない。生きて戻らなければならない。
俺は必死に暗闇を走った。後ろを一度も振り返らず、入り口のハッチを目指した。
ハッチの小さな明かりを見つけ、そこに飛び込む。ハッチをロックして階段を駆け上がった。そして、俺は地上への出口まで辿り着いた。
息は上がりきり、目の前が霞んでいた。落ち着いて耳を澄まし、様子を窺う。追ってきている様子は無かった。どうやら生き残れたようだ。再追跡は時間が掛かるかもしれないが出直すしかない。フリードマンの死や捜査の失敗より、今は生き残った安堵の方が大きかった。
息を整えると、扉を開けて通りへ出て、俺は車の方に足を向けた。
車の横には妻のヘレンが立っていた。
「忘れ物は見つかったの?」
彼女は声を掛けてきた。俺は家族で出掛けるところだった。滅多に取れない休日、家族で公園に行こうとしていた。遠出はできなくても思い出は作れる。
俺は彼女に鞄を掲げてみせた。カメラ用の電池を忘れたのだ。
「さあ、行こう」
息子のデイヴはすでに車の中にいた。後ろの席で手持ちぶさたにしている。
俺は車に乗り込むと、カメラの入った鞄をデイヴの隣に置いた。
「中をいじるなよ」
「うん、わかったよパパ」
デイヴは元気よく答えた。家族で出掛けるのが楽しいようだ。
俺は運転席に座り、車を走らせた。ヘレンはデイヴの隣に座った。
「仕事はどうなの?」
ヘレンが聞いてきた。
「まあまあさ、悪くない」
まあまあどころではない。大きな失敗をしたばかりだった。だが、今はそれを思い出したくはなかった。
バックミラーにデイヴがカメラを手にしているのが映った。
「おい、カメラはやめるんだ」
「この子、あなたの真似をしてるのよ」
「ヘレン、やめさせてくれ。壊れやすいんだ」
このカメラは大した値段ではないが、骨董品で壊れやすい。俺はヘレンに頼んだ。
「さ、デイヴ、ママに貸して」
デイヴはまだカメラを振り回していた。
「パパの大事なカメラだから」
ヘレンはデイヴからカメラを取り上げようとする。
その時、目の前の道路に検問らしきものが見えてきた。近付くにつれてそれが物々しい、武装された捜査局の道路封鎖だというのがわかった。
「おかしいな、こんな場所で……」
俺が呟き、車のスピードを落とそうとした時だ。
「進んで! 私達殺されるわ!」
ヘレンが声を上げた。カメラを手に握っている。
「パパ、怖い! 早く行こう!」
後ろのデイヴが俺の肩を掴んだ。
「大丈夫、パパはやってくれるわ」
ヘレンはデイヴを抱きかかえた。
そうだ、逃げなきゃいけない。俺には守るべきものがある。
「心配するな」
アクセルを思い切り踏み込んで検問へ向かっていった。必ずやり遂げなければいけない。家族を守るんだ。車両と車両の間を目掛けて猛スピードで進む。
封鎖している捜査局の車両の影から、一斉に発砲炎が上がるのが見えた。
横転した車から飛び出した女性形のオートマタが一斉射撃を受ける。四肢に銃弾を受け、オートマタは回転するように地面に叩き付けられた。
「こうしなければ、もっと被害が出ていただろう」
捜査車両の裏で、メルキオールはレッドグレイヴに言った。
「家族には暫くしたら適当な死因を伝えなさい。今回の混乱については、一切を口外無用とする」
レッドグレイヴは秘書に事務的に伝えた。
俺は車の再生装置にデジタル化したフィルムのデータを再生した。
両親と自分のシーンが過ぎて真っ黒な画面が続く。再生を止めようとすると、その暗闇に瞬くような光が写ったような気がした。
ゆっくりとコマ送りをしていくと、何か静止画が紛れている。
コントラストが淡く、そのままでは何が写っているかわからない。捜査用の特別な画像処理を施す。
探偵にとって証拠写真の処理は業務の一部分だ。何が写っているのかを調べるのは慣れている。
そうして、三枚の奇妙な画像が抽出できた。
――一つは、変哲のない路地の写真。
――もう一つは、コンクリートの壁にかかれた『127C』という文字。標識のようだ。
――最後の一つは、壊れた作業用オートマタの認識番号。
これらがヒントらしい。
画像の内容を解析する。路地の写真はすぐに場所が判明した。
オートマタの写真は、形から地下整備に使われる汎用作業オートマタだとわかった。
標識については時間が掛かったが、それは地下を走るシャトルの坑道の番号だった。
そこに行く必要がある。ヒントから得られた答えは明白だった。
坑道へのアクセスは意外と簡単だった。作業孔の鍵は簡単に開いた。どうやらこの区画は使われていないらしい。
下に降りると、写真と同じ場所に辿り着く。
坑道の一部が崩れている箇所があり、そこに貼られている非常線のテープはボロボロだ。崩れた後にそのまま放棄されたのだろう。
フラッシュライトを片手に坑道を進む。放置されたままの状態で工作機械や作業用オートマタが散乱していた。
転がっている作業用オートマタの番号を一つずつ確認していく。五、六台も探したところだろうか、ついに写真に写っていたオートマタが見つかった。
四肢はもがれ、中身もぶちまけられていたが、電子頭脳は無傷で残っているようだった。
「こいつなのか……」
俺は電子頭脳の記憶装置部分だけを取り出して、持ち帰った。
「―了―」
メルキオールの地下研究室で、俺は姿を消した二体のオートマタの行方を追っていた。
「現在地を追えるのか?」
「いま走査しているところだ。こちらが仕掛けた網が間に合えば位置はわかる」
グライバッハを殺した真犯人は逃げた二体のオートマタであるとメルキオールは語った。機械による殺人、ならば誰かが命令したことになるが、その正体はまだわからない。
それでも、危険なオートマタが市井に逃げ出したのならば、まずは捕らえるのが先だ。
「あれらは恐ろしく精巧に出来ておる。外見では決してオートマタだとはわからないだろう」
「姿だけでなく、行動も特別なのか?」
「そうだ。だが、その特別さを利用して網を仕掛けることができた」
メルキオールが特別な才能を持ったテクノクラートだということは資料でわかっている。その実績は末端の下級官吏に過ぎない自分とは全く次元の異なるレベルだ。今は彼を信用するしかない。
「もうすぐ居場所が判明する。先にこれを渡しておこう」
メルキオールは小さな棒状の装置を俺に渡した。
「グライバッハが用意していたオートマタの緊急停止スイッチだ。10アルレまで近付いて押せ」
手に収まる小さなスイッチには、大層な仕組みがあるように思えない。
「暗号化されたキーを特殊な通信方法で送るものだ。距離があると使えない。今はこれしか奴らを止める方法は無い」
「もしもの時は銃で撃っても構わないのか?」
「やめておけ。絶対に奴等と会話をしたり攻撃したりしようと思うな。ただ近付いてそのスイッチを押せ。それだけだ」
その時、コンソールがアラート音を出した。
「場所がわかったぞ。階層と階層を繋ぐ輸送シャトルの坑道にいるようだ」
どうやら、オートマタは階層を降りようとしているようだった。管理区域を越えられると捜査が面倒になる。急がなければならない。
「応援はどうする?」
フリードマンが聞いてきた
「本部に連絡すれば挟み撃ちにできるかもしれんな」
「やめておけ」
メルキオールが口を挟んだ。
「何故だ?」
「奴らに無防備な人間が遭遇するのは危険だ。そのスイッチを持った者のみが近付くのが正しい」
「何か危険な武器でも持っているのか? 奴らは」
このオートマタの危険性については聞いておかなければならない。
「ああ、そうだ。気付かれぬように近付いてそのスイッチを押さなければ、皆グライバッハのような目に遭う」
「詳細は言えないと?」
持って回った言い方に苛つきを覚えた。
「言ったところで理解は不可能だろう。そういう類の脅威だ。油断すれば殺されると思っていればいい」
この男に誠実な受け答えを期待しても無駄だということは、この短い時間でもわかっていた。だが、急がなければならないのは確かだ。やるしかない。
「いいか、そのスイッチを言われたとおりに使えば何の問題もない」
「一緒に来るか?」
メルキオールに聞いた。
「いや、そのスイッチのコピーを作れるのは私だけだ。私が死ねばもう誰も作れまい」
「俺達を信用するわけか」
「確率の問題だ。有利な方を選ぶ、論理的な選択というべきだな」
こういう会話は建設的じゃない。実質的な話をしておこう。
「彼らの知覚能力は?」
「人間よりは上だろうが、細かなスペックは不明だ。だが、こちらに有利な点が一つだけある。奴らはこちらが先回りしていると思っていないということだ」
「会敵したときに一瞬のチャンスがあると」
「そうだ。奴らが向かっているのは整備中の127C坑道だ。現在シャトルは通っていない」
メルキオールがコンソールの画面を見せた。
「143Dが平行に走ってる。こちらのシャトルを止めて先回りできるように連絡しよう」
フリードマンとデータを確認する。
「サマリタン通り東24番の作業孔から降りられる。急げ、奴らは移動し続けているぞ」
俺達はメルキオールの地下研究室を出ると、急いで車へ乗り込んだ。
「飛ばすぞ」
ブロウニングは車のアクセルをふかした。サマリタン通りに飛び出し、目一杯のスピードで目的地へ向かった。
「銃はどうする?」
フリードマンが聞いてくる。こいつはこういう状況でイニシアチブを取るタイプではなかった。
「不安なら持っていけよ。俺はスイッチに集中する」
メルキオールの言葉を信用したわけじゃない。直感の判断だ。
車が目的地に着く。フリードマンと共にハッチを開けて階段を降りていく。
「間に合いそうだ。D78のハッチを使え、そこで127Cに出る。奴らの現在位置を送る。待ち伏せのポイントも示しておく」
通信連絡がメルキオールから入った。
「通信は奴らに気付かれる可能性があるので、これで終わりにする。奴らが近付いたらスイッチを押せ。それで全てが済む」
「わかった」
俺とフリードマンはフラッシュライトを片手に、暗い地下道を慎重に進んでいった。D78のハッチを開け、目的の坑道へ出た。
127C坑道にはシャトルレール整備のための機械が雑然と並んでいた。電源が入っていない状態の作業用オートマタが何体も転がっている。
「やばい予感がするぜ」
フリードマンが小さな声で不安を口にする。
「急ごう」
なるべく音を出さないようにして、俺達は待ち伏せのポイントへ向かった。ポイントには退避スペースが作られている。そこに身を隠して奴らを待ち伏せすることになる。
待ち伏せのポイントに着くと、フリードマンはホルスターから銃を抜いた。
「念のためさ」
俺は黙ってスイッチを胸の前で握った。フラッシュライトを消して、奴らが来るのを待つ。
沈黙と暗闇の時間が続いた。遠くの小さな非常灯だけが小さく光る世界には、まるで現実感が無かった。
一五分程待てばいい筈だったが、この沈黙の時間はとても長く感じられた。蓄光材でうっすらと示された腕時計の針を何度も確認してしまう。
それから二〇分程待つと、足音が坑道に響き始めた。フリードマンが銃を構え、自分はスイッチを押す準備をする。
足音は確実に近付いてきていた。姿は確認できない。奴らはライトを使わずに進んでいるのだろう。
音で距離を判断しなければならなかった。確実に近付いてから、そして近付き過ぎる前にスイッチを押さなければならない。
俺は必死に目を凝らして二体との距離を測ろうとした。だが、暗闇が濃くてよくわからない。足音に集中するしかない。
まだ距離は離れているようだった。俺は緊張で何度もスイッチを握り直した。足音の距離はかなり近付いてきていた。
こういう緊張状態は知覚をあやふやにする。できるだけ引き付けてから押すべきだと、俺は決心していた。
足音が止まった。
感付かれたか。奴らの知覚能力はこちらより鋭いだろう。一か八か飛び出してスイッチを押すべきだろうか。
フリードマンに声を掛けて飛び出すしかない。決断は一瞬だった。
「奴らに近付く、バックアップ頼むぞ!」
俺は暗闇の中を飛び出し、オートマタがいるであろう場所へ走った。
後方からフリードマンがライトを照らす。背後からの光で相手の姿が確認できた。オートマタが二体、確かに見えた。距離はギリギリに思えた。
成り行きに任せるしかない。俺はスイッチを押した。すると一体のオートマタがその場で倒れ伏し、もう一体がぐらつくのが見えた。
やったと思った瞬間、自分の周りにいた作業用オートマタの起動音が坑道に大きく響き渡った。
「くそっ!」
立ち上がったオレンジ色の作業用オートマタが道を塞ぐ。そしてその金属の太い腕を振り回してきた。俺がそれを避けようと地面に手を突いた瞬間、背後で銃声がした。
フリードマンも作業用オートマタに襲われているのが目の端に映った。俺の相手をする作業用オートマタが掴み掛かってこようとする。
スイッチを再び押そうとするが、さっき手を突いた時に落としていた。
俺は混乱していた。死が脳裏をよぎる。
俺は踵を返す形で走り出した。暗い坑道で機械に殺されるのは御免だ。俺には家族がいる。任務より大切なものがある。
「やめろっ!!」
その叫び声を最後に、フリードマンは作業用オートマタに頭を潰された。もう勝ち目は無い。逃げるしかない。生きて戻らなければならない。
俺は必死に暗闇を走った。後ろを一度も振り返らず、入り口のハッチを目指した。
ハッチの小さな明かりを見つけ、そこに飛び込む。ハッチをロックして階段を駆け上がった。そして、俺は地上への出口まで辿り着いた。
息は上がりきり、目の前が霞んでいた。落ち着いて耳を澄まし、様子を窺う。追ってきている様子は無かった。どうやら生き残れたようだ。再追跡は時間が掛かるかもしれないが出直すしかない。フリードマンの死や捜査の失敗より、今は生き残った安堵の方が大きかった。
息を整えると、扉を開けて通りへ出て、俺は車の方に足を向けた。
車の横には妻のヘレンが立っていた。
「忘れ物は見つかったの?」
彼女は声を掛けてきた。俺は家族で出掛けるところだった。滅多に取れない休日、家族で公園に行こうとしていた。遠出はできなくても思い出は作れる。
俺は彼女に鞄を掲げてみせた。カメラ用の電池を忘れたのだ。
「さあ、行こう」
息子のデイヴはすでに車の中にいた。後ろの席で手持ちぶさたにしている。
俺は車に乗り込むと、カメラの入った鞄をデイヴの隣に置いた。
「中をいじるなよ」
「うん、わかったよパパ」
デイヴは元気よく答えた。家族で出掛けるのが楽しいようだ。
俺は運転席に座り、車を走らせた。ヘレンはデイヴの隣に座った。
「仕事はどうなの?」
ヘレンが聞いてきた。
「まあまあさ、悪くない」
まあまあどころではない。大きな失敗をしたばかりだった。だが、今はそれを思い出したくはなかった。
バックミラーにデイヴがカメラを手にしているのが映った。
「おい、カメラはやめるんだ」
「この子、あなたの真似をしてるのよ」
「ヘレン、やめさせてくれ。壊れやすいんだ」
このカメラは大した値段ではないが、骨董品で壊れやすい。俺はヘレンに頼んだ。
「さ、デイヴ、ママに貸して」
デイヴはまだカメラを振り回していた。
「パパの大事なカメラだから」
ヘレンはデイヴからカメラを取り上げようとする。
その時、目の前の道路に検問らしきものが見えてきた。近付くにつれてそれが物々しい、武装された捜査局の道路封鎖だというのがわかった。
「おかしいな、こんな場所で……」
俺が呟き、車のスピードを落とそうとした時だ。
「進んで! 私達殺されるわ!」
ヘレンが声を上げた。カメラを手に握っている。
「パパ、怖い! 早く行こう!」
後ろのデイヴが俺の肩を掴んだ。
「大丈夫、パパはやってくれるわ」
ヘレンはデイヴを抱きかかえた。
そうだ、逃げなきゃいけない。俺には守るべきものがある。
「心配するな」
アクセルを思い切り踏み込んで検問へ向かっていった。必ずやり遂げなければいけない。家族を守るんだ。車両と車両の間を目掛けて猛スピードで進む。
封鎖している捜査局の車両の影から、一斉に発砲炎が上がるのが見えた。
横転した車から飛び出した女性形のオートマタが一斉射撃を受ける。四肢に銃弾を受け、オートマタは回転するように地面に叩き付けられた。
「こうしなければ、もっと被害が出ていただろう」
捜査車両の裏で、メルキオールはレッドグレイヴに言った。
「家族には暫くしたら適当な死因を伝えなさい。今回の混乱については、一切を口外無用とする」
レッドグレイヴは秘書に事務的に伝えた。
俺は車の再生装置にデジタル化したフィルムのデータを再生した。
両親と自分のシーンが過ぎて真っ黒な画面が続く。再生を止めようとすると、その暗闇に瞬くような光が写ったような気がした。
ゆっくりとコマ送りをしていくと、何か静止画が紛れている。
コントラストが淡く、そのままでは何が写っているかわからない。捜査用の特別な画像処理を施す。
探偵にとって証拠写真の処理は業務の一部分だ。何が写っているのかを調べるのは慣れている。
そうして、三枚の奇妙な画像が抽出できた。
――一つは、変哲のない路地の写真。
――もう一つは、コンクリートの壁にかかれた『127C』という文字。標識のようだ。
――最後の一つは、壊れた作業用オートマタの認識番号。
これらがヒントらしい。
画像の内容を解析する。路地の写真はすぐに場所が判明した。
オートマタの写真は、形から地下整備に使われる汎用作業オートマタだとわかった。
標識については時間が掛かったが、それは地下を走るシャトルの坑道の番号だった。
そこに行く必要がある。ヒントから得られた答えは明白だった。
坑道へのアクセスは意外と簡単だった。作業孔の鍵は簡単に開いた。どうやらこの区画は使われていないらしい。
下に降りると、写真と同じ場所に辿り着く。
坑道の一部が崩れている箇所があり、そこに貼られている非常線のテープはボロボロだ。崩れた後にそのまま放棄されたのだろう。
フラッシュライトを片手に坑道を進む。放置されたままの状態で工作機械や作業用オートマタが散乱していた。
転がっている作業用オートマタの番号を一つずつ確認していく。五、六台も探したところだろうか、ついに写真に写っていたオートマタが見つかった。
四肢はもがれ、中身もぶちまけられていたが、電子頭脳は無傷で残っているようだった。
「こいつなのか……」
俺は電子頭脳の記憶装置部分だけを取り出して、持ち帰った。
「―了―」