「就請你再陪吾等一下吧」
說完的同時。從背後又出現了一位戴面具的人。
在對方出現之前完全沒有感受他的存在,這讓阿修羅更加警戒。
「那個男人是叫基度嗎?他可真是個聰明的男人。看穿了吾等真正的目的,有著真正的眼」
阿修羅沒有回答面具人所說的話,擺起了戰鬥姿勢。
看到對手看穿飛刀,並熟練的將飛刀從空中接下,阿修羅判斷只靠體術是贏不了的。
「看來你不太喜歡說話」
背後的面具人高高舉起了機器鉾。在狹小的室內揮舞著,一邊破壞室內的擺設,一邊向阿修羅逼近。
阿修羅再次朝背後與眼前的面具人丟出飛刀。利用對方打落飛刀的極短時間內點燃煙霧彈的引線後,丟到地面。
瞬間室內被白色的煙霧給壟罩。
但是,面具人在煙霧中似乎仍可看穿阿修羅的動作,機器鉾正確無誤的朝阿修羅的所在位置揮下。
等到煙霧逐漸散去的時候,阿修羅搖搖晃晃地出現在面具人的眼前。
二個面具人亳不考慮地將機器鉾向阿修羅刺去,看起來阿修羅的身體被二支機器鉾給貫穿了。
煙霧接著散去。
機器鉾所貫穿的,是基度。
阿修羅將自己的長袍套在基度的屍體上來當作誘餌。
阿修羅趁著以基度屍體當替身所取得的機會,繞到戴面具之人的背後,順勢劃開了他的脖子。
確實有著劃開脖子的手感。
但是,面具人竟然脖子噴著血也還緊握住阿修羅的手腕。用驚人的力量扭著阿修羅的手腕。
他那看起來纖細的手竟然有難以想像的握力,阿修羅第一次感到如此震驚。
阿修羅正打算進行下一個行動的瞬間,背後受到了強力的衝擊。
在持續被好幾次強力的攻擊後,阿修羅終究還是昏倒了。
|
阿修羅在被關起來沒多久後,被帶到一間昏暗的房間。
在房內的照明被點亮後,看到阿修羅的周圍圍繞著多位戴著面具的人。
「你似乎還算是一隻有趣的老鼠啊」
眼前的面具人輕藐地看著阿修羅。
面具人身旁有位穿著白色軍服的女子,依偎似地站著。
阿修羅馬上看出,那個女的是在托雷依德永久要塞受傷,從戰線退下好一陣子的帝國女將軍。
發言的只有眼前的面具人,女將軍和其他面具人們都不發一語,直盯著阿修羅看。
房裡陷入了沉默。
阿修羅對於面具人所說的任何話都完全不予回應。
「吾等也不認為,這點程度就能讓你屈服」
戴面具之人舉起了機器鉾,對著無法抵抗的阿修羅打。
即使如此,阿修羅連一聲哀嚎呻吟也沒發出來。
「果然,意志力真堅強」
面具人好像早就知道似地,看著阿修羅說道。
「那麼,這樣如何?」
在面具人發出指示的同時,周圍窗子發出聲音晃動起來,阿修羅眼前看到下面的地表高速移動著。
阿修羅所在的地方是帝國擁有的巨大戰艦武裝船,內部的其中一個房間。
地上有大批的古朗德利尼亞帝國兵與不是魯比歐那連合王國,而是不知道哪個國家的士兵在激烈戰鬥著。
數名面具人將阿修羅的束縛解開後將他扶起來,像是要讓他看窗外景色似地強壓在窗上。
「看吧,這就是吾等力量的一部份」
可以感受到緩緩的震動,武裝船著陸了。
「去吧,去散播死亡」
依偎在戴面具之人身旁的白衣女將軍,這時才第一次發言。
女將軍發出指示的同時,武裝船的船艙打開,死者軍隊被解放出去。
放出死者沒多久後,勝負就已經定了。
屍體士兵散播著瘴氣,將活人變成死人。不知道哪個國家的士兵跟帝國的士兵,都毫無手段可以對抗變成死者的士兵。
「這股恐懼就讓你親身體驗看看吧」
一直自說自話的面具人看著窗外,滿意地點點頭,帶著女將軍離去了。
他們走了沒多久後,就有死者出現在阿修羅眼前。
本來壓制住阿修羅的數名面具人,放開阿修羅之後就毫不抵抗的讓死者殺死他們自己,然後就那樣變成死者兵的一份子。
阿修羅被迫以空手與死者們對峙。
「這就是所有生物都會走向的終點」
不知道從哪裡傳來戴面具人的聲音。
「但是,那對吾等來說,不過只是通往目的地的中繼點罷了」
與那個聲音同時,通往船外的船艙門開了,阿修羅為了避開死者,迅速地衝向外面。
武裝船外,到處都是死者在攻擊活人的景象。
死者不分敵我地襲擊活人,那個樣子已經不能說是戰爭,只是純粹地蹂躪了。
|
武裝船著陸的地方是戰場中心的關係,到處都有死者士兵在肆虐。
滿地都是在戰鬥中死亡的士兵屍體,現在雖然都還只是不會動的肉塊,但是也不知道什麼時候會變成死者兵站起來襲擊自己。
阿修羅總之打算先離開這個戰場,以回到梅爾茲堡為第一目標。
先躲進附近看到的森林甩開死者兵,一邊找出回梅爾茲堡的路。
一開始還很順利,死者兵的動作很慢,想甩開他們本身很容易。
但是,森林中也有多數的死者兵潛浮其中,然後死者兵對味道非常地敏感,不管阿修羅打算躲藏在哪裡,他們都可以找出來。
每一次被找到,阿修羅就反擊。以利用森林製作的陷阱,或是臨時拿粗樹枝跟石頭組合的武器來應戰。有時也會撿取死者兵掉落的快壞掉的兵器使用。
不知道到底跟死者兵戰了多久,印象中至少過了一次夜晚,迎接過朝陽。
阿修羅覺得自己體力已經開始消耗而有危機感。
終於阿修羅被死者兵給包圍了。
就算用體術應戰,也無法給莫名強壯的死者兵多少傷害。
死者兵抓住阿修羅,雖然總算甩開他,但是卻被其他死者兵給壓住。
死者兵的嘴接近了阿修羅的喉嚨。
阿修羅有了死亡的覺悟,但是他不打算就這樣白白死去。
他用從快壞掉的兵器中取出的火藥跟油做了臨時炸彈,打算連自己一起把死者兵炸飛。
就在阿修羅伸手拿炸彈的那時,死者兵突然不動了。同時,聽到了巨大的引擎聲響。引擎聲漸漸往西消失,阿修羅認為是武裝船打算飛走了。
武裝船從視野消失後,剩下的是不再行動的死者兵與傷痕累累的阿修羅。
|
阿修羅全身顫抖。
『這就是所有生物都會走向的終點』
戴面具之人的聲音支配著阿修羅的腦。
「哼,哼哼哼……哼……」
阿修羅笑出了口,面對眼前的毀滅,抱有著無法形容的情感。
該說是愉悅,還是恐怖,阿修羅自己都不知道。
「哈哈,哈哈哈哈,呼哈,哈哈哈哈哈,啊哈哈哈哈哈哈!!」
溢出來的感情一發不可收拾。
──不管是帝國,還是連合國,或是其他的國都沒差,那是只有死存在的世界──
阿修羅開始強烈的希望看到死之力所帶來的結局了。
被死亡支配的戰場,只有那沒有人聽到的瘋狂笑聲,響徹著。
|
「─完─」
3398年 「狂乱」
「もう少し手合わせを願おうか、我々と」
そう言い放たれたと同時に、背後からもう一人、仮面の者が現れた。
存在すら気取らせずに現れたことに、アスラは警戒心をより一層強めた。
「キドウとか言ったか。あれはとても賢い男だった。我々の目的の真意を見抜く、本物の目を持っておった」
仮面の者の言葉に答えることなく、アスラは戦闘体制に入る。
ナイフを見切り、空中で掴んでさえ見せた手練れに対し、体術だけでは敵わぬと判断した。
「お喋りは好まぬか」
背後にいた仮面の者が機械鉾を取り出して振りかぶる。狭い室内で振り回されたそれは、調度品を壊しながらアスラに迫る。
アスラは背後と目の前の仮面の者に向けて再びナイフを投げる。相手がナイフを叩き落す僅かの時間を利用して煙玉に火を点け、地面に転がす。
一瞬にして室内は白い煙に包まれた。
だが、仮面の者は煙の中でもアスラの動きを読んでいるような行動を見せた。機械鉾が正確にアスラのいる場所に振り下ろされる。
煙が少し薄まってきた頃、仮面の者の眼前にアスラがゆらりと姿を現した。
二人の仮面の者は迷うことなくアスラに向かって機械鉾を突き出す。アスラの身体が二本の機械鉾に貫かれたように見えた。
また少しだけ煙が薄くなる。
機械鉾に貫かれていたのは、キドウだった。
アスラはキドウの死体に己が纏っていたローブを被せ、囮に仕立て上げていた。
キドウの死体を身代わりにして稼いだ隙に、アスラは声を発していた仮面の者の背後に回り込み、そのまま首を掻き切る。
首を切り裂いた手応えは確かにあった。
しかし、仮面の者は首から血を噴き出しながらもアスラの腕を掴み取った。凄まじい力でアスラの腕を捻る。
繊細そうに見える細い手からは想像もつかないほどの握力に、アスラは初めて喫驚する。
アスラが次の行動に移ろうとした瞬間、背中に強い衝撃が走った。
幾度も続く強い衝撃に、ついにアスラは昏倒した。
暫くの監禁が続いた後、アスラは薄暗い部屋に連行された。
部屋の明かりが灯ると、周囲には複数の仮面の者がアスラを囲むように立っていた。
「さて、なかなか面白い鼠のようだ」
目の前の仮面の者がアスラを見下ろすようにしていた。
傍には白い軍服を纏う女が、寄り添うように立っていた。
その女はトレイド永久要塞で負傷し、長らく戦線から退いていた帝國の女将軍であることがすぐにわかった。
言葉を発するのは目の前の仮面の者だけで、女将軍も含め他の仮面の者達は一言も発さずに、アスラをじっと見つめていた。
沈黙が部屋を包み込む。
アスラは仮面の者の言葉に反応する素振りを一切見せない。
「我々もこの程度で貴様が屈服するとは、露程も思っておらぬ」
仮面の者は機械鉾を振り上げると、抵抗する術のないアスラに打ち付ける。
それでも、アスラは悲鳴や呻き声の一つも上げない。
「やはりな。結構な精神力だ」
わかり切っていたかのように、仮面の者はアスラを見やる。
「ならば、これはどうかな?」
合図と共に周囲の鎧戸が音を立てて動く。アスラの眼下には高速で移動する地表が見えた。
帝國が擁する巨大戦艦ガレオン。その一室にアスラはいた。
地上では大勢のグランデレニア帝國兵とルビオナ連合王国ではないどこかの国の兵士達が激しい戦闘を繰り広げていた。
数人の仮面の者がアスラの拘束を解いて抱え上げ、その光景を見せつけるように窓に押しやる。
「見るがよい。これが我々の力の一端だ」
緩やかな振動が部屋を包む。ガレオンが着陸した。
「さあ、死を振り撒くのです」
仮面の者に寄り添う白い女将軍が、ここで初めて声を出した。
女将軍の合図と共にガレオンのハッチが開き、死者が屍の兵となって解き放たれた。
死者が放たれて少しの内に、勝敗は決した。
屍の兵は瘴気を振り撒き、生きる者を死者へと変えた。どこかの国の兵も帝國の兵も、死者へと変わった兵に対抗する手段を持ってはいない。
「この恐怖、貴様にも身をもって知ってもらおう」
一人喋っていた仮面の者は外の様子を見ると満足げに頷き、女将軍を連れて何処かへと去っていった。
彼らが去ってから程なくして、アスラの目の前に死者が現れた。
アスラを押さえていた仮面の者達は、アスラから離れると抵抗することなく死者に殺され、そのまま屍の兵の一部と化した。
アスラは何も持たぬ状態で死者達と対峙しなければならなくなった。
「これは全ての生けるものが行き着く先にあるものだ」
どこからか仮面の者の声が響く。
「だが、それも我々が目指すものから見れば、通過点に過ぎぬ」
その声と同時に、部屋から外部に通じるハッチが開いた。アスラは死者を避けるため、素早く外へと出る。
ガレオンの外では、死者が生きている者に襲い掛かる光景が繰り広げられていた。
死者は敵味方を区別することなく生きている者を襲う。その様はもはや戦争ではなく、ただの蹂躙であった。
ガレオンが着陸したのは戦闘の中心地であったため、何処を見ても屍の兵が跋扈していた。
戦闘で死んだ兵士の死体がそこかしこに転がっている。今はまだ物言わぬ肉の置物だが、いつ自分に襲いかかる屍の兵と化すかは予想が付かない。
アスラはまずはこの戦場から離れ、メルツバウに帰還することを第一と定めた。
近くに見える森の中に分け入って屍の兵をやり過ごし、メルツバウへの帰還の道を探ることにした。
最初の内は上手くいっていた。屍の兵の足取りは鈍重であり、振り切ること自体は容易であったのだ。
だが、森の中にも複数の屍の兵が潜んでいた。そして屍の兵は匂いに酷く敏感だった。アスラが何処へ隠れてやり過ごそうとしても、確実にアスラの潜む場所を探し当てた。
その都度、アスラは反撃した。森を利用したトラップや、太く頑丈な木の枝と石を組み合わせた即席の武器で応戦する。時には屍の兵が取り落とした壊れかけの兵器をも利用した。
どれ程の時間、屍の兵達と戦っただろうか。少なくとも一度なりと夜を迎え、朝焼けをその目で見ていた。
アスラは体力が消耗し始めてきたことに危機感を覚えた。
ついにアスラは屍の兵に取り囲まれた。
体術で応戦するも、やたら頑丈な屍の兵には大した損害を与えられない。
屍の兵がアスラに組み付く。何とか振り解くも、別の屍の兵に取り押さえられる。
アスラの喉元に屍の兵の顎が迫る。
ついにアスラは死を覚悟した。しかし、ただで死ぬ気はなかった。
壊れかけの兵器から取り出した火薬や油で作った即席の爆弾で、屍の兵ごと自分を吹き飛ばそうとした。
アスラが爆弾に手をかけたその時、不意に屍の兵達の動きが止まる。同時に、凄まじいエンジン音が周囲に響き渡った。エンジン音はそのまま西の方に向かって消えていく。ガレオンが飛び去ったことはアスラにも理解できた。
ガレオンが視界から消えた後、残ったのは動かなくなった屍の兵と、満身創痍のアスラだけだった。
アスラは身震いした。
『これは全ての生けるものが行き着く先にあるものだ』
仮面の者の声がアスラの脳裏を支配する。
「ふ、ふふふ……ふ……」
アスラの口から笑いが漏れる。目の前にある破滅に、アスラは言いようのない感情を抱いていた。
それが愉悦なのか、それとも恐怖なのか、アスラ自身にもわからない。
「はは、はははは。ひは、ははははは、げあははははは!!」
一度溢れた感情は留まるところを知らなかった。
——帝國も、連合も、他の国も関係ない。ただ死のみが在る世界——
アスラは死の力の行き着く先を見てみたいと強く願ってしまった。
死に支配された戦場で、誰の耳に届くこともない狂った笑い声が、ただ響き渡っていた。
「—了—」
「もう少し手合わせを願おうか、我々と」
そう言い放たれたと同時に、背後からもう一人、仮面の者が現れた。
存在すら気取らせずに現れたことに、アスラは警戒心をより一層強めた。
「キドウとか言ったか。あれはとても賢い男だった。我々の目的の真意を見抜く、本物の目を持っておった」
仮面の者の言葉に答えることなく、アスラは戦闘体制に入る。
ナイフを見切り、空中で掴んでさえ見せた手練れに対し、体術だけでは敵わぬと判断した。
「お喋りは好まぬか」
背後にいた仮面の者が機械鉾を取り出して振りかぶる。狭い室内で振り回されたそれは、調度品を壊しながらアスラに迫る。
アスラは背後と目の前の仮面の者に向けて再びナイフを投げる。相手がナイフを叩き落す僅かの時間を利用して煙玉に火を点け、地面に転がす。
一瞬にして室内は白い煙に包まれた。
だが、仮面の者は煙の中でもアスラの動きを読んでいるような行動を見せた。機械鉾が正確にアスラのいる場所に振り下ろされる。
煙が少し薄まってきた頃、仮面の者の眼前にアスラがゆらりと姿を現した。
二人の仮面の者は迷うことなくアスラに向かって機械鉾を突き出す。アスラの身体が二本の機械鉾に貫かれたように見えた。
また少しだけ煙が薄くなる。
機械鉾に貫かれていたのは、キドウだった。
アスラはキドウの死体に己が纏っていたローブを被せ、囮に仕立て上げていた。
キドウの死体を身代わりにして稼いだ隙に、アスラは声を発していた仮面の者の背後に回り込み、そのまま首を掻き切る。
首を切り裂いた手応えは確かにあった。
しかし、仮面の者は首から血を噴き出しながらもアスラの腕を掴み取った。凄まじい力でアスラの腕を捻る。
繊細そうに見える細い手からは想像もつかないほどの握力に、アスラは初めて喫驚する。
アスラが次の行動に移ろうとした瞬間、背中に強い衝撃が走った。
幾度も続く強い衝撃に、ついにアスラは昏倒した。
暫くの監禁が続いた後、アスラは薄暗い部屋に連行された。
部屋の明かりが灯ると、周囲には複数の仮面の者がアスラを囲むように立っていた。
「さて、なかなか面白い鼠のようだ」
目の前の仮面の者がアスラを見下ろすようにしていた。
傍には白い軍服を纏う女が、寄り添うように立っていた。
その女はトレイド永久要塞で負傷し、長らく戦線から退いていた帝國の女将軍であることがすぐにわかった。
言葉を発するのは目の前の仮面の者だけで、女将軍も含め他の仮面の者達は一言も発さずに、アスラをじっと見つめていた。
沈黙が部屋を包み込む。
アスラは仮面の者の言葉に反応する素振りを一切見せない。
「我々もこの程度で貴様が屈服するとは、露程も思っておらぬ」
仮面の者は機械鉾を振り上げると、抵抗する術のないアスラに打ち付ける。
それでも、アスラは悲鳴や呻き声の一つも上げない。
「やはりな。結構な精神力だ」
わかり切っていたかのように、仮面の者はアスラを見やる。
「ならば、これはどうかな?」
合図と共に周囲の鎧戸が音を立てて動く。アスラの眼下には高速で移動する地表が見えた。
帝國が擁する巨大戦艦ガレオン。その一室にアスラはいた。
地上では大勢のグランデレニア帝國兵とルビオナ連合王国ではないどこかの国の兵士達が激しい戦闘を繰り広げていた。
数人の仮面の者がアスラの拘束を解いて抱え上げ、その光景を見せつけるように窓に押しやる。
「見るがよい。これが我々の力の一端だ」
緩やかな振動が部屋を包む。ガレオンが着陸した。
「さあ、死を振り撒くのです」
仮面の者に寄り添う白い女将軍が、ここで初めて声を出した。
女将軍の合図と共にガレオンのハッチが開き、死者が屍の兵となって解き放たれた。
死者が放たれて少しの内に、勝敗は決した。
屍の兵は瘴気を振り撒き、生きる者を死者へと変えた。どこかの国の兵も帝國の兵も、死者へと変わった兵に対抗する手段を持ってはいない。
「この恐怖、貴様にも身をもって知ってもらおう」
一人喋っていた仮面の者は外の様子を見ると満足げに頷き、女将軍を連れて何処かへと去っていった。
彼らが去ってから程なくして、アスラの目の前に死者が現れた。
アスラを押さえていた仮面の者達は、アスラから離れると抵抗することなく死者に殺され、そのまま屍の兵の一部と化した。
アスラは何も持たぬ状態で死者達と対峙しなければならなくなった。
「これは全ての生けるものが行き着く先にあるものだ」
どこからか仮面の者の声が響く。
「だが、それも我々が目指すものから見れば、通過点に過ぎぬ」
その声と同時に、部屋から外部に通じるハッチが開いた。アスラは死者を避けるため、素早く外へと出る。
ガレオンの外では、死者が生きている者に襲い掛かる光景が繰り広げられていた。
死者は敵味方を区別することなく生きている者を襲う。その様はもはや戦争ではなく、ただの蹂躙であった。
ガレオンが着陸したのは戦闘の中心地であったため、何処を見ても屍の兵が跋扈していた。
戦闘で死んだ兵士の死体がそこかしこに転がっている。今はまだ物言わぬ肉の置物だが、いつ自分に襲いかかる屍の兵と化すかは予想が付かない。
アスラはまずはこの戦場から離れ、メルツバウに帰還することを第一と定めた。
近くに見える森の中に分け入って屍の兵をやり過ごし、メルツバウへの帰還の道を探ることにした。
最初の内は上手くいっていた。屍の兵の足取りは鈍重であり、振り切ること自体は容易であったのだ。
だが、森の中にも複数の屍の兵が潜んでいた。そして屍の兵は匂いに酷く敏感だった。アスラが何処へ隠れてやり過ごそうとしても、確実にアスラの潜む場所を探し当てた。
その都度、アスラは反撃した。森を利用したトラップや、太く頑丈な木の枝と石を組み合わせた即席の武器で応戦する。時には屍の兵が取り落とした壊れかけの兵器をも利用した。
どれ程の時間、屍の兵達と戦っただろうか。少なくとも一度なりと夜を迎え、朝焼けをその目で見ていた。
アスラは体力が消耗し始めてきたことに危機感を覚えた。
ついにアスラは屍の兵に取り囲まれた。
体術で応戦するも、やたら頑丈な屍の兵には大した損害を与えられない。
屍の兵がアスラに組み付く。何とか振り解くも、別の屍の兵に取り押さえられる。
アスラの喉元に屍の兵の顎が迫る。
ついにアスラは死を覚悟した。しかし、ただで死ぬ気はなかった。
壊れかけの兵器から取り出した火薬や油で作った即席の爆弾で、屍の兵ごと自分を吹き飛ばそうとした。
アスラが爆弾に手をかけたその時、不意に屍の兵達の動きが止まる。同時に、凄まじいエンジン音が周囲に響き渡った。エンジン音はそのまま西の方に向かって消えていく。ガレオンが飛び去ったことはアスラにも理解できた。
ガレオンが視界から消えた後、残ったのは動かなくなった屍の兵と、満身創痍のアスラだけだった。
アスラは身震いした。
『これは全ての生けるものが行き着く先にあるものだ』
仮面の者の声がアスラの脳裏を支配する。
「ふ、ふふふ……ふ……」
アスラの口から笑いが漏れる。目の前にある破滅に、アスラは言いようのない感情を抱いていた。
それが愉悦なのか、それとも恐怖なのか、アスラ自身にもわからない。
「はは、はははは。ひは、ははははは、げあははははは!!」
一度溢れた感情は留まるところを知らなかった。
——帝國も、連合も、他の国も関係ない。ただ死のみが在る世界——
アスラは死の力の行き着く先を見てみたいと強く願ってしまった。
死に支配された戦場で、誰の耳に届くこともない狂った笑い声が、ただ響き渡っていた。
「—了—」