位在魯比歐那王國西方的要塞都市普羅維登斯。
聽說在發生戰爭之前,曾經是古朗德利尼亞帝國與魯比歐那聯合王國間,進行文化交流的最大交易都市。
但是自從戰爭爆發後,帝國與聯合王國兩者間一直在此處反覆上演激烈的壓制戰。
受不了戰況膠著下去的帝國,使用了『操控死者之術』將普羅維登斯變成了死者之國。
在路途中,帕茉聽阿修羅說討伐死者之戰需要你們的力量。
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帕茉他們現在,在距離通往被封鎖的普羅維登斯的路上約1里克處紮營。
聽說要以這裡為暫時的據點分配部隊,進行解放普羅維登斯的作戰。
「史普拉多,真的不要緊嗎?」
在準備夜宿的時候,帕茉向史普拉多問道。
帕茉與希爾夫決定要一起再次上戰場的時候,史普拉多說他也要跟去,怎麼也不聽勸。
當然帕茉與希爾夫,還有帕茉的雙親都反對,但史普拉多還是不願意離開帕茉與希爾夫的身邊。
最後帕茉與希爾夫認輸,而史普拉多就這樣參與這個部隊了。
「嗯,而且戰爭能早點結束的話,也可以快點去找艾茵啊」
「嗯,不過只有一點要跟我約好,如果你遇到危險就逃走吧。因為你還有事情要做」
「我不會丟下帕茉跟希爾夫的!」
「這個戰爭是我們世界的問題,其實是想馬上──」
「不可以!因為我很感謝帕茉你們。而且不是說好要幫我找艾茵的嗎?」
被史普拉多打斷話題,帕茉無法再說些什麼了。
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太陽完全下山,正當帕茉他們在帳篷的一個角落吃飯時。
警報聲響遍了整個營地,周遭開始騷動起來。
「在這邊等我一下」
和帕茉他們一起吃飯的女士兵──叫做阿妮絲──馬上站起來,到帳篷外去看看狀況。
聽說是馮迪拉多出身的阿妮絲,為了將上層的指令傳達給沒有士兵經驗的帕茉他們,而與帕茉他們一起行動。
「馬上做準備,死者們已經逼近到這邊來了!」
阿妮絲面色緊張地回來向帕茉他們轉達之後,就迅速地將自己放在帳篷內的武器裝備好。
帕茉與希爾夫一起站了起來。帕茉知道,在這裡阻止死者的軍勢與保護自己的村子息息相關。
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「死者的軍隊來了!」
「把他們完全燒掉或是破壞他們的頭!不照做的話他們會無限復活!」
在士兵們的指令交錯中,帕茉與希爾夫在後方待命。
「希爾夫……。我知道,我們必須保護村子」
帕茉看了希爾夫的眼睛,感受到希爾夫的決心。
「放火!」
隊長級的士兵指令一下,就有好幾個火炎噴射器開始噴火。
雖然是很原始的方法,但是將死者們完全燒成灰的話,就不會再復活了。
帕茉所在的普羅維登斯壓制部隊,給所有人都發配了一支可攜式的火炎噴射器。
「第一部隊被突破了!」
「別害怕!這裡不能被突破!」
士兵們的喊叫聲與槍聲、火炎噴射的聲音在前線響起。
聞得到難以言喻的腐臭味以及燒臭味,希爾夫一直直視著前方。
「他們過來了!帕茉,小心點!」
阿妮絲舉著武器靠近過來。
死者的呻吟聲清楚地傳到帕茉的耳中。死者們已經逼近到這裡來了。
「帕茉,把武器的安全裝置解除,舉好!」
「好,好的!」
照著阿妮絲所說的,帕茉舉起了火炎噴射器。
「來了!準備好!」
阿妮絲他們的火炎噴射器開始噴出火炎。但是帕茉就只是呆站著什麼也沒做。
「帕茉!不要害怕!會被殺的!」
「但是……」
雖然阿妮絲怒吼著,但是帕茉卻一動也不動。
「帕茉!快避開!」
「呀啊啊!」
不知道是被誰撞開,帕茉跌滾在地上。
剛剛為止帕茉站的地方,有數名死者聚了過來。
「帕茉!!」
「史普拉多!?」
眼前的是,半獸化的史普拉多跟希爾夫。
「不行!快逃!」
「如果我現在逃走的話,帕茉跟希爾夫都會死的!」
史普拉多說完後,就以視線與希爾夫交會。
帕茉從之前就一直覺得他們兩個似乎可以以某種方式交談,這下終於確信了。
希爾夫擺出備戰姿勢,迎擊死者的軍隊,希爾夫完全不在意死者的攻擊,並將死者的喉嚨咬碎,把頭破壞掉。
史普拉多也靠野獸的能力壓制死者的行動,由希爾夫給死者最後一擊,與希爾夫合作著。
「好厲害,那就是聖獸的力量」
帕茉聽到阿妮絲小聲地自言自語。
最後的死者被某人的火給燒毀,打退了死者的軍團。
這個勝利給壓制部隊帶來希望。因為證實了火與聖獸是有效的擊退方式,可以來對抗那壓倒性大量的死者軍隊。
「你們兩個,都沒有受傷吧?」
「這點程度不要緊的,帕茉呢?」
「我也不要緊。對不起,我,什麼都做不到……」
看到希爾夫跟史普拉多沒事,帕茉哭了出來。
希爾夫輕輕拭去帕茉的眼淚。
「謝謝。希爾夫、史普拉多……」
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天亮後,為戰死的人舉行簡單的葬禮。
連哀傷的時間都沒有,壓制部隊當天就離開陣營出發了。
在離普羅維登斯300阿爾雷的地方,再次與死者的軍隊對峙。
這次帕茉不輸希爾夫他們,拼命地擊退死者。
但是,還是無法忍受殺人的罪惡感,邊哭邊用火炎燒著死者。
「啊啊!」
激戰中,大量的死者導致帕茉跟希爾夫被分離。
帕茉看得出雖然希爾夫拼命想甩開咬過來的死者們,但是卻仍被從普羅維登斯不斷跑出來的死者們給包圍。
雖然帕茉跟史普拉多想救出希爾夫,但是被死者們給阻撓。
「希爾夫!!」
死者的數量實在太多,完全靠近不了希爾夫。
再這樣下去,希爾夫會被死者們給殺死的。正當這麼想的時候,一個不注意。
「帕茉,危險!」
太過在意希爾夫的帕茉,來不及對向自己襲擊而來的死者做出反應。
聽到史普拉多的聲音時,已經太遲了,死者已經到帕茉的眼前了。
就在那個瞬間,死者的身體被火炎給包覆。
「阿,阿修羅先生?」
在帕茉前面是,穿著東方戰鬥服的阿修羅。
雖然聽說阿修羅是普羅維登斯壓制部隊的指揮,但從一開始聽他說明完之後,就一直沒有看到他人。
「看來妳有稍微成長一點了」
「為什麼……」
「因為能控制聖獸的只有妳而已」
「對了,希爾夫!阿修羅先生,請救救希爾夫!」
「好吧」
說完後,阿修羅就消失了。
阿修羅消失之後,希爾夫周圍的死者也馬上像剛才那樣被火包住。
身為魯卡大公近衛的他,戰鬥能力相當厲害。死者們一個個被火柱吞噬而停止行動。
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靠著阿修羅的幫忙,帕茉終於平安與希爾夫會合了。
「非常謝謝您!」
「因為我們不能失去寶貴的戰力」
阿修羅還是一樣用冷淡的眼神看著帕茉他們說完的同時,圍著普羅維登斯的城牆附近,伴隨著地震發出了極大的聲響。
希爾夫與史普拉多靠到被嚇到發抖的帕茉身邊去。
「看來城牆的破壞完成了,要進到普羅維登斯裡了」
「是,是的!」
帕茉往阿修羅視線的前方看過去,那裡是已成為死靈住處的荒廢都市。
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「─完─」
3399年 「聖獣と死者」
ルビオナ王国の西方にある、城塞都市プロヴィデンス。
戦争が起きる以前はグランデレニア帝國とルビオナ連合王国の文化が行き交う、最大の交易都市であったという。
しかし戦争が起きてからは、帝國と連合王国の両者の間で激しい制圧戦が繰り返されていた。
膠着する戦いに痺れを切らせた帝國は、『死者を操る術』を用いて、プロヴィデンスを死者の国へと変えてしまった。
死者の軍勢を討伐する戦いにお前達の力が必要だと、道中、パルモはアスラから聞かされていた。
パルモ達は今、封鎖されたプロヴィデンスへ向かう街道からおよそ1リーグ離れた場所に陣地を形成していた。
ここを仮の拠点として部隊を展開し、プロヴィデンスを解放する作戦を開始するのだと聞いていた。
「スプラート、本当にいいの?」
夜営の準備をする最中、パルモはスプラートに尋ねた。
パルモがシルフと共に再び戦場に立つことを決めた時、スプラートも付いていくと言って聞かなかったのだった。
当然、パルモやシルフ、それにパルモの両親も反対したのだが、スプラートはパルモやシルフの傍を離れようとはしなかった。
根負けしたパルモとシルフが折れる形で、スプラートはこの部隊に参加することとなった。
「うん。早く戦争が終われば、それだけ早くアインを探しに行けるし」
「そう。でもこれだけは約束して。危なくなったらすぐに逃げるの。あなたにはやるべきことがあるのだから」
「パルモとシルフを置いては行けないよ!」
「この戦争は私達の世界の問題だもの。本当はすぐにでも——」
「ダメだよ! パルモたちにはすごく感謝してるんだ。それに、アインを探すのを手伝うって約束してくれたでしょう?」
スプラートに遮られるように言われてしまい、パルモはそれ以上何も言えなかった。
完全に陽も落ち、パルモ達がテントの一角で食事を摂っている時のことだった。
耳障りでけたたましい警報音が陣地に響き渡り、一気に周囲がざわめき始めた。
「ちょっと待っててね」
パルモ達と一緒に食事をしていた女性の兵士——アニスという名だ——が立ち上がり、テントの外へと様子を見に行った。
フォンデラート出身だというアニスは、兵士としての経験がないパルモ達へ上からの伝令を判りやすく伝えるために、パルモ達と行動を共にしていた。
「すぐに準備をして。死者達がすぐそこまで迫って来ている!」
アニスは緊迫した面持ちで戻ってくるとパルモ達にそう伝え、テントに置いていた自身の武装を手早く装備した。
「ごめんなさい。こういうことを言うのは辛いけど、今は聖獣と貴女が頼りなの。急いで!」
パルモはシルフと共に立ち上がった。ここで死者の軍勢を止めることが村を守ることに繋がることを、パルモは理解していた。
「死者の軍勢、来ます!」
「完全に燃やすか頭を壊せ! でなければ際限なく蘇るぞ!」
兵士達の伝令が飛び交う中、パルモとシルフは後方に控えていた。
「シルフ……。 わかってる、村を守らなきゃ」
シルフの目を見ると、シルフの決意が流れ込んできた。
「火を放て!」
隊長格の兵士の号令で、いくつもの火炎放射機から炎が放たれた。
原始的ではあるが、完全に燃やし尽くして灰にすれば、死者はそれ以上蘇らない。
パルモを含めたプロヴィデンス制圧部隊の全員に、携行できる大きさの火炎放射機が支給されていた。
「第一部隊、突破されました!」
「怯むな! ここを突破される訳にはいかん!」
兵士達の雄叫びと銃声、炎が噴射される音が前線から響く。
何とも言い難い腐臭と、それが焼かれる臭いがした。シルフは前方を真っ直ぐに見据えている。
「奴らがここまで来た! パルモ、気をつけて!」
アニスが武器を構えたまま近くに寄ってくる。
死者の呻き声がはっきりとパルモの耳に届く。死者達はすぐそこまで迫ってきていた。
「パルモ、武器の安全装置を解除して。構えて!」
「は、はい!」
アニスに言われるがまま、パルモは持たされた火炎放射機を構えた。
「来ます! 備えて!」
アニス達兵士の火炎放射機から炎が放たれる。だが、パルモは何もできずにただ立ち尽くしていた。
「パルモ! 怯むな! 殺されてしまう!」
「でも……」
アニスに怒鳴られるが、パルモは動けない。
「パルモ! 避けて!」
「きゃああ!」
誰かに突き飛ばされ、パルモは地面に転がった。
先程までパルモがいたところには、数体の死者が群がるようにしてやって来ていた。
「パルモ!!」
「スプラート!?」
目の前には、半分獣と化したスプラートとシルフがいた。
「だめ! 逃げて!」
「ここで逃げたら、パルモもシルフも死んじゃう!」
スプラートはそう言うと、シルフと視線を交し合った。
以前からこの二者の間で何かしらの会話が交わされている気はしていたが、それが確証に変わった。
シルフが臨戦態勢を取り、死者の軍勢を迎え撃つ。死者からの攻撃を受けてもシルフは全く意に介さずにその喉元を噛み千切り、頭を潰していた。
スプラートが獣の身体能力によって死者の動きを押し止め、シルフがそれに止めを刺す、といった連携をも見せた。
「すごい、あれが聖獣の力」
アニスが呟く声がパルモには聞こえた。
最後の死者が誰かの火によって焼却され、死者の軍団は退けられた。
この勝利は制圧部隊に希望をもたらした。火と聖獣、それが圧倒的な物量を誇る死者の軍勢を退ける有効な手段であるということが立証されたのである。
「二人とも、怪我はない?」
「このくらい平気さ。パルモは?」
「私も大丈夫。ごめんね、私、何もできなかった……」
シルフとスプラートの無事な姿を見て、パルモは涙した。
そっとその涙をシルフが拭う。
「ありがとう。シルフ、スプラート……」
夜が明けて、戦死者の葬儀が簡単に執り行われた。
悲しみに暮れる間もなく、日を置かずに制圧部隊は陣地を発った。
プロヴィデンスにあと300アルレというところで、再び死者の軍団と対峙することになった。
パルモも、今度こそシルフ達に遅れをとらないようにと、必死で死者を退けていった。
それでも、人を殺してしまっているという罪悪感から逃れることができず、パルモは泣きながら死者に炎を浴びせていた。
「ああっ!」
激化する戦いの最中、大量の死者によってパルモとシルフは引き離されてしまった。
死者に噛み付いて振り払うシルフだが、プロヴィデンスより際限なく出てくる死者達に取り囲まれてしまったのが、パルモから見て取れた。
パルモもスプラートと共にシルフを助け出そうとするが、死者達に阻まれてしまう。
「シルフ!!」
数が多すぎて、とてもではないがシルフの傍へ行くことができない。
このままシルフが死者の群れに殺されてしまったらどうしよう。そう考えると、気が気ではなかった。
「パルモ、危ない!」
あまりにもシルフに気を取られ過ぎて、パルモは自分に襲い掛かる死者への対応が疎かになっていた。
スプラートの声でそれに気付くが、時すでに遅く、死者がパルモの眼前に迫っていた。
その瞬間、死者の身体が炎に包まれる。
「ア、アスラ、さん?」
パルモの前には、東方の戦闘服に身を包んだアスラがいた。
プロヴィデンスの制圧部隊を指揮する立場にいるとは聞いていたが、最初の説明を受けてからは、ずっと姿を見ていなかった。
「少しは成長したようだな」
「どうして……」
「シルフを御せるのはお前だけだからな」
「そうだ、シルフ! アスラさん、シルフを助けて!」
「いいだろう」
そう言うと、アスラの姿は掻き消えた。
直後、シルフの周囲から先程と同じような火の手が上がるのが見えた。
リュカ大公の側近である彼の戦闘能力は凄まじかった。死者達は次々と火柱に包まれ、その動きを止めていった。
アスラの助力もあり、パルモとシルフは無事に合流することができた。
「ありがとうございます!」
「貴重な戦力を失う訳にはいかない」
変わらず冷たい目でパルモ達を見るアスラが言葉を発するのと同時に、プロヴィデンスを囲う城壁の辺りから地鳴りと共に大きな音が響いた。
身体をびくりと震わせるパルモに、シルフとスプラートが寄り添った。
「城壁の破壊が完了したようだな。プロヴィデンスへ入るぞ」
「は、はい!」
アスラの視線をパルモは追う。その先には、死霊の住処となって荒廃した都市が広がっていた。
「—了—」
ルビオナ王国の西方にある、城塞都市プロヴィデンス。
戦争が起きる以前はグランデレニア帝國とルビオナ連合王国の文化が行き交う、最大の交易都市であったという。
しかし戦争が起きてからは、帝國と連合王国の両者の間で激しい制圧戦が繰り返されていた。
膠着する戦いに痺れを切らせた帝國は、『死者を操る術』を用いて、プロヴィデンスを死者の国へと変えてしまった。
死者の軍勢を討伐する戦いにお前達の力が必要だと、道中、パルモはアスラから聞かされていた。
パルモ達は今、封鎖されたプロヴィデンスへ向かう街道からおよそ1リーグ離れた場所に陣地を形成していた。
ここを仮の拠点として部隊を展開し、プロヴィデンスを解放する作戦を開始するのだと聞いていた。
「スプラート、本当にいいの?」
夜営の準備をする最中、パルモはスプラートに尋ねた。
パルモがシルフと共に再び戦場に立つことを決めた時、スプラートも付いていくと言って聞かなかったのだった。
当然、パルモやシルフ、それにパルモの両親も反対したのだが、スプラートはパルモやシルフの傍を離れようとはしなかった。
根負けしたパルモとシルフが折れる形で、スプラートはこの部隊に参加することとなった。
「うん。早く戦争が終われば、それだけ早くアインを探しに行けるし」
「そう。でもこれだけは約束して。危なくなったらすぐに逃げるの。あなたにはやるべきことがあるのだから」
「パルモとシルフを置いては行けないよ!」
「この戦争は私達の世界の問題だもの。本当はすぐにでも——」
「ダメだよ! パルモたちにはすごく感謝してるんだ。それに、アインを探すのを手伝うって約束してくれたでしょう?」
スプラートに遮られるように言われてしまい、パルモはそれ以上何も言えなかった。
完全に陽も落ち、パルモ達がテントの一角で食事を摂っている時のことだった。
耳障りでけたたましい警報音が陣地に響き渡り、一気に周囲がざわめき始めた。
「ちょっと待っててね」
パルモ達と一緒に食事をしていた女性の兵士——アニスという名だ——が立ち上がり、テントの外へと様子を見に行った。
フォンデラート出身だというアニスは、兵士としての経験がないパルモ達へ上からの伝令を判りやすく伝えるために、パルモ達と行動を共にしていた。
「すぐに準備をして。死者達がすぐそこまで迫って来ている!」
アニスは緊迫した面持ちで戻ってくるとパルモ達にそう伝え、テントに置いていた自身の武装を手早く装備した。
「ごめんなさい。こういうことを言うのは辛いけど、今は聖獣と貴女が頼りなの。急いで!」
パルモはシルフと共に立ち上がった。ここで死者の軍勢を止めることが村を守ることに繋がることを、パルモは理解していた。
「死者の軍勢、来ます!」
「完全に燃やすか頭を壊せ! でなければ際限なく蘇るぞ!」
兵士達の伝令が飛び交う中、パルモとシルフは後方に控えていた。
「シルフ……。 わかってる、村を守らなきゃ」
シルフの目を見ると、シルフの決意が流れ込んできた。
「火を放て!」
隊長格の兵士の号令で、いくつもの火炎放射機から炎が放たれた。
原始的ではあるが、完全に燃やし尽くして灰にすれば、死者はそれ以上蘇らない。
パルモを含めたプロヴィデンス制圧部隊の全員に、携行できる大きさの火炎放射機が支給されていた。
「第一部隊、突破されました!」
「怯むな! ここを突破される訳にはいかん!」
兵士達の雄叫びと銃声、炎が噴射される音が前線から響く。
何とも言い難い腐臭と、それが焼かれる臭いがした。シルフは前方を真っ直ぐに見据えている。
「奴らがここまで来た! パルモ、気をつけて!」
アニスが武器を構えたまま近くに寄ってくる。
死者の呻き声がはっきりとパルモの耳に届く。死者達はすぐそこまで迫ってきていた。
「パルモ、武器の安全装置を解除して。構えて!」
「は、はい!」
アニスに言われるがまま、パルモは持たされた火炎放射機を構えた。
「来ます! 備えて!」
アニス達兵士の火炎放射機から炎が放たれる。だが、パルモは何もできずにただ立ち尽くしていた。
「パルモ! 怯むな! 殺されてしまう!」
「でも……」
アニスに怒鳴られるが、パルモは動けない。
「パルモ! 避けて!」
「きゃああ!」
誰かに突き飛ばされ、パルモは地面に転がった。
先程までパルモがいたところには、数体の死者が群がるようにしてやって来ていた。
「パルモ!!」
「スプラート!?」
目の前には、半分獣と化したスプラートとシルフがいた。
「だめ! 逃げて!」
「ここで逃げたら、パルモもシルフも死んじゃう!」
スプラートはそう言うと、シルフと視線を交し合った。
以前からこの二者の間で何かしらの会話が交わされている気はしていたが、それが確証に変わった。
シルフが臨戦態勢を取り、死者の軍勢を迎え撃つ。死者からの攻撃を受けてもシルフは全く意に介さずにその喉元を噛み千切り、頭を潰していた。
スプラートが獣の身体能力によって死者の動きを押し止め、シルフがそれに止めを刺す、といった連携をも見せた。
「すごい、あれが聖獣の力」
アニスが呟く声がパルモには聞こえた。
最後の死者が誰かの火によって焼却され、死者の軍団は退けられた。
この勝利は制圧部隊に希望をもたらした。火と聖獣、それが圧倒的な物量を誇る死者の軍勢を退ける有効な手段であるということが立証されたのである。
「二人とも、怪我はない?」
「このくらい平気さ。パルモは?」
「私も大丈夫。ごめんね、私、何もできなかった……」
シルフとスプラートの無事な姿を見て、パルモは涙した。
そっとその涙をシルフが拭う。
「ありがとう。シルフ、スプラート……」
夜が明けて、戦死者の葬儀が簡単に執り行われた。
悲しみに暮れる間もなく、日を置かずに制圧部隊は陣地を発った。
プロヴィデンスにあと300アルレというところで、再び死者の軍団と対峙することになった。
パルモも、今度こそシルフ達に遅れをとらないようにと、必死で死者を退けていった。
それでも、人を殺してしまっているという罪悪感から逃れることができず、パルモは泣きながら死者に炎を浴びせていた。
「ああっ!」
激化する戦いの最中、大量の死者によってパルモとシルフは引き離されてしまった。
死者に噛み付いて振り払うシルフだが、プロヴィデンスより際限なく出てくる死者達に取り囲まれてしまったのが、パルモから見て取れた。
パルモもスプラートと共にシルフを助け出そうとするが、死者達に阻まれてしまう。
「シルフ!!」
数が多すぎて、とてもではないがシルフの傍へ行くことができない。
このままシルフが死者の群れに殺されてしまったらどうしよう。そう考えると、気が気ではなかった。
「パルモ、危ない!」
あまりにもシルフに気を取られ過ぎて、パルモは自分に襲い掛かる死者への対応が疎かになっていた。
スプラートの声でそれに気付くが、時すでに遅く、死者がパルモの眼前に迫っていた。
その瞬間、死者の身体が炎に包まれる。
「ア、アスラ、さん?」
パルモの前には、東方の戦闘服に身を包んだアスラがいた。
プロヴィデンスの制圧部隊を指揮する立場にいるとは聞いていたが、最初の説明を受けてからは、ずっと姿を見ていなかった。
「少しは成長したようだな」
「どうして……」
「シルフを御せるのはお前だけだからな」
「そうだ、シルフ! アスラさん、シルフを助けて!」
「いいだろう」
そう言うと、アスラの姿は掻き消えた。
直後、シルフの周囲から先程と同じような火の手が上がるのが見えた。
リュカ大公の側近である彼の戦闘能力は凄まじかった。死者達は次々と火柱に包まれ、その動きを止めていった。
アスラの助力もあり、パルモとシルフは無事に合流することができた。
「ありがとうございます!」
「貴重な戦力を失う訳にはいかない」
変わらず冷たい目でパルモ達を見るアスラが言葉を発するのと同時に、プロヴィデンスを囲う城壁の辺りから地鳴りと共に大きな音が響いた。
身体をびくりと震わせるパルモに、シルフとスプラートが寄り添った。
「城壁の破壊が完了したようだな。プロヴィデンスへ入るぞ」
「は、はい!」
アスラの視線をパルモは追う。その先には、死霊の住処となって荒廃した都市が広がっていた。
「—了—」