R3 米利安(含日版)

3373年 「未知」

從連隊基地出發後已經過了十五個小時。繼續順利前進的話,再過幾個小時後就可以到達舊桑德蘭平原了。

米利安將嘉達交給赫姆霍茲操縱,進入不知道是第幾次的休息小憩。

因嘉達不自然搖晃造成的振動,讓米利安醒了過來。

「媽的,跟蒼蠅一樣嗡嗡地在眼前飛來飛去煩死了」

坐在駕駛席上的赫姆霍茲火大地咒罵著。

「發生什麼事?」

在搖晃的嘉達內問了梅魯魯。

「是敵性生物。好像是用身體在撞我們的機體」

從機艙側面的小窗口看出去,嘉達的周圍飛繞著暴牙的異形。

從骨骼與翅膀來看跟蝙蝠有點相似,不過爪子跟臉上那看起來像針一樣的牙齒,應該能輕而易舉撕裂人類的身體。

機身發出沉重的撞擊聲。似乎是敵對的生物更加猛烈的衝撞了。

「這機體沒問題吧?」

豪斯哈特向梅魯魯問道。

「這種尺寸的話,應該是沒問題」

「應該?」

米利安下意識地回問道。

「如果我們什麼確定的情報都知道的話,就不用調查隊了吧?」

梅魯魯一邊持續將狀況輸入到終端機裡一邊說道。那是工程師獨特的冷靜語氣。

同時,沈重的撞擊聲再次響起。

「米利安,換你來是不是比較好啊?」

布魯貝克所說的話,在操縱席的赫姆霍茲全都聽到了。

「我聽見了!喂,那你這傢伙來試試看啊!」

赫姆霍茲轉身對著機艙大喊。

「喂,你專心駕駛啊」

豪斯哈特忍不住跳出來說話。

「哼。那你就叫那沒用的傢伙把他那該死的嘴巴閉上!」

赫姆霍茲生氣地大喊。

「那傢伙的技術要是不行的話,換誰都不行了。交給他吧」

米利安在劇烈搖晃的機中,對著周圍的隊員說道。



因為在途中調整了好幾次路線,雖然趕不上預定到達的時間,不過嘉達還是平安到達調查地點了。

嘉達著陸在一個大段差地形的陰影處,四個人下機後像是要保護嘉達似地背對嘉達站著,梅魯魯則是留在機裡。

周圍沒有看到魔物。

雖然只是暫時的,不過就在多少可以確保安全之後,梅魯魯開啟了小型的障壁器。這樣就可以更加確保在嘉達的半徑3阿爾雷圈內的安全。

這裡暫時性的成為米利安他們第四小隊的調查據點。

從這裡接近渦,檢測並記錄周邊的情報後帶回,就是這次的任務內容。

「要調查什麼?」

米利安向梅魯魯發問。

「混沌元素的濃度跟環境,敵性生物的分類,諸如此類」

梅魯魯一邊檢查著儀器一邊說道。

「這個時期渦的活動也很旺盛,盡快把任務完成吧。渦的附近不知道會發生什麼事」

「怎麼變得這麼膽小。你該不會是在害怕吧」

赫姆霍茲對著布魯貝克說道。

「我既不笨也不傻。我們都是仔細地讀取渦的動向,了解渦的恐怖才能一路存活下來的。比你這種在都市城牆保護下悠哉生活的傢伙更懂」

「是是是。那你就好好做吧。畢竟你領的比我們多啊」

「我並不完全是為了酬勞才參加連隊的」

「你還真敢講啊」

「再繼續吵下去對任何人都沒有好處」

準備要大打出手的這兩個人之間,米利安插了進來。

「米利安,你要站在他那邊喔」

「我只想說怒氣要發就留著發在魔物對手上。你們也不想死在這邊吧?」

布魯貝克跟赫姆霍茲兩個人用銳利的眼神互看了之後,就各自回到自己的崗位了。



調查渦的周邊是很嚴酷的工作。為了要對付零星出現的怪物,五人必須保持緊繃的狀態。

就連剛開始嘴巴不停在咒罵的赫姆霍茲,隨著時間的經過咒罵的次數也減少許多。

「能不能到那個較高的岩石附近?我想從那裡把浮動紀錄儀送進去」

豪斯哈特跟隊員們確認了一下梅魯魯的提案。彈藥還算充足。但是,不知道是不是因為緊張,所有人看起來都很疲倦的樣子。

「沒問題。我還可以繼續。不過我不知道那個疑心病的瘦皮猴行不行」

乳白色的霧跟奇妙的光線反射著渦的交界線,反複不穩定地閃爍著。

「應該沒問題。渦似乎也安定下來了」

布魯貝克無視赫姆霍茲的挑釁回答道。

「沒問題」

米利安也回答道。疲勞感是精神上的。真的是覺得還可以繼續。

當霧散了一些之後,梅魯魯在交界處的岩石上安裝了觀測裝置。看來是可以控制浮動紀錄儀的機器。

「只要把這個送進去,這次的調查就算是成功了」

那是以梅魯魯來說難得帶有感情的話語。

米利安一行人就在那周圍,注意著渦的內部及警戒著魔物。

起初只感到有一點不協調。像是在呼吸一樣反覆著收縮跟擴大的光線裡,似乎可以看到些什麼。米利安一直凝視著霧中。

又暗又亮的渦裡,可以看到青苔色凹凸像岩盤的東西,還有藍色細長的物體。在那前方延伸著一個乳白色的空間。

發現青苔色的岩盤是在渦裡面延伸出去的大地這件事,並沒有花上很多時間。在深入的話是不是可以看到天空呢。

真是奇妙的異世界。雖然有學過渦就是異世界的境界。但是,實際像這樣親眼看還是第一次。

反覆閃爍著出現又消失的景象,既不是幻覺也不是影像。而是現實。霧跟光,渦的境界所出現的惡夢的世界。

奪走自己故鄉跟家族的真相,米利安正在與它對峙著。



「梅魯魯,渦的情況看起來很奇怪。差不多該撤退了」

布魯貝克不會錯過渦的細微變化。以長期的經驗來判斷對面的情況,掌握接下來這邊將會發生什麼情況。

「不,還沒有。再十分鐘」

梅魯魯不放過調查器上令人眼花撩亂的任何數值記錄起來。可以看得出來梅魯魯很興奮。

「梅魯魯,照布魯貝克說的。該撤退了」

「不行!」

梅魯魯不同意豪斯哈特的意見,緊盯著計測器的數值。

一瞬間,以為霧動了一下,沒想到從渦裡有黑色的藤蔓朝向梅魯魯襲來。

「……唔!」

藤蔓一瞬間就纏住了梅魯魯的手,被赫姆霍茲用散彈打飛。

「在背後,小心!」

布魯貝克對著赫姆霍茲大叫。

瞬間將身體轉過來,用散彈槍朝著襲擊而來的藤蔓開槍。

「謝啦」

「是為了整個小隊」

布魯貝克跟赫姆霍茲話才剛說完,再次開始迎戰接二連三而來的藤蔓。



米利安抓著梅魯魯的手護著他。像觸手般的藤蔓,像鞭子一樣襲擊米利安。才想要用槍劍去劈開時,卻被藤蔓的荊棘割裂了肩膀。

「控制器!」

「等等再拿!」

用槍劍砍斷接二連三冒出來的藤蔓,調查隊開始從交界線撤退。

像滾下來似地從岩石上下來,總算從猛烈地藤蔓攻擊中脫逃成功。

「不收回控制器的話……。來這邊的意義就沒了」

手上鮮血直流的梅魯魯說道。

「不要說傻話,會死人的」

赫姆霍茲反駁。

大家自然地看向隊長豪斯哈特。

「布魯貝克,你覺得呢?」

「告訴我回收物品的細節。我一個人去的話搞不好可以搞定」

稍微思考了一下後,剛剛的戰鬥中沒有受傷的布魯貝克說道。

「我知道了,給你一小時進行回收作業。因為還有人受傷」

豪斯哈特向隊員們說道。

「千萬不要逞強」

「我來支援」

赫姆霍茲對著布魯貝克說道。赫姆霍茲幾乎沒有受傷。

「我知道了。交給你」

兩人攀上岩石,準備去取回梅魯魯指定的機器。



過了一個小時,兩人都還沒回來。

豪斯哈特開始準備撤退。

「不等了嗎?」

米利安向豪斯哈特問道。

「我不能再冒更多的險了。回嘉達去」

米利安叫醒了幾乎喪失意識的梅魯魯,扶著他沒有受傷的那一邊肩。

就在這同時,聽到岩石上發出聲音。

三人停止動作。在霧的另一端赫姆霍茲跟布魯貝克下來了。

「這個就好了嗎」

赫姆霍茲抱著梅魯魯所說的控制器問道。

「……對。這樣就可以了」

小聲地回答後,梅魯魯就失去了意識。扶著梅魯魯的米利安稍微失去平衡,豪斯哈特從另一邊支撐著。

「好,該回去了。別大意了啊」

豪斯哈特說道。調查隊往嘉達的方向前進。



迎接米利安他們回來的是,其他調查隊的疲憊的戰士與工程師們。

雖然規模程度不同,但各隊伍也都遭遇到不同的災難,也都是想盡辦法才勉強平安歸來的吧。

連隊要面對的渦,是非常強大的存在。



在那之後也組成過好幾次調查隊,雖然付出了犧牲持續了研究。

工程師配給的裝備也加以改良,與初期時的相比便利性也增加了,變得強勁許多。

不過像是呈正比一樣,隨著越來越了解渦的同時犧牲人數也持續增加。

當確立了消滅渦的理論,並且完成了實行裝置的時候,剛好也是追加的連隊隊員剛入隊的時候。



當結束關於新的聖劍使用說明後,米利安為了要去下一個會議場所而往停機坪的方向走去。

途中經過的射擊場裡,新進的隊員正在進行訓練。

為了成為消滅渦的主力而從各地召集來的男子們,不知道是不是錯覺,年輕人似乎佔了大多數。

跟渦戰鬥的部隊名聲,漸漸地在大陸上的各都市傳開來了。有人加入,自然也有人離開。

「米利安,新型武裝車的說明會就快開始了。快點」

「嗯,我馬上過去」

新兵訓練才剛結束,米利安的A中隊已決定參加第一個消滅渦的戰鬥,在那之前必須不斷開會討論。

米利安瞧了一眼新隊員後,就快步前往停機坪了。



「─完─」

日文版
3373年 「未知」

 レジメントの施設を発ってから十五時間ほどが過ぎていた。このまま順当にいけば、あと数時間で旧サンダランド平原に到着する。

ミリアンはカッターの操縦をヘルムホルツに交代し、何度目かの仮眠を取っていた。

不自然に揺れるカッターからの振動で、ミリアンは目を覚ました。

「くそっ、蝿みたいにブンブンと目の前を飛び回りやがって……邪魔くせえ」

操縦席のヘルムホルツが悪態を吐いている。

「何があった?」

揺れるカッター内でメルルに尋ねる。

「敵性生物だ。 機体に体当たりしているようだな」

キャビンの脇にある小さな窓を覗くと、カッターの周りを歯を剥き出しにした異形が飛び回っていた。

骨格や翼は蝙蝠に似ているが、爪や顔から生えた針のような牙は、生身の人間だったら簡単に引き裂かれてしまうだろう。

重い衝撃音が機体に響いた。敵性生物が激突したようだ。

「この機体は大丈夫だろうな?」

ハウスホッターがメルルに訪ねた。

「このサイズなら、おそらく問題は無い」

「おそらく?」

思わずミリアンが訊ね返した。

「確定的な情報が全てわかっているなら、調査隊など必要ないだろう」

メルルは状況を端末に打ち込む作業を続けながら言った。エンジニア独特の抑制的な口調だ。

その間にもまた、重い衝撃音がキャビンに響いた。

「ミリアン、お前に替わったほうがいいんじゃないか?」

ブルベイカーが言った言葉を、操縦席のヘルムホルツは聞き逃さなかった。

「聞こえたぞ! じゃあ、てめぇがやってみろってんだ!」

キャビンに振り向いて大声で叫び返す。

「おい、操縦に集中しろ」

ハウスホッターがたまらず仲裁する。

「ふん。 なら、その役立たずなやせっぽちの口を押さえとけ!」

ヘルムホルツが怒鳴った。

「あいつの腕で落ちるなら誰の操縦でも落ちる。 任せよう」

ミリアンは大きく揺れる機体の中で、周りのメンバーに言った。

 

途中何度か進路を調整したため、到着予定時刻には間に合わなかったが、カッターは調査ポイントへと辿り着いた。

カッターを大きな段差の影に着陸させると、メルルを中に残して、四人はカッターを背に庇うようにして立った。

周囲に魔物の姿は見えない。

一時的ではあるが多少の安全が確保されたところで、メルルが小型の障壁器を展開させた。これでカッターの半径3アルレ圏内の安全は強固なものとなる。

しばらくはここが、ミリアン達第四調査小隊の拠点となる。

ここから渦に近付き、周辺の情報を計測して帰還するのが、今回のミッション内容だ。

「何を調べるんだ?」

ミリアンはメルルに聞いた。

「ケイオシウム濃度や環境、敵性生物の分類、諸々だ」

計測器のチェックをしながらメルルは言った。

「この時期の渦は活動も活発だ、素早く済ませよう。 渦の近くでは何が起こるかわからない」

「ずいぶんと弱気じゃねえか。 ビビってんのかよ」

ヘルムホルツがブルベイカーに突っ掛かっていた。

「俺は馬鹿でも無謀でもないからな。我々は渦の流れを読み、渦の脅威を知ることで生きてきた。ぬくぬくと都市の壁に守られていたお前よりは、よく知っている」

「そうかいそうかい。 じゃあ、せいぜい働けよ。俺達より貰ってるんだからな」

「報酬だけでこのレジメントに参加したわけではない」

「よく言うぜ」

「互いに争っても、誰の得にもならん」

殴り合わんばかりの調子の二人に、ミリアンが割って入った。

「こいつの肩を持つのかよ、ミリアン」

「怒りは魔物相手に取っておけって言ってるんだ。 ここで死にたいわけじゃあるまい?」

ブルベイカーとヘルムホルツは互いに鋭い視線を交わすと、それぞれの持ち場に立った。

 

渦の周辺調査は苛酷なものになった。散発的に現れる魔物を相手にするため、五人は常に緊張状態にあった。

最初の内は相当数の悪態や軽口を吐いていたヘルムホルツですら、時間が経つにつれて口数が減っていった。

「あの高くなった岩場まで近付けるか? あそこから調査ドローンを送り込みたい」

メルルの提案にハウスホッターは隊員達を確認した。弾薬はまだ十分にあった。だが、緊張感からか、全員が疲労しているように見える。

「問題ないぜ。 俺はまだまだやれる。 臆病者のやせっぽちはどうか知らねえけどな」

乳白色の霧が奇妙な色合いに反射する渦の境界線が、不安定な明滅を繰り返していた。

「問題ないだろう。 渦は少し落ち着いているようだ」

ブルベイカーはヘルムホルツの挑発を無視して答えた。

「問題ない」

ミリアンも答えた。疲労感は精神的なものだった。まだ行けると、正直に思った。

霧が少し晴れると、境界上にある岩場にメルルは観測装置を取り付けた。ドローンをコントロールする機械のようだ。

「これを送り込めれば、今回の調査は成功だ」

メルルにしては感情のこもった言葉だった。

ミリアン達はその近辺で、魔物の出現を警戒するべく渦の中を注視していた。

最初はほんの僅かな違和感だった。呼吸をするかのように収縮と拡大を繰り返す光の中に、何かが見えた。ミリアンは目を凝らして霧の中を注視する。

暗く輝く渦の中には、苔色をした凸凹の岩盤のようなものと、藍色をした細長いオブジェが見えた。その先には乳白色をした空間が広がっている。

苔色の岩盤が渦の中に広がる大地だということに気付くのに、さほど時間は掛からなかった。その先に見えるのは空ということになるのだろうか。

奇妙な異界の姿だった。渦が異界との境界であることは散々教えられていた。だが、実際に向こう側を見るのは初めてだった。

ちらちらと現れては消えるその姿は、幻覚でも映像でもない。現実だった。霧と光、渦との境界に現れる悪夢の世界。

自分の故郷と家族を奪ったものの正体と、ミリアンは対峙していた。

 

「メルル、渦の動きがおかしい。 そろそろ潮時だ」

ブルベイカーは渦の些細な変化も見逃さない。長い経験から向こう側で何が起きて、次にこちら側で何が起きるのかを知っているのだ。

「いや、まだだ。 あと一〇分」

メルルは目まぐるしく数値が変わる調査器の記録を、余すところなく取っていた。メルルは興奮しているようにも見えた。

「メルル、ブルベイカーの言うとおりだ。撤退するぞ」

「だめだ!」

メルルはハウスホッターの意見すら意に介さず、計測器の数値を見つめていた。

一瞬、霧が動いたかと思うと、渦の中からメルルに向かって黒色の蔦が襲ってきた。

「……っ!」

メルルの腕に一瞬でとりついたその蔦を、ヘルムホルツは散弾で吹き飛ばした。

「後ろだ、気をつけろ!」

ブルベイカーがヘルムホルツに叫んだ。

咄嗟にその丸い身体を反転させ、襲いかかる蔦をショットガンで吹き飛ばした。

「礼は言っとくぜ」

「チームの為だ」

ブルベイカーとヘルムホルツはそう会話すると、次々と襲い掛かってくる蔦との戦いを再開した。

 

ミリアンはメルルを掴むようにして守っている。触手のように伸びてくる蔦が、ミリアンを鞭のように襲った。銃剣で払おうとするが、相手の棘で肩口を切り裂かれた。

「コンソールが!」

「あとだ!」

次々と飛び出してくる蔦を銃剣で切り伏せ、調査隊は境界線から撤退を始めた。

岩場を転がるようにして下り、どうにか蔦の猛襲から逃れることができた。

「コンソールを回収しなければ……。 これではここに来た意味が無い」

腕から血を流したままのメルルが言った。

「馬鹿を言うな、死んじまうぜ」

ヘルムホルツが反論した。

自然と、隊長であるハウスホッターに視線が集まった。

「ブルベイカー、どう思う?」

「回収するものの詳細を教えてくれ。俺一人なら上手くやれるかもしれん」

少しだけ考えた後、さっきの戦闘で無傷だったブルベイカーが言った。

「わかった、一時間だけ回収作業を行う。 怪我の状態もある」

ハウスホッターはそう隊員達に告げた。

「無理はするなよ」

「バックアップに回ろう」

ヘルムホルツがブルベイカーに言った。ヘルムホルツも傷は殆ど無い。

「わかった。頼もう」

二人はメルルが指定した機器を取りに、また岩場を登っていった。

 

一時間が経ったが、二人は帰ってこなかった。

ハウスホッターは撤退の準備を始めた。

「待たないのか?」

ミリアンはハウスホッターに言った。

「これ以上の危険は冒せない。 カッターまで戻るぞ」

ミリアンは意識を失いかけているメルルを起こし、傷付いていない方の肩を貸して歩き始めた。

その時、岩場の上から音が聞こえた。

三人は動きを止める。霧の向こうからはヘルムホルツとブルベイカーが下りてきた。

「こいつでいいのか」

ヘルムホルツがメルルの指定したコンソールを抱えあげてみせた。

「……そうだ。それでいい」

メルルは小さな声でそう言うと、意識を失った。ミリアンにメルルの重みが掛かってふらつきそうになったが、ハウスホッターが反対側から支えた。

「さあ、帰りの時間だ。 油断するな」

ハウスホッターがそう言うと。調査隊はカッターへ戻る道を進んだ。

 

帰還したミリアン達を迎えたのは、他の調査隊の疲弊した戦士やエンジニア達の姿だった。

規模の程度に差こそあったが、それぞれ埒外の現象に見舞われて、どうにかこうにか帰還してきたのだろう。

レジメントが立ち向かおうとしている渦は、あまりにも強大な存在であった。

 

それから幾度となく調査隊が組まれ、犠牲を出しながらも渦の研究は進んでいった。

エンジニア達から支給される装備品も改良され、初期の頃とは比べ物にならないほど利便性を増し、強力なものとなっていった。

しかし渦の正体が明らかになっていくことと比例するかのように、犠牲者も増え続けていた。

渦を消滅させるための理論が確立し、それを行うための装置が完成したのは、追加の隊員達がレジメントに入隊してすぐのことであった。

 

新しいセプターの取り扱いに関する一通りの説明が終了し、ミリアンは次のブリーフィングのためにハンガーへと向かっていた。

その途中に通りかかった射撃場では、新隊員達が訓練を行っていた。

渦消滅の主力とするべく新たに各地から集められた男達は、心なしか若い連中が多かった。

渦と戦う部隊の名は、少しずつだが大陸の各都市で話題になり始めていた。去る者がいれば、来る者もいる。

「ミリアン、もうすぐ新型コルベットの説明が始まるぞ。 急いでくれ」

「ああ、すぐに向かう」

新兵の訓練終了を待たずして、ミリアン達A中隊が最初の渦消滅作戦に参加することになり、その前準備としてブリーフィングを重ねている。

ミリアンは訓練中の新隊員達を一瞥して、足早にハンガーへと向かっていった。

 「—了—」