阿修羅作為走私集團,和基度一同前往帝都商談。靠著Five的人脈成功接近帝國議會比較弱勢的政治家。這主要是靠基度在羅占布爾克地下社會做出的實績與信賴。
宣誓完之後,基度變得不再多話,阿修羅也默默地看著他的行動。
就單只是觀察著基度的每一個行動。
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在帝都,幾乎每天都有壓制地區的消息,重複著戰意高揚的宣傳。與前線的慘烈完全不同,反而感覺是在強調戰後帶來的豐饒。對於這個帝國來說,戰爭可以說是一種產業。
在這個城市不只可以親身感受到國家所營造出的不可思議力量,更能思考其中的奧秘。
然後透過與政治家的接觸,了解到古朗德利尼亞帝國與魯比歐那一樣有派系的存在。並且也知曉了有阻止戰爭永遠持續的派系。
「政治家在戰爭中也無法安穩。今天也發生了暗殺事件。這樣一來,需要各種花費呢」
一邊收下基度的賄賂,政治家們也露出了不安的表情。雖然是貪圖交易權才會面的小人物,但也能拿到帝國中心發生的,沒有公開的事件情報。
不管在哪個世界,在什麼樣的地方都有鬥爭。阿修羅判斷有必要帶著這個事實回魯比歐那一趟。
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「頭兒,請問您什麼時候要回去?」
回到據點,正在沒有人的地方瞑想時,部下的米卡基過來問道。
「問這個做什麼?」
阿修羅張開眼睛回問道。
「我想請您這次回去時帶上我」
「為什麼?」
阿修羅提出疑問。
米卡基比起都是單獨行動的阿修羅,比較常跟走私集團的頭目輔佐基度在一起。
「說來可笑,我不太適應這邊的生活。結果就被說是我鍛鍊的不夠,所以……」
「隨便你」
「謝謝您!」
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數日後,米卡基與阿修羅為了辦出國手續來到邊境管制所。
阿修羅他們,是以美術商人的工作要到東方採購為名,拿到許可證的。
首先是米卡基示出許可證,平安無事的通過之後換阿修羅。阿修羅將出國許可證給職員看了之後,職員拿著許可證站了起來。
「請等一下」
職員離開之後沒多久就回來了。
「不好意思。您的許可證似乎有資料寫漏了,請跟我來這邊補寫一些簡單的資料」
阿修羅離開隊列,被帶往另外一個房間。旁邊有警衛兵隨行。
這應該是經由政治家拿到的正式許可證才是,感覺似乎不太對。但是阿修羅沒有表現出任何的動搖。
另一個房間內已經有帝國兵在等著。
「我們要將你以間諜嫌疑犯的罪名逮捕」
馬上就從兩側被包夾抓住。為了預防自殺還在口中被塞了口銜。阿修羅完全沒有抵抗。
被粗魯地檢查身體之後,丟進護送車內,發車移動。
阿修羅被關在沒有人的護送車內,坐著閉上眼睛。
過了一會兒後張開眼睛,在狹小的車內慢慢地讓左手的關節脫臼,取下手銬。然後咬著口銜站起來,向司機的方向用全身猛撞來引起警衛兵們的注意。看到警衛兵們透過小窗口要看向這邊的時候,阿修羅就用頭猛撞小窗口。持續撞了無數次,額頭上都噴出血了。
「可惡,想自殺嗎!根本是瘋了」
警衛兵們看到窗上的血以為阿修羅要自殺,邊說著邊讓車子停下。
兩位警衛兵拿著槍打開護送車的門。看到的是全身是血側躺在地,淒慘模樣的阿修羅。
「喂,去看看他是不是還活著」
疑似長官的男子向另一位士兵下了命令。部下的士兵重新舉好槍進到護送車內,站到阿修羅的旁邊。就在那個瞬間阿修羅跳起來似的重新站了起來,用拆下來的手銬前端用力地割破了士兵的喉嚨。然後將還在噴血的士兵身體當作肉盾往在外面的長官丟過去。一時恐慌的長官被砸到跌倒,且奪走了槍枝。
將口銜拿掉並把手銬丟掉之後,就往司機的方向走去,用槍命令司機下車。
然後讓司機幫忙把兩位警衛兵收拾掉之後,命令他把衣服脫了。阿修羅收下脫下的衣服之後,就把司機擊殺了。
擦去額頭上的血,並做簡單的止血後,穿上司機的衣服開走了護送車。
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從危機中逃出來的阿修羅,邊藏身邊花了兩天到達了他們在羅占布爾克的據點。雖然事情的來龍去脈大概有個頭緒。但是該做的了斷還是要做。
到了據點之後就聽到基度在跟誰說話的聲音。對方的聲音沒有聽過。
「你說什麼!竟然讓他逃走了!那傢伙……」
「馬上就會找到了。不過間諜應該不只有他一個人吧」
「不,那個男人是個麻煩的男人……我以為是你們會對付他的……」
基度無論如何都徹底地演著一位走私商。
「吾等會對付他。但是不會連方法都受你的指使」
「那傢伙是……」
阿修羅靜靜地聽著基度說的話,過了一會兒後,就進到據點中。
就像什麼事都沒有發生似的走在據點的走廊上,遇到了米卡基。
「阿,阿修羅!?為什……」
阿修羅不發一語就將米卡基的武器奪走,並扣住他的脖子。
就那樣架著米卡基的脖子,
「你還有什麼話要說嗎?」
阿修羅靜靜地問道。
「頭目……是基度他,說就那樣跟著魯比歐那會死的……所以……」
不知道是不是已認命,米卡基將從基度那兒聽來的話全部都說出來了。
「我是被威脅的……所以……請放過我……」
阿修羅就那樣勒緊米卡基,扭斷了他的脖子。
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阿修羅拿著米卡基的武器,打開了基度房間的門。
途中,將基度的部下們全部一擊殺害。他們大概連自己死了都沒有發現吧。
「阿修羅……」
阿修羅冷眼一看,基度就慢慢地站起來顫抖地叫出阿修羅的名字。
「不愧是頭兒。動作真的很迅速」
基度吞了一口口水。
「既然我還活著,表示你願意聽我解釋嗎?」
阿修羅保持沉默。
「我來到這個國家知道了什麼叫做『自由』。但是我也知道頭兒絕對不會允許這樣的事」
基度邊說著,邊將手慢慢地移向腰間的劍。
「但是,我不能不選擇自由就死去!我不要被盟約給束縛,我選擇了自由之路!!」
基度拔出腰間的長柄匕首。
「但是你輸了。因為你弱。精神跟技術都弱。你就死在這邊吧」
阿修羅開口了。
「……嗯,遵從頭兒之命」
基度將匕首靠近自己的脖子,並且順勢用力地切了下去。
隨即就噴出鮮血邊跪倒了下來,斷氣了。
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「原來如此,真是耐人尋味」
突然,從背後傳來了聲音。是剛剛與基度對話的人的聲音。
回頭一看,是一位穿著紅與黑的服裝,戴著面具的人。
從聲音來判斷無法得知是男是女。
阿修羅將拿著的刀瞄準頸部丟向面具人。
但是面具人將那把刀在空中接住。那不是一般人能辦到的事。
「雖然調查了很多,但看來超乎吾等的想像之外」
阿修羅的心中,提高了對這個來路不明的人的警戒心。
「你逃不掉的」
從面具深處,就好像能夠讀到阿修羅的心聲似地說道。
「就請你再陪吾等一下吧」
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「─完─」
3397年 「捕縛」
アスラは密輸業者として、キドウと共に帝都へ商談に赴いていた。ファイヴの伝手により、下位ではあるが帝國議会の政治家に近付くことができた。これはローゼンブルグの闇社会で一定の実績と信頼を得たキドウの手腕によるところが大きい。
誓いの後、キドウは多くを語らなくなった。アスラも黙ってその行動を見届けていた。
ただ、逐一キドウの動きは観察し続けていた。
帝都では毎日のように地方制圧の報、戦意高揚の宣伝が繰り返されていた。前線の苛烈さと程遠いそれは、却って銃後の豊かさを強調しているように感じられた。この帝國において、戦争とは産業であった。
この街では国家が作り出すこうした途方もない力を肌で感じ、また考えることができた。
そして政治家との接触で、グランデレニア帝國にもルビオナと同じように派閥が存在し、戦争の恒久的な続行を阻む派閥があることを知った。
「政治家も、戦争中は安泰とはいかんのです。 今日日は暗殺なんて物騒なことも起こる。 そうなると色々と入り用でね」
キドウの差し出した賄賂を受け取りながら、政治家はそうぼやいて見せた。交易権の便宜を図ってもらうために会った小人だったが、表には出てこない、帝國の枢要で起きている情報を入手できた。
どこの世界にも、どんな場所にも争いはあるということだ。この事実を持って一度ルビオナに戻る必要がある。アスラはそう判断した。
「カシラ、向こうにはいつ戻るので?」
拠点に戻り、人気のない場所で一人瞑想をしていると、部下の一人であるミカギがやって来た。
「聞いてどうする」
アスラは目を開けることなくミカギに答えた。
「お願いがあります。今回の帰還に私も同道させてください」
「何故?」
アスラは疑問を口にした。
ミカギは単独で行動するアスラよりも、密輸業者の頭目補佐としてキドウと共にいることが多い人物だった。
「お恥ずかしい話ですが、西の風土が私には合わないのです。鍛錬が足りぬと言われればそれまでです。ですが……」
「好きにするといい」
「ありがとうございます!」
それから数日後、ミカギを伴ったアスラは出国手続きを行うために国境検問所にいた。
アスラ達は、美術商の仕事で東方に品物を買い付けに行くという体で、許可証の交付を受けていた。先にミカギが出国許可証を出し、何事もなく通過するのを見届けてアスラが続く。アスラが出国許可証を見せると、職員が許可証を手に取って立ち上がった。
「少々お待ちください」
職員は、出て行ってからいくらも経たない内に戻ってきた。
「申し訳ございません。許可証に記載漏れがあるようなので、簡単な書類をお書きください」
アスラは検問の列から離れ、別室へと案内された。傍には警備兵が同行している。
政治家からの手引きで入手した正式な許可証の筈だが、様子がおかしい。それでもアスラは一切の動揺を見せずにいた。
通された別室には、すでに帝國兵が待ち受けていた。
「お前をスパイ容疑で逮捕する」
すぐに両脇を固められるように捕縛された。自殺を防ぐための猿轡を噛まされる。アスラはそれらを抵抗せずに受け入れた。
乱暴な身体検査を受けた上で護送車に放り込まれ、車が動き出した。
アスラは誰もいない護送車に、瞑目したまま座っていた。
暫くすると目を開き、狭い車内でゆっくりと左手の関節を外し、手錠から抜き取った。そして猿轡はそのままに立ち上がると、運転席に向かって身体をぶつけて警備兵達の注意を惹いた。覗き窓から警備兵がこちらを確認する。するとアスラはその覗き窓に頭を激しくぶつけた。何度もぶつけ続けると、額から血が噴き出す。
「くそ、自殺か! 狂ってやがるな」
窓に飛び散る鮮血に自殺を疑った警備兵が、そう呟いて車を止めさせた。
二人の警備兵が銃を携えたまま護送車の扉を開ける。そこには血塗れで仰向けに倒れた、凄惨な姿のアスラがいた。
「おい、生きているか確認しろ」
上官らしき男が片方の兵士にそう命令する。部下の兵は銃を担ぎ直して護送車に乗り込み、アスラの横に立った。その瞬間、アスラは跳ね起きるように立ち上がり、兵士の喉元を外しておいた手錠の切っ先で力任せに掻き切った。血を吹き出しながら絶命する兵士を盾にしながら、外にいる上官にぶつかっていく。状況に恐慌している上官を当て身で倒し、その銃を奪った。
猿轡を外して手錠を捨てると、すぐに運転席に向かい、銃を突き付けてドライバーに車から下りるよう命令した。
運転手に死んだ警備兵二人の始末を手伝わせると、今度は服を脱ぐように命令した。脱ぎ終わった服を受け取ると、アスラは運転手をすぐに撃ち殺した。
額の血を拭い、簡単な止血をし、運転手の服に着替えると、護送車を発進させた。
窮地を脱出したアスラは、身を隠しながら二日でローゼンブルグの拠点へと辿り着いた。事の次第については予想できていた。それでも、当然の決着を付ける必要があった。
拠点ではキドウが誰かと話をしている声が聞こえた。相手の声は聞いたことがないものだった。
「なんてことです! 逃がすなんて! ヤツは……」
「いずれ見つけ出す。 ただ、間諜などというのは、ヤツだけではないのでな」
「いいや、あの男は厄介な男でして……てっきりあなた方が対処してくれるのだと……」
キドウはあくまでも密輸業者を演じているようだった。
「対処はした。 だがその方法までお前に指図は受けぬ」
「ヤツはその……」
アスラは静かにキドウが喋るのを聞いていたが、少し経つと、拠点の中へと入っていった。
何事もなかったかのように拠点の廊下を歩いていると、ミカギに出会う。
「ア、アスラ!? どうし……」
アスラは何も言わずにミカギから武器を奪い、ミカギの首を取る。
そのまま首を締め上げながら、
「なにか言うことはあるか?」
アスラは静かな声で問うた。
「頭目……キドウが、このままルビオナに付いていても死ぬだけだって……だから……」
観念したのか、ミカギはキドウに言われたということを喋った。
「脅されて……だから……助けてくだ……」
アスラはミカギの首をそのまま締め上げ、へし折った。
ミカギの武器を持ったまま、アスラはキドウのいる部屋の扉を開け放った。
途中、キドウに付いて残った部下達を全て一撃の元に葬り去った。おそらく、己が死んだことにも気付いていないだろう。
「アスラ……」
冷たく一瞥すると、キドウはゆっくりと立ち上がりながら震える声で言葉を発した。
「さすがカシラだ。 本当に素早い……」
キドウの喉元がごくりと動く。
「この間合いでまだ生きてられるってことは、俺の話を聞いてくれるのか?」
アスラは黙っていた。
「俺はこの国に来て『自由』ってものの意味を知った。 だが、カシラはそれを絶対に許さないこともわかっていた」
喋りながらキドウは、腰の剣にゆっくりと手を回す。
「けれど、自由を選ばずに死ぬ訳にはいかなかったんだ! 掟だの盟約だのに縛られない、自由になる道を選んだんだ!!」
キドウは長柄のナイフを腰から引き抜いた。
「だが、貴様は負けた。 弱いからだ。 心も技も。 ここで死ぬがいい」
アスラは口を開いた。
「……ああ、カシラに従うよ」
キドウはナイフを自分の首に当てると、勢いよく引き抜いた。
そして血を吹き出しながら膝を突いて倒れると、絶命した。
「成る程、興味深い」
突然、背後から声がした。キドウと会話をしていた人物の声だった。
振り返ると、赤と黒の衣装を纏い、仮面を着けた者がそこにいた。
その声は、男か女かの判別はできそうにない。
アスラは持っていたナイフを仮面の人物の首元目掛けて投げ付けた。
仮面の人物はその飛んでくるナイフを空中で握ってみせた。尋常の人間ではあり得ない技だ。
「色々と調べていたのだが、想像以上のようだ」
アスラの中で、この得体の知れぬ者に対する警戒心がもたげた。
「逃げ道はない」
仮面の奥から、こちらの心を読むかのように言った。
「もう少し手合わせを願おうか、我々と」
「—了—」
アスラは密輸業者として、キドウと共に帝都へ商談に赴いていた。ファイヴの伝手により、下位ではあるが帝國議会の政治家に近付くことができた。これはローゼンブルグの闇社会で一定の実績と信頼を得たキドウの手腕によるところが大きい。
誓いの後、キドウは多くを語らなくなった。アスラも黙ってその行動を見届けていた。
ただ、逐一キドウの動きは観察し続けていた。
帝都では毎日のように地方制圧の報、戦意高揚の宣伝が繰り返されていた。前線の苛烈さと程遠いそれは、却って銃後の豊かさを強調しているように感じられた。この帝國において、戦争とは産業であった。
この街では国家が作り出すこうした途方もない力を肌で感じ、また考えることができた。
そして政治家との接触で、グランデレニア帝國にもルビオナと同じように派閥が存在し、戦争の恒久的な続行を阻む派閥があることを知った。
「政治家も、戦争中は安泰とはいかんのです。 今日日は暗殺なんて物騒なことも起こる。 そうなると色々と入り用でね」
キドウの差し出した賄賂を受け取りながら、政治家はそうぼやいて見せた。交易権の便宜を図ってもらうために会った小人だったが、表には出てこない、帝國の枢要で起きている情報を入手できた。
どこの世界にも、どんな場所にも争いはあるということだ。この事実を持って一度ルビオナに戻る必要がある。アスラはそう判断した。
「カシラ、向こうにはいつ戻るので?」
拠点に戻り、人気のない場所で一人瞑想をしていると、部下の一人であるミカギがやって来た。
「聞いてどうする」
アスラは目を開けることなくミカギに答えた。
「お願いがあります。今回の帰還に私も同道させてください」
「何故?」
アスラは疑問を口にした。
ミカギは単独で行動するアスラよりも、密輸業者の頭目補佐としてキドウと共にいることが多い人物だった。
「お恥ずかしい話ですが、西の風土が私には合わないのです。鍛錬が足りぬと言われればそれまでです。ですが……」
「好きにするといい」
「ありがとうございます!」
それから数日後、ミカギを伴ったアスラは出国手続きを行うために国境検問所にいた。
アスラ達は、美術商の仕事で東方に品物を買い付けに行くという体で、許可証の交付を受けていた。先にミカギが出国許可証を出し、何事もなく通過するのを見届けてアスラが続く。アスラが出国許可証を見せると、職員が許可証を手に取って立ち上がった。
「少々お待ちください」
職員は、出て行ってからいくらも経たない内に戻ってきた。
「申し訳ございません。許可証に記載漏れがあるようなので、簡単な書類をお書きください」
アスラは検問の列から離れ、別室へと案内された。傍には警備兵が同行している。
政治家からの手引きで入手した正式な許可証の筈だが、様子がおかしい。それでもアスラは一切の動揺を見せずにいた。
通された別室には、すでに帝國兵が待ち受けていた。
「お前をスパイ容疑で逮捕する」
すぐに両脇を固められるように捕縛された。自殺を防ぐための猿轡を噛まされる。アスラはそれらを抵抗せずに受け入れた。
乱暴な身体検査を受けた上で護送車に放り込まれ、車が動き出した。
アスラは誰もいない護送車に、瞑目したまま座っていた。
暫くすると目を開き、狭い車内でゆっくりと左手の関節を外し、手錠から抜き取った。そして猿轡はそのままに立ち上がると、運転席に向かって身体をぶつけて警備兵達の注意を惹いた。覗き窓から警備兵がこちらを確認する。するとアスラはその覗き窓に頭を激しくぶつけた。何度もぶつけ続けると、額から血が噴き出す。
「くそ、自殺か! 狂ってやがるな」
窓に飛び散る鮮血に自殺を疑った警備兵が、そう呟いて車を止めさせた。
二人の警備兵が銃を携えたまま護送車の扉を開ける。そこには血塗れで仰向けに倒れた、凄惨な姿のアスラがいた。
「おい、生きているか確認しろ」
上官らしき男が片方の兵士にそう命令する。部下の兵は銃を担ぎ直して護送車に乗り込み、アスラの横に立った。その瞬間、アスラは跳ね起きるように立ち上がり、兵士の喉元を外しておいた手錠の切っ先で力任せに掻き切った。血を吹き出しながら絶命する兵士を盾にしながら、外にいる上官にぶつかっていく。状況に恐慌している上官を当て身で倒し、その銃を奪った。
猿轡を外して手錠を捨てると、すぐに運転席に向かい、銃を突き付けてドライバーに車から下りるよう命令した。
運転手に死んだ警備兵二人の始末を手伝わせると、今度は服を脱ぐように命令した。脱ぎ終わった服を受け取ると、アスラは運転手をすぐに撃ち殺した。
額の血を拭い、簡単な止血をし、運転手の服に着替えると、護送車を発進させた。
窮地を脱出したアスラは、身を隠しながら二日でローゼンブルグの拠点へと辿り着いた。事の次第については予想できていた。それでも、当然の決着を付ける必要があった。
拠点ではキドウが誰かと話をしている声が聞こえた。相手の声は聞いたことがないものだった。
「なんてことです! 逃がすなんて! ヤツは……」
「いずれ見つけ出す。 ただ、間諜などというのは、ヤツだけではないのでな」
「いいや、あの男は厄介な男でして……てっきりあなた方が対処してくれるのだと……」
キドウはあくまでも密輸業者を演じているようだった。
「対処はした。 だがその方法までお前に指図は受けぬ」
「ヤツはその……」
アスラは静かにキドウが喋るのを聞いていたが、少し経つと、拠点の中へと入っていった。
何事もなかったかのように拠点の廊下を歩いていると、ミカギに出会う。
「ア、アスラ!? どうし……」
アスラは何も言わずにミカギから武器を奪い、ミカギの首を取る。
そのまま首を締め上げながら、
「なにか言うことはあるか?」
アスラは静かな声で問うた。
「頭目……キドウが、このままルビオナに付いていても死ぬだけだって……だから……」
観念したのか、ミカギはキドウに言われたということを喋った。
「脅されて……だから……助けてくだ……」
アスラはミカギの首をそのまま締め上げ、へし折った。
ミカギの武器を持ったまま、アスラはキドウのいる部屋の扉を開け放った。
途中、キドウに付いて残った部下達を全て一撃の元に葬り去った。おそらく、己が死んだことにも気付いていないだろう。
「アスラ……」
冷たく一瞥すると、キドウはゆっくりと立ち上がりながら震える声で言葉を発した。
「さすがカシラだ。 本当に素早い……」
キドウの喉元がごくりと動く。
「この間合いでまだ生きてられるってことは、俺の話を聞いてくれるのか?」
アスラは黙っていた。
「俺はこの国に来て『自由』ってものの意味を知った。 だが、カシラはそれを絶対に許さないこともわかっていた」
喋りながらキドウは、腰の剣にゆっくりと手を回す。
「けれど、自由を選ばずに死ぬ訳にはいかなかったんだ! 掟だの盟約だのに縛られない、自由になる道を選んだんだ!!」
キドウは長柄のナイフを腰から引き抜いた。
「だが、貴様は負けた。 弱いからだ。 心も技も。 ここで死ぬがいい」
アスラは口を開いた。
「……ああ、カシラに従うよ」
キドウはナイフを自分の首に当てると、勢いよく引き抜いた。
そして血を吹き出しながら膝を突いて倒れると、絶命した。
「成る程、興味深い」
突然、背後から声がした。キドウと会話をしていた人物の声だった。
振り返ると、赤と黒の衣装を纏い、仮面を着けた者がそこにいた。
その声は、男か女かの判別はできそうにない。
アスラは持っていたナイフを仮面の人物の首元目掛けて投げ付けた。
仮面の人物はその飛んでくるナイフを空中で握ってみせた。尋常の人間ではあり得ない技だ。
「色々と調べていたのだが、想像以上のようだ」
アスラの中で、この得体の知れぬ者に対する警戒心がもたげた。
「逃げ道はない」
仮面の奥から、こちらの心を読むかのように言った。
「もう少し手合わせを願おうか、我々と」
「—了—」