從The Eye辛苦撿回一命逃回家的本大爺,回來後,馬上就被丟進醫療設施內了。
本大爺在The Eye的戰鬥中受了很重的傷,從結節點《Node》出來之後的記憶一片空白。
被丟進醫療設施約一日之後,雖然就已經醒來了,但是因為傷勢太重,所以頭暫時都一片恍惚。
周圍看起來莫名慌亂,也沒有聽到馬庫西瑪斯的情報。
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醒來後過了一週左右,D中隊的米利安中隊長跟治療中的出葉一起來看本大爺了。
「馬庫西瑪斯沒有得救」
平常為了不要曝露自己的故鄉音,所以不怎麼開口說話的出葉。好不容易開口,就這麼一句話而已。
「這樣啊……」
本大爺跟里斯發現那傢伙時,他已經是瀕死狀態了。
武裝車內的緊急醫療設備根本無法完全止血,雖然他途中恢復了意識,但那個時候就連呼吸都已經很困難了。
雖然本大爺早就知道大概不行了……。但至少還有一點意識,說不定還有希望……
重新得知那傢伙死去之事,就連本大爺也都只能低頭難過。
「E中隊已經被當作全滅處理了」
代替話不多的出葉,米利安中隊長開始說明連隊發生的事。
從The Eye『活著』回來的只有本大爺一個人,吼著要去帶回羅倫斯的里斯,結果最後也沒有回來的樣子。
「由於E中隊全滅,連隊組織整體重新編制。你們在治療結束之後,應該也會被分配到某個部隊吧」
之前作戰中受了重傷的E4小隊的人也是,要歸隊還需要一些時間的樣子。
「這,樣啊」
E中隊是以高實力及擁有所謂『聖騎士之力』的人集結的中隊。是為了要讓The Eye作戰成功而特別組成的部隊。
也就是說連隊全體對E中隊的期待也很大,雖然本大爺不懂那些困難的計算,但他們說成功率很高什麼的。
我們確實在The Eye中打倒了龍,也已經確保核心了。那是本大爺親眼看到的。到此為止確實是成功了。但是在那之後發生的事,是預料外的。
沒想到會有無法回收核心的異常狀況,以及龍復活後反擊。武裝艦被破壞,本大爺全部都親眼看到了。
「然後,工程師似乎想直接問你The Eye內部的事。當然,你心理輔導結果沒問題的話才會問」
米利安中隊長的表情消失了。不過,應該是站在本大爺的立場幫本大爺考慮過了吧。
本大爺現在大概沒問題了,但是真要本大爺說出來的話,也有可能會受不了。
而且那個啊,本大爺能跟工程師說的內容,可能是連隊史上最慘烈的失敗報告。
「啊……。大概,沒關係」
「不要勉強哦」
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在那之後,本大爺的病房裡,來了一位擔任心理輔導的工程師名叫尤伊。明明是來當本大爺的心理輔導,卻跟其他工程師一樣是沒有感情的傢伙。
心理輔導開始一星期左右,尤伊帶了另一位工程師來。
那位工程師,本大爺記得有見過。
「我記得你是,放射能檢測調查的……」
「沒錯,我現在被派到作戰室當作戰技官」
「喔~」
不知道是去年還是前年,這個名叫希內克的能力調查技官,突然就被配到E中隊。
雖然沒有直接跟本大爺扯上關係,但是運氣不好被這傢伙發現『聖騎士之力』的出葉與羅倫斯,被這傢伙給糾纏。而且還想記錄跟作戰無關的資料,總之對他的印象就是個礙事傢伙。
The Eye攻略作戰開始前,部隊重新編排後就沒見到了。還以為他是回潘德莫尼了。本大爺對他只有,怎麼你還在,的想法而已。
「那麼,告訴我們你在The Eye裡看到的事吧」
「好啦好啦」
「你的證言將跟武裝車內留下的紀錄對照,作為正式的調查報告送到作戰室去。裡面發生了什麼事,盡可能地正確說出來」
「說出來的過程中,如果有嘔吐感、頭痛、身體不舒服的話,馬上向我報告」
被兩位不知道他們把表情忘在哪裡的工程師包圍,本大爺開始說起從The Eye作戰開始,直到回武裝車最後昏倒為止的事。
「直到確保核心為止看起來很順利。但是,平常應該已經輕鬆回收核心的時間過了,核心也沒有回收成功」
「回收班那個時間在做什麼?你有聽到回收班的對話嗎?」
「不知道,那時為了防止龍人把核心奪回去,光是要擊退牠們都來不及了」
說到一半,本大爺的腦袋中,就好像有靄擋住似的,有時會像在重播當時影片一樣的感覺。
「這些就是全部的樣子」
本大爺沒有特別感到難受,就將The Eye內部的事說完了。
「沒有別的了」
「關於這件事就到這次為止。你暫時要讓腦子休息,然後有感到什麼不舒服的話,馬上通知我」
尤伊最後說完這句,就跟希內克一起離開病房了。
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「你們從今天開始,暫時隸屬於研究設施」
在那之後又過了一段時間,本大爺跟出葉、米克、巴西利歐他們殘存下來的原E4小隊一起,一直在乾等重新分隊。
但是,治療結束恢復健康時,來見本大爺的工程師說了奇怪的事。
「啊?你在說什麼?」
「我們又不是工程師,你們搞錯了什麼吧?」
「為了開發後期連隊的能力,要讓你們在研究設施幫忙我們解析你們的能力」
「我們是為了戰鬥才加入連隊的,沒有義務要幫你們!」
血氣方剛的巴西利歐向工程師反抗說道。
「把話聽到最後」
「什麼啦」
「這次的措施還兼了讓傷病者的復健訓練。你們主要的任務是復健訓練,然後再順便協助我們的研究」
聽到復健訓練,我們也只能接受。畢竟我們的治療也才剛結束,要說我們能夠馬上回到連隊的訓練跟作戰的話,應該是不行的。
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出了醫療設施之後的我們,就因此被配屬到研究設施。
但是,雖然第一個月、第二個月都在做能力開發的跟復健訓練。但是漸漸地,工程師強行要我們幫忙奇怪的,像是實驗一樣的事。
「差不多該讓我們回歸部隊了吧!」
巴西利歐開始怒罵工程師。
復健訓練已經完全沒有問題,都可以順利完成了。為了年輕連隊開發能力用的模擬戰,也跟之前一樣可以完成了。身體狀況都已經恢復了。
但是,回到部隊的命令一直沒來。我們的忍耐力已經到極限了。被強迫吃下不明的藥,做那些意義不明的體力測試什麼的,根本跟復健訓練沒有啥關係。
「跟你們這些工程師說不通,讓我跟海姆霍茲中隊長或米利安中隊長談」
比較之下比較冷靜的米克向工程師說道。
「不可以,你們沒有被許可離開這棟建築物的」
「這跟一開始說的不一樣!到底是怎麼回事!」
「你們已經可以完全控制聖騎士之力了,我們不能讓這麼貴重的樣本離開這個設施」
完全搞不懂這些傢伙的主張。工程師們一副就像是,把本大爺們當作實驗動物什麼的樣子。
「開什麼玩笑!本大爺們是人類,不是樣本,別開玩笑了!」
「我們是為了跟渦戰鬥才加入連隊的,不是為了做這種事!」
「所以我才說地上的人都很野蠻。我們明明就盡力不讓你們去死,你們卻還要特地去赴死。快噴射沉靜瓦斯,將這些傢伙關起來」
訓練室裡開始噴進瓦斯,還沒抵抗多久,意識就遠去了。
等本大爺回神時,已經躺在跟醫療設施時一樣的床上。而且還被穿上了拘束衣。
看來工程師完全沒有打算讓本大爺們離開這棟設施。
沒有看到出葉、米克跟巴西利歐。大家應該也是跟本大爺一樣被關在哪裡了。
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不知道到底過了多久。本大爺就過著被拘束著,醒來睡覺醒來睡覺的日子。上廁所都被什麼裝置一概處理掉了,也不能吃東西,營養只靠點滴在補充。
本大爺恍惚地想著,生不如死大概就是指這種狀況吧。
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當時間的感覺也變得曖昧時,本大爺的拘束衣突然被脫掉,並被放出房間了。
房間外看到米爾格倫副隊長、出葉、米克跟巴西利歐。
「迪諾!」
「你們,全都沒事嗎!」
「看來全員到齊了。抱歉,都是我不中用,才害你們遭遇到這種事」
米爾格倫副隊長低頭道歉。
「這不是副隊長的錯啊!你把本大爺從那邊放出來,就已經很感謝你了!」
「沒錯,副隊長」
「這下終於可以回連隊了!」
「……不,你們不能回連隊」
「我們不是已經被解放了嗎?!」
「……要解放你們是有條件的」
「那,本大爺們又要跟工程師,做那些奇怪的實驗嗎!?」
「不,那絕對沒有。你們將直接隸屬於我的部下,暫時要負責執行捕捉濫用聖騎士之力的隊員」
「比被當實驗品好多了,是說有濫用聖騎士之力的人嗎?」
米克說的對,之前從來沒聽過有那種傢伙。
「今後我們會繼續加強隊員,這麼一來,那種擁有惡意之人也多少會出現吧」
「該不會是為了不讓我們出去,才要提出這樣的條件?」
副隊長沉默了。看起來應該還有其他隱情,但是不能說出來。
「我能做的只有這樣了,真的很抱歉」
米爾格倫副隊長一臉痛苦的樣子,持續向我們低頭道歉。
副隊長低著頭繼續說道。
──連隊整體重新組織之後,工程師擁有了更強的權力。
──在他們還在解析『聖騎士之力』的狀況下,本大爺們就算可以解開拘束,也不能離開設施。
──如果離開了設施,就會被工程師再次拘束起來。
──雖然不知道要花多少年,但狀況一定會改善,就可以出去外面。
米爾格倫副隊長向本大爺們這麼說道。
「我知道了,副隊長」
「米克……。抱歉」
「只要忍耐幾年就好,只要不會被那樣拘束起來的話,我無所謂」
「喂……不,我也一樣」
「所以副隊長,請把頭抬起來啊!」
「大家,對不起,真的……」
本大爺們,除了鼓勵一直向本大爺們低頭道歉的副隊長之外,什麼也做不了。
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「─完─」
3381年 「全滅」
ジ・アイから命からがら逃げ帰った俺様は、帰ってきた早々、施設にある医療棟にぶち込まれた。
さしもの俺様もジ・アイでの戦闘でかなりの傷を負い、結節点《ノード》を出た辺りからの記憶も無い。
医療棟にぶち込まれてから一日かそこらで目は覚ましたけれど、結構な重傷だった所為なのか、暫く頭がぼーっとしてた。
周囲も妙に慌しく、マキシマスの情報なんかも入ってこなかった。
目を覚ましてから一週間くらいして、D中隊のミリアン中隊長が治療中のイデリハを伴って俺様に会いに来た。
「マキシマスは助からんかった」
故郷の言葉を出さないようにと普段から無口気味なのに、それに輪を掛けて無口になっていそうなイデリハがやっと一言、それだけを言葉にした。
「そっか……」
俺様とリーズがあいつを発見した時には、既に瀕死の状態だった。
コルベットにあった応急手当用の装備じゃ完全な止血もままならなかった。一度は意識を取り戻したけど、その時はもう呼吸すら怪しくて。
わかってたんだけどなー……。でも、少しだけは意識があったから、もしかしてって希望があったんだけどなー……。
改めてあいつの死を突き付けられて、俺様も俯くしかなかった。
「E中隊は全滅という形で処理されることになった」
イデリハに代わり、ミリアン中隊長が連隊で起きていることを説明し始めた。
ジ・アイから『生きて』帰還できたのは俺様たった一人。ローレンスを連れて戻ると吠えたリーズは、結局帰ってこなかったそうだ。
「E中隊の全滅により、連隊の組織全般も再編される。お前達も治療が終了次第、どこかの部隊に配属してもらうことになるだろう」
前の作戦で重傷を負ったE4小隊の連中も、復帰にはまだ時間が掛かるらしい。
「そう、ですか」
E中隊は実力者や所謂『聖騎士の力』を発現させた連中を集めた、ジ・アイ攻略作戦のために用意された特別な部隊だった。
それだけに連隊全体からの期待も大きかったし、難しい計算はわからないけど、作戦成功率も高かったとかなんとか。
確かにジ・アイで竜を倒し、コアの確保までは完了していた。それは俺様がこの目で見てる。そこまでは確かに成功していた。ただ、それ以降に起きたことが想定外だった。
コアが回収できないという異常事態、竜の復活と反撃。アーセナルキャリアの破壊。それも全部この目で見た。
「それから、エンジニアがジ・アイ内部のことをお前から直接聞きたいそうだ。当然、カウンセリング結果に問題が無ければだが」
ミリアン中隊長の表情は消えている。まあ、俺様の立場に立ったときのことを考えてくれてるんだろう。
俺様も今は何となく大丈夫そうだけど、いざ喋る段階で駄目になる可能性はゼロじゃない。
それにだ、俺様がエンジニアに話す内容は、おそらく連隊の歴史の中でも最も凄惨な失敗の報告だ。
「あー……。多分、大丈夫。です」
「無理はするなよ」
それから俺様の病室に、カウンセリングを担当するユーインっていうエンジニアが来た。カウンセリング担当っていうくせに、他のエンジニアと同じく無感動な感じの奴だけど。
カウンセリングが始まって一週間くらいした頃、ユーインがもう一人エンジニアを連れて来た。
そのエンジニアを、俺様は見たことがあった。
「アンタ確か、モニタリング調査の……」
「そうだ。今は作戦技官として作戦室に配属されている」
「ふーん」
去年だか一昨年だかに急遽E中隊に配属された、能力調査技官のヒネクって奴だ。
俺様とはあんまり関わりが無かったけど、運悪くこいつの調査中に『聖騎士の力』が発現したイデリハとローレンスはしつこく付き纏わられてた。それに、作戦中でも構わずデータとやらを取りたがったので、とにかく邪魔だった印象がある。
ジ・アイ攻略作戦の直前に行った部隊再編の時から姿を見せなくなったんで、てっきりパンデモニウムに帰ったと思ってたけど、何だまだいたのかって感想しかない。
「では、ジ・アイでお前が見たものを聞かせてもらう」
「はいはい」
「お前の証言はコルベット内に残されていた記録と照合され、正式な調査報告として作戦室に送られる。何が起きたか、できるだけ正確に話すように」
「話す過程で嘔吐感や頭痛など、身体に不具合が起きたらすぐに報告するように」
どっかに表情を置き忘れてきたようなエンジニア二人に囲まれ、俺様はジ・アイ攻略作戦の開始からコルベット内部で気絶するまでに起きた出来事を話した。
「コアの確保までは順調に見えた。けど、いつもなら余裕で回収が終わるくらいの時間が経っても、コアが回収できなかった」
「回収班はその時何を? 回収班の会話などは聞いていたか?」
「わかんねえ。コアを取り返そうとする竜人を退けるので手一杯だったから」
話してる最中は頭の中に靄が掛かったみたいになってて、時々映像のようなものが再生されてる感覚だった。
「これで全てのようだな」
特に気分が悪くなったりすることもなく、俺様はジ・アイ内部でのことを話し終えた。
「もう何もないぜ」
「この件について聞き取りを行うことは今回で終わりだ。暫く脳を休めるように。また、何か心身に不調を感じた場合はすぐに知らせろ」
ユーインは最後にそう言って、ヒネクと共に病室を出て行った。
「お前達は今日から一時的に研究棟の所属となる」
それから更に暫くの時間が過ぎて、俺様はイデリハ、ミック、バシリオの生き残った元E4小隊の面々と一緒に、再配属を待つばかりとなっていた。
だけど、治療が終わって晴れて復帰となった時、やって来たエンジニアが妙なことを口にした。
「はあ? 何言ってんだ?」
「俺達はエンジニアじゃない。何かの間違いでは?」
「お前達には後進の能力開発のため、研究棟で能力解析に協力してもらうこととなった」
「俺達は戦うために連隊に入ったんだ。研究だか何だかに協力する筋合いはねえぞ!」
血気盛んなバシリオがエンジニアに食って掛かる。
「話は最後まで聞け」
「何があるってんだよ」
「今回の措置は傷病者の復帰訓練プログラムを兼ねている。主任務は復帰訓練だ。その傍らで我々の研究に協力してもらう」
復帰訓練という言葉には、納得するしかなかった。俺様達は治療を終えたばかりの病み上がりだ。そんな連中が連隊の訓練や作戦にすぐ復帰できるかと言われれば、まあ無いわな。
医療棟をやっと出られた俺様達は、そんな事情で研究棟に一時配属となった。
だが、一ヶ月、二ヶ月と能力開発への協力と復帰訓練を重ねていくが、段々とエンジニアは俺様達に、協力というのも怪しい、実験みたいなことを強要し始めた。
「いい加減、俺達を部隊へ復帰させろ!」
バシリオがエンジニアに怒声を浴びせた。
復帰訓練のプログラムは、もう何も問題なくこなせる。若い連中を相手にする能力開発のための模擬戦も、以前と変わらずに戦える。調子は取り戻していた。
だけど、一向に部隊への復帰命令が下らない。もう俺様達も我慢の限界だった。訳のわからない薬の投与や、意味不明の体力測定なんかをやるのは復帰訓練でも何でもない。
「エンジニアじゃ話にならない。ヘルムホルツ中隊長やミリアン中隊長へ取次ぎをお願いします」
比較的冷静なミックがエンジニアに告げる。
「それはできない。お前達を施設から出すことは許可されていない」
「話が違う! どうなってるんだ!」
「お前達は聖騎士の力を完全に扱えるのだ。そんな貴重なサンプルを施設から出すことはできない」
奴らの主張はもうワケがわからなかった。エンジニア共は俺様達を実験動物か何かとして扱っているような口ぶりだ。
「ふざけんな! 俺様達は人間だ、サンプルだのなんだの、冗談じゃねえぞ!」
「オイ達は渦と戦うために連隊に入った。こげんことをするためじゃなか!」
「これだから地上の者は野蛮だというのだ。貴様らが死なぬよう尽力しているというのに、わざわざ死地に赴こうとするとはな。沈静ガスを噴射しろ。この者らを拘束する」
訓練室に煙が吹き上がった。抵抗する間もなく、意識が遠のいていった。
気が付くと、俺様は医療棟の病室にいた頃と同じようにベッドに寝かされていた。しかもご丁寧に拘束衣を着せられて。
エンジニアは俺様達を施設の外へ出す気は微塵も無いらしい。
イデリハもミックもバシリオの姿もない。でも、皆同じようにどっかに閉じ込められてるんだろうなと思った。
どれ位そうしていたのか。俺様は拘束されたまま寝て起きるを繰り返していた。トイレは何かよくわかんねー装置が全部処理した。食事を取ることはできず、点滴で栄養補充されるだけだ。
生かさず殺さずってのはこういうことを言うんだろうなって、ぼんやりと思った。
時間の感覚も曖昧になってきた頃、突然俺様は拘束衣を脱がされ、部屋から出された。
部屋の外にはミルグラム副長とイデリハ、ミック、バシリオがいた。
「ディノ!」
「お前ら、無事だったか!」
「これで全員だな。すまない、私が不甲斐ないせいで、お前達をこのような目に遭わせてしまって」
ミルグラム副長が頭を下げた。
「副長が謝ることないッスよ! 俺様をあそこから出してくれただけで感謝ですって!」
「そうです、副長」
「これでやっと連隊に復帰できます!」
「……いや、それはそうもいかないのだ」
「もう俺達は解放されましたよね?!」
「……解放は条件付きなのだ」
「じゃあ、俺様達はまた、エンジニアの変な実験に付き合わされるってことですか!?」
「いや、決してそれはない。お前達は私の直下に入ってもらい、聖騎士の能力を悪用する隊員の捕縛任務に当たってもらう」
「実験体にされるよりはマシですが、そんな奴らがいるのですか?」
ミックの言葉も尤もだ。そんな奴らがいたなんて、今まで聞いたことがない。
「今後も引き続き隊員は増強される。となれば、そういった悪意ある者が少なからず出ることは見越しておかねばならん」
「もしかして、俺達を施設から出さずに、という条件を満たすために?」
副長は無言だった。他にも何か事情があるように見えたけど、それを言うことはなかった。
「私ができるのはここまでだった、本当にすまない」
ミルグラム副長は沈痛な面持ちのまま、俺様達に頭を下げ続ける。
副長は頭を下げたまま話を続ける。
——連隊の再編により、エンジニアがより強い権力を振り翳すようになったこと。
——『聖騎士の力』が解析中であるとされている今の状況では、俺様達を拘束から解放することはできても、施設の外に出すことはできないということ。
——もし、施設の外へ出ようとしたりした場合、エンジニアによって再び拘束されてしまうであろうということ。
——何年掛かるかはわからないが、必ず状況を改善し、外へ出られるようにする。
といったことが語られた。
「わかりました、副長」
「ミック……。すまない」
「何年か我慢すればいいなら、あんな風に拘束されないなら、俺はそれで構いません」
「オイ……いや、俺も同じです」
「だから副長、頭を上げてくださいよ!」
「みんな。すまない。本当に……」
俺様達は、頭を下げ続けるミルグラム副長を励ますことしかできなかった。
「—了—」
ジ・アイから命からがら逃げ帰った俺様は、帰ってきた早々、施設にある医療棟にぶち込まれた。
さしもの俺様もジ・アイでの戦闘でかなりの傷を負い、結節点《ノード》を出た辺りからの記憶も無い。
医療棟にぶち込まれてから一日かそこらで目は覚ましたけれど、結構な重傷だった所為なのか、暫く頭がぼーっとしてた。
周囲も妙に慌しく、マキシマスの情報なんかも入ってこなかった。
目を覚ましてから一週間くらいして、D中隊のミリアン中隊長が治療中のイデリハを伴って俺様に会いに来た。
「マキシマスは助からんかった」
故郷の言葉を出さないようにと普段から無口気味なのに、それに輪を掛けて無口になっていそうなイデリハがやっと一言、それだけを言葉にした。
「そっか……」
俺様とリーズがあいつを発見した時には、既に瀕死の状態だった。
コルベットにあった応急手当用の装備じゃ完全な止血もままならなかった。一度は意識を取り戻したけど、その時はもう呼吸すら怪しくて。
わかってたんだけどなー……。でも、少しだけは意識があったから、もしかしてって希望があったんだけどなー……。
改めてあいつの死を突き付けられて、俺様も俯くしかなかった。
「E中隊は全滅という形で処理されることになった」
イデリハに代わり、ミリアン中隊長が連隊で起きていることを説明し始めた。
ジ・アイから『生きて』帰還できたのは俺様たった一人。ローレンスを連れて戻ると吠えたリーズは、結局帰ってこなかったそうだ。
「E中隊の全滅により、連隊の組織全般も再編される。お前達も治療が終了次第、どこかの部隊に配属してもらうことになるだろう」
前の作戦で重傷を負ったE4小隊の連中も、復帰にはまだ時間が掛かるらしい。
「そう、ですか」
E中隊は実力者や所謂『聖騎士の力』を発現させた連中を集めた、ジ・アイ攻略作戦のために用意された特別な部隊だった。
それだけに連隊全体からの期待も大きかったし、難しい計算はわからないけど、作戦成功率も高かったとかなんとか。
確かにジ・アイで竜を倒し、コアの確保までは完了していた。それは俺様がこの目で見てる。そこまでは確かに成功していた。ただ、それ以降に起きたことが想定外だった。
コアが回収できないという異常事態、竜の復活と反撃。アーセナルキャリアの破壊。それも全部この目で見た。
「それから、エンジニアがジ・アイ内部のことをお前から直接聞きたいそうだ。当然、カウンセリング結果に問題が無ければだが」
ミリアン中隊長の表情は消えている。まあ、俺様の立場に立ったときのことを考えてくれてるんだろう。
俺様も今は何となく大丈夫そうだけど、いざ喋る段階で駄目になる可能性はゼロじゃない。
それにだ、俺様がエンジニアに話す内容は、おそらく連隊の歴史の中でも最も凄惨な失敗の報告だ。
「あー……。多分、大丈夫。です」
「無理はするなよ」
それから俺様の病室に、カウンセリングを担当するユーインっていうエンジニアが来た。カウンセリング担当っていうくせに、他のエンジニアと同じく無感動な感じの奴だけど。
カウンセリングが始まって一週間くらいした頃、ユーインがもう一人エンジニアを連れて来た。
そのエンジニアを、俺様は見たことがあった。
「アンタ確か、モニタリング調査の……」
「そうだ。今は作戦技官として作戦室に配属されている」
「ふーん」
去年だか一昨年だかに急遽E中隊に配属された、能力調査技官のヒネクって奴だ。
俺様とはあんまり関わりが無かったけど、運悪くこいつの調査中に『聖騎士の力』が発現したイデリハとローレンスはしつこく付き纏わられてた。それに、作戦中でも構わずデータとやらを取りたがったので、とにかく邪魔だった印象がある。
ジ・アイ攻略作戦の直前に行った部隊再編の時から姿を見せなくなったんで、てっきりパンデモニウムに帰ったと思ってたけど、何だまだいたのかって感想しかない。
「では、ジ・アイでお前が見たものを聞かせてもらう」
「はいはい」
「お前の証言はコルベット内に残されていた記録と照合され、正式な調査報告として作戦室に送られる。何が起きたか、できるだけ正確に話すように」
「話す過程で嘔吐感や頭痛など、身体に不具合が起きたらすぐに報告するように」
どっかに表情を置き忘れてきたようなエンジニア二人に囲まれ、俺様はジ・アイ攻略作戦の開始からコルベット内部で気絶するまでに起きた出来事を話した。
「コアの確保までは順調に見えた。けど、いつもなら余裕で回収が終わるくらいの時間が経っても、コアが回収できなかった」
「回収班はその時何を? 回収班の会話などは聞いていたか?」
「わかんねえ。コアを取り返そうとする竜人を退けるので手一杯だったから」
話してる最中は頭の中に靄が掛かったみたいになってて、時々映像のようなものが再生されてる感覚だった。
「これで全てのようだな」
特に気分が悪くなったりすることもなく、俺様はジ・アイ内部でのことを話し終えた。
「もう何もないぜ」
「この件について聞き取りを行うことは今回で終わりだ。暫く脳を休めるように。また、何か心身に不調を感じた場合はすぐに知らせろ」
ユーインは最後にそう言って、ヒネクと共に病室を出て行った。
「お前達は今日から一時的に研究棟の所属となる」
それから更に暫くの時間が過ぎて、俺様はイデリハ、ミック、バシリオの生き残った元E4小隊の面々と一緒に、再配属を待つばかりとなっていた。
だけど、治療が終わって晴れて復帰となった時、やって来たエンジニアが妙なことを口にした。
「はあ? 何言ってんだ?」
「俺達はエンジニアじゃない。何かの間違いでは?」
「お前達には後進の能力開発のため、研究棟で能力解析に協力してもらうこととなった」
「俺達は戦うために連隊に入ったんだ。研究だか何だかに協力する筋合いはねえぞ!」
血気盛んなバシリオがエンジニアに食って掛かる。
「話は最後まで聞け」
「何があるってんだよ」
「今回の措置は傷病者の復帰訓練プログラムを兼ねている。主任務は復帰訓練だ。その傍らで我々の研究に協力してもらう」
復帰訓練という言葉には、納得するしかなかった。俺様達は治療を終えたばかりの病み上がりだ。そんな連中が連隊の訓練や作戦にすぐ復帰できるかと言われれば、まあ無いわな。
医療棟をやっと出られた俺様達は、そんな事情で研究棟に一時配属となった。
だが、一ヶ月、二ヶ月と能力開発への協力と復帰訓練を重ねていくが、段々とエンジニアは俺様達に、協力というのも怪しい、実験みたいなことを強要し始めた。
「いい加減、俺達を部隊へ復帰させろ!」
バシリオがエンジニアに怒声を浴びせた。
復帰訓練のプログラムは、もう何も問題なくこなせる。若い連中を相手にする能力開発のための模擬戦も、以前と変わらずに戦える。調子は取り戻していた。
だけど、一向に部隊への復帰命令が下らない。もう俺様達も我慢の限界だった。訳のわからない薬の投与や、意味不明の体力測定なんかをやるのは復帰訓練でも何でもない。
「エンジニアじゃ話にならない。ヘルムホルツ中隊長やミリアン中隊長へ取次ぎをお願いします」
比較的冷静なミックがエンジニアに告げる。
「それはできない。お前達を施設から出すことは許可されていない」
「話が違う! どうなってるんだ!」
「お前達は聖騎士の力を完全に扱えるのだ。そんな貴重なサンプルを施設から出すことはできない」
奴らの主張はもうワケがわからなかった。エンジニア共は俺様達を実験動物か何かとして扱っているような口ぶりだ。
「ふざけんな! 俺様達は人間だ、サンプルだのなんだの、冗談じゃねえぞ!」
「オイ達は渦と戦うために連隊に入った。こげんことをするためじゃなか!」
「これだから地上の者は野蛮だというのだ。貴様らが死なぬよう尽力しているというのに、わざわざ死地に赴こうとするとはな。沈静ガスを噴射しろ。この者らを拘束する」
訓練室に煙が吹き上がった。抵抗する間もなく、意識が遠のいていった。
気が付くと、俺様は医療棟の病室にいた頃と同じようにベッドに寝かされていた。しかもご丁寧に拘束衣を着せられて。
エンジニアは俺様達を施設の外へ出す気は微塵も無いらしい。
イデリハもミックもバシリオの姿もない。でも、皆同じようにどっかに閉じ込められてるんだろうなと思った。
どれ位そうしていたのか。俺様は拘束されたまま寝て起きるを繰り返していた。トイレは何かよくわかんねー装置が全部処理した。食事を取ることはできず、点滴で栄養補充されるだけだ。
生かさず殺さずってのはこういうことを言うんだろうなって、ぼんやりと思った。
時間の感覚も曖昧になってきた頃、突然俺様は拘束衣を脱がされ、部屋から出された。
部屋の外にはミルグラム副長とイデリハ、ミック、バシリオがいた。
「ディノ!」
「お前ら、無事だったか!」
「これで全員だな。すまない、私が不甲斐ないせいで、お前達をこのような目に遭わせてしまって」
ミルグラム副長が頭を下げた。
「副長が謝ることないッスよ! 俺様をあそこから出してくれただけで感謝ですって!」
「そうです、副長」
「これでやっと連隊に復帰できます!」
「……いや、それはそうもいかないのだ」
「もう俺達は解放されましたよね?!」
「……解放は条件付きなのだ」
「じゃあ、俺様達はまた、エンジニアの変な実験に付き合わされるってことですか!?」
「いや、決してそれはない。お前達は私の直下に入ってもらい、聖騎士の能力を悪用する隊員の捕縛任務に当たってもらう」
「実験体にされるよりはマシですが、そんな奴らがいるのですか?」
ミックの言葉も尤もだ。そんな奴らがいたなんて、今まで聞いたことがない。
「今後も引き続き隊員は増強される。となれば、そういった悪意ある者が少なからず出ることは見越しておかねばならん」
「もしかして、俺達を施設から出さずに、という条件を満たすために?」
副長は無言だった。他にも何か事情があるように見えたけど、それを言うことはなかった。
「私ができるのはここまでだった、本当にすまない」
ミルグラム副長は沈痛な面持ちのまま、俺様達に頭を下げ続ける。
副長は頭を下げたまま話を続ける。
——連隊の再編により、エンジニアがより強い権力を振り翳すようになったこと。
——『聖騎士の力』が解析中であるとされている今の状況では、俺様達を拘束から解放することはできても、施設の外に出すことはできないということ。
——もし、施設の外へ出ようとしたりした場合、エンジニアによって再び拘束されてしまうであろうということ。
——何年掛かるかはわからないが、必ず状況を改善し、外へ出られるようにする。
といったことが語られた。
「わかりました、副長」
「ミック……。すまない」
「何年か我慢すればいいなら、あんな風に拘束されないなら、俺はそれで構いません」
「オイ……いや、俺も同じです」
「だから副長、頭を上げてくださいよ!」
「みんな。すまない。本当に……」
俺様達は、頭を下げ続けるミルグラム副長を励ますことしかできなかった。
「—了—」