「還沒來嗎?」
柯布開始煩燥了起來。已經受夠了這個交易指定地點的垃圾收集場惡臭。車子旁有二位負責護衛的年輕人站著。
「看來他們遲到了」
在駕駛座的男子回答道。
組織看上了買賣流行藥物的生意。然後終於跟大廠供應商談好了交易,柯布被選為初次交易的負責人。
車子的聲音與車頭燈的光線往這裡靠近。從那輛車下來了四、五位男子。因為燈的逆光看不清楚對方的樣子。
喀嗄,這種具有特徵的聲音在垃圾收集場響了起來。是槍上膛的聲音。柯布馬上大喊。
「快開車!這是陷阱!」
但在下一個瞬間,對方的子彈伴隨著下冰雹般的聲音往車子射去。柯布立刻趴下。
子彈掃射了整個車內,駕駛全身血淋淋。站在車旁的二個手下在反擊前就已經被射成了蜂窩。柯布在碎片不斷掉落的車內打開了另一邊的車門,匍匐移動到車外。一邊以車體當作盾牌,一邊從胸口的槍套拔出槍。
看到眼前沒有人在動之後,敵人停止了射擊。慢慢地朝這邊靠近。柯布從車底看著對手的行動。敵人有五個人。靜靜地等待對方靠近車子。等到十分接近時,柯布就從車底射穿了對方的腳。以三發子彈射穿了二個人的腳,當場倒地不起。剩餘三人的其中一人馬上靠了過來。柯布迅速地起身射穿了男子的頭部。另外的二人則衝進旁邊堆滿了雜物的地方藏身。
柯布也離開車身移動到敵人躲藏的雜物堆對面的一個小屋陰影處躲著。
柯布祈禱希望對方可以就這樣放棄離開。二個伙伴放置不管的話會失血過多而死亡。如果可以帶著那兩人逃走就好了。錢就給他們了,僅限這次。
柯布蹲在小屋的旁邊觀察著敵人的情況。一片沉默。
突然感受到側腹部一陣疼痛。看來是被子彈擦到了。襯衫被血染溼的感覺令人厭惡。
柯布希望能快點把這事解決掉。雖然覺得自己很丟臉,但絕對不想死在這種地方。腦中浮現出,自己的屍體不被任何人發現就那樣腐爛而去的畫面。
聽到關車門的聲音。剛剛藏起來的男子們坐上了車。啟動引擎,發出了輪胎輾過砂礫的聲音。
柯布本來有一瞬間鬆了一口氣,但馬上發現還不是放鬆的時候。車子加速度朝柯布藏身的小屋衝過來。才站起來的柯布和小屋一起被撞飛。掉落到小屋對面的垃圾堆裡。
從頭到腳浸到了一處混雜了汙水與生活垃圾的地方。雖然勉強還有一點意識,但槍卻不見了。車上的男子為了確認生死下車走了過來。大概認為已經把我殺死了。沒有什麼大動作。柯布摸索著有沒有什麼可以當作武器的東西。偶然地,發現一把奇特形狀的生鏽刀子。雖然不認為這把已經生鏽到通紅的刀子能切什麼,但總比什麼都沒有來得強。
敵方有一個人在車子旁舉著燈,另一個人依照指示在找自己。還沒有被找到。
絕對要把他們給殺了。
柯布心中這種鬥志急速湧上。垃圾的惡臭與生鏽的匕首,似乎點燃了自己心中的憤怒。
男子與光線慢慢地朝自己的方向靠近。心跳快了起來。想快點把這傢伙殺了。因這個非殺不可的想法頭部開始熱了起來。
然後就在熱度達到頂點的時候,柯布像野獸般撲向敵人。
一瞬間就撲進敵人的胸前,將生鏽的匕首刺向敵人腹部。然後一口氣將腹部扯裂。剛才還舉著燈的最後一位敵人往這裡開槍。柯布將腹部已被扯裂的男子背在身上當作人肉盾牌。男子的血與內臟伴隨著熱氣,淋在柯布的頭上。
最後的敵人在擊發完最後一發子彈後就上車離去了。
柯布放下被當作人肉盾牌的男子後爬出垃圾堆。起身撥了撥被汙水與血弄濕的頭,將亂掉的頭髮往後順了順。手上還握著那把生鏽的匕首。
把生鏽的匕首夾在皮帶間後,從胸口的口袋掏出了香煙。所幸盒子裡的香煙沒有濕掉。點了根煙,朝自己的車子方向走去。
車子旁邊有二具敵人的屍體。一個是頭部中被擊中的男子。另一個是腿部被擊中失血過多致死的男子。
而另一位小腿被擊中的男子正打算逃走,在地上爬行掙扎著。
柯布站到那個男子的正後方。男子發現到了柯布,用著不靈活的動作打算取下掛在肩上的短機關槍。
柯布騎到男子的身上將短機關槍拿走,接著從斜後方用手臂將脖子勒緊。
「派對才剛開始呢。冷靜一點,抽根菸吧」
一邊說著就把左手拿著的香煙往男子的眼球燙下去。眼瞼冒出了煙,男子淒厲地叫喊著。
「不要給我大叫」
放開勒住脖子的手臂後,接著毆打男子的臉。被打陷在地面的男子小聲地呻吟著。
「好了,是誰指使你的說出來給我聽聽看」
「……我什麼都不知道。我只是最下層的人。求求你,別殺我」
柯布拔出插在皮帶裡的那把生鏽刀子。
「乖乖地從實招來的話,可以留給你一隻手臂,不對,至少可以留你一根手指哦」
說完就捉起男子的一邊耳朵,像切片般用生鏽的刀子給切了下來。
|
「辛苦了吧。你已經沒事了嗎?」
卡邁因站起來擁抱迎接柯布。場所是在組織所管理的酒吧的事務所。
「嗯,只是把腹部裡的碎片拿出來而已。傷到的地方似乎沒什麼大礙」
雖然遭受襲擊才過了五天,柯布的臉上卻只剩下曾經貼過OK繃的痕跡。
「你變得更有男子氣概了」
卡邁因輕輕拍了拍柯布的臉頰後。二人坐了下來。
「已經知道,是誰指使的了嗎?」
「是花錢從下層雇來的非法移民小混混,追問不到幕後的主使者」
「這樣啊」
「但是,只有Chiara他們那裡有在收容不法移民而已。也許可以從那邊得到一些線索」
「你可要好好地處理這件事。這可是關係到組織的威嚴。你也已經是這邊有頭有臉的人了」
柯布進入組織七年。在年輕這一輩中表現是最出色的,也據說是沒多久就要升為幹部的男人。這次的交易也是由顧問直接指名的。
「我知道」
柯布站起身。
「對了,明天關於新的交易有些事想找你談談,晚上過來接你。沒問題嗎?」
「嗯,沒問題」
約好了晚上的事之後柯布離開了事務所。
|
「我有東西要請你看一下。因為這是個有點大的交易,需要有保證」
柯布在車上這麼說道,將卡邁因帶到了倉庫。
顧問──Consigliere──的克雷曼沙與另一位幹部馬力奧站在那邊。然後倉庫深處,好像有什麼東西蓋著黑布放在那裡。
「馬力奧跟克雷曼沙,怎麼了嗎?」
「卡邁因,讓我來說明吧」
柯布用下巴指示站在黑布旁的部下。
拿下黑布後,是一位兩腳從膝蓋下被切斷,右手腕從手肘下被切斷,全身包著繃帶的男子被綁在椅子上。
「其實這傢伙招出來了。然後事情演變到需要找你來問問了。由顧問來問」
「卡邁因,我聽柯布說了。你這麼做是很糟糕的」
「你在說什麼啊?」
卡邁因用驚訝害怕的表情說道。
「這傢伙說,是你與那個UpStars合作陷害我的」
UpStars是與PrimeOne有些因緣的新興組織。販賣新藥,甚至打算推倒名叫Five的老組織。
部下將繃帶男的口枷拿掉輕輕地撞了他一下後,繃帶男子低聲開始說起。
「……我從首領那邊聽到……從PrimeOne的卡邁因那裡得到收拾掉柯布的許可……」
「真的嗎?要是說謊就殺了你」
柯布大聲地問道。
「是真的!是真的!我就……只知道這些而已了……」
部下將口枷綁了回去。
「兄弟,你是為了錢嗎?」
馬力奧不愉快地問道。為了作見證人叫來了克雷曼沙。
「怎麼可能!為什麼我非得要陷害我最信賴的部下柯布不可。這沒道理啊?」
卡邁因雖然勉強地維持著威嚴,但很明顯焦急了。
「卡邁因,我當上幹部的話會讓你有損失對吧,因為我獨立的話會分割到你的地盤啊」
柯布壓抑住憤怒說道。
「別胡說!我怎麼可能會幹那種像背叛組織的事」
卡邁因額頭上冒出汗。
「你想說賣個人情給UpStars,要是發生什麼事的時候他們就會幫你。畢竟他們出手很闊嘛」
馬力奧說道。
「雖然聽說那邊的錢也有在別的組織流動,沒想到連我們的組織也有」
克雷曼沙向馬力奧說道。
「克雷曼沙,拜託你,我不會做那種蠢事的。你應該知道吧」
卡邁因懇切地說道。
「背叛就要以死來償。你應該知道的」
克雷曼沙警告似地說道。下一個瞬間,柯布拔出刀子逼向卡邁因。
「住,住手!!」
卡邁因的脖子被柯布直直地切開。卡邁因想要保護自己伸出來的手也一起被切斷,掉落在地上。
卡邁因跪下,用失去手指的手想要壓住出血處。發出想要咳嗽卻咳不出來的聲音。
「我把事情好好地處理完了」
柯布在卡邁因耳邊輕聲說道後,就離開卡邁因了。
之後馬力奧拔出槍,射穿了卡邁因的頭。算是兄弟最後的情份。
「給我做出這麼難堪的事……」
說完後,馬力奧用失望的表情離開倉庫了。
柯布指示部下將卡邁因的屍體收拾掉。部下們將卡邁因的屍體拖拉出倉庫。
倉庫裡剩下柯布與克雷曼沙,以及被綁著拷問的襲擊犯。
「做得好,我會推薦你坐上幹部位置的。下周開會時,你就是正式的幹部了」
克雷曼沙說道。
「謝謝您」
「沒想到卡邁因竟然會背叛。以前他可是一位個性還不錯的男人」
「我也認為,卡邁因曾經是個不錯的男人」
「什麼意思?」
克雷曼沙驚訝地回問。
「其實這傢伙招出來的內容中,還有別的」
柯布用下巴指著襲擊犯。
「什麼事?」
「這傢伙所聽到的背叛者,聽說平常是被稱為『顧問』的」
柯布邊說邊抽起菸來。
「什麼……」
克雷曼沙無法隱藏他的動搖。
「知道我要去交易的,只有委託我的你與卡邁因兩人而已」
「為什麼我要收拾掉你不可」
「誰知道,大概是為了錢吧。UpStars非常想殺我。因為在前線跟那些傢伙廝殺的都是我嘛」
柯布慢慢地將香菸的煙吐出來。克雷曼沙沉默著。
「能夠出賣我的只有你了。所以用錢買通你──」
「……你沒有證據」
「需要證據嗎?我就要在這裡把你幹掉了」
克雷曼沙僵硬住了。
「而且,如果你跟這件事沒有關係的話,應該會包庇卡邁因的。只是拷問一個小混混讓他吐實,就將一個有功績的幹部收拾掉,一般來說沒這麼容易」
「你想要什麼?」
「等我成為幹部之後,照我的話去做。那就可以保住你的命」
「……我知道了」
克雷曼沙遵從了。
「然後我想跟UpStars的傢伙們談談。除了互相廝殺之外應該有其他相處的方式才對」
「知道了,我會安排」
克雷曼沙像逃走般地離開了倉庫。
|
柯布站在被綁住的襲擊犯後面,倉庫裡只剩下他們兩個人。
「照約定,你都吐實了,所以我不會殺你」
用刀子將把身體綁在椅子上的繩子切斷了。然後粗魯地將男子踢倒在地。失去雙腳的襲擊犯在地上掙扎著。
「但是,我不會救你。我怎麼可能會幫助將我當作敵人的人呢?」
柯布狠狠地踢了在地上的男子一腳。
說完就將襲擊犯丟在倉庫裡,離開了。
|
「─完─」
3372年 「カポ」
「まだ来ねえのか?」
コッブは苛ついていた。ブツの取引場所に指定されたゴミ集積場の悪臭にうんざりしていた。車の脇には護衛役として二人の若い奴らを立たせている。
「少し遅れているようです」
運転席の男はそう答えた。
組織は流行の薬の取引に目を付けていた。そしてついに大口の供給元と仕事をすることとなり、その最初の取引にコッブを責任者として選んでいた。
車の音とヘッドライトの明かりがこちらに近付いてくる。その車から四、五人の男が降りてきた。ライトの逆光でどんな姿かはわからない。
カシャ、という特徴的な音がゴミ集積場に響いた。銃のボルト操作の音だ。コッブは咄嗟に声を出す。
「出せ! 罠だ!」
しかし次の瞬間、敵の銃弾が霰のような音を立てながら車に降り注いだ。コッブは身を伏せる。
銃弾は車内を駆け巡り、運転手は血達磨になった。脇に立っていた二人の子分は反撃する前に蜂の巣にされた。コッブは破片が降り注ぐ中で反対側のドアを開け、這うように車の外に出た。車自体を盾にしながら、胸のホルスターから銃を抜いた。
誰も動く者がいなくなると、敵は撃つのを止めた。ゆっくりと歩きながらこちらに近付いてくる。コッブは車体の下から相手の動きを見ていた。敵の数は五人。車に近付いてくるのをじっと待った。十分に引き付けた後、コッブは車体の下から相手の足を撃ち抜いた。三発で二人の足が撃ち抜かれ、その場に倒れ込んだ。残り三人の内の一人が一気に距離を詰めてくる。コッブは素早く立ち上がってその男の頭を撃ち抜いた。あとの二人は脇のガラクタが積まれている場所に走って身を隠した。
コッブも車から離れ、敵が隠れたガラクタ置き場の反対にある小屋の影に身を潜めた。
できればこれで相手が引き下がってくれることをコッブは祈っていた。放っておけば失血死するであろう仲間が二人いる。そいつらを連れて逃げてくれればいい。金だってくれてやる。今回だけは。
コッブは小屋の脇にしゃがんだ状態で敵の様子を窺っていた。沈黙が続く。
ふと脇腹に鈍痛が走る。どうやら弾が掠ったらしい。シャツが血で濡れて嫌な感触がある。
早く終わってくれと、コッブは願っていた。我ながら情けない気分だったが、こんなところで死ぬのだけは御免だった。この腐ったゴミ集積場で誰にも知られずに朽ちる自分の死体。そんなイメージが浮かぶ。
車の扉が閉まる音がした。隠れていた男達が乗り込んだのだ。エンジンが吹かされ、砂利を踏むタイヤの音が響く。
一瞬ほっとしたコッブだったが、すぐにその安心は誤りだと気付いた。車はスピードを上げてコッブの隠れていた小屋に突進してきた。立ち上がったコッブだったが、小屋ごと撥ね飛ばされた。そして小屋の反対側のゴミ溜めに落ちた。
汚水と生活ゴミの混じった最悪の場所に頭から浸かっていた。辛うじて意識はあったが、銃が手元から無くなっていた。車から降りた男が自分の生死を確かめるために下りてくる。よほど俺を殺したいらしい。大きく動く訳にはいかなかった。コッブは何か武器になるものはないか探した。偶然、錆びた奇妙な形のナイフがあった。真っ赤に錆びたそれは何かを切ることができるとは思えなかったが、何も無いよりはましだった。
敵の一人が車の隣でライトをかざし、もう一人がその指示に従って自分を探している。まだ自分は見つかっていない。
絶対にあいつらを殺してやる。
そんな闘志が急激にコッブの中に湧いてきた。ゴミの匂いと錆びたナイフが、自分の中の根源的な怒りに火を点けたようだった。
男と光がゆっくりと自分の方に近付いてくる。心臓の鼓動が早くなる。早くこいつを殺したい。殺さなければという思いで頭が熱くなった。
そしてその熱さが頂点に達した時、獣のようにコッブは敵に飛び掛かった。
一瞬で相手の胸元に飛び込み、腹に錆びたナイフを突き立てた。そして一気に腹を引き裂く。ライトを持った最後の敵が銃を撃ってくる。コッブは腹を引き裂いた男を背負うようにして盾にした。男の血と内臓が湯気を立て、コッブの頭に降り注いだ。
最後の敵は銃を撃ち尽くすと車に乗り、去って行った。
コッブは盾にした男を下ろすと、ゴミ溜めから這い上がった。立ち上がると汚水に濡れた血みどろの頭を掻き上げ、乱れた髪を後ろに撫でつけた。片手にはまだ錆びたナイフがあった。
錆びたナイフをベルトに挟むと、胸ポケットからタバコを出した。幸いケースに入ったタバコは無事だった。そして火を点けると、自分の車に向かった。
車の傍に二つの敵の死体があった。一人は頭を撃たれた男。もう一人は腿を撃たれて失血死した男。
そしてもう一人、脛を撃たれた男が這いずりながら逃げようと藻掻いていた。
コッブはその男の真後ろに立った。コッブに気づいた男は、肩にかけた短機関銃をおぼつかない手つきで構えようとする。
コッブは男に乗りかかるようにして短機関銃を取り上げた。そして斜め後ろから首に手を回して締め上げる。
「パーティは始まったばかりだぜ。 落ち着いて一服しろよ」
そう言って左手に持ったタバコを男の眼球に押し当てた。瞼から煙が上がり、男は甲高い叫び声をあげる。
「ぎゃあぎゃあと喚くんじゃねえ」
首を締め上げていた腕を離すと、今度は男の顔を殴った。地面に叩きつけられた男は小さく呻いた。
「さあ、誰の差し金か聞かせてもらおうか」
「……何も知らねえ。 俺はしがねえ下っ端さ。 頼む、殺さないでくれ」
コッブはベルトに差していた錆びたナイフを抜いた。
「上手く喋るなら、腕の一本、いや、指の一本ぐらいは残してやってもいいぜ」
そう言うと男の片耳を掴み、千切るように錆びたナイフで切り取った。
「大変だったな。 もう大丈夫なのか?」
カーマインは立ち上がり、抱擁でコッブを迎えた。場所は組織が管理している酒場の事務所だ。
「ええ、腹の破片を出してもらっただけで。 当たり所が良かったらしい」
襲撃から五日しか経っていなかったが、顔に貼られた絆創膏ぐらいしか痕は残っていない。
「男前が増したな」
コッブの頬をカーマインは軽く叩いた。二人は席に着く。
「誰が手引きをしたのか、わかったのか?」
「金で雇われた下層からの不法移民のチンピラで、バックは追えませんでした」
「そうか」
「ですが、いま不法移民を扱ってるのはキアラの所だけです。あたりをつければ何か手掛かりを掴めるかもしれません」
「しっかりと方を付けろ。 組織の威厳に関わる。 お前も、もうここらへんじゃ顔役なんだ」
コッブが組織に入って七年。若い連中の中では一番の稼ぎ頭で、幹部になるのも間近だと噂される男になっていた。今回の取引も相談役から直々の指名があって行われたものだった。
「わかってます」
コッブは席を立った。
「そうだ。明日なんですが、新しい取引について相談したいので、夜ここへ迎えを出します。 平気ですか?」
「ああ、問題無い」
そう約束を取り付けて、コッブは事務所を出た。
「貴方に見せたいものがあるんです。 ちょっと大きな取引で、保証が必要なもので」
コッブは車中でそう語って、カーマインを倉庫に連れてきた。
コンシリエーレ——相談役——のクレメンザともう一人のカポ、マリオが立っていた。そして倉庫の奥には、黒い布が掛けられた何かが置いてあった。
「どうした? マリオ、クレメンザ」
「俺から説明しますよ。カーマイン」
コッブは黒い布の隣に立っていた部下に、顎で指図をする。
布が取り払われると、そこには両足を膝から、右腕を肘から切られた包帯だらけの男が椅子に縛り付けられていた。
「実はコイツが口を割りましてね。それでちょっと貴方に話を聞こうという流れになりまして。相談役と」
「カーマイン、コッブから話を聞いた。厄介な事だぞ、コレは」
「何を言ってるんだ?」
カーマインは憮然とした表情で言った。
「アンタが例のアップスターズと組んで俺を嵌めた、ってコイツは言ってるんですよ」
アップスターズはプライムワンと因縁のある新興組織だった。新型ドラッグを捌き、ファイヴと呼ばれる古参の組織を切り崩しに掛かっていた。
部下が包帯の男の猿轡を外して軽く小突くと、包帯の男はくぐもった声で喋り始めた。
「……俺はリーダーの口から……プライムワンのカーマインからコッブを始末する許可を得た……って聞いた」
「本当か? 嘘だったら殺すぞ」
コッブは大声で聞く。
「本当だ! 本当なんだ! これだけだ……俺が知っているのは……」
部下は猿轡を戻した。
「金か? 兄弟」
呆れた調子でマリオが言った。見届け人としてクレメンザが呼び出していた。
「馬鹿な! 何で俺が最も信頼している部下のコッブを嵌めなきゃいけねえんだ。 道理が通らねえだろ?」
カーマインは威厳を保とうとしたが、焦りは明らかだった。
「俺が幹部になれば割を食うのはあんただろ、カーマイン。独立してシマを分けてもらう相手はアンタなんだから」
コッブは怒りを抑えた調子で言った。
「馬鹿を言うな! そんなことで組織を裏切る真似などするか」
カーマインの額には汗が浮かんでいる。
「アップスターズに恩を売っておけば、いざという時に助かるって訳だ。あいつらは随分と羽振りがいいらしいな」
マリオが言う。
「他の組織でも金で転んだのがいると聞いてるが、まさか俺達の組織から出るとはな」
クレメンザはマリオに言った。
「クレメンザ、頼む、俺はこんな馬鹿なことはしない。わかってるだろ」
懇願するような調子でカーマインは言った。
「裏切りは死でしか償えん。知っている筈だ」
クレメンザは諭すように言った。次の瞬間、コッブはナイフを抜いてカーマインに迫った。
「や、やめろ!!」
カーマインの首筋をコッブは真っ直ぐに引き裂いた。思わず顔を庇おうとして出した手の指が一緒に切られ、床に落ちた。
カーマインは跪き、溢れる血を指の無くなった手で抑えた。ゴボゴボと声にならない声を発している。
「方は付けさせてもらいましたよ」
そう耳元で呟くと、コッブはカーマインから離れた。
続いてマリオが銃を抜き、カーマインの頭を吹き飛ばした。兄弟分への情けだった。
「みっともねえ真似しやがって……」
そう言って、マリオは憮然とした表情で倉庫から去っていた。
コッブは部下にカーマインの死体を始末するよう指示した。部下達はカーマインの死体を引き摺って倉庫を出て行った。
倉庫にはコッブとクレメンザ、縛られ拷問された襲撃者が残された。
「よくやった。カポの座は俺から推薦しよう。 来週の会合で、お前は正式な幹部だ」
クレメンザは言った。
「ありがとうございます」
「カーマインが裏切るとは意外だった。昔気質のいい男だったんだがな」
「カーマインはいい男でしたよ。 俺もそう思います」
「どういう意味だ?」
クレメンザは訝しんだ様子で聞き返した。
「実はコイツが話した内容には、もう一つ別のものがありましてね」
顎で襲撃者を指す。
「どんな話だ?」
「コイツが聞いたという裏切り者なんですが、普段は『相談役』って呼ばれてるそうです」
コッブは話ながらタバコを出して吸い始めた。
「何だと……」
クレメンザは動揺を隠さなかった。
「俺の取引を知っていたのは、依頼してきたあんたと上役のカーマインの二人だけだ」
「何でお前を俺が始末しなきゃならない」
「さあ、金でしょうかね。 アップスターズは俺を殺したがってる。 奴らと前線で派手にやり合ってるのは俺ですからね」
吸ったタバコの煙をゆっくりと吐いた。クレメンザは黙っている。
「俺を売ることができるのはアンタだ。 そのアンタを金で抱き込めて——」
「……証拠は無い」
「要りますかね? 俺がアンタをここでやるのに」
クレメンザは固まった。
「それに、アンタがこの件に無関係ならカーマインを庇った筈だ。 拷問されたチンピラの自白一つで功績のあるカポを始末する、普通そうはいかない」
「何が望みだ」
「俺がカポになった後は、俺のいいように動いて欲しい。そうすれば命の保証はしましょう」
「……よかろう」
クレメンザは従った。
「それと、アップスターズの連中と話がしたい。 殺し合い以外にもやり方がある筈だ」
「わかった。取り次ごう」
クレメンザは逃げるように倉庫を後にした。
コッブは縛られた襲撃者の後ろに立った。もう倉庫には二人以外誰もいない。
「さて、約束通りに喋ってくれたようだから、お前は殺さない」
ナイフで身体と椅子を結びつけている縄を切った。そして乱暴に男を蹴り倒した。両足を失った襲撃者はもぞもぞと床で藻掻いた。
「だが、助けたりはしねえ。 俺を的にかけたヤツを助ける訳がねえだろ?」
床にのたうつ男を思い切り蹴った。
そして倉庫に襲撃者を置き去りにして、コッブは去った。
「—了—」
「まだ来ねえのか?」
コッブは苛ついていた。ブツの取引場所に指定されたゴミ集積場の悪臭にうんざりしていた。車の脇には護衛役として二人の若い奴らを立たせている。
「少し遅れているようです」
運転席の男はそう答えた。
組織は流行の薬の取引に目を付けていた。そしてついに大口の供給元と仕事をすることとなり、その最初の取引にコッブを責任者として選んでいた。
車の音とヘッドライトの明かりがこちらに近付いてくる。その車から四、五人の男が降りてきた。ライトの逆光でどんな姿かはわからない。
カシャ、という特徴的な音がゴミ集積場に響いた。銃のボルト操作の音だ。コッブは咄嗟に声を出す。
「出せ! 罠だ!」
しかし次の瞬間、敵の銃弾が霰のような音を立てながら車に降り注いだ。コッブは身を伏せる。
銃弾は車内を駆け巡り、運転手は血達磨になった。脇に立っていた二人の子分は反撃する前に蜂の巣にされた。コッブは破片が降り注ぐ中で反対側のドアを開け、這うように車の外に出た。車自体を盾にしながら、胸のホルスターから銃を抜いた。
誰も動く者がいなくなると、敵は撃つのを止めた。ゆっくりと歩きながらこちらに近付いてくる。コッブは車体の下から相手の動きを見ていた。敵の数は五人。車に近付いてくるのをじっと待った。十分に引き付けた後、コッブは車体の下から相手の足を撃ち抜いた。三発で二人の足が撃ち抜かれ、その場に倒れ込んだ。残り三人の内の一人が一気に距離を詰めてくる。コッブは素早く立ち上がってその男の頭を撃ち抜いた。あとの二人は脇のガラクタが積まれている場所に走って身を隠した。
コッブも車から離れ、敵が隠れたガラクタ置き場の反対にある小屋の影に身を潜めた。
できればこれで相手が引き下がってくれることをコッブは祈っていた。放っておけば失血死するであろう仲間が二人いる。そいつらを連れて逃げてくれればいい。金だってくれてやる。今回だけは。
コッブは小屋の脇にしゃがんだ状態で敵の様子を窺っていた。沈黙が続く。
ふと脇腹に鈍痛が走る。どうやら弾が掠ったらしい。シャツが血で濡れて嫌な感触がある。
早く終わってくれと、コッブは願っていた。我ながら情けない気分だったが、こんなところで死ぬのだけは御免だった。この腐ったゴミ集積場で誰にも知られずに朽ちる自分の死体。そんなイメージが浮かぶ。
車の扉が閉まる音がした。隠れていた男達が乗り込んだのだ。エンジンが吹かされ、砂利を踏むタイヤの音が響く。
一瞬ほっとしたコッブだったが、すぐにその安心は誤りだと気付いた。車はスピードを上げてコッブの隠れていた小屋に突進してきた。立ち上がったコッブだったが、小屋ごと撥ね飛ばされた。そして小屋の反対側のゴミ溜めに落ちた。
汚水と生活ゴミの混じった最悪の場所に頭から浸かっていた。辛うじて意識はあったが、銃が手元から無くなっていた。車から降りた男が自分の生死を確かめるために下りてくる。よほど俺を殺したいらしい。大きく動く訳にはいかなかった。コッブは何か武器になるものはないか探した。偶然、錆びた奇妙な形のナイフがあった。真っ赤に錆びたそれは何かを切ることができるとは思えなかったが、何も無いよりはましだった。
敵の一人が車の隣でライトをかざし、もう一人がその指示に従って自分を探している。まだ自分は見つかっていない。
絶対にあいつらを殺してやる。
そんな闘志が急激にコッブの中に湧いてきた。ゴミの匂いと錆びたナイフが、自分の中の根源的な怒りに火を点けたようだった。
男と光がゆっくりと自分の方に近付いてくる。心臓の鼓動が早くなる。早くこいつを殺したい。殺さなければという思いで頭が熱くなった。
そしてその熱さが頂点に達した時、獣のようにコッブは敵に飛び掛かった。
一瞬で相手の胸元に飛び込み、腹に錆びたナイフを突き立てた。そして一気に腹を引き裂く。ライトを持った最後の敵が銃を撃ってくる。コッブは腹を引き裂いた男を背負うようにして盾にした。男の血と内臓が湯気を立て、コッブの頭に降り注いだ。
最後の敵は銃を撃ち尽くすと車に乗り、去って行った。
コッブは盾にした男を下ろすと、ゴミ溜めから這い上がった。立ち上がると汚水に濡れた血みどろの頭を掻き上げ、乱れた髪を後ろに撫でつけた。片手にはまだ錆びたナイフがあった。
錆びたナイフをベルトに挟むと、胸ポケットからタバコを出した。幸いケースに入ったタバコは無事だった。そして火を点けると、自分の車に向かった。
車の傍に二つの敵の死体があった。一人は頭を撃たれた男。もう一人は腿を撃たれて失血死した男。
そしてもう一人、脛を撃たれた男が這いずりながら逃げようと藻掻いていた。
コッブはその男の真後ろに立った。コッブに気づいた男は、肩にかけた短機関銃をおぼつかない手つきで構えようとする。
コッブは男に乗りかかるようにして短機関銃を取り上げた。そして斜め後ろから首に手を回して締め上げる。
「パーティは始まったばかりだぜ。 落ち着いて一服しろよ」
そう言って左手に持ったタバコを男の眼球に押し当てた。瞼から煙が上がり、男は甲高い叫び声をあげる。
「ぎゃあぎゃあと喚くんじゃねえ」
首を締め上げていた腕を離すと、今度は男の顔を殴った。地面に叩きつけられた男は小さく呻いた。
「さあ、誰の差し金か聞かせてもらおうか」
「……何も知らねえ。 俺はしがねえ下っ端さ。 頼む、殺さないでくれ」
コッブはベルトに差していた錆びたナイフを抜いた。
「上手く喋るなら、腕の一本、いや、指の一本ぐらいは残してやってもいいぜ」
そう言うと男の片耳を掴み、千切るように錆びたナイフで切り取った。
「大変だったな。 もう大丈夫なのか?」
カーマインは立ち上がり、抱擁でコッブを迎えた。場所は組織が管理している酒場の事務所だ。
「ええ、腹の破片を出してもらっただけで。 当たり所が良かったらしい」
襲撃から五日しか経っていなかったが、顔に貼られた絆創膏ぐらいしか痕は残っていない。
「男前が増したな」
コッブの頬をカーマインは軽く叩いた。二人は席に着く。
「誰が手引きをしたのか、わかったのか?」
「金で雇われた下層からの不法移民のチンピラで、バックは追えませんでした」
「そうか」
「ですが、いま不法移民を扱ってるのはキアラの所だけです。あたりをつければ何か手掛かりを掴めるかもしれません」
「しっかりと方を付けろ。 組織の威厳に関わる。 お前も、もうここらへんじゃ顔役なんだ」
コッブが組織に入って七年。若い連中の中では一番の稼ぎ頭で、幹部になるのも間近だと噂される男になっていた。今回の取引も相談役から直々の指名があって行われたものだった。
「わかってます」
コッブは席を立った。
「そうだ。明日なんですが、新しい取引について相談したいので、夜ここへ迎えを出します。 平気ですか?」
「ああ、問題無い」
そう約束を取り付けて、コッブは事務所を出た。
「貴方に見せたいものがあるんです。 ちょっと大きな取引で、保証が必要なもので」
コッブは車中でそう語って、カーマインを倉庫に連れてきた。
コンシリエーレ——相談役——のクレメンザともう一人のカポ、マリオが立っていた。そして倉庫の奥には、黒い布が掛けられた何かが置いてあった。
「どうした? マリオ、クレメンザ」
「俺から説明しますよ。カーマイン」
コッブは黒い布の隣に立っていた部下に、顎で指図をする。
布が取り払われると、そこには両足を膝から、右腕を肘から切られた包帯だらけの男が椅子に縛り付けられていた。
「実はコイツが口を割りましてね。それでちょっと貴方に話を聞こうという流れになりまして。相談役と」
「カーマイン、コッブから話を聞いた。厄介な事だぞ、コレは」
「何を言ってるんだ?」
カーマインは憮然とした表情で言った。
「アンタが例のアップスターズと組んで俺を嵌めた、ってコイツは言ってるんですよ」
アップスターズはプライムワンと因縁のある新興組織だった。新型ドラッグを捌き、ファイヴと呼ばれる古参の組織を切り崩しに掛かっていた。
部下が包帯の男の猿轡を外して軽く小突くと、包帯の男はくぐもった声で喋り始めた。
「……俺はリーダーの口から……プライムワンのカーマインからコッブを始末する許可を得た……って聞いた」
「本当か? 嘘だったら殺すぞ」
コッブは大声で聞く。
「本当だ! 本当なんだ! これだけだ……俺が知っているのは……」
部下は猿轡を戻した。
「金か? 兄弟」
呆れた調子でマリオが言った。見届け人としてクレメンザが呼び出していた。
「馬鹿な! 何で俺が最も信頼している部下のコッブを嵌めなきゃいけねえんだ。 道理が通らねえだろ?」
カーマインは威厳を保とうとしたが、焦りは明らかだった。
「俺が幹部になれば割を食うのはあんただろ、カーマイン。独立してシマを分けてもらう相手はアンタなんだから」
コッブは怒りを抑えた調子で言った。
「馬鹿を言うな! そんなことで組織を裏切る真似などするか」
カーマインの額には汗が浮かんでいる。
「アップスターズに恩を売っておけば、いざという時に助かるって訳だ。あいつらは随分と羽振りがいいらしいな」
マリオが言う。
「他の組織でも金で転んだのがいると聞いてるが、まさか俺達の組織から出るとはな」
クレメンザはマリオに言った。
「クレメンザ、頼む、俺はこんな馬鹿なことはしない。わかってるだろ」
懇願するような調子でカーマインは言った。
「裏切りは死でしか償えん。知っている筈だ」
クレメンザは諭すように言った。次の瞬間、コッブはナイフを抜いてカーマインに迫った。
「や、やめろ!!」
カーマインの首筋をコッブは真っ直ぐに引き裂いた。思わず顔を庇おうとして出した手の指が一緒に切られ、床に落ちた。
カーマインは跪き、溢れる血を指の無くなった手で抑えた。ゴボゴボと声にならない声を発している。
「方は付けさせてもらいましたよ」
そう耳元で呟くと、コッブはカーマインから離れた。
続いてマリオが銃を抜き、カーマインの頭を吹き飛ばした。兄弟分への情けだった。
「みっともねえ真似しやがって……」
そう言って、マリオは憮然とした表情で倉庫から去っていた。
コッブは部下にカーマインの死体を始末するよう指示した。部下達はカーマインの死体を引き摺って倉庫を出て行った。
倉庫にはコッブとクレメンザ、縛られ拷問された襲撃者が残された。
「よくやった。カポの座は俺から推薦しよう。 来週の会合で、お前は正式な幹部だ」
クレメンザは言った。
「ありがとうございます」
「カーマインが裏切るとは意外だった。昔気質のいい男だったんだがな」
「カーマインはいい男でしたよ。 俺もそう思います」
「どういう意味だ?」
クレメンザは訝しんだ様子で聞き返した。
「実はコイツが話した内容には、もう一つ別のものがありましてね」
顎で襲撃者を指す。
「どんな話だ?」
「コイツが聞いたという裏切り者なんですが、普段は『相談役』って呼ばれてるそうです」
コッブは話ながらタバコを出して吸い始めた。
「何だと……」
クレメンザは動揺を隠さなかった。
「俺の取引を知っていたのは、依頼してきたあんたと上役のカーマインの二人だけだ」
「何でお前を俺が始末しなきゃならない」
「さあ、金でしょうかね。 アップスターズは俺を殺したがってる。 奴らと前線で派手にやり合ってるのは俺ですからね」
吸ったタバコの煙をゆっくりと吐いた。クレメンザは黙っている。
「俺を売ることができるのはアンタだ。 そのアンタを金で抱き込めて——」
「……証拠は無い」
「要りますかね? 俺がアンタをここでやるのに」
クレメンザは固まった。
「それに、アンタがこの件に無関係ならカーマインを庇った筈だ。 拷問されたチンピラの自白一つで功績のあるカポを始末する、普通そうはいかない」
「何が望みだ」
「俺がカポになった後は、俺のいいように動いて欲しい。そうすれば命の保証はしましょう」
「……よかろう」
クレメンザは従った。
「それと、アップスターズの連中と話がしたい。 殺し合い以外にもやり方がある筈だ」
「わかった。取り次ごう」
クレメンザは逃げるように倉庫を後にした。
コッブは縛られた襲撃者の後ろに立った。もう倉庫には二人以外誰もいない。
「さて、約束通りに喋ってくれたようだから、お前は殺さない」
ナイフで身体と椅子を結びつけている縄を切った。そして乱暴に男を蹴り倒した。両足を失った襲撃者はもぞもぞと床で藻掻いた。
「だが、助けたりはしねえ。 俺を的にかけたヤツを助ける訳がねえだろ?」
床にのたうつ男を思い切り蹴った。
そして倉庫に襲撃者を置き去りにして、コッブは去った。
「—了—」