「著彈確認。發生誘爆的左舷傾斜了。高度30阿爾雷。要墜落了!」
艾妲的通信機傳來觀測組的損害判定。艾妲他們的攻擊終於將帝國的巨大戰艦擊落了。甲板上冒出了煙,武裝船慢慢的掉下來。武裝船簡直就像是一條巨龍降落到地上般的落到地面上了,那沉重的金屬聲,讓即使穿著裝甲服的艾妲都顫抖起來。
「重砲組持續追擊他們,α中隊跟β中隊前往落下地點去迎擊敵人」
下個瞬間,隊長的波爾斯大佐就下了命令。
「佛羅倫斯,走吧」
「了解」
艾妲她們與α中隊所屬的成員們,跟著隊長一起加快速度往墜落地點移動。
戰局極度的混亂。
雖然武裝船的炮擊停止了,但是托雷依德永久要塞也已經受到了非常大的損傷,一部分的帝國步兵已經進入了要塞的內部。帝國的後續部隊就算在武裝船墜落之後,也絲毫沒有停下他們的進擊速度。墜落的武裝船就掉在托雷依德永久要塞前方,就在前線的正中間。在要塞外與武裝船進行機動作戰的裝甲獵兵,確保武裝船的降落地點後,就轉往去參與阻止帝國軍進擊的作戰。
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在艾妲眼前的是伴隨著武裝船的帝國步兵團。艾妲扣下板機,將他們給轟散。血煙瀰漫,步兵團瓦解了。帝國軍沒有反擊而開始散開撤退了。以奇襲登場的裝甲獵兵的火力,對士氣低落的帝國軍的造成了壓倒性的形勢。
佛羅倫斯為了確保射擊的視野,走在艾妲的前方。
「不要太靠近啊」
「我知道」
艾妲提醒佛羅倫斯。裝甲獵兵是以活用火力跟機動力的一擊離脫為基本的戰術。對視野不好,加上小動作不太靈巧的裝甲獵兵來說,最該防範注意的就是步兵的近身肉搏戰。
「步兵排除確認。對手已經瓦解了。我們能贏的」
佛羅倫斯向艾妲催促道。
「別急,等隊長來」
裝甲獵兵的中隊,是以四組兩機為一組的小隊,共八機構成的。所有小組都保持著距離進行作戰。擔當α中隊左翼的佛羅倫斯與艾妲比其他機要深入敵陣許多。
「敵人已經徹退了。應該要快點確保住武裝船才對啊。甲板已經有很多我方的軍勢了,妳想趕不上嗎?」
「冷靜一點,佛羅倫斯」
艾妲忠告著正興奮的佛羅倫斯。她們兩個都不是第一次實戰,但是並沒有參加過像這次這麼大規模的戰爭過。然後又因為他們裝甲獵兵的活躍擊沉了那強敵武裝船。自己當然也會因此感到興奮,所以也能理解佛羅倫斯的心情。但是就因為這樣更需要冷靜,艾妲這樣告誡著自己。
「妳想放跑這大好機會嗎──」
在佛羅倫斯的話講完之前,武裝船的甲板因為重砲部隊的炮擊引發了大爆炸。
「不用急。敵人已經玩完了」
艾妲說完後,一直等到隊長機來了才一起往武裝船前進。
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α中隊保持隊列不亂,邊打倒帝國的步兵們邊往武裝船靠近。他們確信只要奧羅爾隊確保這個地方,就一定可以打退帝國軍。
「艾妲,看到甲板的煙了嗎?」
聽到佛羅倫斯的聲音後,透過小型的前方顯示器看著武裝船。武裝船的甲板上流出好幾層紫色煙霧。但是看不到本來應該在甲板上進行的戰鬥狀況。
「這是毒瓦斯嗎?帝國的話會這麼做也不奇怪……」
「好像不是普通的瓦斯,狀況有點奇怪」
從這紫色的煙感受到某種詭異感的艾妲,將通信轉接向隊長。
「隊長,甲板的狀況怪怪的。慎重一點接近吧」
「從這邊看不到……」
通信中斷了一下,有雜音插進來。
「隊長,怎麼了?」
通信機的另一邊傳來機關槍斷斷續續的發射音。
「……是敵人!這是什麼……怎麼可能……」
艾妲聽到那不像平常波爾斯大佐會發出的聲音後,立刻查覺到有危機,馬上決定要去幫忙。
「隊長!我現在馬上去你那邊」
「佛羅倫斯,中央有敵人。隊長正在應戰中。我們要立刻趕去援護」
在艾妲說完要趕去支援的話後,佛羅倫斯回答道。
「艾妲,等等。快看看周圍!」
聽到佛羅倫斯的話後,艾妲緩緩的擺動機體左右查看並確認著顯示器。
那邊有著某種黑紅色的物體在蠢蠢欲動著。
「敵人嗎?」
「……不對,是屍體!已經跟帝國軍還是我軍都沒關係了」
螢幕上顯示出來那黑紅色的東西,是渾身是血的人類。被砲火傷得很嚴重的人類,慢慢的爬起來後往她們的方向靠過來。而且不只有前方,是以包圍式的出現。很明顯是要往她們這邊過來的。
「該死!」
佛羅倫斯拿出近身戰用的戰斧揮了起來。艾妲的側面傳來什麼東西被壓爛的聲音。
「腳邊也有!小心點!」
視野很差的裝甲服很難確認出現在身邊的死者。佛羅倫斯的腳邊,有個眼睛被槍彈打穿的帝國兵正要用自己的槍劍攻擊。艾妲用機槍將那個屍體給打爛。
「待在這裡很危險,快離開」
「就算說要離開,不管到哪兒都是一堆屍體啊!」
戰場上有著無數的屍體。
「總之我們只能互相幫忙了。就算是一點也好,盡量離開那艘武裝船」
艾妲的直覺告訴她,那個煙就是引起這怪異現象的原因。
「了解,背後就交給我吧」
說完後就揮起戰斧,將靠過來的死者頭顱砍飛。
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在艾妲的機槍與佛羅倫斯的戰斧配合下,兩人慢慢地離開了死者的軍勢。期間,雖然也有向其他的機體發出通信,但是沒有任何機體有回應。
逃到山腹後,兩人將燃料用完的裝甲服廢棄。為了防止被敵人擄獲,放火燒掉的裝甲服變成了全黑的普通鐵塊。
太陽已經下山。兩個人都無語。繞過大到跨越山脈的要塞就能到達往王國的道路。雖然接受過步兵的訓練,但是在沒有食物的狀態下一直走著的兩個人,疲勞的臉色已經無法隱藏。
艾妲站在山頂附近可以看到整個要塞的地方。要塞的重要據點都升起火苗,明顯的可以看出托雷依德永久要塞已經淪陷了。那景象對艾妲她們兩個人來說可以算是壓倒駱駝的最後一根稻草。
|
「我知道了,辛苦妳了,艾妲」
亞歷山德莉安娜向屈膝跪在王座前的艾妲,溫柔的說著。托雷依德永久要塞淪陷的過程,亞歷山德莉安娜是眼眶充滿著淚水聽著的。
「我背叛了陛下的信賴,不管是什麼樣的懲罰都願意接受」
戰爭的結果是非常的淒慘。托雷依德永久要塞受到死者們的攻擊被毀滅。裝甲獵兵的奧羅爾隊除了一部分的重砲部隊以外,存活下來的只有艾妲跟佛羅倫斯兩個人而已。就連隊長的波爾斯也已經戰死了。
「妳不需要為敗戰負責任。是因為帝國的非倫理行為,才招來這個悲劇的」
執政者們也因為重要據點的淪陷而受到敗戰的衝擊。但是另一方面,則是大大的宣傳著帝國這種非人道行為,王國內以及同盟國內的士氣也因此開始高升起來。將對抗帝國的非人道行為轉換成『大義』來利用了。
不管是什麼樣的悲劇,都可以作為一步棋來用的思想,年輕的女王是能夠理解。
「艾妲,退下吧。靜養一陣子吧。近期內可能要妳擔負更大的責任」
可是與政治的思想不同,年輕的女王因為被悲劇襲擊的親近友人而感到心碎。
「這次,我一定會奉上我的全部」
艾妲這麼說完後就退下了。那眼眶中含有著淚水。
「謝謝妳,艾妲」
|
艾妲被任命為奧羅爾隊的隊長,是在三天之後的事。副隊長則是任命給同樣生還的佛羅倫斯,兩人成了奧羅爾隊有史以來最年輕的隊長及副隊長。
艾妲懷著為了王國,為了女王,以及為了死去同伴的心情,一心重建奧羅爾隊。
|
「─完─」
3394年 「陥落」
「着弾を確認。 誘爆を起こした左舷が傾いています。 高度30アルレに低下。 落ちます!」
エイダの通信機に観測班からの損害判定が届く。エイダら装甲猟兵の打撃が、ついに帝國の巨大戦艦を捉えた。甲板から煙を上げて、ガレオンがゆっくりと落ちていく。まるで巨大な龍が地面に降り立つように、ガレオンは地に落ちた。その鈍い重低音が、装甲服の中にいるエイダの身体をも震わせた。
「重砲班はそのまま追い打ちを掛けろ。 アルファ中隊とベータ中隊は墜落地点で接敵するぞ」
間髪を入れずに、隊長のボールス大佐から指令が届く。
「フロレンス、行くぞ」
「了解」
エイダ達アルファ中隊所属のメンバーは、隊長と共に速度を上げて墜落地点に向かった。
戦局は混乱を極めていた。
ガレオンの砲撃は止んだが、既にトレイド永久要塞は多大なダメージを受けており、一部の帝國歩兵は要塞内部へ進入していた。帝國の後続部隊はガレオンが落ちてもまだその進撃速度を緩めていない。墜落したガレオンは要塞の手前、前線の真ん中に不時着する形になっていた。要塞の外でガレオンに対する機動作戦を行っていた装甲猟兵は、墜落地点を確保して帝國軍の進撃を食い止める作戦に移った。
エイダの眼前にガレオンに随伴する帝國の歩兵団がいた。エイダはトリガーを引き、彼らを蹴散らす。血煙が上がり、歩兵団は総崩れになった。帝國軍は反撃もせずに散り散りとなって退却を始めた。奇襲の形で現れた装甲猟兵の火力に、士気の落ちた帝國軍は圧倒される形となった。
フロレンスが射界を確保するために、エイダの前に出てくる。
「近付き過ぎるな」
「わかってる」
エイダはフロレンスに注意した。装甲猟兵は火力と機動力を生かしたヒットアンドアウェイを戦術の基本としている。視界が悪く、小回りの利かない装甲猟兵は、歩兵による肉薄攻撃を最も注意しなければならない。
「歩兵の排除を確認。 相手は総崩れだ。 いけるぞ」
フロレンスはエイダを急き立てるように言った。
「焦るな、隊長を待て」
装甲猟兵の中隊は、二機ずつのペアを四つ、計八機で構成される。それぞれのペアは距離を取って作戦行動を行う。アルファ中隊の左翼を担うフロレンスとエイダは、他の機よりもかなり前に出てしまっていた。
「敵は下がった。 早くガレオンを確保すべきだ。 もう甲板までこちらの軍勢が辿り着いてる、乗り遅れる気か?」
「落ち着け、フロレンス」
エイダはフロレンスの興奮を諌めた。二人とも初めての実戦ではなかったが、ここまでの大規模な攻防は経験したことが無い。その上、ガレオンという強大な敵を自分達装甲猟兵の活躍によって落とすことができた。その僥倖の興奮は当然自分にもあったため、フロレンスの言動も理解できた。しかし、だからこそ冷静にならねばと、エイダは己を律していた。
「好機を掴み損ねる気——」
フロレンスの言葉が終わる前に、ガレオンの甲板で重砲部隊の砲撃による大きな爆発が起こった。
「焦る必要は無い。 敵はもう終わりだ」
エイダはそう言って、隊長機の前進を待ってからガレオンへと進んだ。
アルファ中隊は隊列を乱さず、帝國の歩兵達を倒しながらガレオンへと近付いていった。この場所をオーロール隊が確保すれば、確実に帝國軍を押し戻すことができる。そう確信する戦いだった。
「甲板の煙が見えるか? エイダ」
フロレンスの声を聞き、小さな前面モニターに映るガレオンを見る。ガレオンの甲板から紫の煙の筋が幾重にも漏れ出していた。しかし、甲板で行われているであろう戦闘の様子までは見えない。
「毒ガスか? 帝國ならやりかねんが……」
「ただのガスにしては、動きが奇妙だな」
その紫の煙に何か禍々しい印象を受けたエイダは、通信を隊長へと切り替えた。
「隊長、甲板の様子がおかしいです。 慎重に近付きましょう」
「ここからは見えんが……」
通信が途切れ、雑音が入る。
「どうしました? 隊長」
通信機の向こうでマシンガンの発射音が断続的に響いている。
「……敵だ! なんだこれは……馬鹿な……」
ボールス大佐らしからぬ声にエイダは危機を感じ取り、すぐさま応援を約束した。
「隊長! そちらに行きます」
「フロレンス、中央に敵だ。 隊長が応戦中。 援護に向かうぞ」
エイダが応援に向かうために声を掛けると、フロレンスが返答した。
「待て、エイダ。 周りをよく見ろ!」
フロレンスの声を聞き、エイダは不器用に機体を左右に揺らしてモニターを確認する。
そこには赤黒い何かが蠢いていた。
「敵か?」
「……違う、死体だ! 帝國兵も我が軍も関係無いぞ」
モニターに映った赤黒い何かは、血塗れの人間だった。砲火で体を激しく損傷している人間が、ゆっくりと立ち上がって自分達の方に近付いて来る。それは前方だけでなく、囲むように現れた。明らかに自分達に取り憑くように向かってきている。
「クソッ!」
フロレンスは近接戦闘用の戦斧を取り出して振り回した。エイダの側面でベチャリという何かが潰れる音がした。
「足下にもいるぞ! 気をつけろ!」
視界の悪い装甲服では、間近に現れた生ける死者を確認するのが難しい。フロレンスの足下で、眼孔に銃弾を受けた帝國兵が己の銃剣を突き立てようとしていた。エイダは機銃でその死体を細切れにする。
「ここにいるのはまずい、離脱だ」
「離脱も何も、どこもかしこも死体だらけだ!」
死体は戦場に無数にあった。
「とにかく互いをカバーし合うんだ。少しずつでもいい、あのガレオンから離れるんだ」
エイダは直感的に、あの煙がこの怪異の原因だと信じた。
「了解、背中は任せろ」
そう言いながら戦斧を振るい、近寄ってくる死者の頭をフロレンスは跳ね飛ばした。
エイダの機銃とフロレンスの戦斧のコンビネーションによって、少しずつ死者の軍勢から二人は離れることができた。その間、他の機体とも通信を行ったが、どの機体からも反応は無かった。
逃げ延びた山腹で、燃料切れとなった装甲服を廃棄した。鹵獲を防ぐために火を放った装甲服は、真っ黒なただの鉄の塊となった。
既に陽は暮れていた。二人とも無言だった。山を越えて大きく要塞を迂回すれば、王国へ至る道に出る筈だった。歩兵としての訓練も受けてはいたが、食料が無い状態で歩き続ける二人には、疲労の色が濃く出ていた。
山頂付近の広く要塞を見渡せる場所にエイダは立った。要塞の各所から火の手が上がっており、トレイド永久要塞が陥落したのは明らかだった。それは、エイダ達二人を打ちのめすに十分な光景だった。
「わかりました。ご苦労様でしたね、エイダ」
玉座の前で膝を突くエイダに、アレキサンドリアナは優しく声を掛けた。トレイド永久要塞陥落の顛末を、アレキサンドリアナは涙を溜めながら聞いていた。
「私は陛下の信頼を裏切りました。どんな罰でも受ける所存です」
戦いの結果は悲惨なものだった。トレイド永久要塞は死者の殺到を受けて壊滅。装甲猟兵のオーロール隊は、一部の重砲部隊以外、生き残ったのはエイダとフロレンスの二名のみであった。隊長のボールスも戦死していた。
「あなたが敗戦の責を負う必要はありません。 帝國の倫理にもとる行為こそが、この悲劇を招いたのです」
執政達も、要衝の陥落、というこの敗戦に衝撃を受けていた。しかしその一方で、この帝國の非情な行為を大いに宣伝し、王国内、また同盟国内の士気を高めることも始めていた。帝國の非道をわかりやすい『大義』として利用しようしていた。
どんな悲劇であろうとも一つのカードとして利用する政治の思惑を、若い女王は理解していた。
「エイダ、下がりなさい。しばらくは静養をするように。近い内に、あなたにはより大きな責任を負ってもらうことになるでしょう」
しかし政治の思惑とは別に、若い女王はこの親しい友人を襲った悲劇に思いを砕いていた。
「必ず、今度こそは、この身の全てを捧げる所存です」
エイダはそう言って下がった。その目には涙があった。
「ありがとう、エイダ」
エイダがオーロール隊隊長に任じられたのは、それから三日後のことだった。副隊長には同じく生還したフロレンスが任じられ、オーロール隊の歴史上、最も若い隊長と副隊長となった。
エイダは王国の為、女王の為、そして死んでいった仲間の為という思いを持って、隊の再建を目指した。
「—了—」
「着弾を確認。 誘爆を起こした左舷が傾いています。 高度30アルレに低下。 落ちます!」
エイダの通信機に観測班からの損害判定が届く。エイダら装甲猟兵の打撃が、ついに帝國の巨大戦艦を捉えた。甲板から煙を上げて、ガレオンがゆっくりと落ちていく。まるで巨大な龍が地面に降り立つように、ガレオンは地に落ちた。その鈍い重低音が、装甲服の中にいるエイダの身体をも震わせた。
「重砲班はそのまま追い打ちを掛けろ。 アルファ中隊とベータ中隊は墜落地点で接敵するぞ」
間髪を入れずに、隊長のボールス大佐から指令が届く。
「フロレンス、行くぞ」
「了解」
エイダ達アルファ中隊所属のメンバーは、隊長と共に速度を上げて墜落地点に向かった。
戦局は混乱を極めていた。
ガレオンの砲撃は止んだが、既にトレイド永久要塞は多大なダメージを受けており、一部の帝國歩兵は要塞内部へ進入していた。帝國の後続部隊はガレオンが落ちてもまだその進撃速度を緩めていない。墜落したガレオンは要塞の手前、前線の真ん中に不時着する形になっていた。要塞の外でガレオンに対する機動作戦を行っていた装甲猟兵は、墜落地点を確保して帝國軍の進撃を食い止める作戦に移った。
エイダの眼前にガレオンに随伴する帝國の歩兵団がいた。エイダはトリガーを引き、彼らを蹴散らす。血煙が上がり、歩兵団は総崩れになった。帝國軍は反撃もせずに散り散りとなって退却を始めた。奇襲の形で現れた装甲猟兵の火力に、士気の落ちた帝國軍は圧倒される形となった。
フロレンスが射界を確保するために、エイダの前に出てくる。
「近付き過ぎるな」
「わかってる」
エイダはフロレンスに注意した。装甲猟兵は火力と機動力を生かしたヒットアンドアウェイを戦術の基本としている。視界が悪く、小回りの利かない装甲猟兵は、歩兵による肉薄攻撃を最も注意しなければならない。
「歩兵の排除を確認。 相手は総崩れだ。 いけるぞ」
フロレンスはエイダを急き立てるように言った。
「焦るな、隊長を待て」
装甲猟兵の中隊は、二機ずつのペアを四つ、計八機で構成される。それぞれのペアは距離を取って作戦行動を行う。アルファ中隊の左翼を担うフロレンスとエイダは、他の機よりもかなり前に出てしまっていた。
「敵は下がった。 早くガレオンを確保すべきだ。 もう甲板までこちらの軍勢が辿り着いてる、乗り遅れる気か?」
「落ち着け、フロレンス」
エイダはフロレンスの興奮を諌めた。二人とも初めての実戦ではなかったが、ここまでの大規模な攻防は経験したことが無い。その上、ガレオンという強大な敵を自分達装甲猟兵の活躍によって落とすことができた。その僥倖の興奮は当然自分にもあったため、フロレンスの言動も理解できた。しかし、だからこそ冷静にならねばと、エイダは己を律していた。
「好機を掴み損ねる気——」
フロレンスの言葉が終わる前に、ガレオンの甲板で重砲部隊の砲撃による大きな爆発が起こった。
「焦る必要は無い。 敵はもう終わりだ」
エイダはそう言って、隊長機の前進を待ってからガレオンへと進んだ。
アルファ中隊は隊列を乱さず、帝國の歩兵達を倒しながらガレオンへと近付いていった。この場所をオーロール隊が確保すれば、確実に帝國軍を押し戻すことができる。そう確信する戦いだった。
「甲板の煙が見えるか? エイダ」
フロレンスの声を聞き、小さな前面モニターに映るガレオンを見る。ガレオンの甲板から紫の煙の筋が幾重にも漏れ出していた。しかし、甲板で行われているであろう戦闘の様子までは見えない。
「毒ガスか? 帝國ならやりかねんが……」
「ただのガスにしては、動きが奇妙だな」
その紫の煙に何か禍々しい印象を受けたエイダは、通信を隊長へと切り替えた。
「隊長、甲板の様子がおかしいです。 慎重に近付きましょう」
「ここからは見えんが……」
通信が途切れ、雑音が入る。
「どうしました? 隊長」
通信機の向こうでマシンガンの発射音が断続的に響いている。
「……敵だ! なんだこれは……馬鹿な……」
ボールス大佐らしからぬ声にエイダは危機を感じ取り、すぐさま応援を約束した。
「隊長! そちらに行きます」
「フロレンス、中央に敵だ。 隊長が応戦中。 援護に向かうぞ」
エイダが応援に向かうために声を掛けると、フロレンスが返答した。
「待て、エイダ。 周りをよく見ろ!」
フロレンスの声を聞き、エイダは不器用に機体を左右に揺らしてモニターを確認する。
そこには赤黒い何かが蠢いていた。
「敵か?」
「……違う、死体だ! 帝國兵も我が軍も関係無いぞ」
モニターに映った赤黒い何かは、血塗れの人間だった。砲火で体を激しく損傷している人間が、ゆっくりと立ち上がって自分達の方に近付いて来る。それは前方だけでなく、囲むように現れた。明らかに自分達に取り憑くように向かってきている。
「クソッ!」
フロレンスは近接戦闘用の戦斧を取り出して振り回した。エイダの側面でベチャリという何かが潰れる音がした。
「足下にもいるぞ! 気をつけろ!」
視界の悪い装甲服では、間近に現れた生ける死者を確認するのが難しい。フロレンスの足下で、眼孔に銃弾を受けた帝國兵が己の銃剣を突き立てようとしていた。エイダは機銃でその死体を細切れにする。
「ここにいるのはまずい、離脱だ」
「離脱も何も、どこもかしこも死体だらけだ!」
死体は戦場に無数にあった。
「とにかく互いをカバーし合うんだ。少しずつでもいい、あのガレオンから離れるんだ」
エイダは直感的に、あの煙がこの怪異の原因だと信じた。
「了解、背中は任せろ」
そう言いながら戦斧を振るい、近寄ってくる死者の頭をフロレンスは跳ね飛ばした。
エイダの機銃とフロレンスの戦斧のコンビネーションによって、少しずつ死者の軍勢から二人は離れることができた。その間、他の機体とも通信を行ったが、どの機体からも反応は無かった。
逃げ延びた山腹で、燃料切れとなった装甲服を廃棄した。鹵獲を防ぐために火を放った装甲服は、真っ黒なただの鉄の塊となった。
既に陽は暮れていた。二人とも無言だった。山を越えて大きく要塞を迂回すれば、王国へ至る道に出る筈だった。歩兵としての訓練も受けてはいたが、食料が無い状態で歩き続ける二人には、疲労の色が濃く出ていた。
山頂付近の広く要塞を見渡せる場所にエイダは立った。要塞の各所から火の手が上がっており、トレイド永久要塞が陥落したのは明らかだった。それは、エイダ達二人を打ちのめすに十分な光景だった。
「わかりました。ご苦労様でしたね、エイダ」
玉座の前で膝を突くエイダに、アレキサンドリアナは優しく声を掛けた。トレイド永久要塞陥落の顛末を、アレキサンドリアナは涙を溜めながら聞いていた。
「私は陛下の信頼を裏切りました。どんな罰でも受ける所存です」
戦いの結果は悲惨なものだった。トレイド永久要塞は死者の殺到を受けて壊滅。装甲猟兵のオーロール隊は、一部の重砲部隊以外、生き残ったのはエイダとフロレンスの二名のみであった。隊長のボールスも戦死していた。
「あなたが敗戦の責を負う必要はありません。 帝國の倫理にもとる行為こそが、この悲劇を招いたのです」
執政達も、要衝の陥落、というこの敗戦に衝撃を受けていた。しかしその一方で、この帝國の非情な行為を大いに宣伝し、王国内、また同盟国内の士気を高めることも始めていた。帝國の非道をわかりやすい『大義』として利用しようしていた。
どんな悲劇であろうとも一つのカードとして利用する政治の思惑を、若い女王は理解していた。
「エイダ、下がりなさい。しばらくは静養をするように。近い内に、あなたにはより大きな責任を負ってもらうことになるでしょう」
しかし政治の思惑とは別に、若い女王はこの親しい友人を襲った悲劇に思いを砕いていた。
「必ず、今度こそは、この身の全てを捧げる所存です」
エイダはそう言って下がった。その目には涙があった。
「ありがとう、エイダ」
エイダがオーロール隊隊長に任じられたのは、それから三日後のことだった。副隊長には同じく生還したフロレンスが任じられ、オーロール隊の歴史上、最も若い隊長と副隊長となった。
エイダは王国の為、女王の為、そして死んでいった仲間の為という思いを持って、隊の再建を目指した。
「—了—」