送走艾茵之後,妖蛆的活動變得越來越頻繁。
不時都可聽到導致天搖地動的詭異咆嘯聲。
每當聽到因為森林搖動,鳥和小動物們發出吵雜聲時,史普拉多內心的不安就隨著逐漸蔓延開來。
某一天,終於在森林的邊緣處發現了類似妖蛆的東西。
雖然還不確定那是否真的是妖蛆,不過如果這事屬實的話,應該用不了多久整片森林就會變成他們的糧食。
這種情況下,在『黑夜』裡受了傷還未復原的戰士與年輕的戰士不顧大母的反對,堅決想朝著據說是妖蛆出沒的地點出征。
「不要做傻事。妖蛆可不是我們可以打敗的對手。不要特地去刺激他們」
大母像是命令般的緩慢說道。
「就算如此,難道要我們就這麼坐以待斃嗎?」
圍在大母身邊的戰士當中,一個看起來像是領袖的男人這樣發言。
「你能夠阻止暴風雨來襲嗎?你能夠承受閃電雷擊嗎?現在還是先等待吧。靜靜地等吧」
「我們可不想就這樣白白等死,我們就算要死也要死的像是個有尊嚴的戰士」
在『黑夜』中吃了敗仗的戰士們,臉上表現出的是悲壯的決心。
「現在先等著」
「我明白了。我們已經無法再服從您的命令了」
本來,大母的決定是絕對的。但她現在再也無法壓抑住戰士們滿腔的焦躁了。
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史普拉多跟在戰士們的後面。她也同樣無法忍受繼續等待下去了。她無論如何都想親眼看看自己心中不安的根源。
史普拉多本來想遠遠的偷偷跟在隊伍後面,但他的行蹤當然瞞不過戰士們的眼睛。
「喂,你偷偷摸摸的在幹什麼!」
史普拉多被從背後突然冒出的聲音,嚇的差點跳起來。原來是在『黑夜』戰役中負傷的其中一名戰士。
「不管你想幹什麼,我們現在要去的可不是小鬼的遊樂場啊。快回去吧」
「我不會妨礙你們的。只是想看看怪物到底長什麼樣子而已」
史普拉多很誠實的說出了自己的希望。
「哎呀,本來想說妳跟膩了就會自己回家所以才放任妳不管的,看來這個決定是錯的」
負傷的戰士一邊搔著頭,一邊考慮著該怎麼處理史普拉多才好。
「喂,伊森!史威爾德!」
戰士大聲的叫了兩個名字,兩個年輕的戰士立刻就出現在史普拉多面前。
「把這個小姐送回村莊裡」
年輕的戰士臉上立刻露出嫌惡的表情。史普拉多認得其中一個人。
「這是命令。明白了就快點行動」
「可是,妖蛆……」
「那種東西由我們來應付就綽綽有餘了!」
直到討伐妖蛆戰士們的背影消失在視線中之後,年輕的戰士才不情願的將身體轉向村莊的方向,狠狠的瞪著史普拉多。
「你……是總黏著艾茵不放的傢伙吧。你們總是要妨礙我」
三個獸人在森林並肩走著。如果沒有『黑夜』和妖蛆的話,他們本來正處於應該到處玩耍的年齡才是。
「大家不要緊吧?如果妖蛆真的像大母說的一樣,是根本就不會受傷的怪物的話……」
沒有人回應這句呢喃。
史普拉多一行人回到村莊後第三天的清晨,其中一個戰士回來了。
他的眼中失去了光彩,不管其他獸人們怎麼問都只是不斷的發抖著。雖然不能從他口中得知詳細情形,但已經足夠判斷出其他出征戰士們的下場了。
回來的戰士只有他一個人而已。
某一天傍晚,天崩地裂般的巨響席捲了森林。那是比之前任何一次都要強烈的巨大聲響。在森林邊緣附近的集落,出現了剛好可以通過一個人大小的裂縫。接下來發生的盡是奇怪的事,有無數大大小小的蛆蠕動著鑽出地表。妖蛆終於出現在森林之民的眼前了。
對妖蛆來說森林就只是食物。就像森林中的小鳥啄食果實,人類捕食動物一般,妖蛆會將森林中所有的一切吃盡。
在森林邊緣出現的那條裂縫,一瞬間就將那地方變成了昏暗的『空洞』。
一到了夜晚,妖蛆便會回到那昏暗的空洞之中。
看到那空洞的森林住民們感到了恐懼。他們明白了自己的未來就要被這無盡的『空洞』給吞噬。
大叔母和大母不分晝夜的祈禱著。這是他們所能有的最後手段了。但妖蛆吞噬了一個集落之後,大叔母們就停止祈禱了。
是該做出新判斷的時候了。
「我們現在開始遷移到別的森林」
大母在夜晚召集了所有人後這樣說道。這是一個有勇無謀的賭注。在沒有寶珠的保護下,移動到荒野中去別的森林實在是太遠了。但是所有人都默默的接受了大母的決定。無論如何,首先必須逃離那些妖蛆,直到整個部族消失,或是妖蛆的停止活動那一天。
決定在後天的夜裡出發。
從遭到妖蛆侵襲的反方向離開村莊,盡可能前往最近的森林。這是他們收到的唯一一個指示。
在大母召集眾人傳達指示的那場夜晚集會之中,史普拉多看到了自己與艾茵的雙親。他們隱藏著心中的不安,帶著微笑的向自己搭話。
「不用擔心」
「一定不會有事的」
她很明白這些都是謊話。
史普拉多的不安全部變成了現實。
現在所處的世界將會化為一片荒蕪的恐懼感,無處可逃的無力感,所有大人們都身陷其中。
當集會結束所有人都各自回家休息時,史普拉多逃出家門,朝著『空洞』出現的集落殘骸奔去。
無論如何都想親眼見到這個造成自己不安的根源。在那幼小的心中,就算自己所處的世界即將消失,她也想知道那個原因。
雖然她走了相當長的一段路,但森林的盡頭卻不是單憑個孩子雙腳就能到達的地方。
清晨來臨,史普拉多仍不停的走著。沒多久之後就疲累的靠倒在樹蔭下休息。人跡罕至的森林一如從前那般寧靜。
她坐在樹根上,像是抱著頭般的閉上雙眼。很快的就進入夢鄉。
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在夢中史普拉多看到了艾茵。溫柔的姐姐身影,在不知名的森林中跑著。
在艾茵離開了之後,史普拉多曾經對於沒有留住她這件事感到後悔和難過。但現在不同了。艾茵不在這個世界讓她覺得慶幸。因為這樣艾茵就能獲救了。
|
「─完─」
「昏い穴」
アインを送り出した後、妖蛆の働きが段々と活発になっていった。
地鳴りや大空を揺るがす奇妙な咆吼が、しばしば聞こえるようになっていた。
その度に森は揺れ、鳥や小さな動物達がざわめいた。それを聞くスプラートの心に、どんどんと不安が広がっていった。
やがて、妖蛆らしきものを森の端で見た、と言う者が出てきた。
それが本当に妖蛆なのかはわからなかったが、もしそうならば、この森が彼らの餌食になるのにそう時間は掛からない筈だった。
そんな中、『黒い夜』で受けた傷が癒えきらぬ戦士と若い戦士の一部が大母の反対を押し切り、妖蛆が現れたという場所へ向かおうとしていた。
「馬鹿な真似はよさぬか。 妖蛆は人が敵《かな》う相手ではない。 余計な刺激をせぬことじゃ」
大母はゆっくりと諭すように語った。
「だからといって、座して死を待つのですか?」
大母を囲んだ戦士達の中で、リーダー格の男が言う。
「お前は嵐が来るのを止められるのか? 雷に撃たれて耐えられるのか? 今は待つのじゃ。静かにな」
「俺達はただ死ぬのはごめんなんだ。 誇りある戦士として死にたい」
『黒い夜』に敗れた戦士達の表情には、悲壮な決意があった。
「今は待て」
「わかりました。 もう、大母様にお伺いは立てません」
大母の決定は絶対の筈だったが、戦士達が囚われている焦燥を留めることはできなかった。
スプラートは戦士達の後を追った。自分もただ待つことには耐えられなかった。何より自分の中にある、あの大きな不安の根源をこの目で見てみたかったのだ。
距離を置いてこっそりと尾けていたつもりだったが、戦士達に隠し通せる筈がなかった。
「おい、こそこそと何をしている」
突然背後から声を掛けられ、飛び上がりそうになる。『黒い夜』で怪我を負った戦士の一人だった。
「何のつもりか知らないが、俺達が行こうとしている場所は子供の遊び場じゃない。早く帰りな」
「何も邪魔をしないよ。 ただ見たいの。 怪物を」
スプラートは正直に望みを口にした。
「やれやれ。 そのうち飽きて帰ると思って、放っておいたのが失敗だったか」
怪我を負った戦士は、頭を掻きながらスプラートの処遇を思案した。
「おーい、イセン! スウェルト!」
大きな声で二つの名前を呼んだ。呼ばれた二人がすぐさまスプラートの前に現れる。若い戦士だった。
「この嬢ちゃんを村まで送れ」
若い戦士達は露骨に嫌な顔をした。スプラートはその中の一人に見覚えがあった。
「これは命令だ。わかったら早く行け」
「ですが、妖蛆は」
「あんなもの、俺達だけで充分さ」
妖蛆討伐へ向かう戦士達の背中を見届けると、若い戦士は渋々と体の向きを村のある方角へ変え、スプラートを睨みつける。
「お前……いつもアインにくっついていた奴か。お前等には邪魔されてばかりだ」
三人の獣人が並んで森の中を歩く。『黒い夜』や妖蛆の事がなければ、遊び回っている筈の年頃だった。
「みんな大丈夫かな。もし本当に大母様の言うように傷も付けられないような化け物だったら……」
その呟きに答える者はいなかった。
スプラート達が村へ戻ってから三日目の朝、一人の戦士が戻ってきた。
眼の光は失われ、他の獣人達に状況を聞かれても震えているだけで、何らかの情報さえも得られる状態ではなかった。だが、戦士達がどうなったのかを知るには、それで充分だった。
戻ってきた戦士はその一人だけだった。
ある日の夕方、大きな地響きが森を襲った。今までにない強さだった。森の端の集落近くに、人がちょうど入れるぐらいの穴が開いた。それから奇怪な光景が始まった。無数の大小の蛆がうねりながら、そして地上に吹き上がるように出現した。いよいよ妖蛆の姿が森の民の前に現れたのだった。
妖蛆にとって森は餌にしか過ぎない。森の小鳥が木の実を啄むように、人が動物を食すように、妖蛆は森にある全てを食い尽くす。
森の端に現れたそれは、あっという間にその地を大きな昏い『穴』に変えた。
妖蛆は夜になると、そっと昏い穴へと戻っていった。
その穴を見た森の住人達は恐怖した。何処までも続く昏い『穴』に、自分達の未来が飲み込まれる事を知ったのだった。
大母と大叔母達は昼夜を問わずに祈祷を続けた。それが彼らのできる最後の手段とも言えた。しかし、妖蛆によって集落が飲み込まれたことを知ると、大母達は祈祷をやめた。
新たな決断が必要だった。
「ここから、別の森に移る」
大母は夜に皆を集めて言った。それは無謀な賭けだった。宝珠の加護無しで荒野を移動するには、他の森は遠すぎる。しかし、大母の決断に皆が頷いた。まずはあの妖蛆から逃げなければならない。部族が消えるか、あるいは妖蛆の活動が止まるその日まで。
明後日の夜に出発することに決まった。
襲われた集落の反対方角から村を出て、できるだけ近い森を目指す、とだけ伝えられた。
大母の言葉が伝えられた夜の集会で、スプラートはアインや自分の親達の顔を見た。彼らは不安を押し隠して、スプラートに笑顔で話し掛けてくれた。
「心配ない」
「きっと大丈夫さ」
そんな言葉が嘘なのはわかっていた。
スプラートの不安は全て現実になっていた。
いま立っている世界が無くなる恐怖、どこにも逃げ出すことができない無力さに、全ての大人達が囚われていた。
集会が終わって皆が寝静まった頃、スプラートは家を抜け出して『穴』が現れた集落跡に向かった。
どうしても自分の不安をその目で確かめたかったのだ。幼い心ながら、例え自分の存在がこの世界から消えるとしても、その理由を知りたかったのだ。
随分と歩いたが、子供の足では森の端に届くことができなかった。
ついに朝になってしまったが、スプラートは歩き続けた。しばらくすると疲れて、木陰で休むことにした。人影の無い森には、昔と変わらない静けさがあった。
木の根元に座り、頭を抱えるように目を瞑った。すぐに眠りに落ちた。
夢の中でスプラートはアインを見た。優しかったお姉ちゃんの姿。どこかの森を歩いているようだった。
アインがこの世界を離れた後、彼女を引き留められなかった事を悔やみ、悲しんでいた時もあった。今は違う。アインがこの世界にいないことが嬉しかった。彼女だけは助かったのだから。
「—了—」
アインを送り出した後、妖蛆の働きが段々と活発になっていった。
地鳴りや大空を揺るがす奇妙な咆吼が、しばしば聞こえるようになっていた。
その度に森は揺れ、鳥や小さな動物達がざわめいた。それを聞くスプラートの心に、どんどんと不安が広がっていった。
やがて、妖蛆らしきものを森の端で見た、と言う者が出てきた。
それが本当に妖蛆なのかはわからなかったが、もしそうならば、この森が彼らの餌食になるのにそう時間は掛からない筈だった。
そんな中、『黒い夜』で受けた傷が癒えきらぬ戦士と若い戦士の一部が大母の反対を押し切り、妖蛆が現れたという場所へ向かおうとしていた。
「馬鹿な真似はよさぬか。 妖蛆は人が敵《かな》う相手ではない。 余計な刺激をせぬことじゃ」
大母はゆっくりと諭すように語った。
「だからといって、座して死を待つのですか?」
大母を囲んだ戦士達の中で、リーダー格の男が言う。
「お前は嵐が来るのを止められるのか? 雷に撃たれて耐えられるのか? 今は待つのじゃ。静かにな」
「俺達はただ死ぬのはごめんなんだ。 誇りある戦士として死にたい」
『黒い夜』に敗れた戦士達の表情には、悲壮な決意があった。
「今は待て」
「わかりました。 もう、大母様にお伺いは立てません」
大母の決定は絶対の筈だったが、戦士達が囚われている焦燥を留めることはできなかった。
スプラートは戦士達の後を追った。自分もただ待つことには耐えられなかった。何より自分の中にある、あの大きな不安の根源をこの目で見てみたかったのだ。
距離を置いてこっそりと尾けていたつもりだったが、戦士達に隠し通せる筈がなかった。
「おい、こそこそと何をしている」
突然背後から声を掛けられ、飛び上がりそうになる。『黒い夜』で怪我を負った戦士の一人だった。
「何のつもりか知らないが、俺達が行こうとしている場所は子供の遊び場じゃない。早く帰りな」
「何も邪魔をしないよ。 ただ見たいの。 怪物を」
スプラートは正直に望みを口にした。
「やれやれ。 そのうち飽きて帰ると思って、放っておいたのが失敗だったか」
怪我を負った戦士は、頭を掻きながらスプラートの処遇を思案した。
「おーい、イセン! スウェルト!」
大きな声で二つの名前を呼んだ。呼ばれた二人がすぐさまスプラートの前に現れる。若い戦士だった。
「この嬢ちゃんを村まで送れ」
若い戦士達は露骨に嫌な顔をした。スプラートはその中の一人に見覚えがあった。
「これは命令だ。わかったら早く行け」
「ですが、妖蛆は」
「あんなもの、俺達だけで充分さ」
妖蛆討伐へ向かう戦士達の背中を見届けると、若い戦士は渋々と体の向きを村のある方角へ変え、スプラートを睨みつける。
「お前……いつもアインにくっついていた奴か。お前等には邪魔されてばかりだ」
三人の獣人が並んで森の中を歩く。『黒い夜』や妖蛆の事がなければ、遊び回っている筈の年頃だった。
「みんな大丈夫かな。もし本当に大母様の言うように傷も付けられないような化け物だったら……」
その呟きに答える者はいなかった。
スプラート達が村へ戻ってから三日目の朝、一人の戦士が戻ってきた。
眼の光は失われ、他の獣人達に状況を聞かれても震えているだけで、何らかの情報さえも得られる状態ではなかった。だが、戦士達がどうなったのかを知るには、それで充分だった。
戻ってきた戦士はその一人だけだった。
ある日の夕方、大きな地響きが森を襲った。今までにない強さだった。森の端の集落近くに、人がちょうど入れるぐらいの穴が開いた。それから奇怪な光景が始まった。無数の大小の蛆がうねりながら、そして地上に吹き上がるように出現した。いよいよ妖蛆の姿が森の民の前に現れたのだった。
妖蛆にとって森は餌にしか過ぎない。森の小鳥が木の実を啄むように、人が動物を食すように、妖蛆は森にある全てを食い尽くす。
森の端に現れたそれは、あっという間にその地を大きな昏い『穴』に変えた。
妖蛆は夜になると、そっと昏い穴へと戻っていった。
その穴を見た森の住人達は恐怖した。何処までも続く昏い『穴』に、自分達の未来が飲み込まれる事を知ったのだった。
大母と大叔母達は昼夜を問わずに祈祷を続けた。それが彼らのできる最後の手段とも言えた。しかし、妖蛆によって集落が飲み込まれたことを知ると、大母達は祈祷をやめた。
新たな決断が必要だった。
「ここから、別の森に移る」
大母は夜に皆を集めて言った。それは無謀な賭けだった。宝珠の加護無しで荒野を移動するには、他の森は遠すぎる。しかし、大母の決断に皆が頷いた。まずはあの妖蛆から逃げなければならない。部族が消えるか、あるいは妖蛆の活動が止まるその日まで。
明後日の夜に出発することに決まった。
襲われた集落の反対方角から村を出て、できるだけ近い森を目指す、とだけ伝えられた。
大母の言葉が伝えられた夜の集会で、スプラートはアインや自分の親達の顔を見た。彼らは不安を押し隠して、スプラートに笑顔で話し掛けてくれた。
「心配ない」
「きっと大丈夫さ」
そんな言葉が嘘なのはわかっていた。
スプラートの不安は全て現実になっていた。
いま立っている世界が無くなる恐怖、どこにも逃げ出すことができない無力さに、全ての大人達が囚われていた。
集会が終わって皆が寝静まった頃、スプラートは家を抜け出して『穴』が現れた集落跡に向かった。
どうしても自分の不安をその目で確かめたかったのだ。幼い心ながら、例え自分の存在がこの世界から消えるとしても、その理由を知りたかったのだ。
随分と歩いたが、子供の足では森の端に届くことができなかった。
ついに朝になってしまったが、スプラートは歩き続けた。しばらくすると疲れて、木陰で休むことにした。人影の無い森には、昔と変わらない静けさがあった。
木の根元に座り、頭を抱えるように目を瞑った。すぐに眠りに落ちた。
夢の中でスプラートはアインを見た。優しかったお姉ちゃんの姿。どこかの森を歩いているようだった。
アインがこの世界を離れた後、彼女を引き留められなかった事を悔やみ、悲しんでいた時もあった。今は違う。アインがこの世界にいないことが嬉しかった。彼女だけは助かったのだから。
「—了—」