在溫和陽光照耀的陽台上。梅莉與身為未婚夫的鄰國王子威廉,在享受下午時光。
「香草園的視察結果如何了?」
「生長的很好」
「哦,真令人期待。因為加入貴國香草的茶,有非常溫柔的味道」
梅莉是一個雖然小,但是擁有豐富資源及自然的國家的公主。與富有威嚴的父王及溫柔的母后,可靠的女騎士露緹亞一起,和平地生活著。
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但是好景不常,北方的大國因為想要這個國家豐富的自然及礦山,向公主求婚了。
因為已經有跟緣份很深的鄰國王子威廉訂下婚約的關係,梅莉的父親拒絕了求婚後,和平開始崩解。
無法合法的搶奪資源的話就將其毀滅吧。大國因此開始侵略這個國家。
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作為國家象徵的那高雅的城堡,因為大國的軍隊而瞬間火光四起。
國王與王妃被北國給囚禁起來。梅莉與貼身騎士露緹亞,運氣好逃過了一劫。
逃走後梅莉問露緹亞。
「露緹亞,我想救我的國家。有沒有什麼方法?」
「我們先向鄰國求救吧。威廉殿下的話一定願意成為我們的力量」
「但是,我不想要害他們被捲入戰爭……」
「公主殿下。北國是個很恐怖的國家。我不認為他們攻下我國就會罷手。必須通知鄰國知道北國是多麼恐怖的國家才行」
被露緹亞說服的梅莉,逃到了鄰國向威廉求助。
得知北國肆虐情況的鄰國國王感到痛心,聽完梅莉的情況之後提供住處及食物給她們兩人。並告訴梅莉一條道路。
「神聖之山有一位得知世界之理的賢者住在那裡。但是要借助他的力量,公主你們本身必須先跨越他的試煉才行」
「為了拯救我的國家,我什麼都願意做。我要跟露緹亞一起去神聖之山!」
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梅莉與露緹亞以及鄰國派的一名戴著面具的騎士,一同向神聖之山出發了。
面具騎士一直保持沉默。從沒參與梅莉與露緹亞的會話,就只是站在最前方守護著她們。
沒過多久,就得知了騎士的真面目。在路途中因魔物的攻擊,騎士的面具被打飛了。
「威廉殿下!?」
面具騎士的真面目其實是威廉。
威廉用手上的劍打倒魔物後,就以像小孩子惡作劇被發現的表情向梅莉說明真相。
「我本來想要一直隱瞞到旅途結束的」
「為什麼?國王會擔心您的。請快一點回去吧」
「我不能放我將來的伴侶不管。我已經得到父王的同意了」
威廉溫柔地摸摸梅莉的頭。露緹亞微笑著守護著他們兩人。
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梅莉、威廉、露緹亞一同登上神聖之山。
途中雖然有賢者為了打退他人而設置的陷阱,以及魔物的襲擊,但是三人還是合力通過了這些試煉。
「小國的公主啊,妳竟然能夠到達這裡。我就將智慧傳授給通過試煉的妳吧」
住在神聖之山的賢者,看起來是一位介於少年與青年之間的男子。
「賢者啊,請借助我們從北國手中拯救我國的智慧吧」
「北國是被惡魔支配的國家。要將惡魔打倒的話,需要有沉睡在東海神殿裡的秘寶力量」
「秘寶?」
「據說在神殿沉睡的秘寶,似乎擁有可以將世界導向正確方向的力量。能夠得到秘寶的,只有擁有強烈意念的人」
賢者轉達了寫在古老文獻上的內容。
「要得到秘寶的路是非常艱難的。即使這樣妳也要去嗎?」
「我要去。我想要救我的父母。賢者古斯塔夫,謝謝您借用您的智慧給我」
「吾也一起去吧。領導世界的秘寶及領導世界的公主,我想親眼見證這一切」
賢者拿起長杖站了起來。就這樣,稀世賢者古斯塔夫加入拯救國家的旅程。
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借助了古斯塔夫的魔術及智慧得以越過重重難關。要進入位在東海深底的神殿,也是借助了古斯塔夫的智慧。
解除保護秘寶的陷阱,終於找到被保護在神殿深處的秘寶。
發出強烈光芒照亮著神殿內部的是,以複雜的多面體所構成的秘寶。
「公主啊,快拿起秘寶吧。妳有這個資格」
梅莉一伸出手,秘寶就收在梅莉的手心。
「這就是秘寶……」
秘寶在梅莉手中發出淡淡的光芒。
「哦哦。也讓吾看看」
「好的」
梅莉讓古斯塔夫看秘寶,伸出了手。
「這就是,吾長久以來追求的秘寶。擁有能夠真正影響世界的力量,世界的核心」
將秘寶拿在手中的古斯塔夫,突然高聲笑起。
「一切都在吾之手中。那麼,就請已經沒用的公主消失吧」
古斯塔夫的長杖發出奇怪的光輝後,一道閃光向梅莉飛去。
「公主殿下!」
梅莉被露緹亞推飛開。露緹亞代替梅莉承受了古斯塔夫的魔術。
「露緹亞!」
「古斯塔夫!身為賢者的你為何要這麼做!?」
「被稱為賢者已經是老早以前的舊事了。我為了要得到這個秘寶,花費了長久的歲月」
「你騙了我們!?」
威廉拿起劍砍向古斯塔夫,但卻被秘寶之力給彈開。
「公主殿下……」
「露緹亞,不要……死」
「請……活……」
「小嘍囉,煩死了」
古斯塔夫的長杖再次發光。露緹亞化成了無法言語的灰了。
看了一眼傻住的梅莉他們後,古斯塔夫就化為黑光之矢往北國飛走了。
被悲傷籠罩的梅莉及威廉,將露緹亞最後的話收進心底往北國出發了。
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北國被邪惡的秘寶之光給包圍,所有生物都死去,變成了魔物們悠然闊步,像地獄般的場所。
梅莉與威廉急忙趕到黑暗的中心。那裡是北國國王的城堡。
古斯塔夫坐在王座上。手拿著秘寶,使役著非人非魔物的生物。
「哼,竟然追吾追到這裡來,真是辛苦你們了」
「北之國王怎麼了!?」
「一開始就沒有什麼北之國王哦。就算曾經有,也只是吾的分身」
古斯塔夫讓手下退下,自己親自站在梅莉他們面前。
威廉拔出劍,威廉的白銀之劍,已經被之前多數的魔物之血給染黑了。
「你想要用秘寶做什麼」
「就算跟你們說,你們也不可能會理解的吧。吾是不做無謂之事主義的」
「你這傢伙!」
威廉拿劍向古斯塔夫砍下去。
古斯塔夫用杖擋下劍之後,就那樣向威廉施展魔術。
古斯塔夫打算拉遠距離,攻擊威廉。威廉沒有因此緩下他的攻擊。
威廉的劍終於打飛古斯塔夫手中的秘寶。梅莉急忙去把滾飛的秘寶撿起來。
但是在那同時,古斯塔夫的魔術貫穿了威廉的腹部。
「梅莉……」
「啊啊……不要……威廉!」
威廉看著拿著秘寶的梅莉,露出一個微笑後,就那樣死了。
梅莉抱著威廉的遺體,靜靜地流下眼淚。
「竟然給我耍小聰明。小ㄚ頭,把秘寶給我」
梅莉沒有回答。古斯塔夫恢復行動能力後就朝著梅莉揮下杖。
古斯塔夫的魔術向梅莉襲去,但是秘寶的力量不讓古斯塔夫的魔術接近。
「……不能原諒」
梅莉冷冷地聲音,在王座的房間響徹。
梅莉強烈地祈禱了。秘寶感應到梅莉的思念,發出紅黑色的光芒。
「古斯塔夫大人,這裡很危險」
屬下的話語根本無法傳達到古斯塔夫的耳中。
「這就是秘寶……可以真正實現吾之願望的鑰匙」
古斯塔夫沉醉在秘寶的光芒中。那雙眼睛除了發著紅黑色光芒的秘寶以外,什麼也映不進去。
「一切,都消失吧!」
從梅莉的眼眶中滴下眼淚。眼淚滴在秘寶上那瞬間,以梅莉為中心,整個世界都被紅黑色的黑暗給覆蓋了。
一個世界迎向終焉了。人、動物、所有東西。都被黑暗給吞沒了。
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「看來也不是這個世界」
在什麼都沒有的地方,身著粉紅色服飾的年幼梅莉,邊嘆息邊這麼說道。
眼前有著發出淡淡光輝多面體的結晶浮著。
伸出手後,結晶就緩緩地開始轉動,映照出各種世界。
「哥哥……」
就像在回應梅莉的細語似地,結晶體開始發出閃耀光芒。
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「−完−」
「夢路」
優しい光が降り注ぐテラス。そこではメリーと隣国の王子であり婚約者であるヴィルヘルムが、午後のひと時を過ごしていた。
「ハーブ園の視察はいかがでしたか?」
「よく育っていたよ」
「ああ、楽しみ。貴方の国のハーブで入れるお茶は、とても優しい味がしますから」
メリーは、小国ながら資源と自然が豊かな国の姫だった。威厳ある父王と優しい母、頼もしい女騎士であるルディアと共に、平和に暮らしていた。
しかしある時、北の大国が豊かな自然と鉱山欲しさに、王女であるメリーとの婚姻を求めてきた。
縁深い隣国の王子であるヴィルヘルムとの婚姻が決まっていたこともあり、メリーの父がそれを拒否したことから平和は崩れ始める。
資源を合法的に奪うことができないのであれば滅ぼしてしまえ。そう考えた大国の侵略を受けてしまったのだった。
国のシンボルであった瀟洒な城は、大国の軍隊によって瞬く間に炎に包まれた。
王と王妃は北の国に囚われてしまった。メリーはお付きの騎士であるルディアと共に、運よく逃れることができた。
逃げ延びた先で、メリーはルディアに問う。
「ルディア、私は国を救いたい。何か方法はないかしら?」
「まずは隣国に助けを求めましょう。ヴィルヘルム様ならきっとお力添えをしてくれるかと」
「でも、あの方たちを巻き込むわけには……」
「姫様。北の国は恐ろしい国です。我々の国を攻めただけで終わるとは思えません。隣国にも北の国の恐ろしさを知らせる必要があります」
ルディアに説得されたメリーは、隣国へ逃れるとヴィルヘルムに助けを求めた。
北の国の横暴に心を痛めていた隣国の王は、メリーから事情を聞くと、二人に食事と寝所を提供した。そして一つの道をメリーに示した。
「聖なる山に世界の理を知る賢者が住んでいる。だが、彼の者の力を借りるには姫自身が試練を乗り越えねばならないでしょう」
「国を救うためなら何でもできます。ルディアと共に聖なる山に向かいます」
メリーはルディアと隣国一腕が立つという仮面の騎士を伴い、聖なる山に出発した。
仮面の騎士は寡黙だった。メリーやルディアの会話に口を挟むことなく、ただ前を守るようにして進んでいた。
程なくして騎士の正体は明らかになった。道中で出くわした魔物の一撃で、騎士の仮面が飛ばされてしまったのだ。
「ヴィルヘルム様!?」
仮面の騎士の正体はヴィルヘルムだった。
ヴィルヘルムは手にした剣で魔物を打ち倒すと、悪戯がばれた子供のようにばつが悪そうな顔でメリーに向き合った。
「旅が終わるまで隠しておくつもりだったんだけどね」
「なぜ? 王様が心配なさいます。早くご帰還くださいませ」
「将来の伴侶を放っておけないからね。父の承諾は得ているよ」
困惑するメリーの頭をヴィルヘルムが優しく撫でる。そんな二人の様子を、ルディアはニコニコと笑って見守っていた。
メリーは、ヴィルヘルム、ルディアと共に聖なる山を登っていった。
道中には賢者が人を遠ざけるために仕掛けた罠があったり魔物に襲われたりもしたが、三人で力を合わせて乗り越えていった。
「小国の姫、よくぞここまで辿り着いた。試練を乗り越えたお主に知恵を授けよう」
聖なる山に住む賢者は、少年と青年の間のような年頃に見える男だった。
「賢者よ、北の国から私たちの国を救う知恵をお貸しください」
「北の国は悪魔に支配された国。悪魔を倒すには東の海の神殿に眠る秘宝の力が必要だ」
「秘宝?」
「神殿に眠る秘宝には世界を正しく方向に導く力があるという。そして秘宝を手にすることができるのは、強い思いを持つ者に限られる」
賢者は大昔の文献に書かれていることを伝えた。
「秘宝を手に入れる道程は困難を極める。それでも行くか?」
「はい。私は国を、父と母を救いたいのです。賢者ギュスターヴ、知恵をお貸しいただきありがとうございました」
「吾も共に行こう。世界を導く秘宝と世界を導く姫を、この目で見届けたい」
賢者は杖を取り立ち上がった。こうして、国を救う旅に稀代の賢者ギュスターヴが加わった。
ギュスターヴの魔術と知恵は困難を乗り越える助けとなった。東の海の底にある神殿に入るのにも、ギュスターヴの知恵が役にたった。
秘宝を守るための罠や仕掛けを解除し、ついに神殿の奥深くに安置されていた秘宝に辿り着いた。
強い光で神殿の内部を照らしていたのは、複雑な多面体で構成された秘宝だった。
「姫よ、秘宝を手にするがいい。お主にはその資格がある」
メリーが手を伸ばすと、秘宝はメリーの手におさまった。
「これが秘宝……」
秘宝はメリーの手の中で淡い光を放っていた。
「おお。吾にもよく見せてくれ」
「ええ」
メリーはギュスターヴに秘宝を見せるべく、その手を差し出した。
「これこそ、吾が長い間求めていた秘宝。真に世界を動かす力をもつ、世界の要」
秘宝を手にしたギュスターヴは、突如高らかに嗤った。
「全ては吾の手の内よ。では、用済みの姫には消えてもらうとしようか」
ギュスターヴの杖が怪しく輝くと、一筋の閃光がメリーに向かって放たれた。
「姫様!」
メリーはルディアに突き飛ばされる。ルディアはメリーに代わってギュスターヴの術を受けた。
「ルディア!」
「ギュスターヴ! 賢者である貴方がなぜ!?」
「賢者などと言われていたのは昔の話よ。この秘宝を手に入れるために、吾は長い年月を費やした」
「我々を騙したというのか!?」
ヴィルヘルムが剣でギュスターヴに斬り掛かるも、秘宝の力で弾かれてしまう。
「姫様……」
「ルディア、そんな……死なないで」
「どうか……いき……」
「雑魚が、煩いぞ」
再びギュスターヴの杖が光る。ルディアはそのまま物言わぬ灰と化した。
呆然となるメリー達を一瞥すると、ギュスターヴは黒い光の矢となって北の国の方角へと飛び去っていった。
悲しみに暮れるメリーとヴィルヘルムは、ルディアの最後の言葉を胸にして北の国へと向かった。
北の国は邪な秘宝の光に包まれており、あらゆる生物は死に絶え、魔物が闊歩する地獄のような場所となっていた。
メリーとヴィルヘルムは暗闇の中心へ急ぐ。そこは北の国王の居城だった。
玉座にはギュスターヴがいた。秘宝を手に持ち、魔物とも人ともつかない配下を従えていた。
「ふん、吾を追ってここまでやって来るとは、ご苦労なことだ」
「北の王はどうした!?」
「最初から北の王など居りはせんよ。居たとすれば、それは吾の分身だ」
ギュスターヴは配下を下がらせ、自らメリー達の前に立つ。
ヴィルヘルムが剣を抜いた。白銀の剣は、すでに何体もの魔物の血でくすんでいた。
「秘宝をどうするつもりだ」
「お主らに言ったところで、理解など得られる筈もなかろう。吾は無駄なことはしない主義でな」
「貴様!」
ヴィルヘルムがギュスターヴに向かって剣を振り抜いた。
ギュスターヴの杖が剣を受けると、そのままヴィルヘルムに向かって魔術を仕掛ける。
距離を取ろうとするギュスターヴ、肉薄するヴィルヘルム。ヴィルヘルムの攻撃の手が緩むことはなかった。
ついにヴィルヘルムの剣がギュスターヴの手から秘宝を弾く。メリーは急いで転がり落ちた秘宝を拾い上げた。
しかしそれと同時に、ギュスターヴの魔術がヴィルヘルムの腹部を貫いた。
「メリー……」
「あぁ……そんな……ヴィルヘルム!」
ヴィルヘルムは秘宝を手にしたメリーを見つめて微笑むと、そのまま絶命した。
ヴィルヘルムの亡骸を抱きかかえたメリーは、静かに涙を流した。
「小賢しい真似をしてくれる。小娘、秘宝を吾に渡せ」
メリーは答えない。痺れを切らせたギュスターヴがメリーに向けて杖を振るう。
ギュスターヴの魔術がメリーを襲うが、秘宝の力がギュスターヴの術を寄せ付けなかった。
「……許さない」
メリーの冷たい声が、王座の間に響く。
メリーは強く祈った。秘宝はメリーの思いに感応し、赤黒い光を放ち始めた。
「ギュスターヴ様、ここは危険です」
配下の言葉はギュスターヴに届かなかった。
「これが秘宝……吾の望みを真に叶える鍵」
秘宝の光に魅入られたギュスターヴ。その目には赤黒く光る秘宝しか映っていなかった。
「全部、なくなってしまえ!」
メリーの目から涙がこぼれた。涙が秘宝を濡らしたその時、メリーを中心に赤黒い闇が世界を覆い尽くした。
一つの世界が終わりを告げた。人も、動物も、無機物も。闇は全てを飲み込んだ。
「この世界も違ったようですね」
何もない空虚な場所で、桃色の衣装を身に纏った幼いメリーは、溜息と共に呟いた。
目の前には淡く輝く多面体の結晶が浮かんでいる。
手をかざすと結晶はゆっくりと回転を始め、面ごとに様々な世界を映し出す。
「お兄さん……」
メリーの呟きに呼応するように、結晶体は煌めいていた。
「—了—」
優しい光が降り注ぐテラス。そこではメリーと隣国の王子であり婚約者であるヴィルヘルムが、午後のひと時を過ごしていた。
「ハーブ園の視察はいかがでしたか?」
「よく育っていたよ」
「ああ、楽しみ。貴方の国のハーブで入れるお茶は、とても優しい味がしますから」
メリーは、小国ながら資源と自然が豊かな国の姫だった。威厳ある父王と優しい母、頼もしい女騎士であるルディアと共に、平和に暮らしていた。
しかしある時、北の大国が豊かな自然と鉱山欲しさに、王女であるメリーとの婚姻を求めてきた。
縁深い隣国の王子であるヴィルヘルムとの婚姻が決まっていたこともあり、メリーの父がそれを拒否したことから平和は崩れ始める。
資源を合法的に奪うことができないのであれば滅ぼしてしまえ。そう考えた大国の侵略を受けてしまったのだった。
国のシンボルであった瀟洒な城は、大国の軍隊によって瞬く間に炎に包まれた。
王と王妃は北の国に囚われてしまった。メリーはお付きの騎士であるルディアと共に、運よく逃れることができた。
逃げ延びた先で、メリーはルディアに問う。
「ルディア、私は国を救いたい。何か方法はないかしら?」
「まずは隣国に助けを求めましょう。ヴィルヘルム様ならきっとお力添えをしてくれるかと」
「でも、あの方たちを巻き込むわけには……」
「姫様。北の国は恐ろしい国です。我々の国を攻めただけで終わるとは思えません。隣国にも北の国の恐ろしさを知らせる必要があります」
ルディアに説得されたメリーは、隣国へ逃れるとヴィルヘルムに助けを求めた。
北の国の横暴に心を痛めていた隣国の王は、メリーから事情を聞くと、二人に食事と寝所を提供した。そして一つの道をメリーに示した。
「聖なる山に世界の理を知る賢者が住んでいる。だが、彼の者の力を借りるには姫自身が試練を乗り越えねばならないでしょう」
「国を救うためなら何でもできます。ルディアと共に聖なる山に向かいます」
メリーはルディアと隣国一腕が立つという仮面の騎士を伴い、聖なる山に出発した。
仮面の騎士は寡黙だった。メリーやルディアの会話に口を挟むことなく、ただ前を守るようにして進んでいた。
程なくして騎士の正体は明らかになった。道中で出くわした魔物の一撃で、騎士の仮面が飛ばされてしまったのだ。
「ヴィルヘルム様!?」
仮面の騎士の正体はヴィルヘルムだった。
ヴィルヘルムは手にした剣で魔物を打ち倒すと、悪戯がばれた子供のようにばつが悪そうな顔でメリーに向き合った。
「旅が終わるまで隠しておくつもりだったんだけどね」
「なぜ? 王様が心配なさいます。早くご帰還くださいませ」
「将来の伴侶を放っておけないからね。父の承諾は得ているよ」
困惑するメリーの頭をヴィルヘルムが優しく撫でる。そんな二人の様子を、ルディアはニコニコと笑って見守っていた。
メリーは、ヴィルヘルム、ルディアと共に聖なる山を登っていった。
道中には賢者が人を遠ざけるために仕掛けた罠があったり魔物に襲われたりもしたが、三人で力を合わせて乗り越えていった。
「小国の姫、よくぞここまで辿り着いた。試練を乗り越えたお主に知恵を授けよう」
聖なる山に住む賢者は、少年と青年の間のような年頃に見える男だった。
「賢者よ、北の国から私たちの国を救う知恵をお貸しください」
「北の国は悪魔に支配された国。悪魔を倒すには東の海の神殿に眠る秘宝の力が必要だ」
「秘宝?」
「神殿に眠る秘宝には世界を正しく方向に導く力があるという。そして秘宝を手にすることができるのは、強い思いを持つ者に限られる」
賢者は大昔の文献に書かれていることを伝えた。
「秘宝を手に入れる道程は困難を極める。それでも行くか?」
「はい。私は国を、父と母を救いたいのです。賢者ギュスターヴ、知恵をお貸しいただきありがとうございました」
「吾も共に行こう。世界を導く秘宝と世界を導く姫を、この目で見届けたい」
賢者は杖を取り立ち上がった。こうして、国を救う旅に稀代の賢者ギュスターヴが加わった。
ギュスターヴの魔術と知恵は困難を乗り越える助けとなった。東の海の底にある神殿に入るのにも、ギュスターヴの知恵が役にたった。
秘宝を守るための罠や仕掛けを解除し、ついに神殿の奥深くに安置されていた秘宝に辿り着いた。
強い光で神殿の内部を照らしていたのは、複雑な多面体で構成された秘宝だった。
「姫よ、秘宝を手にするがいい。お主にはその資格がある」
メリーが手を伸ばすと、秘宝はメリーの手におさまった。
「これが秘宝……」
秘宝はメリーの手の中で淡い光を放っていた。
「おお。吾にもよく見せてくれ」
「ええ」
メリーはギュスターヴに秘宝を見せるべく、その手を差し出した。
「これこそ、吾が長い間求めていた秘宝。真に世界を動かす力をもつ、世界の要」
秘宝を手にしたギュスターヴは、突如高らかに嗤った。
「全ては吾の手の内よ。では、用済みの姫には消えてもらうとしようか」
ギュスターヴの杖が怪しく輝くと、一筋の閃光がメリーに向かって放たれた。
「姫様!」
メリーはルディアに突き飛ばされる。ルディアはメリーに代わってギュスターヴの術を受けた。
「ルディア!」
「ギュスターヴ! 賢者である貴方がなぜ!?」
「賢者などと言われていたのは昔の話よ。この秘宝を手に入れるために、吾は長い年月を費やした」
「我々を騙したというのか!?」
ヴィルヘルムが剣でギュスターヴに斬り掛かるも、秘宝の力で弾かれてしまう。
「姫様……」
「ルディア、そんな……死なないで」
「どうか……いき……」
「雑魚が、煩いぞ」
再びギュスターヴの杖が光る。ルディアはそのまま物言わぬ灰と化した。
呆然となるメリー達を一瞥すると、ギュスターヴは黒い光の矢となって北の国の方角へと飛び去っていった。
悲しみに暮れるメリーとヴィルヘルムは、ルディアの最後の言葉を胸にして北の国へと向かった。
北の国は邪な秘宝の光に包まれており、あらゆる生物は死に絶え、魔物が闊歩する地獄のような場所となっていた。
メリーとヴィルヘルムは暗闇の中心へ急ぐ。そこは北の国王の居城だった。
玉座にはギュスターヴがいた。秘宝を手に持ち、魔物とも人ともつかない配下を従えていた。
「ふん、吾を追ってここまでやって来るとは、ご苦労なことだ」
「北の王はどうした!?」
「最初から北の王など居りはせんよ。居たとすれば、それは吾の分身だ」
ギュスターヴは配下を下がらせ、自らメリー達の前に立つ。
ヴィルヘルムが剣を抜いた。白銀の剣は、すでに何体もの魔物の血でくすんでいた。
「秘宝をどうするつもりだ」
「お主らに言ったところで、理解など得られる筈もなかろう。吾は無駄なことはしない主義でな」
「貴様!」
ヴィルヘルムがギュスターヴに向かって剣を振り抜いた。
ギュスターヴの杖が剣を受けると、そのままヴィルヘルムに向かって魔術を仕掛ける。
距離を取ろうとするギュスターヴ、肉薄するヴィルヘルム。ヴィルヘルムの攻撃の手が緩むことはなかった。
ついにヴィルヘルムの剣がギュスターヴの手から秘宝を弾く。メリーは急いで転がり落ちた秘宝を拾い上げた。
しかしそれと同時に、ギュスターヴの魔術がヴィルヘルムの腹部を貫いた。
「メリー……」
「あぁ……そんな……ヴィルヘルム!」
ヴィルヘルムは秘宝を手にしたメリーを見つめて微笑むと、そのまま絶命した。
ヴィルヘルムの亡骸を抱きかかえたメリーは、静かに涙を流した。
「小賢しい真似をしてくれる。小娘、秘宝を吾に渡せ」
メリーは答えない。痺れを切らせたギュスターヴがメリーに向けて杖を振るう。
ギュスターヴの魔術がメリーを襲うが、秘宝の力がギュスターヴの術を寄せ付けなかった。
「……許さない」
メリーの冷たい声が、王座の間に響く。
メリーは強く祈った。秘宝はメリーの思いに感応し、赤黒い光を放ち始めた。
「ギュスターヴ様、ここは危険です」
配下の言葉はギュスターヴに届かなかった。
「これが秘宝……吾の望みを真に叶える鍵」
秘宝の光に魅入られたギュスターヴ。その目には赤黒く光る秘宝しか映っていなかった。
「全部、なくなってしまえ!」
メリーの目から涙がこぼれた。涙が秘宝を濡らしたその時、メリーを中心に赤黒い闇が世界を覆い尽くした。
一つの世界が終わりを告げた。人も、動物も、無機物も。闇は全てを飲み込んだ。
「この世界も違ったようですね」
何もない空虚な場所で、桃色の衣装を身に纏った幼いメリーは、溜息と共に呟いた。
目の前には淡く輝く多面体の結晶が浮かんでいる。
手をかざすと結晶はゆっくりと回転を始め、面ごとに様々な世界を映し出す。
「お兄さん……」
メリーの呟きに呼応するように、結晶体は煌めいていた。
「—了—」