「唉……」
少女小小的嘆了一口氣,坐到了對她那嬌小的身體來說明顯過大的王座上。她的年齡只有十幾歲。從那還帶有一點童真的端正面容中,看得出她有些疲倦。
「做得很好,艾蕾可。不對,必須稱妳為亞歷山德莉安娜女王陛下了」
隨侍在身旁的女性,以親切溫柔的聲音對少女說道。
「……真是的,別那樣叫我。我希望艾妲還是一樣叫我艾蕾可」
被稱作艾妲的女性,刻意擺出了固執認真的表情搖了頭。
「那是不行的,陛下。會讓旁人說閒話」
亞歷山德莉安娜瞪大了眼睛看著一臉嚴肅的表情,接著就偷偷地笑了出來。艾妲也因此跟著露出了笑容。
少女的名字叫亞歷山德莉安娜。大約只有十二歲 1 ,直到昨天為止她還只是聯合國盟主魯比歐那聯合王國的第一王位繼承人。然而到了今天,就正式的繼承了王位,成為了魯比歐那聯合王國的女王。
隨侍在她身旁的艾妲·拉克蘭,年紀比亞歷山德莉安娜大了8歲。她也是以二十歲的年紀,就所屬在魯比歐那引以為傲的裝甲獵兵『奧羅爾隊』中的驍勇戰士。艾妲從亞歷山德莉安娜小時開始就一直是她的專屬護衛,而且也以聊天夥伴的身份一直隨侍在她身邊。但是,這些也都只到今天為止了。
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前女王奧古斯特的猝死令王國陷入了一片混亂。女兒亞歷山德莉安娜才十二歲。在這個與帝國的戰爭越演越烈,聯合國內也略顯動亂的時期。由於先王文武雙全的緣故,更顯得將國家命運交付到一個少女手中太過危險了。
但,貴族們的各種疑慮,以及沒有其他繼承人的情況下,最後還是由亞歷山德莉安娜繼承了王位。當然,年幼的少女要掌控國政是不可能的事情。所以政務還是由身旁有能的官僚處理,少女不過就只是個象徵性的存在罷了。
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「可是」
亞歷山德莉安娜年紀雖小,卻發出了有力的聲音。
「艾妲。我想盡可能的減少犧牲」
「陛下……」
「我的確沒有力量也沒有知識。大部分的事都是大臣或是其他官僚就做好決定了。但是,我想一定還有一些我可以做的事」
說出想法的亞歷山德莉安娜,雖然年幼卻也流露出了女王的氣勢。
艾妲被亞歷山德莉安娜的心意所打動。改變了一往親切的態度,屈膝跪下,
「陛下的決心,艾妲會銘記在心。微臣將盡微薄的力量支持陛下」
說完便深深的低下頭。亞歷山德莉安娜雖然有一瞬間感到困惑,不過馬上就以嚴肅的表情,盡全力發出威嚴的聲音。
「謝謝你,艾妲。希望妳從今以後也能為了我努力」
這是,真正的君王與下臣的關係。二人從此刻起,已經完全脫離了長年相處下來有如姊妹般的關係了。
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「為此,我希望戰爭能盡早結束。就算要談和也……。艾妲,這是有可能的嗎」
被女王用純真雙眼望著的艾妲,臉上出現了為難的表情。
「照現況來看是不可能的。帝國是一個野心很大的國家。貪心的他們一心只想著擴張版圖。以現在的情況去談和,他們一定不會接受的吧」
「這樣啊」
少女一副失望的臉。艾妲對於這純粹的想法深感贊同。但是,政治是與感情分離的世界,艾妲是明白這點的。
「為什麼,他們會想要爭奪呢?」
「他們戰爭的理由,是因為有個自稱不死皇帝所做的誇口昭告。說是要『平定所有的土地讓黃金時代復活』。野蠻的他們假借已逝皇帝之名,讓民眾狂熱於戰爭之中」
「妳的意思是沒有辦法說服他們吧」
「是的。他們的野蠻程度及對戰爭的渴望,在渦都已經消失的現在,變得更加明確。就連光看那個國家的建國課程都能明白」
「但是,民眾們很痛苦……」
「如果我們敗給了帝國的話,會比現在還要更痛苦。請想成我們魯比歐那聯合王國是為了阻止他們的野心跟慾望而存在的」
艾妲是軍人。不過從來沒有將那一部分讓亞歷山德莉安娜看過。現在身為下臣的她,卻是以軍人的本份在發言。
「我知道了」
年幼的新女王失望的垂下肩膀。感覺就像是自己的不成熟被指正的感覺。但就算是這樣,亞歷山德莉安娜還是想阻止戰爭。
艾妲看著亞歷山德莉安娜失落的表情心中更加難過。像是要盡全力安慰她般,將手搭到她肩上溫柔的說著。
「不過,要是我們取得了優勢的話,帝國或許就會回應我們的和平提議了吧。我國有堅固的要塞。打擊他們的士氣也不是不可能」
「那一定會讓很多人痛苦吧」
「犧牲是不可避免的。陛下」
「但是,請不要覺得這會讓大家感到痛苦。包括我在內,為了王國在奮戰的士兵們,大家都理解這是為了大義」
艾妲重新握緊了女王的手。
「陛下,您只要做出讓我們士兵們能夠安心地為了大義而戰的決定就好了」
艾妲知道這樣的要求對女王來說是很殘酷的。但是女王必須了解身為一個女王是有著什麼樣的意義。
「大家明明一直都很盡力,我卻說了任性的話」
「不。您不需要這樣責怪自己。為了讓陛下理想的和平可以早日實現,我們所有人都會拼了性命去奮鬥」
「謝謝妳,艾妲」
「陛下,今天您也累了吧。請早點休息。明天開始會有政務要忙」
「那我就休息吧。艾妲,妳還會再來見我的吧」
「陛下希望的話,無論什麼時候我都會來的」
艾妲說完,深深的鞠躬後,就離開了女王的房間。
「謝謝妳,艾妲。希望妳也能平安無事……」
亞歷山德莉安娜那細語的聲音,並沒有傳達到艾妲那。
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登基後初次謁見奧羅爾隊的那一天,艾妲與隊員們穿著整齊的禮服,在皇宮裡待命。
「怎麼了。悶悶不樂的樣子」
同隊的佛羅倫斯向艾妲問道。她們既是同年紀的好友,也是一起戰鬥的夥伴。裝甲獵兵在特性上,雖然有著豐富的武裝,但同時視線跟行動卻有所限制。為了彌補這一點,戰鬥中必須保持二個人一起行動。這樣的羈絆是相當強力的。
「跟陛下談過話了。她看起來相當難過的樣子」
「她年紀還小。這也是沒辦法的」
佛羅倫斯不帶任何感情的說著。
「我幫不上任何忙」
「也許是吧。不過,妳可以代替她戰鬥」
「……說的也是」
奧羅爾隊原本是隸屬於皇宮的精英部隊,幾乎沒有到過前線作戰。但帝國加強了攻勢後,已經到達托雷依德永久要塞,他們也被派出去迎戰。這也就是為此舉辦的閱兵兼出陣式。
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在整隊的號令下,奧羅爾隊的隊員們依序排開。接著按照隊長的指令行禮。
到場觀禮的亞歷山德莉安娜女王表情嚴肅。
看到女王的表情,艾妲心中感到了些許安心,並且也對自己即將迎接的戰鬥更加有信心。
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「─完─」
3394年 「新女王」
「ふう……」
少女は小さく溜息をついて、その小さな体には大きすぎる玉座に腰を下ろした。年の頃は十代の前半に見える。まだ幼さの残るその端正な顔には、疲労の色が見えていた。
「よく頑張りましたね、アレク。いえ、もうアレキサンドリアナ女王陛下とお呼びしなければなりませんね」
傍らに控える女性が、少女をいたわるように優しく声を掛けた。
「……もう、そんな風に呼ばないで。エイダにはいつも通りアレクと呼んでほしいわ」
エイダと呼ばれた女性は、わざとしかつめらしい顔をして首を振った。
「そうは参りません、陛下。 周りの者に示しがつきません」
その仰々しい顔にアレキサンドリアナは目を丸くし、続いてくすくすと笑い出した。それにつられてエイダの顔も綻びる。
少女の名はアレキサンドリアナ。若干十二歳にして、昨日までは連合国の盟主たるルビオナ王国の第一王位継承者だった。そして本日、正式に王位を継ぎ、ルビオナ王国女王となったのだ。
その傍らに控えるエイダ・ラクランは、アレキサンドリアナより八歳年上だ。こちらも、二十歳という若さにして、ルビオナが誇る装甲猟兵『オーロール隊』に所属する腕利きの戦士である。エイダはアレキサンドリアナが幼い頃から、彼女の護衛として、また、よき話し相手として側に仕えてきた。だが、それも本日をもって終わりを告げることだろう。
先の女王アウグステの急死は王国に混乱をもたらした。息女であるアレキサンドリアナはまだ十二歳。帝國との戦争が激化し、連合国内の連帯にも乱れが見えるこの時期である。先王が文武双方に秀でていただけに、少女の双肩に国の運命を乗せるのはあまりにも危険だった。
だが、貴族達の様々な思惑と、他に有力な候補が居なかったという理由で、結局はアレキサンドリアナが王位を継ぐこととなった。もちろん、幼い少女が国政を動かすことなどできない。執政は周りの有力公家が行い、少女は奉られるだけの存在であった。
「でも」
アレキサンドリアナは小さな、しかし力の籠もった声を出した。
「私はなるべく犠牲を少なくしたいのです。エイダ」
「陛下……」
「確かに、私には力も知識もない。大部分は大臣やその他の官僚が決めてしまうでしょう。ですが、私にできることが、きっとあると思うのです」
そう言うアレキサンドリアナは、幼いながらも女王の顔となっていた。
エイダはアレキサンドリアナの決意に胸を打たれた。そしてそれまでの親しげな態度を改め、膝をつき、
「陛下の決意、エイダはしかと承りました。不肖の身ではありますが、微力を尽くして陛下を支えて参ります」
そう言って深く頭を下げた。一瞬戸惑ったアレキサンドリアナだったが、すぐに表情を引き締め、精一杯威厳のある声を出した。
「ありがとう、エイダ。これからも私のために励んでくださいね」
それは、歴とした王と臣下の姿だった。二人はこの時を以て、長年共に生きてきた姉妹のような関係を脱却したのだった。
「そのためにも、私は一刻も早い戦争の終結を望みます。たとえそれが講和であっても……。エイダ、それは可能でしょうか」
女王の無垢な瞳を向けられたエイダは、難しい表情を浮かべた。
「今のままでは無理でしょう。帝國は恐ろしい野心をもった国家です。貪欲な彼らは、どこまでもその版図を拡げようとしています。今の状況で講和など、彼らは到底飲まないでしょう」
「そうですか」
少女の顔に落胆が浮かんだ。エイダはその純粋な思いに深く共鳴した。しかし、政治は感情とは分離した世界だと、エイダは理解していた。
「なぜ、彼らは争いを求めているのです?」
「彼らの戦争の理由は、自ら戴いた不死皇帝とやらの勅命だとうそぶいています。曰く『地上を平定して黄金時代を復活させる』と。 野蛮な彼らは死んだ皇帝の名を借りて、民衆をその戦争の熱狂に駆り立てているのです」
「説得の余地は無いと」
「はい。彼らの野蛮さと戦争を欲する姿は、渦が無くなった今、より明確になりました。かの国の建国の過程をみてもそれは明らかです」
「しかし、民衆が苦しんでいるのです……」
「帝國に敗北すればより苦しむのです。我々ルビオナが連合王国としてここにあるのも、彼らの野望、妄執を食い止めるためだとお考えください」
エイダは軍人であった。しかしその部分をアレキサンドリアナに見せたことはなかった。今は臣下として、軍人としての本分を語っていた。
「わかりました」
幼い新女王は落胆で肩を落とした。自身の未熟さをたしなめられた気分だった。しかしそれでも、アレキサンドリアナは戦争を止めたかった。
エイダは落ち込んだアレキサンドリアナの顔を見て胸が苦しくなる。精一杯慰めようと、手を肩に置いて優しく語り掛けた。
「ですが、こちらが優勢になれば帝國も和平に応じるかもしれません。我が国には堅固な要塞もあります。彼らの意気を挫くことも不可能ではありません」
「多くの人が苦しみますね。きっと」
「犠牲はつきものです。陛下」
「ただ、皆を苦しめるとは思わないで下さい。王国のために戦う兵士は皆、大義を理解しています。私を含め」
あらためてエイダは女王の手を握りしめた。
「陛下は、我々兵士が安心してその大義に尽くせるよう振る舞ってくださればいいのです」
これを求めるのは酷なことだとエイダはわかっていた。しかし、女王になるということの意味を理解してもらわなければならなかった。
「わがままを言いました。あなたたちは、よく頑張ってくれているのに」
「いいえ。もったいないお言葉です。陛下の和平への想いが一日も早く実現する様、我々一同、命を懸けて奮闘致します」
「ありがとう、エイダ」
「陛下、今日はお疲れでしょう。早めにお休みください。明日からは御政務もございます」
「そうさせていただきます。 エイダ、また来てくれますか?」
「陛下がお望みとあれば、いつ如何なる時にも参上致します」
エイダはそう言うと、頭を深く下げて、女王の居室を後にした。
「ありがとう、エイダ。どうかあなたも無事でいて……」
そう呟いたアレキサンドリアナの声は、エイダの背中には届かなかった。
即位後初めてのオーロール隊への謁見が行われる日、エイダ達隊員は礼服に整え、王宮で待機していた。
「どうした。浮かない顔だな」
同じ隊に所属するフロレンスが声を掛けてきた。彼女は同い年の親友であり、戦闘でのパートナーでもあった。装甲猟兵はその特性として、武装は豊富だが視覚や行動に制限があった。それをカバーするために、戦闘中は常に二人で行動する。その結びつきは非常に強固だった。
「陛下と話をした。とても苦しんでおられる」
「まだ幼い。仕方の無いことだ」
フロレンスは感情を込めずに言った。
「私にできることなど何もない」
「かもしれんな。だが、彼女の代わりに戦うことはできる」
「……そうだな」
オーロール隊は本来王宮付きのエリート部隊であり、前線に出ることは殆ど無かった。しかし帝國の攻勢が強まり、トレイド永久要塞へと到達したため、彼らも恒久的に派遣されることとなった。そのための、出陣式を兼ねた閲兵であった。
整列の号令が掛かり、オーロール隊の面々が並んだ。隊長の号令の下、敬礼を行う。
現れたアレキサンドリアナ女王の表情は凛としていた。
その顔を見て、エイダは少しの安心を感じると共に、自らの戦いへの思いを強くした。
「—了—」
「ふう……」
少女は小さく溜息をついて、その小さな体には大きすぎる玉座に腰を下ろした。年の頃は十代の前半に見える。まだ幼さの残るその端正な顔には、疲労の色が見えていた。
「よく頑張りましたね、アレク。いえ、もうアレキサンドリアナ女王陛下とお呼びしなければなりませんね」
傍らに控える女性が、少女をいたわるように優しく声を掛けた。
「……もう、そんな風に呼ばないで。エイダにはいつも通りアレクと呼んでほしいわ」
エイダと呼ばれた女性は、わざとしかつめらしい顔をして首を振った。
「そうは参りません、陛下。 周りの者に示しがつきません」
その仰々しい顔にアレキサンドリアナは目を丸くし、続いてくすくすと笑い出した。それにつられてエイダの顔も綻びる。
少女の名はアレキサンドリアナ。若干十二歳にして、昨日までは連合国の盟主たるルビオナ王国の第一王位継承者だった。そして本日、正式に王位を継ぎ、ルビオナ王国女王となったのだ。
その傍らに控えるエイダ・ラクランは、アレキサンドリアナより八歳年上だ。こちらも、二十歳という若さにして、ルビオナが誇る装甲猟兵『オーロール隊』に所属する腕利きの戦士である。エイダはアレキサンドリアナが幼い頃から、彼女の護衛として、また、よき話し相手として側に仕えてきた。だが、それも本日をもって終わりを告げることだろう。
先の女王アウグステの急死は王国に混乱をもたらした。息女であるアレキサンドリアナはまだ十二歳。帝國との戦争が激化し、連合国内の連帯にも乱れが見えるこの時期である。先王が文武双方に秀でていただけに、少女の双肩に国の運命を乗せるのはあまりにも危険だった。
だが、貴族達の様々な思惑と、他に有力な候補が居なかったという理由で、結局はアレキサンドリアナが王位を継ぐこととなった。もちろん、幼い少女が国政を動かすことなどできない。執政は周りの有力公家が行い、少女は奉られるだけの存在であった。
「でも」
アレキサンドリアナは小さな、しかし力の籠もった声を出した。
「私はなるべく犠牲を少なくしたいのです。エイダ」
「陛下……」
「確かに、私には力も知識もない。大部分は大臣やその他の官僚が決めてしまうでしょう。ですが、私にできることが、きっとあると思うのです」
そう言うアレキサンドリアナは、幼いながらも女王の顔となっていた。
エイダはアレキサンドリアナの決意に胸を打たれた。そしてそれまでの親しげな態度を改め、膝をつき、
「陛下の決意、エイダはしかと承りました。不肖の身ではありますが、微力を尽くして陛下を支えて参ります」
そう言って深く頭を下げた。一瞬戸惑ったアレキサンドリアナだったが、すぐに表情を引き締め、精一杯威厳のある声を出した。
「ありがとう、エイダ。これからも私のために励んでくださいね」
それは、歴とした王と臣下の姿だった。二人はこの時を以て、長年共に生きてきた姉妹のような関係を脱却したのだった。
「そのためにも、私は一刻も早い戦争の終結を望みます。たとえそれが講和であっても……。エイダ、それは可能でしょうか」
女王の無垢な瞳を向けられたエイダは、難しい表情を浮かべた。
「今のままでは無理でしょう。帝國は恐ろしい野心をもった国家です。貪欲な彼らは、どこまでもその版図を拡げようとしています。今の状況で講和など、彼らは到底飲まないでしょう」
「そうですか」
少女の顔に落胆が浮かんだ。エイダはその純粋な思いに深く共鳴した。しかし、政治は感情とは分離した世界だと、エイダは理解していた。
「なぜ、彼らは争いを求めているのです?」
「彼らの戦争の理由は、自ら戴いた不死皇帝とやらの勅命だとうそぶいています。曰く『地上を平定して黄金時代を復活させる』と。 野蛮な彼らは死んだ皇帝の名を借りて、民衆をその戦争の熱狂に駆り立てているのです」
「説得の余地は無いと」
「はい。彼らの野蛮さと戦争を欲する姿は、渦が無くなった今、より明確になりました。かの国の建国の過程をみてもそれは明らかです」
「しかし、民衆が苦しんでいるのです……」
「帝國に敗北すればより苦しむのです。我々ルビオナが連合王国としてここにあるのも、彼らの野望、妄執を食い止めるためだとお考えください」
エイダは軍人であった。しかしその部分をアレキサンドリアナに見せたことはなかった。今は臣下として、軍人としての本分を語っていた。
「わかりました」
幼い新女王は落胆で肩を落とした。自身の未熟さをたしなめられた気分だった。しかしそれでも、アレキサンドリアナは戦争を止めたかった。
エイダは落ち込んだアレキサンドリアナの顔を見て胸が苦しくなる。精一杯慰めようと、手を肩に置いて優しく語り掛けた。
「ですが、こちらが優勢になれば帝國も和平に応じるかもしれません。我が国には堅固な要塞もあります。彼らの意気を挫くことも不可能ではありません」
「多くの人が苦しみますね。きっと」
「犠牲はつきものです。陛下」
「ただ、皆を苦しめるとは思わないで下さい。王国のために戦う兵士は皆、大義を理解しています。私を含め」
あらためてエイダは女王の手を握りしめた。
「陛下は、我々兵士が安心してその大義に尽くせるよう振る舞ってくださればいいのです」
これを求めるのは酷なことだとエイダはわかっていた。しかし、女王になるということの意味を理解してもらわなければならなかった。
「わがままを言いました。あなたたちは、よく頑張ってくれているのに」
「いいえ。もったいないお言葉です。陛下の和平への想いが一日も早く実現する様、我々一同、命を懸けて奮闘致します」
「ありがとう、エイダ」
「陛下、今日はお疲れでしょう。早めにお休みください。明日からは御政務もございます」
「そうさせていただきます。 エイダ、また来てくれますか?」
「陛下がお望みとあれば、いつ如何なる時にも参上致します」
エイダはそう言うと、頭を深く下げて、女王の居室を後にした。
「ありがとう、エイダ。どうかあなたも無事でいて……」
そう呟いたアレキサンドリアナの声は、エイダの背中には届かなかった。
即位後初めてのオーロール隊への謁見が行われる日、エイダ達隊員は礼服に整え、王宮で待機していた。
「どうした。浮かない顔だな」
同じ隊に所属するフロレンスが声を掛けてきた。彼女は同い年の親友であり、戦闘でのパートナーでもあった。装甲猟兵はその特性として、武装は豊富だが視覚や行動に制限があった。それをカバーするために、戦闘中は常に二人で行動する。その結びつきは非常に強固だった。
「陛下と話をした。とても苦しんでおられる」
「まだ幼い。仕方の無いことだ」
フロレンスは感情を込めずに言った。
「私にできることなど何もない」
「かもしれんな。だが、彼女の代わりに戦うことはできる」
「……そうだな」
オーロール隊は本来王宮付きのエリート部隊であり、前線に出ることは殆ど無かった。しかし帝國の攻勢が強まり、トレイド永久要塞へと到達したため、彼らも恒久的に派遣されることとなった。そのための、出陣式を兼ねた閲兵であった。
整列の号令が掛かり、オーロール隊の面々が並んだ。隊長の号令の下、敬礼を行う。
現れたアレキサンドリアナ女王の表情は凛としていた。
その顔を見て、エイダは少しの安心を感じると共に、自らの戦いへの思いを強くした。
「—了—」
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文中描寫年齡的方式分為兩種:
a. 中文字(表示實際數字)
「…十二歲,直到昨天為止她還只是…」
「…她也是以二十歲…」
b. 阿拉伯數字(表示差距)
「…年紀比亞歷山德莉安娜大了8歲。…」 ↩