羊角獸2015(含日版)

「I WANT YOU !」

在魔女之谷的深處,有一棟莊嚴的建築靜靜地佇立在那裡。

炎之聖女找來的佈告者們,邊等待取回自己記憶的時刻,各自抱著不同的想法生活在這裡。



「無聊」

在被分配到用來休息的房間內,沒有事情可做的古斯塔夫,慵懶地躺在沙發上。

引導者說要休息一直窩在她的房間不出來,如果打算一個人探索魔女之谷的話就會被侍者們阻止。就算為了消遣想做個標本,也因為這個世界沒有想要的道具只好放棄。

綜合來說就是,古斯塔夫非常閒。

追尋著生前殘留的那一點點記憶,只記得自己坐在地下深處的組織玉座上,還是一樣很無聊地在聽著部下的報告。

「……好」

稍微思考了一下的古斯塔夫似乎想到了什麼事,然後就打算實踐那個想法,得意地離開房間往大廳去。



往大廳的途中,經過了一間傳來機械音的房間。輕輕打開一點房門,看到正在修理自己裝備的沃肯與C.C.。

就那樣把門打開,跟兩人打一下招呼後,就到還空著的工作檯佔位。

「咦,真難得。古斯塔夫也來修裝備嗎?」

在附近的C.C.向古斯塔夫問道。雖然她是奇怪的女人,但是作為機器技術者來說確實有一套,就連古斯塔夫都看得出她的實力。

古斯塔夫就決定將C.C.當作目標。

「是嗎?因為吾想要自己使用的道具隨時保持良好狀態,但房間的設備不足才來的」

雖然跟自己本來的目的不同,但是為了配合C.C.的話題。

「這樣啊。果然還是為了想早點取回記憶嗎?」

「嗯。已經厭倦總是想不起來的這種感覺了」

C.C.持續看著自己的裝備,與古斯塔夫對話著。

「我也是!我總覺得不快點回到地上不行,有點兒焦急」

「但是,吾等來到這裡已經好一陣子了,地上可能也有變化了」

「這麼說來也是……。就算回到地上,說不定也無法回到潘德莫尼了……」

心想對方意外地馬上上鉤,古斯塔夫內心得意地邊笑著,邊與C.C.持續對話。

「那麼,沒有地方可以去的話,就來吾所擁有的研究所工作如何?因為吾的組織堅若磐石,不需要擔心會崩壞」

「這是在挖角嗎?」

「看妳要怎麼判斷都可以。優秀的技術者有再多都嫌不夠」

古斯塔夫打算將聖女之館的人們拉為同志,在這個世界擴充自己的組織。

要順利誘惑意志力強的佈告者們應該會是件蠻有趣的事吧,簡單來說,就是兼具排遣無聊與實益的遊戲。



「你們好像在說什麼有趣的事」

「哦,你對這話題有興趣嗎?」

似乎也來檢查裝備的瑪爾瑟斯出現,加入對話。

但是瑪爾瑟斯不是個簡單的人物,一個不小心立場可能會對調。

「依情況的不同,就算目的不同,也可以建立對雙方都有利的關係啊」

「你是說擁有強大力量的人之間,互相分享利益嗎?」

古斯塔夫跟瑪爾瑟斯互相用眼神在角力。

「如果你願意表明些什麼來證明可以信賴你的話,吾等倒是可以聽你說說看。比如說,你那個可以變化外貌的技術之類」

「您還真是愛說笑啊。這部分你也是一樣的吧。對了,像是對於你的主子被稱為不死皇帝一事的緣由是什麼,你知道嗎?」

兩人間的空氣是極度平穩的,但是古斯塔夫跟瑪爾瑟斯互相都明白對方看著自己的眼神,絕不像表面那麼平穩。

互相都打算抓出對方的真面目,打算選擇慎重且穩重的言詞來溝通,但是對話卻意外地被中斷了。

「……不打算維修裝備的話,可以請你們出去嗎」

雖然很平穩但是明顯帶有煩躁感的那句話,讓古斯塔夫他們閉上了嘴。

「嗯。今天就聽沃肯的話好了」

「咦,已經要走了嗎?」

古斯塔夫放下一臉遺憾的C.C.,從坐位上站起來,在這邊鬧起來,導致錯失下次的機會就太可惜了。

「C.C.,他們可是在妨礙我們的作業」

「但總覺得是很有趣的話題耶……」

「詳細的事我們改天再說吧。反正,機會還很多」

「說的也是,那就改天再說吧」

古斯塔夫不理會瑪爾瑟斯的話,離開了工作室。



在往大廳的途中雖然遇到米利安與蕾塔,但是他們似乎專注於聊天,兩人都沒有注意到古斯塔夫的樣子。

古斯塔夫覺得打擾親子間的談天也不好,就直接繼續往大廳去,見到克洛維斯正從大廳走過來。

「哦?古斯塔夫,你不是在自己房間嗎?」

「我想到有趣的事來排解無聊了」

古斯塔夫將自已的想法說明給克洛維斯聽,克洛維斯點點頭後,就跟在古斯塔夫後面一起行動。



來到大廳看到專心在讀繪本的多妮妲,與正在幫多妮妲縫補頭飾的音音夢。

雖然這兩位少女都很奇妙,一邊是用失傳的技術製造出來的,擁有自我意識的自動人偶,一邊是擁有操縱自己年齡的少女。不管是哪一邊,感覺都對組織很有用。

「咦?克洛維斯先生怎麼了嗎?連古斯塔夫先生都一起」

「有點事」

剛剛為止都還在大廳的克洛維斯才走掉又回來,讓音音夢感到驚訝。

「那就快點把你的事做完啊?音音夢也不要一直管他們,會讓人分心不是嗎」

「別這樣嘛,吾現在正在思考回到地上時的對策」

多妮妲與音音夢互相看了看。

「大家到這個館邸已經過了好一陣子了不是嗎?那麼回到地上的時候,也有可能已經沒有可以回去的地方了」

「雖然我不知道我可以回到哪裡,但的確還蠻困擾的」

「吾在世界各地都設有設施。所以吾等不會陷入那樣的困擾,但有些人就不一樣了。所以吾決定向那些人伸出援手喔」

「也就是,在妳們的生活安定下來之前,我們的組織會全面協助。取而代之,只要將妳們的力量稍微借給我們就好了。大概是這樣的感覺」

「啊?什麼鬼。感覺就很可疑啊的,我現在很忙,不要煩我好嗎」

多妮妲只說了這些,就再把視線移回繪本。全身發出了不要來煩我的氣壓。

「而且之後也許會想起回去的地方也說不定」

音音夢不知道有沒有搞清楚剛剛話題的內容,只回答了一個曖昧的答案。

這樣下去也講不清,正這麼想的時候。

「你們在吵什麼啊?」

柯布從路德的店走出來加入了話題,手上拿著小紙袋,看來是買了什麼。

「古斯塔夫說了奇怪的話,你聽聽看就知道了」

多妮妲馬上用帶有惡意的口氣向柯布說道。

「竟然說是奇怪的話,這女孩真失禮。吾只是說回到地上有困難的時候,可以依靠我們而已啊」

「啊?什麼意思啊?」

「像是回到地上的時候,可能什麼東西也沒有。那麼吾的組織可以提供支援你們生活基礎的地方這樣的內容」

「聽起來條件還真好。到底被迫要付出多少的代價才夠呢」

非常尖銳的評論,該說他不愧是犯罪組織的第二把交椅嗎。

「沒那回事,只是以提供食衣住來交換你們幫忙做一些委託而已,對你們來說應該也不是什麼壞事」

「不是什麼壞事,換句話說也不是什麼好事對吧」

古斯塔夫心想著原來如此,然後正打算接著說下一句話的瞬間。

「啊啊啊啊啊真是!吵死人了!我從剛剛就叫你們不要吵我不是嗎!!」

往聲音的方向一看,看到多妮妲揮動著大鐮刀衝向這邊來想要砍人。

「多妮妲,冷靜一……」

「啊?音音夢,妳也想被切爛嗎?!」

多妮妲甩開想阻止她的音音夢,激動地衝過來打算用大鐮刀砍向古斯塔夫的脖子。

「古斯塔夫,先撤退吧。不能在這裡引起多餘的事端不是嗎?」

「沒辦法了,走吧」

古斯塔夫與克洛維斯輕易躲過多妮妲的攻擊,往館邸的玄關跑去。

「啊!你們這些傢伙!混蛋」

好像有聽到了逃慢一步的柯布叫聲,不過他也是身經百戰的猛者。應該能自己想辦法解決,所以決定無視。雖然之後一起出去探索的時候可能會被抱怨,但到時再想辦法蒙混過去就好。

古斯塔夫邊這麼想,邊被多妮妲追著,逃出了館邸。



館外有血氣方剛的佈告者們正在訓練。

古斯塔夫假裝在散步,邊物色看看有沒有誰比較容易搭話。但是卻沒有找到適合的佈告者。

佛羅倫斯與希拉莉以驚人的速度從眼前跑過去,只能默默地目送她們離去。艾依查庫與伊普西隆似乎在進行模擬戰,要是在他們集中戰鬥的時候亂入的話,可能會被捲入戰鬥之中。另外那邊有抱著大量食物的奧蘭與傑多、阿奇波爾多在那邊,但是去找他們的話,可能在對話之前會先被當作挑夫。

古斯塔夫雖然對傑多與阿奇波爾多的力量很有興趣,但是覺得不能被侍者發現自己的目的,所以只好隨便說了點什麼就閃人了。



得不到預期成果的古斯塔夫他們繞到館邸後方,那裡是路德管理的花園。

看到的是,不知道在這邊做了什麼事,然後坐在長椅上休息的威廉。

「你們來做什麼?」

古斯塔夫一進入威廉的視野,威廉馬上帶有警戒心地的問道。

「不用對我那麼有警戒心嘛。我又不是來害你的」

「來這裡做什麼。這裡什麼都沒有」

「沒有,不是什麼重要的事。我們現在只是在思考回到地上時的對策而已」

「又打算抓我嗎?」

「不,不是那樣的。吾打算將你作為救命恩人,慎重地接納。然後賜你一個很好的地位,也會幫你準備一個可以盡情發揮園藝的環境」

「毫無可信度,你用花言巧語騙了多少人了」

雖然說威廉無法輕易相信自己是理所當然的,不過看來得花點功夫了。正在思考下一步要怎麼來攻下他的時候,滿手是土的史普拉多從花園裡走出來了。

「威廉,我這邊結束了。咦?怎麼了?」

史普拉多歪頭看著古斯塔夫他們,古斯塔夫馬上改變對象。

「獸人的孩子嗎。吾等正在談回到地上時該怎麼辦的事,你有什麼打算嗎?」

「我嗎?嗯,我想去姐姐那兒。但是不知道能不能回到森林去……」

「如果回去的時候是來吾等的世界,要不要來吾這兒呢?也可以邀請你姐姐一起來住哦」

「可以跟姐姐一起嗎!?」

古斯塔夫對眼睛閃亮亮的史普拉多點點頭,心想小孩子這麼率真真好。

只差一步而已,必須謹言慎行。

「史普拉多,不能相信這個男人的話」

「咦,是嗎?但是他說可以跟姐姐一起……」

威廉從中介入,他看起來是打算拼命阻止孩子進入組織。



「庫魯托少佐,原來你在這兒」

古魯瓦爾多從館邸前院的方向過來找威廉,手上拿著茸兔的屍體。

「殿下,狩獵結束了嗎?」

「嗯。……有罕見的人在這裡,發生什麼事了嗎?」

古斯塔夫心想,這麼說來這兩人是主從關係,那麼只要攻下主子,威廉順從的可能性就相當高了。

雖然也有可能不順從,但是到時拿古魯瓦爾多來威脅也是不錯的方式。

「沒什麼,吾正在考慮回到地上以後的對策」

「殿下不可以聽。這個人的話太危險了」

威廉插入兩人之間的對話,並擋在古斯塔夫他們與古魯瓦爾多之間,一副打算以物理方式徹底阻擋雙方接觸的樣子。

「會嗎?我倒覺得聽起來像是個有趣的話題」

古魯瓦爾多說的話,讓古斯塔夫眼神一亮。

「看來你的主子比你要來得懂事理」

「你這傢伙!」

「等等,我想聽聽看」

看到古魯瓦爾多阻止威廉,對話題有興趣了。

「吾正在尋找優秀的人材,如果你願意加入吾等的話,不管你想要什麼吾等都能幫你準備好。想要鬥爭的話,吾也會為你準備好適合的地位與機會的」

古魯瓦爾多沉默的聽著,然後看起來似乎在思考。

「……我需要的是血與死亡,而這些我都在自己的國家得到了」

「這,這樣啊……」

實在是太過理所當然的答案,讓古斯塔夫沒辦法接下去。想要馴服這樣的男人可能會折壽吧。

「比起那個,庫魯托少佐,我要開始解體獵物了。準備一下」

古魯瓦爾多說完就轉身,威廉也一副放心的樣子跟著古魯瓦爾多而去。

「遵命,我馬上準備。史普拉多你也應該去跟路德報告比較好吧?」

「說的也是,我這就去。那古斯塔夫先生、克洛維斯先生,再見嚕」

史普拉多也追在古魯瓦爾多他們後面走掉了。



古斯塔夫與克洛維斯被留在原地。

古斯塔夫大大地嘆了一口氣,在這個地方人們意志力都強到幾乎令人感到佩服的地方。

「看來他們不會簡單地成為吾等的同志。雖然本來就覺得不容易,但沒想到實際上竟然如此之難」

「他們與我們一樣,也是有未完成之事才會在這裡的。想讓他們的意志照我們希望的方向運轉應該很困難吧」

但還是覺得有所收穫,因為與意志堅強之者對話,果然還是到令人感到舒服的一種刺激。

古斯塔夫不是只有嘴上喊無聊而已,所以行動本身就有它的意義。正打算要去找下一個目標的時候,尤莉卡從館邸那邊走過來了。

「你們在這裡打什麼混?」

「尤莉卡,怎麼了嗎?」

「人偶在找你們。好像是要出發去探索了」

看來也消耗了好一段時間了,雖然無法說有什麼成果,但的確排解了無聊。

「這樣啊。那就快過去吧。走吧,尤莉卡、克洛維斯」

「一切遵從我等的首領之言」

克洛維斯與尤莉卡異口同聲的說道。聽到此言的古斯塔夫一臉滿足的點點頭。

邊想著下一次要怎麼排解無聊,邊露出一臉愉快的笑容往引導者所在之處走去。



「─完─」

日文版
「I WANT YOU !」

魔女の谷の奥深く、静かに佇む荘厳な館。

そこでは炎の聖女に見出されたヘラルド達が、自らの記憶と対峙するその時を待ちながら、思い思いに時を過ごしている。

 

「退屈だ」

待機のために宛がわれた部屋で、何をするでもなく無為に時を過ごしていたギュスターヴが、ソファにだらしなく寝そべっていた。

導き手は休憩と称して自室に篭ったまま出てこないし、一人で魔女の谷を探索しようとすればアコライト達に阻止される。暇潰しに標本を作ろうにも、この世界では必要な道具が揃わないこともあって断念している。

有り体に言ってしまえば、ギュスターヴは暇だった。

生前の記憶の残滓を辿ったところで、地下深くに存在した組織の玉座で、やはり退屈そうに部下の報告を聞いていたことくらいしか思い出せない。

「……よし」

しばし考えに耽っていたギュスターヴは何事かを思い付いた。そしてその考えを実行に移すべく、意気揚々と部屋を出て館のエントランスに向かった。

 

エントランスに向かう途中、何やら機械音がする部屋の前を通り掛かった。そっと扉を開けると、己の装備を修理しているウォーケンとC.C.がいた。

そのまま扉を開け、二人に一声掛けてから空いている作業台に陣取る。

「あれ、珍しいね。 ギュスターヴも装備を直しに来たの?」

近くにいたC.C.から声を掛けられる。変り者の女ではあったが、機械技術者としての腕は確かであり、ギュスターヴから見てもその才覚には目を見張るものがある。

ギュスターヴはこれ幸いと、C.C.に目標を定めた。

「そうか? 吾とて自分の使う道具は常に良好な状態に保っておきたいのでな。自室に足りぬ物があったので来たまでよ」

本来の目的は全くもって違うのだが、C.C.に話を合わせる。

「そっか。 やっぱり記憶を早く取り戻すため?」

「ああ。 思い出せぬまま留まるのにも飽いてきたのでな」

C.C.は視線を自分の装備に向けたまま、ギュスターヴと会話を続ける。

「私も同じ! 早く地上に戻らないとって感じで、ちょっと焦り気味なのよね」

「しかし、吾らがここへやって来て随分と経つ。地上も様変わりをしているだろうな」

「言われてみればそうかも……。地上には戻れても、パンデモニウムには戻れないかもしれないか……」

案外早い段階で誘導に掛かったな。そんなことを思いつつ、ギュスターヴは内心ほくそ笑みながらC.C.に話を続ける。

「ふむ。 行き先が無いと思うのなら、吾が所有する研究所で存分に働いてはどうだ? 吾の組織は磐石ゆえ、崩壊の心配は無い」

「それってスカウト?」

「如何様に捉えてもらっても構わんよ。 優秀な技術者はいくらいても足りぬものなのだ」

ギュスターヴは聖女の館にいる者達をあわよくば同志とし、この世界での組織拡充を図らんと考えるに至った。

意志の強いヘラルド達を上手い具合に誘惑するのは中々に楽しい時間となるだろう。早い話が、暇潰しと実益を兼ねた戯れであった。

 

「面白い話をしているな」

「ほう、この話に興味があるか」

やはり装備の点検に現れたらしいマルセウスが、会話に参加してきた。

だが、マルセウスは油断のならぬ人物である。下手を打てば逆に取り込まれる可能性さえ考えられた。

「事の次第によってはな。目的は違えども、互いに有益な関係を築けるであろう」

「強大な力を持つ者同士、互いの利を分け合おうと?」

ギュスターヴとマルセウスの視線がぶつかる。

「そなたが信用に値するものを明かしてくれるのならば、話を聞く余地はあろう。例えばそう、そなたの振るう化外の術についてなど」

「愉快なことを言う御仁だ。それはそちらとて同じであろう。そうだな、そなたの主が不死皇帝と呼ばれる理趣などを存じたいところだ」

二人の間を流れる空気は勤めて穏やかなものである。しかし、ギュスターヴとマルセウスは互いの目が全く穏やかではないことを認識している。

互いが互いの本性を引き出そうと慎重かつ穏健な言葉を選ぼうとしたが、思いもよらぬ方向から会話は中断することとなる。

「……作業をする気がないのなら、出て行ってもらおうか」

静かだが明らかに苛立ちの含まれた言葉に、ギュスターヴ達は口を噤んだ。

「ふむ。 今日のところはウォーケンの言に従うとしよう」

「えぇ、もう行っちゃうの?」

残念そうなC.C.を横目にギュスターヴは立ち上がる。ここで事を荒立てて次の機会を失うのも惜しかった。

「C.C.、彼らは私達の作業の邪魔をしているんだぞ」

「興味深い話をしてると思うんだけどなぁ……」

「詳しくはまたいずれにしよう。 なに、機会なぞいくらでもある」

「そういうことだな。では、またいずれ」

マルセウスの言葉を背に受けて、ギュスターヴは早々に作業場を後にした。

 

エントランスへ向かう途中でミリアンとレタに擦れ違うが、会話に夢中なのか、二人がギュスターヴに気付く様子はなかった。

親子の会話を邪魔するのも無粋かと気にせずに進んでいくと、クロヴィスがエントランスの方からやって来るのが見えた。

「おや? ギュスターヴ。 自室にいるんじゃなかったのかい?」

「面白い暇潰しを想到したのだよ」

ギュスターヴはクロヴィスに考えを説明する。クロヴィスは一つ頷くと、ギュスターヴの後に続いた。

 

エントランスでは絵本を熱心に読むドニタと、ドニタのヘッドドレスの綻びを繕うネネムがいた。

不思議な少女達だが、片や失われたテクノロジーによって作り出された意志のある自動人形。片や年齢操作能力を有する少女。どちらの能力も組織にとっては有用になると思えた。

「あれ? クロヴィスさん、どうかしましたかぁ? ギュスターヴさんまで」

「ちょっとした用事さ」

先程までエントランスにいたクロヴィスが戻ってきたのに驚いたネネムが話し掛けてくる。

「ならさっさと済ませれば? ネネムもいちいち相手しないでよ、気が散るじゃない」

「そう凄むな。 吾らは今、地上へ戻った時の対策を考えていてな」

ドニタとネネムは顔を見合わせる。

「吾らがこの館へやって来てから随分と経つだろう? であれば、地上へ戻った時に帰る場所が無いということも考えられる」

「わたしはどこにかえれるかわかりませんが、それはこまりますよねぇ」

「吾らの組織は各地に施設がある。 故に吾らが窮地に陥る事はあり得ぬが、そうもいかぬ者達もいる。吾らは困る者がいるのなら手を差し伸べたいと思っているのだよ」

「つまり、君達の生活が安定するまでは僕達の組織が全て面倒を見る。その代わりにその力を少しだけ貸してもらいたい。そんなところだ」

「はぁ? 何それ。 胡散臭いわね。ていうか、ワタシ今忙しいの。 邪魔しないで」

ドニタはそれだけ言うと再び絵本に視線を戻した。関わってくるなという空気が発せられているのが、ありありと見える。

「これからかえるばしょをおもいだすかもしれませんしねぇ」

ネネムに至ってはそもそも話の内容を理解できているのかどうか、あやふやな返答がされたのみ。

この状態では埒が明かない。そう思い初めていた矢先のことだった。

「なに揉めてんだ? お前ら」

ルートの店から出てきたコッブが話に参加してきた。小さな紙袋を持っているところを見ると、何かを買った帰りなのだろう。

「ギュスターヴの変な話に付き合わされてるのよ。アンタも聞けばわかるわ」

すかさずドニタが悪意を込めた口調でコッブに告げる。

「変な話とは失礼な娘だ。 吾は地上に戻った時に困ったことがあれば頼ればよい、そう言っているだけに過ぎぬ」

「あん? どういう意味だ?」

「地上へ戻った際、何も持たぬ状態やもしれん。ならば吾の組織で生活基盤を支える場を提供しようという話よ」

「ずいぶんと虫のいい話だな。 一体どれだけの対価を支払わされるやら」

鋭い指摘だ。流石は犯罪組織の若頭といったところだろう。

「なに、衣食住を提供する代わりにいくつかの依頼をするだけだ。悪い話ではない」

「悪い話じゃない、ってのは、言い換えりゃいい話でもねぇってことだろうが」

成る程鋭い。そんなことを思いながら次の言葉を発しようとした次の瞬間だった。

「あああああもう! るっさいわね! 邪魔すんなってさっきから言ってるでしょ!!」

金切り声のした方を振り向くと、ドニタが大鎌を振りかざしてこちらに肉薄してくるのが見えた。

「ドニタ、おちついて……」

「あん? ネネム、アンタも切り裂かれたいの?!」

ネネムの制止を振り切って、激昂するドニタの大鎌がギュスターヴの首を掻き切ろうと迫り来る。

「ギュスターヴ、一旦撤退だ。 ここで余計な揉め事を起こすわけにはいかないだろう?」

「仕方がない。行くぞ」

ドニタの攻撃を難なく回避しつつ、ギュスターヴはクロヴィスと館の玄関に向かって走り出す。

「あっ! てめえら!! このクソッ——」

一歩出遅れたコッブが何事か叫んでいるようだったが、彼も歴戦の猛者。自分でどうにか切り抜けるだろうと思って無視を決め込むことにする。いつか探索で一緒になった時に何やかんやと言われるだろうが、その時はその時に躱す方法を考えればよい。

そんな風に考えながら、ドニタに追われるようにして館の外へと出た。

 

館の外では血気盛んなヘラルド達が訓練と称して騒がしくしているようだった。

誰か声を掛け易そうな者がいないかと、散策を装って見回る。しかし、中々該当しそうなヘラルドが見当たらない。

ランニングをするフロレンスとシラーリーが凄い速さで目の前を通り過ぎていくのは、ただ見送る他なかった。アイザックとエプシロンの模擬戦なんぞ、集中しているところを止めたら乱入とみなされて戦闘に巻き込まれかねない。他には、食べ物を大量に抱えるオウランとジェッド、アーチボルトと会ったものの、会話以前に荷物持ちをさせられそうになった。

ジェッドやアーチボルトの力には興味があったが、アコライトに見咎められる訳にはいかないと判断し、適当なことを言って退散する羽目になってしまった。

 

思ったように成果が出せずにいたギュスターヴ達が館の裏手に回ると、ルートの管理する花園があった。

そこでは何か作業でもしていたのか、ベンチに座って休憩しているヴィルヘルムがいた。

「何をしに来た」

ギュスターヴが視界に入るが早いか、開口一番、ヴィルヘルムは警戒心を顕わにした言葉をぶつける。

「そう警戒するな。 危害を加えに来たわけではない」

「ならば何の用だ。 ここには何もない」

「なに、大したことじゃない。 僕達は今、地上に戻った後の対策を考えているんだ」

「俺をまた捕らえようというのか?」

「否、そうではない。吾を救った恩人として丁重に迎え入れるつもりだ。待遇の良い地位を与え、趣味の園芸も存分にできる環境を用意しよう」

「信用ならないな。その甘言でどれだけの人を騙したんだ」

当たり前ではあるが、簡単にはいかない様子だ。どう説き落とそうかと次の言葉を考えていると、手が土にまみれたスプラートが花園から出てきた。

「ヴィルヘルム、こっちは終わったよ。あれ? どうしたの?」

ギュスターヴ達がいることに首を傾げるスプラートを見て、ギュスターヴは言葉の矛先を変える。

「獣人の子か。 地上に戻ったらどうするかという話をしていたところだ。お前はどうするのだ?」

「僕? うーん、お姉ちゃんがいるところに行きたいな。でも、ちゃんと森に帰れるのかな……」

「もし吾らの世界に来てしまったら、吾のところに来るか? 姉とやらも誘って一緒に住むのも良いと思うが」

「お姉ちゃんと一緒にいられるの!?」

目を輝かせるスプラートの言葉にギュスターヴは頷く。子供はやはり素直であるのが良い。

あともう一押しだと思いながら慎重に言葉を選ぶ。

「スプラート、この男の言うことは信用しちゃだめだ」

「え、そうなの? でも、お姉ちゃんと一緒にいてもいいって……」

ヴィルヘルムが割って入る。子供を組織への道に入らせないようにと、必死の様子だ。

 

「クルト少佐、ここにいたか」

館の表の方からヴィルヘルムを探していたらしいグリュンワルドがやって来た。その手には茸兎の死骸がある。

「殿下、狩りは終わられたのですか?」

「ああ。……珍しい者達がいるな、何があった?」

そういえばこの二人は主従関係だ。ならば主の陥落に成功すれば、ヴィルヘルムも従う可能性が高い。

従わない可能性もあるが、そうなったらグリュンワルドを盾に脅しを掛けるのも悪くない。

「なに、吾らは今、地上に戻った後の対策を考えているのだ」

「殿下、駄目です。 この者の言葉は危険です」

ヴィルヘルムが会話に割って入る。ギュスターヴ達とグリュンワルドの間に立ち塞がり、物理的にも遮断する構えのようだ。

「そうなのか? それにしては随分と興味深い話をしているようだが」

グリュンワルドの言葉に、ギュスターヴは目を光らせる。

「お前の主はお前よりも話のわかる男のようだ」

「貴様!」

「まあ待て。話を続けてもらいたい」

ヴィルヘルムを押さえ、グリュンワルドが話に食いついてくる。

「吾らは優秀な人材を探している。吾らと共に来るならば、望むものは何でも用意しよう。闘争を望むのなら、相応の地位と機会を用意しよう」

グリュンワルドはその言葉を聞いて沈黙する。考えを巡らせているように見えた。

「……私に必要なのは血と死。私は私の国でそれを成す」

「そ、そうか……」

あまりといえばあまりの答えに、ギュスターヴはそれ以上二の句が継げなかった。このような男を御するのは骨が折れるだろう。

「それよりクルト少佐、獲物の解体を始める。 準備してくれ」

グリュンワルドは話は終わったと言わんばかりに踵を返した。ヴィルヘルムはハッとするとグリュンワルドに続く。

「御意、すぐに準備を。スプラートもルートに報告した方がいいんじゃないか?」

「そうだね、そうするよ。 じゃあギュスターヴさん、クロヴィスさん、またねー」

スプラートもグリュンワルド達の後を追っていく。

 

残されたギュスターヴとクロヴィス。

ギュスターヴは一つ大きく息を吐くと、ここにいる者達の意志の強さに感心にも似た思いを感じていた。

「簡単に吾らの同志とならぬとは。 ある程度の予想はしていたが、これ程とはな」

「僕ら同様、彼らにもやるべきことがあってここにいる。彼らの意思をこちらの思い通りにするのは難しいだろうね」

それでも収穫はあった。意志の強い者達と交わす言葉は、やはりとても心地よい刺激になる。

暇だ退屈だと口にするだけではなく、行動することにこそ意味がある。そんなことを思いながら次の相手を探しに行こうとすると、ユーリカが館の方からやって来た。

「こんなところで油を売っていたのですか」

「ユーリカ、何ぞあったか?」

「人形が探しておりました。 探索に出発するとのことです」

それなりの時間が経過していたようだ。成果が出せたとは言い難いが、暇はかなり解消されたように思えた。

「そうか。 ならばすぐに向かうとしよう。行くぞ、ユーリカ、クロヴィス」

「全ては我が首領の仰せのままに」

クロヴィスとユーリカの声が重なる。それを聞いてギュスターヴは満足そうに頷く。

そして次の暇潰しのことを考え、悦に入った笑みを浮かべながら導き手の元へと向かうのだった。

「—了—」