R1 薩爾卡多(含日版)

3371 「最下層」

潘德莫尼。是以科學精華聚積而成,漂浮在天空的巨大都市。在那裡充滿了人類最高的智慧以及技術──原本應該是這樣的。但是,《渦》的發生打亂了這個計畫。現在的潘德莫尼,就只是倖免於《渦》之災禍的少數工程師子孫們所賴以維生的「方舟」而已。



「不趁早修正分類錯誤的話,以後會留下禍根的」

薩爾卡多所隸屬的,是負責整理以及調查收藏在潘德莫尼下層資料的部門,這部門通稱為『圖書管理員(Librarian)』。而薩爾卡多正是這個部門的下級調查技官。

「原來如此。但是,依我的判斷,現在沒有人手能夠分擔這項作業」

整潔,並且既定事項也充分發揮著機能的世界。這樣的潘德莫尼可以說是理想世界。雖然薩爾卡多熱愛這種美,但他卻無法滿足於現狀。

「我無法認同」

「你的看法總是很正確,只不過呢,正確的看法不見得是最好的」

上司的上級圖書管理員,拉金帶著嘲諷的語氣說著。

「所以是要我配合你的無能嗎?」

薩爾卡多毫不掩飾藐視的情緒說道。

「你說話最好小心一點」

拉金打斷這個話題。

「你的工作不是下判斷。只要照著命令行事就好」

換句話來說,這裡並不是能發揮他才能的地方。在潘德莫尼裡,分配到的角色以及階級,完全是透過基因選別來決定的。對出身不算優良的薩爾卡多而言,這個制度就像是高牆般的存在。

「還有,你不要再跟那個老不死的摩洛克混在一起了。對我們來說,那傢伙才是現在的禍根」

站起身的拉金將手搭在薩爾卡多的肩上,故意說著摩洛克的壞話。

「我知道了」

拉金回到自己的座位開始確認起資料。就好像薩爾卡多不存在一樣。

薩爾卡多默默地退出拉金的辦公室。



「聽說你向拉金提意見了?」

摩洛克向薩爾卡多搭話。摩洛克是比薩爾卡多年長許多的圖書管理員,在這個領域的時間甚至比拉金還長。儘管他不停地在導都潘德莫尼的下層發現新遺物,但摩洛克卻始終沒有晉升到更高的階級,直到現在都仍然和下級技官一起在地下漫無目的的搜尋著。

「好不容易有新的發現。那個男人,根本什麼都不懂」

薩爾卡多非常敬愛摩洛克。但僅止於他那異常的能力與熱情而已,薩爾卡多不打算像他一樣永遠都只待在潘德莫尼的最下層遊蕩。

兩人進入下層進行調查。啟動升降裝置,向著除了調查技官以外誰也不能進入的下層出發。

「新的發現。正確來說應該是再發現。在潘德莫尼中,搬進了各式各樣在緊急建造時期的產物。我們也只是再一次把那些東西找出來罷了」

「我明白。正是因為這樣,為了取回那個失去的世界,我們不得不正確的復原那些遺物。但是那個男人卻……」

升降裝置發出驅動的聲音,緩緩向黑暗中下降。

「是時間讓我們退化了。不管是潘德莫尼的官僚機構,還是幕後推手們的能力」

「總有一天我要把那些無能的傢伙給驅逐出去,我會改變圖書管理員給你看的」

「很了不起的抱負呢。不過,想把已經躲起來沒用的害群之馬全部趕出去可不是一件容易的事喔」

「你為什麼沒有升級呢?」

被上級認為是奇怪的傢伙而疏遠的摩洛克,其實比誰都了解潘德莫尼的下層。

「因為,我還沒找到我要找的東西」

摩洛克神秘的笑了笑。

升降裝置到達了最下層,兩人往黑暗中走去。



兩人好不容易來到作業計畫所指的區域,並且完成了被吩咐的調查。

回程時,摩洛克向薩爾卡多提議。

「薩爾卡多,要不要看看我正在找的東西呢?」

「嗯,當然要」

薩爾卡多不是會因為好奇心而冒險的那種人。但是他想知道摩洛克持續著這種奇妙生活的理由。此外,也包含了一點在這個最下層中生活而來的調查技官職業意識。

摩洛克走離開了原先預定調查的區域,只靠著手中的燈光,向著錯綜複雜的最下層前進。

在這連薩爾卡多都從未來過,猶如迷宮一樣的道路,摩洛克毫不遲疑的向前走著。

「明明這個區域連通道的資料都還沒有…」

「我花了很長一段時間記在腦中了。因為我有的是時間」

說完後,兩人繼續在被沉默與黑暗所支配的下層中前進著。

過了一陣子,他們看見了一個透露出微弱光芒的房間。

「就是那邊」

摩洛克的步伐變快。就好像是小孩子到了好玩的遊樂場那般,一刻都無法等待的樣子。

在操作盤上輸了些什麼之後,房門打開了。

房間裡十分明亮。薩爾卡多習慣了黑暗,光芒讓他一瞬間瞇起了雙眼。

房間中散亂著管線,牆壁上可以看見許多開關以及電光操作盤。

「你看,這裡有獨立的動力。為了搞清楚扇門的意義我花了五年,為了打開它花了三年,讓動力復活則是花了十年啊」

薩爾卡多從未看過摩洛克的情緒如此高昂過。

「我像隻地鼠般在這附近的地下來回探索的時候,發現只有這個房間的構造是特別的。大概就是在你這個年紀的時候吧」

摩洛克在房間中踱來踱去,並且興奮地對著薩爾卡多持續說著。

「我無論如何都想看看這個房間中到底有什麼。想知道這個隱密房間的意義。為了達成這個欲望,我一直留在這裡。特意不報告這個區域的事情」

「為什麼你要這麼做?」

「你也知道的不是嗎?圖書管理員這個官僚機構,不,應該說整個潘德莫尼已經可以說是一具死屍了。從地面上的混亂逃脫出來的祖先們,捨棄了工程師追求及進化新眞相的本分。明明應該是航向未來的方舟,現在這裡卻只住著只懂得保全自己的凡夫俗子,退化成不見光明的洞窟了」

「所以,你瞞著這個祕密的房間?」

「那些傢伙是不會明白這個房間的價值的。他們一定不打算理解也不調查就直接把這房間封印。那就是他們口中所謂『圖書管理員的工作』」

薩爾卡多再次環顧了四周。與平常見到的那些不會動的自動人偶或是堆積如山的記錄媒體不同,在這裡的是活生生的科技。

「薩爾卡多,你是個有前途的男人。你也理解工程師的本份。所以這個房間的意義你也能理解對吧?」

摩洛克興奮到了極點。

「這個房間的功能是『腦』。它就是潘德莫尼的腦啊」

「腦?」

「你看!」

摩洛克觸碰了牆上的開關後,正前方原本什麼都沒有的牆打了開來,出現了一大片玻璃窗。

在那個玻璃窗的另一端,漂浮著一個連接著大量電纜的大腦。

「這是標本……不,它是活的!」

「沒錯,是活的。這個房間的動力與通信,連接到潘德莫尼的中央總指揮系統」

「你是說這個腦可以控制整個潘德莫尼嗎?」

「是啊。只要啟動目前還在沉睡著的這個房間,就能夠佔有整個導都潘德莫尼。給那些貪婪的凡夫俗子們制裁了啊」

摩洛克的眼中充滿憤怒,呼吸也跟著激烈。

「只不過目前還沒有辦法啟動它。需要很多的步驟。為了這個我還必須繼續找出更多的情報才行」

「為什麼讓我看這個?」

「我需要幫手」

摩洛克突然一改激動的情緒,用沉穩的語調說著。

「如果可以的話我想盡快啟動這個房間。只是,恐怕我快沒有時間了……」



兩人再次來到了升降裝置前。

摩洛克讓薩爾卡多進入升降裝置。

「你不回去嗎?」

「還不行,我有想在今天內調查出來的事情。我等你的好消息」

摩洛克的身影很快地消失在最下層的黑暗中。

薩爾卡多一個人搭乘升降裝置回到了上層。



過了數日,摩洛克仍舊沒有回來。雖然摩洛克以前在下層調查時,也好幾次失去聯絡,但這麼長時間的失聯卻是第一次。

無法回應邀請,薩爾卡多就這麼繼續著閱覽及分類資料的工作。

就在這個時候,薩爾卡多被拉金叫了過去。

辦公室中,面前的拉金不像平常那樣臉上堆著惹人厭的笑容,反而明顯露出緊張的神色。薩爾卡多對這個男人也會有這樣的表情,感到些許地稀奇。

「我有事想問你,是關於摩洛克的」

薩爾卡多率先想到得就是那個房間的事。



「─完─」

日文版
3371年 「最下層」

パンデモニウム。科学の粋を集めて作られた、宙に浮かぶ巨大な都市である。そこには人類最高の叡智と技術が詰まっている——筈だった。だが、《渦》の発生がその計画を狂わせた。現在のパンデモニウムは、《渦》から逃れた数少ないエンジニア達の子孫が乗る「方舟」でしかない。

 

「分類の誤りを早急に正さなければ、今後に禍根が残ります」

サルガドが所属するのは、パンデモニウム下層に納められた資料を整理・調査する、通称『ライブラリアン』と呼ばれる部署である。サルガドはその下級の調査技官であった。

「なるほどな。しかし、今その作業に割り当て可能な人員はいないのだよ。私の判断ではね」

清潔で、決められたことが機能的に過ぎていく世界。理想世界としてのパンデモニウム。その美を愛してはいたが、今の状況に満足はできていなかった。

「納得できません」

「君は常に正しいな。だがな、正しさが常に善とは限らないのだ」

上司である上級ライブラリアン、ラーキンは、嘲りの調子を含めて言った。

「無能に合わせろと」

軽蔑の感情を隠さずに言った。

「言葉には気をつけたほうがいい」

ラーキンは話を打ち切った。

「お前の仕事は判断することじゃない。言った通りに働けばよい」

端的に言えば、その才能に見合った場所ではなかった。パンデモニウムでは、与えられる役割も階級も、全てが遺伝子的なスクリーニングを経て決定される。出自の芳しくないサルガドにとって、それは壁として存在していた。

「あと、老いぼれのモロクと付き合うのはやめておけ。奴こそ、今現在の我々にとって禍根になっている」

立ち上がったラーキンはサルガドの肩に手をやり、わざと皮肉めかして言った。

「わかりました」

ラーキンは自分の席に戻って書類の確認を始めた。まるでサルガドなどいないかのように。

サルガドはラーキンの執務室を黙って退室した。

 

「ラーキンに意見したそうだな」

モロクはサルガドに話し掛けた。モロクはサルガドよりだいぶ年かさのライブラリアンで、ラーキンよりも長くこの部署にいる。パンデモニウムの下層から次々と新しい遺物を発見するも昇級せず、いつまでも下級技官と共に地下を彷徨い歩いていた。

「せっかく新しい発見があったのに。あの男、なにも理解していない」

サルガドはモロクを敬愛していた。しかしそれは、その変わった能力と情熱に対してであって、彼の様にいつまでもパンデモニウムの下層を這いずり回るつもりはなかった。

二人は下層での調査に出ていた。昇降装置を動かし、調査官以外立ち入り禁止の最下層に向かっていた。

「新しい発見。正しくは再発見だがね。このパンデモニウムには、急造された時代に様々なものが運び込まれた。あくまで我々はそれを再発見しているに過ぎないのだよ」

「わかっている。だからこそ失われた世界を取り戻すために、私達は正しく遺物を復元しなければならない。なのに、あの男は……」

昇降装置は駆動音を響かせながら、暗闇をゆっくりと下っていく。

「時間が我々を退化させたのだよ。パンデモニウムの官僚機構も、それを動かしている人間の能力をもな」

「いつかあの無能どもを駆逐して、私がライブラリアンを変えてみせる」

「心掛けは素晴らしいな。だが、一度はびこった悪貨を駆逐するのは、容易ではないぞ」

「あなたはなぜ、昇級しなかった?」

変わり者で、上層部から疎まれてはいたが、実際にパンデモニウムの下層を誰よりも理解しているのはモロクだった。

「まだ、捜し物がみつかっていないからだよ」

モロクは不敵に笑った。

昇降装置が最下層に着き、二人は暗闇の中へと進んでいった。

 

二人は作業手順に定められた区域に辿り着き、与えられた調査を終えた。

その帰り道に、モロクはサルガドに提案をした。

「私の『捜し物』を見てみたいか? サルガド」

「ああ、もちろん」

サルガドは好奇心のために危険を冒すタイプではない。しかし、モロクがこの奇妙な生活を続ける理由を知りたかった。それに、この最下層で調査技官として生きてきた職業人としての意識もあった。

モロクは調査予定の区域を離れ、手元のライトだけを頼りに、入り組んだ最下層を進んでいった。

サルガドもまだ入ったことのない迷路のような道を、モロクは何の迷いもなく進んでいく。

「この辺りは経路の資料すら無いのに……」

「長い間を掛けて、頭の中に入れたのだよ。時間はたっぷりあった」

そう言って、また沈黙と暗闇が支配する下層を二人は進んでいった。

しばらくすると、小さな明かりが漏れる部屋が見えてきた。

「あそこだ」

モロクは少し歩みを早める。まるで、子供が楽しい遊び場に着くのが待ちきれないといった様子だ。

何やらかをパネルに打ち込むと、扉が開いた。

部屋は光に溢れていた。暗闇に目が慣れていたサルガドは、一瞬目を細めた。

部屋の中は配管が入り乱れ、壁にはスイッチや電光パネルが見える。

「見ろ、ここには独立した動力があるのだ。ここの扉の意味を知るのに五年、開けるのに三年、動力を復活させるのに十年かかったのだよ」

サルガドが今まで見たこともない程、モロクは高揚していた。

「この地下を土竜のように這いずり回っていた中で、この部屋だけが特別な構造を持っていることを知ったのだ。ちょうどお前くらいの歳にな」

うろうろと部屋を歩き回りながら、モロクは興奮した様子でサルガドに語り続ける。

「どうしてもこの扉の中をのぞきたい。隠された部屋の意味を知りたい。その欲求をかなえるために、ずっとここに残ったのだ。わざとこの区域の報告をせずにね」

「なぜ、そんなことを?」

「お前もわかっているだろう。ライブラリアンという官僚機構、いや、パンデモニウム自体がすでに死に体だということを。地上の混乱から逃れた我々の祖は、エンジニアの本分である新しい真実の追究と進化を捨ててしまったのだよ。未来への方舟の筈なのに、ここは保身に走った凡夫どもの住む、光指さぬ洞窟となってしまったのだよ」

「だから、この秘密の部屋を黙っていた?」

「あいつらには、この部屋の価値などわからん。理解も調査もせずに封印するだけだ。それが奴らの言う『ライブラリアンの仕事』なのだから」

サルガドは辺りをもう一度見回してみた。普段目にする動かなくなったオートマタや山積みの記録媒体とは違う、生きたテクノロジーがここにはあった。

「サルガド、お前は見込みのある男だ。エンジニアの本分を理解している。そしてこの部屋の意味も理解してくれるだろう」

モロクの興奮は絶頂に達していた。

「この部屋は『脳』として機能するのだ。パンデモニウム自体のな」

「脳?」

「見ろ!」

モロクが壁際のスイッチに触れると、何も無かった正面の壁が開き、大きなガラス窓が現れた。

そのガラス窓の向こうには、大量のケーブルに繋がれた大脳が浮かんでいた。

「これは標本……いや、生きているのか!」

「そう、生きているのだ。そしてこの部屋の動力と通信は、パンデモニウムの中央統括局へ続いているのだ」

「この脳がパンデモニウム自体を動かすことができると?」

「ああ。今は眠っているこの部屋を起動させられれば、パンデモニウムを乗っ取ることができる。そして惰眠を貪る凡夫どもに鉄槌を下すのだ」

モロクの目は血走り、息は上がっている。

「ただな、まだ起動させることはできんのだ。たくさんの手順が必要なのだ。そのための情報をまだまだ探し続けなければならん」

「なぜ、これを私に見せたのだ?」

「協力者が必要なのだ」

モロクはさっきとは打って変わって、落ち着いた調子で言った。

「なるべく早くに起動させたいのだ、この部屋を。だが、おそらく私には時間が無い……」

 

二人は再び、昇降装置の前に来た。

モロクは昇降装置にサルガドだけを乗せた。

「戻らないのか?」

「まだ、今日中に調査したいことがあるのでな。良い返事を待っているぞ」

モロクは足早に最下層の暗闇に消えていった。

昇降装置はサルガドだけを乗せて、上層へと上っていった。

 

数日経ってもモロクは戻ってこなかった。モロクの場合、下層で連絡が途絶することは何度もあったが、こんなに長い間連絡が取れないことは初めてだった。

返事もできないまま、サルガドは回収した資料の閲覧と分類の作業を続けていた。

そんな時、サルガドはラーキンに呼び出された。

執務室で向き合ったラーキンの顔にはいつもの嫌みな笑みが無く、はっきりと緊張した様子が窺えた。サルガドは、この男にもそんな表情ができるのかと、少しおかしみを覚えた。

「お前に聞きたいことがある、モロクのことだ」

サルガドは真っ先にあの部屋のことを思い出していた。

「—了—」