「-隆茲布魯王國市內-」
一個女子斷氣在冰冷的石頭路上。女子從肩膀到胸部中央被深深的切開。鮮血順著石頭路,慢慢流到路肩。
站在一旁的男子凝視著女子的臉孔。從青白色臉孔的嘴角溢出的血,即使在這片昏暗中也散發著鮮明的光芒。
男子就那樣暫時站在那裡。
無法得知在黑色外套跟隱藏在兜帽下的臉上有著怎樣的表情。
城市中的時間就這樣流逝。沒有月光。
最後黑衣的男子終於如同幽靈般的從那個地方消失。
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「-布隆海德城-」
「那又如何?」
王子的發言讓現場一片沉默。坐在王座上的古魯瓦爾多的表情中不帶有任何的情感。
「在城都裡發生的事情,讓臣民們都十分的不安。請務必不要再……」
代代服侍著王家的忠臣凱烏斯卿話說到一半。
這可以說是前所未聞的事情。
現在的隆茲布魯王國,是由年輕的王子古魯瓦爾多代替臥倒病床的老王來治理的。
而家臣們現在正在希望掌權的王子不要再在城都裡殺人。
原本王國中除了古魯瓦爾多之外還有兩個王位繼承人的兄弟在,但二人卻都早已過世。
古魯瓦爾多原本受到國王的懲罰而被放逐,但卻在幾年前回到城裡。
被放逐的理由當然是他那奇怪的行為跟性格。
從小就收集動物屍骸埋在土中。然後取出骨頭裝飾在房間裡。甚至還想要死刑犯的遺體。
乳母間都在傳說這個王子是個被詛咒的孩子,誰都不願意來照顧他。
就算兄長與國王對這些行為作出懲罰,他也絲毫有沒有改變這些奇怪的行動。
在他十四歲的時候,從城堡地下室裡發現了數十具被認為是他所殺害的屍體,國王因此將他放逐。
「這件事我一定也會向國王報告」
凱烏斯像是硬擠出來般的對王子說道。凱烏斯放棄了。這個王子跟當初被放逐時的他完全一樣沒有改變。
在要被放逐的時候,國王問了古魯瓦爾多很多次。為什麼要殺了他們,為什麼要做這樣的事情。
那時候也是什麼都沒打算回答的樣子。對此感到絕望的國王,只好將他放逐了。
「這樣好嗎?」
切入到這樣劍拔弩張情況中的是,在宮廷中服侍許久的學者,名為洛斐恩的男子。
雖然是個年齡超過八十,骨瘦如柴的老人,但他的目光中仍舊留有身為西方知名工程師的風度。
「我們這些家臣十分的不安。請您務必避免再有這樣不合理的行為」
這個從上上代國王就開始服侍王家的老人,跟其他的家臣不同,是被允許可以這樣直接進言的。
「已經有古朗德利尼亞開始舉兵的消息傳來。一旦戰亂開始,各種跨國性的權謀鬥爭也將發生」
「現在就是變化的時機。世界從渾沌的束縛中解放,各國也為了擴大國土而不斷發展著軍備。這場戰亂一定會將這個王國捲入吧」
洛斐恩吸了口氣邊環視著在場的家臣邊說道。
「請務必理解他們為國著想的心意」
對在聽了老家臣這般發言後也毫無反應的王子,凱烏斯跟其他的家臣們實在看不下去,紛紛帶著不滿的表情從王座前離開。
留在最後的洛斐恩留下了細語與也算不上的話語。
「善與惡,能在光天化日下說明清楚就好了」
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「-暗路-」
古魯瓦爾多離開城堡,在半夜中來到城堡外的市區。
在這個城堡裡有著許多只有他才知道的密道。他比誰都清楚這個古老城堡的事。對從小就很孤獨的他來說,古城秘密通道跟地下監牢比任何地方都還要能讓他放鬆。
當夜晚潮濕的空氣進入肺部,古魯瓦爾多感受到那欲望帶來的疼痛。
在稍微閉上雙眼感受慾望在舌尖的感觸後,他戴上了外套的兜帽。
當來到酒場與賣春寮所聚集的大路後,就躲到小巷子的陰影中,一邊靠著牆壁一邊盯著大路。不時有喝醉了的賣春女跟她們的客人從他面前經過。但是,卻沒有任何人注意到他。古魯瓦爾多安靜的等待時機。當發現一個從酒場裡出來的女子離開大路後,進入了反方向的小巷子中的時候,古魯瓦爾多也追著那個女人慢慢的從小巷子裡面出現。女子從行人往來的大路上走到了連街燈也沒幾盞的路上。
一個黑影正慢慢靠近在大路上走著的女子。女子依然沒有發現。當影子就要跟上女子的那個瞬間,黑影與黑影撞在一起。劍也掉在了地上。
女子發出尖叫後逃走了。站著的是拔出劍了的古魯瓦爾多。企圖襲擊女子的男子拉開距離防備著接著的攻擊。男子的外型跟黑王子十分的相似。
「找你很久了」
男子似乎發現對手是王子的樣子。擺出戰鬥姿勢的男子似乎是想將上衣的鈕扣弄開。從體型跟架式就知道男子是熟練的高手。
「拔出之前你先回想一下吧」
古魯瓦爾多像是想以制敵先機般的說道。
「你想要的是什麼?」
男子無視王子奇妙的問題,甩甩上衣後拔出槍來。
一閃過後,男子的頭被整齊的切下。還握著槍的身體隨後倒下。鮮血沾濕了地面。一瞬間,古魯瓦爾多的臉上浮現了笑容。
夜晚的街道再次回歸寧靜。古魯瓦爾多將男子的頭顱用上衣包起來後起身離開。
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「-地下室-」
門裡還看的到光芒。古魯瓦爾多猛的將門打開。在一堆奇妙機械的之中有著洛斐恩的身影。老賢者從正在觀察的巨大放大鏡裡抬起頭來。
「王子,這還真是突然的來訪啊」
「有些想問這傢伙的事」
古魯瓦爾多在散亂著奇妙裝置跟古老革皮外裝書本的桌上,隨意的就把人頭放了上去。
「這還真是懷念。是不是再來試試之前那個呢」
洛斐恩的眼裡出現了詭異的活力。
「這可不是你的實驗品,這傢伙就是城都殺人事件的犯人」
「喔喔。原來如此。也就是說那些都不是你做的。這還真是令人意外了」
老人慢慢的站起身來。
「別開無聊的玩笑了。頭顱也是會腐爛的」
「不用你說我也知道。那麼,那個是收到哪去了呢……」
洛斐恩在推積如山的書本跟擺放著奇怪機械的房間中,一邊翻東找西一邊往深處去了。
古魯瓦爾多將變成雜物堆放處的長椅子上的雜物掃落後坐了下來。
然後想該如何善後才比較好而沉思。
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「-完-」
3392年 「孤影」
「—ロンズブラウ王国市内—」
冷たい石畳の上で女は息絶えていた。女は肩口から胸の中央まで深く切り裂かれている。血は石畳を流れ、路肩まで流れていっている。
傍らに立つ男は女の顔を見つめていた。女の青白い顔の口元に溢れていた血は、薄明かりの中でもとても鮮やかに光っている。
しばらく男はそこに立っていた。
黒い外套とフードに隠れた顔にどんな表情が浮かんでいるのかはわからない。
街の時間はそのまま過ぎていった。月明かりは無い。
やがて、黒衣の男は幽鬼のようにその場から消えた。
「—ブローンハイド城—」
「それで?」
王子の言葉は空気を凍らせた。玉座に腰掛けたグリュンワルドの表情には、何の感情も浮かんでいなかった。
「洛内での出来事で、臣民はとても不安になっております。何卒これ以上……」
代々忠臣として王家に仕えてきたガイウス卿が言葉に詰まる。
前代未聞の出来事と言ってよかった。
現在ロンズブラウ王国では、病床にある老王の代わりにこの若き王子グリュンワルドが国を治めていた。
その主権者たる王子に家臣が、洛内での殺人をやめてほしい、と懇願しているのである。
元々王国にはグリュンワルドの他に二人の王位継承者たる兄がいたが、二人とも早世していた。
グリュンワルドは王の勘気を受けて放逐されていたのだが、数年前に帰還していたのであった。
その放逐の理由も、彼の奇怪な行いと性格にあった。
幼い頃から動物の死骸を集めて土に埋め、骨を取り出し、部屋に飾っていた。死刑にされた囚人の遺体を欲しがった。
そんな王子を呪われた子だと乳母達は噂しあい、誰も彼を世話したがらなかった。兄や王にその行動を咎められても、一切奇怪な行動は改まらなかった。
そして彼が十四の時、城の地下室から彼が殺めたと思われる屍体が数十と発見され、王国から放逐されたのだった。
「このことは、王にも必ず上奏させていただきます」
ガイウスは絞り出すように王子に言った。ガイウスは諦めていた。この王子は放逐されたときと全く変わっていないのだと。
放逐されるとき、王は何度もグリュンワルドに問うた。なぜ殺したのか、どうしてこんな真似をするのかと。
その時も一切答えようとしなかった。その様子に王は絶望し、彼を放逐したのだった。
「よろしいですかな?」
緊迫した状況で間に入ったのは、宮廷に学者として長く仕えてきたローフェンという男だった。
齢は八十を超え、痩せさらばえた老人だったが、その眼光には西方に名を馳せた工学師だった頃の面影を残していた。
「われわれ家臣団は不安なのです。あまり無体な真似は謹んで下さいと申しておるのです」
先々代の王から仕えた老人は、他の家臣とは違う物言いが許されていた。
「グランデレニアが兵を挙げたとの噂はここまで届いております。戦乱の時は近いと、国を跨いで様々な権謀が巡っているのです」
「今は変化の時です。世界は混沌の軛から解放され、各国は再び地上を再分割しようと軍備を進めています。その戦乱は必ずこの王国を巻き込むでしょう」
ローフェンは一息おいて、家臣達を見回しながら言った。
「国を思う彼らの気持ちもご理解ください」
老家臣の言葉を聞いても変わらぬ王子の様子を見かねたガイウス卿や他の家臣達は、憮然とした表情を隠さないまま玉座の前から辞した。
最後に残ったローフェンは、呟きともつかぬ言葉を発した
「善と悪、明るい日の下では明解でよろしいな」
「—暗路—」
グリュンワルドは城を抜け出し、夜半過ぎに城下の街へと出た。
彼にしかわからない抜け道がこの城にはたくさんあった。彼はこの古い城のことを誰よりも知っていた。幼い頃の孤独な彼にとって、古城の隠し通路や地下牢は何より落ち着く場所だったのだ。
夜の湿った空気が肺に入ると、グリュンワルドはあの欲望が疼くのを感じた。一瞬瞑目して欲望の舌触りを試した後、外套のフードを被った。
酒場と売春宿が集まる通りまで来ると、路地の影で壁に寄り掛かりながら通りを見つめていた。時折酔った売春婦とその連れが彼の前を通り過ぎる。しかし、誰も彼に気が付かなかった。グリュンワルドは静かに時を待っていた。酒場から出てきた女が通りを離れ、反対側の路地へと入っていくのが見えた。グリュンワルドもゆっくりと彼女を追うように路地に入った。人気のあった通りから、街灯もまばらな道へと女は進んでいった。
通りを進む女に黒い影が近付いていく。女はまだ気付いていない。影が女の後ろに付こうとしたその刹那、影と影がぶつかった。剣が地面に落ちる。
女は悲鳴をあげて逃げていった。立っているのは剣を抜いたグリュンワルド。女を襲おうとしていた男は、二の太刀を防ぐように距離を取った。男の背格好は黒き王子とよく似ていた。
「探したぞ」
男は相手が王子であると気付いたようだった。身構えた男は上着のボタンに指をかけようとしている。体つきや構えから、男が手練れだということがわかる。
「抜く前に思い浮かべろ」
グリュンワルドが機先を制するかのように言葉を発した。
「お前は何を望む?」
男は王子の奇妙な問いを無視して上着を跳ね上げ、銃を抜く。
一閃、男の首は綺麗に打ち落とされた。男の身体が銃を持ったまま倒れる。鮮血が地面を濡らす。一瞬、グリュンワルドの顔に笑みが浮かぶ。
夜の街の静寂がまた広がった。グリュンワルドは男の首を上着で包み、立ち上がった。
「—地下室—」
扉からは光が漏れていた。グリュンワルドは勢いよくその扉を開ける。そこには奇妙な機械に囲まれて座るローフェンの姿があった。老賢者は覗き込んでいた巨大な拡大鏡から顔を上げた。
「殿下、これは急な訪問ですな」
「こいつから聞きたい事がある」
グリュンワルドは奇妙な装置や古い革張りの本が散らかる机の上に、無造作に首を置いた。
「これは懐かしい。またあれをやるのですかな」
ローフェンの目に不気味な生気が宿った。
「これはお前の実験台じゃない。こいつは城下で起きている殺人の犯人だ」
「ほう、成る程。あれはあなたがやっていたのではなかったのだと。これは意外でしたな」
老人はゆっくり立ち上がった。
「くだらん冗談はよせ。首が腐るぞ」
「言われなくともわかっております。さて、あれはどこへしまったかな……」
ローフェンは堆く積まれた本と奇妙な機械が並ぶ部屋を掻き分けながら、奥へと去った。
グリュンワルドは、物置と化している長椅子からガラクタをはたき落として座った。
そして、事の顛末にどう始末をつけようか沈思した。
「—了—」
「—ロンズブラウ王国市内—」
冷たい石畳の上で女は息絶えていた。女は肩口から胸の中央まで深く切り裂かれている。血は石畳を流れ、路肩まで流れていっている。
傍らに立つ男は女の顔を見つめていた。女の青白い顔の口元に溢れていた血は、薄明かりの中でもとても鮮やかに光っている。
しばらく男はそこに立っていた。
黒い外套とフードに隠れた顔にどんな表情が浮かんでいるのかはわからない。
街の時間はそのまま過ぎていった。月明かりは無い。
やがて、黒衣の男は幽鬼のようにその場から消えた。
「—ブローンハイド城—」
「それで?」
王子の言葉は空気を凍らせた。玉座に腰掛けたグリュンワルドの表情には、何の感情も浮かんでいなかった。
「洛内での出来事で、臣民はとても不安になっております。何卒これ以上……」
代々忠臣として王家に仕えてきたガイウス卿が言葉に詰まる。
前代未聞の出来事と言ってよかった。
現在ロンズブラウ王国では、病床にある老王の代わりにこの若き王子グリュンワルドが国を治めていた。
その主権者たる王子に家臣が、洛内での殺人をやめてほしい、と懇願しているのである。
元々王国にはグリュンワルドの他に二人の王位継承者たる兄がいたが、二人とも早世していた。
グリュンワルドは王の勘気を受けて放逐されていたのだが、数年前に帰還していたのであった。
その放逐の理由も、彼の奇怪な行いと性格にあった。
幼い頃から動物の死骸を集めて土に埋め、骨を取り出し、部屋に飾っていた。死刑にされた囚人の遺体を欲しがった。
そんな王子を呪われた子だと乳母達は噂しあい、誰も彼を世話したがらなかった。兄や王にその行動を咎められても、一切奇怪な行動は改まらなかった。
そして彼が十四の時、城の地下室から彼が殺めたと思われる屍体が数十と発見され、王国から放逐されたのだった。
「このことは、王にも必ず上奏させていただきます」
ガイウスは絞り出すように王子に言った。ガイウスは諦めていた。この王子は放逐されたときと全く変わっていないのだと。
放逐されるとき、王は何度もグリュンワルドに問うた。なぜ殺したのか、どうしてこんな真似をするのかと。
その時も一切答えようとしなかった。その様子に王は絶望し、彼を放逐したのだった。
「よろしいですかな?」
緊迫した状況で間に入ったのは、宮廷に学者として長く仕えてきたローフェンという男だった。
齢は八十を超え、痩せさらばえた老人だったが、その眼光には西方に名を馳せた工学師だった頃の面影を残していた。
「われわれ家臣団は不安なのです。あまり無体な真似は謹んで下さいと申しておるのです」
先々代の王から仕えた老人は、他の家臣とは違う物言いが許されていた。
「グランデレニアが兵を挙げたとの噂はここまで届いております。戦乱の時は近いと、国を跨いで様々な権謀が巡っているのです」
「今は変化の時です。世界は混沌の軛から解放され、各国は再び地上を再分割しようと軍備を進めています。その戦乱は必ずこの王国を巻き込むでしょう」
ローフェンは一息おいて、家臣達を見回しながら言った。
「国を思う彼らの気持ちもご理解ください」
老家臣の言葉を聞いても変わらぬ王子の様子を見かねたガイウス卿や他の家臣達は、憮然とした表情を隠さないまま玉座の前から辞した。
最後に残ったローフェンは、呟きともつかぬ言葉を発した
「善と悪、明るい日の下では明解でよろしいな」
「—暗路—」
グリュンワルドは城を抜け出し、夜半過ぎに城下の街へと出た。
彼にしかわからない抜け道がこの城にはたくさんあった。彼はこの古い城のことを誰よりも知っていた。幼い頃の孤独な彼にとって、古城の隠し通路や地下牢は何より落ち着く場所だったのだ。
夜の湿った空気が肺に入ると、グリュンワルドはあの欲望が疼くのを感じた。一瞬瞑目して欲望の舌触りを試した後、外套のフードを被った。
酒場と売春宿が集まる通りまで来ると、路地の影で壁に寄り掛かりながら通りを見つめていた。時折酔った売春婦とその連れが彼の前を通り過ぎる。しかし、誰も彼に気が付かなかった。グリュンワルドは静かに時を待っていた。酒場から出てきた女が通りを離れ、反対側の路地へと入っていくのが見えた。グリュンワルドもゆっくりと彼女を追うように路地に入った。人気のあった通りから、街灯もまばらな道へと女は進んでいった。
通りを進む女に黒い影が近付いていく。女はまだ気付いていない。影が女の後ろに付こうとしたその刹那、影と影がぶつかった。剣が地面に落ちる。
女は悲鳴をあげて逃げていった。立っているのは剣を抜いたグリュンワルド。女を襲おうとしていた男は、二の太刀を防ぐように距離を取った。男の背格好は黒き王子とよく似ていた。
「探したぞ」
男は相手が王子であると気付いたようだった。身構えた男は上着のボタンに指をかけようとしている。体つきや構えから、男が手練れだということがわかる。
「抜く前に思い浮かべろ」
グリュンワルドが機先を制するかのように言葉を発した。
「お前は何を望む?」
男は王子の奇妙な問いを無視して上着を跳ね上げ、銃を抜く。
一閃、男の首は綺麗に打ち落とされた。男の身体が銃を持ったまま倒れる。鮮血が地面を濡らす。一瞬、グリュンワルドの顔に笑みが浮かぶ。
夜の街の静寂がまた広がった。グリュンワルドは男の首を上着で包み、立ち上がった。
「—地下室—」
扉からは光が漏れていた。グリュンワルドは勢いよくその扉を開ける。そこには奇妙な機械に囲まれて座るローフェンの姿があった。老賢者は覗き込んでいた巨大な拡大鏡から顔を上げた。
「殿下、これは急な訪問ですな」
「こいつから聞きたい事がある」
グリュンワルドは奇妙な装置や古い革張りの本が散らかる机の上に、無造作に首を置いた。
「これは懐かしい。またあれをやるのですかな」
ローフェンの目に不気味な生気が宿った。
「これはお前の実験台じゃない。こいつは城下で起きている殺人の犯人だ」
「ほう、成る程。あれはあなたがやっていたのではなかったのだと。これは意外でしたな」
老人はゆっくり立ち上がった。
「くだらん冗談はよせ。首が腐るぞ」
「言われなくともわかっております。さて、あれはどこへしまったかな……」
ローフェンは堆く積まれた本と奇妙な機械が並ぶ部屋を掻き分けながら、奥へと去った。
グリュンワルドは、物置と化している長椅子からガラクタをはたき落として座った。
そして、事の顛末にどう始末をつけようか沈思した。
「—了—」